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勉強の基本を押さえた上で、読む力と書く力と経験する力をつける as/3285.html
森川林 2018/04/22 03:40 

 保護者懇談会でよく出る質問が、いろいろな教科の勉強の仕方です。
 勉強の基本は、ごく簡単で、1冊の参考書を繰り返し読むか、1冊の問題集を解けない問題がなくなるまで繰り返し解くかということだけです。
 繰り返しの回数は、4、5回です。
 どんなに難しい問題も、4回もやればほとんどができるようになります。

 成績が上がらないのは、いろいろなことをまばらにやっているからです。
 例えば、塾からもらったプリントもやって、学校から出された宿題もやって、通信教育の課題もやって、市販の問題集もやってというような、いろいろな勉強を1回だけやるようなことを増やしているから、時間ばかりがかかって力がつかないのです。

 ところが、そういうことを話しているうちに、ふと、勉強よりも大事なことがあるのを多くの人が忘れがちなのではないかと思いました。

 勉強よりも大事なものは、読書です。
 成績は、勉強をすれば誰でも上がるようになっています。
 しかし、本を読んで考える力は、すぐにはつきません。
 表面に見える成績の差よりも、この読書力の差の方がずっと大きいのです。

 毎日本を1時間読んでいる子と、毎日本を10分しか読まない子の読書量の差は、数年たてばかなり大きなものになります。
 しかし、その差は表面には出てきません。
 この表面に出てこないところに、本当の実力があるのです。

 作文も読書と同じです。
 毎週1回作文を書く子と、学校の宿題が出たときだけ作文を書く子との、考える力の差は数年立てばかなり大きなものになります。
 その考える力とは、その子の内面を豊かにする力のことです。

 読書や作文と並んでもう一つ大事なことは、自分で主体的にやってみることと、何かに熱中する経験です。
 与えられたことを与えられたとおりにやるのは、時間がかかりません。だから、能率よく見えます。
 勉強の多くは、こういう能率のよいやり方で組み立てられています。
 これに対して、子供が何かに興味を持ち自分から進んでやろうとすることは、無駄が多く、遠回りのことばかりやっているように見えます。
 しかし、この経験があとで生きてくる本当の実力になるのです。

▽関連記事
「勉強をコントールする力をつける――そのための親の勉強観」
https://www.mori7.com/index.php?e=2921
====
 今、子供たちの身の回りには、さまざまなやらなければならないことが押し寄せています。
 それは、大人も同様です。
 最近、時間が不足するという人が増えているのは、生活の本質に関係のないような雑事があまりにも増えてきたためです。

 大人の場合は、それでも自分で計画を立てて自分の生活をコントロールすることができます。
 しかし、子供はこれからそういうことを学ぶ時期にいるのですから、自分で生活をコントロールすることはまだできません。

 だから、親が子供に、大事なことで継続することと、大事でないことで適度に抑制することを教えてあげる必要があります。
 それは食べ物の好みのコントロールと同じで、子供が好きな甘いものばかり食べさせるのではなく、野菜などもきちんととることをすすめることと共通しています。

 子供の時間のコントールを考えるときに、大事になってくるのが、親の勉強観です。
 学校や塾で言われたとおりにやっていると、子供の勉強時間はどんどん長くなります。
 どの先生も、自分の教えていることが大事だと思っているからです。
 その結果、誰からも何も言われない読書の時間が削られてしまう子も多いのです。

 小学生のころは、長い目で見れば、勉強よりも読書の方が大事です。
 今の成績をよくすることに追われて、読書を後回しにしている子は、かえってあとで伸びなくなります。

 例えば、漢字の書き取りテストなどをすれば、出来不出来の結果がすぐに出ます。
 結果が出るものは、誰でもつい優先してしまいます。
 しかし、読書はしてもしなくても、結果として出てくるものはありません。
 だから、読書は置いておいて、まず漢字の勉強をということになってしまいがちなのです。

 両方できるのがもちろんいいのですが、どちらが大事かと言えば、明日の漢字のテストより今日の読書の方です。
 これは、異論のある方も多いと思いますが、これまでいろいろな子供たちを見ているとそういうことがわかるのです。
 だから、親は、できるだけ長期的な視野で子供の成長を考え、子供の生活時間を考えていく必要があります。

 思考発表クラブでは、毎週、子供たちに今読んでいる本を紹介してもらいます。
 互いの本の紹介が刺激になるのか、どの子もいい本を選んできます。
 こういう読書を柱とする勉強をしていくことが、将来の子供たちの大きな力になっていくと思います。
====

この記事に関するコメント
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森川林 20180422  
 勉強の結果は、外からすぐ見えます。だから、多くの人は勉強