オンラインの少人数で行う教育を、発表教育という名で呼びたいと思います。
発表教育は、発表自体に意味があるのではありません。
発表ということを契機として、学習面での交流ができ、学習を媒介とした親子の協力が生まれ、創造的な学習ができるというところに意味があります。
なぜ発表が創造的学習につながるかというと、少人数のグループの中では、創造的な発表こそが最も価値あるものになるからです。
その反対に、誰でもできるものを人より上手に行うというのは、それがよほど優れたものでないかぎり、少人数のグループの中ではあまり評価されません。
誰でもできるものとは、要するに既に答えがあるものです。
今の教育の主流は、誰でもできる答えのある問題を子供たちに取り組ませ、薄い輪切りの点数の差を拡大し、そこに競争という要素を加味して学習の意欲を持たせる仕組みになっています。
それは、誤解を恐れずに言えば、勉強だけでなく、スポーツも、音楽も、芸術も、進学も、就職も、ビジネスも、社会全体がそういう答えのある世界で小さな差を競い合うような仕組みになっているからです。
しかし、そういう世界での勉強は、本質的に面白いものではありません。
子供たちにとって、勉強よりも遊びが面白いのは、勉強には答えがあり、その答えの道筋さえ決められていることが多いのに対して、遊びには答えがなく、また答えに近いものがあったとしてもその答えに至る道筋は自由だからです。
この自由が創造性を生む土台になっています。
これからの教育に求められるものは創造性だということはよく言われています。
しかし、その創造性の教育を具体的に実践しているとほとんどないと思います。
2020年度からの入試改革は、そういう新しい学力を目指していますが、問題作成自体に非常に手間がかかり、しかもその評価が多くの人の納得できるものになっていません。
だから、こういう新しい学力を日常的な教育として行うことは更に難しく、現状では、ゆとり教育のやり直しと、その反省から来る詰め込み教育の間を行き来するだけのものになるのではないかと思います。
ところが、言葉の森がこれまで行っていた思考発表クラブという少人数のクラスの勉強では、特に小学4年生以上の生徒のグループで、この1年間、毎回きわめてレベルの高い発表と交流が行なわれていました。
点数も、評価も、競争もない中で、毎週そのグループの中だけで見るのではもったいないぐらいの、高度な発表学習と交流があっったのです。
それは、この思考発表クラブに参加していた生徒が、学力的にもレベルが高かったことと、保護者の理解と協力があったことが大きかったと思います。
しかし、学力に関して言えば、創造性には、これまでの学力よりも、これから取り組む姿勢の方に意味があります。
例えば、算数・数学の問題を解くだけの勉強では点数の差が出るだけですが、似た問題を作るという勉強の仕方をすれば、誰でも創造的なものが作れます。
それは作文に関しても同様で、これまでの作文力が表れる、結果としての作文を発表するだけでは、交流はあまり面白いものにはなりません。
その反対に、作文の準備としての構想図作りであれば、取り組み次第で誰でも創造的なものができます。
そういう創造的な学習を日常的に行っていく場として、これまでの思考発表クラブで行っていたスタイルを、作文にも、教科の勉強にも生かしていきたいと思いました。
それが、寺子屋オンラインという名称で行っていた発表教育です。
ただし、こちらの意図していることが、わかりにくい面があると思いましたので、4月3週に、寺子屋オンライン保護者説明会・懇談会を臨時に開くことにしました。
その説明の動画を作っていたところ、動画が4本で合計1時間以上になってしまいましたので、それらの動画は時間のあるときに見ていただくことにして、いちばんのエッセンスを「5月から寺子屋オンラインの概要説明」というタイトルで12分にまとめました。
▼5月からの寺子屋オンラインの概要説明
https://www.mori7.net/izumi/gazou/2018/4150732470.jpg
この動画をもとに、4月3週の寺子屋オンライン保護者説明会・懇談会を行います。
この説明会は、現在、オンラインの学習を受けている生徒の保護者が主な参加者になりますが、今後参加したいと思っている方もご参加いただいて結構です。
■4月3週の寺子屋オンライン説明会・懇談会
https://www.mori7.com/kform_pre.php?k=hogb201804
・すべての保護者の方がご参加いただけるように、通常の授業時間の終了を15分早めて、授業の直後に説明会・懇談会を行うことにしました。ただし、それでも時間的に参加しにくいという場合は、別の曜日時間にご参加ください。
※寺子屋オンラインの思考発表クラブ、自主学習クラス、作文クラスは、これまでに体験学習をされたことのある生徒でも、新たに体験学習に参加することができます。(ただし、定員になっているところは、その曜日時間のクラスが増えるまで予約待ちとなります。)
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言葉の森は、これまでの教育にはなかった新しい教育を始めます。
新しい教育ですから、わかりにくいところが多いと思いましたので、保護者説明会を行うことにしました。
学習塾と同じような感覚で勉強しても、あまり身につきません。
そのかわり、新しい教育として取り組めば、大きな成果があります。
自分の子供が小さかったら取り組ませたかったところです(笑)。
いつでもコミュニケーションがとれるというオンラインの利点を生かして運営していきたいと思います。
世の中の変化は、予想以上に速いです。
しかも、そのほとんどが、よりよい状態への変化です。
世間では2020年度の入試改革が話題になっていますが、言葉の森は更にその先の教育を2018年度からスタートさせます。
その教育の重点は、これまでも何度か同じことを書きましたが、少し言葉を変えて、
1.受験から学問へ
2.社会から家庭へ
3.点数から文化へ
4.競争から創造へ
という言葉で表して実行していきたいと思います。
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(写真は、那須合宿所の木の切り株。30kgありました。)
小学1、2年生のころの作文は、物事の中心を決めて詳しく書く練習をしていきます。
これが、第一に重要なことです。
よく遠足くの作文などを書くと、家を出発してから、また家に帰るときまでの話を延々と書く子がいます。
それは、物事を文章として記述する練習としては意味があるので、特に直す必要はありません;
しかし、よりよい文章力をつけるためには、その中のある一つの事柄について詳しく書くという練習をしていくといいのです。
第二は、作文を書くための土台となる読書に力を入れていくことです。
言葉の森の作文を目指す方向は、上手な文章を書いて小説家になるような方向ではなく、考える作文を書き高校生、大学生、社会人になっても使える文章を書くという方向です。
だから、読書についても、物語文的な本と並行してその子の興味のある範囲で説明的な文章の書かれている本を読んでいくといいのです。
第三は、やはり作文を書くための土台となる経験に力を入れていくことです。
読書の好きな子の中に、読書ですべてを理解したつもりになり、知識と理屈だけで物事の理解が終わってしまう子がいます。
学校のテストに関しては、それで十分すぎるほど十分なのですが、実際に何かを作り出すという創造力という点から見ると、知識と理屈だけの理解では役に立たないことが多いのです。
では、創造力のために何が必要かと言うと、それは実際に手足を動かし、自分の目で見たり耳で聞いたりして、現実と関わるような経験をすることなのです。
それは、実験や観察や調査という言葉で表せるものと似ています。
実際にやってみることによって、それが予想どおりうまくいったり、予想に反してうまくいかなかったりするという経験をすることがその子の創造力の源になっていきます。
ですから、小学1年生で勉強がよくできる子、作文が上手に書ける子は、読書のジャンルを広げていくことと、経験の幅を広げていくことが大事で、これらによって精神年齢が上がったときの文章を書く準備をするということになるのです。
そして、第四に、作文は、単に先の学年の準備をするだけのものではありません。
その時代に、その子が生きた証となるものが作文です。
小学1年生のころに書いた作文は。その子が1年生の時でなければ書けなかったただものですから、それを書いて残しておくことがその子の一つの記念になります。
上手に書けるから先に進むと考えるよりも、上手に書ける今の時期をそのこと自体を一つの目的として残しておくという方向で子供の作文を見ていくといいのです。
(次回は、小4から小5に切り替わるときの作文について)
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勉強の先取りにはもちろん意味がありますが、なぜ先取りができるかというと、それは答えのある世界だからです。
答えのある世界は、幸福や創造が乏しい世界です。
答えのある世界で子供の時間を埋めていくと、それは灰色の男たちの世界に近づいていきます。
だから、健康な子供は、自然にそういう世界から離れるようになるのです。
受験勉強で成果を上げるためには、能率が必要です。
それは答えがはっきりしている世界だからです。
しかし、子供の実力をつけるのは、能率ではなく時間です。
時間をかけてああでもない、こうでもないとぐるぐる巡りをすることがその子の実力を育てます。
だから、この二つは分けて考える必要があるのです。
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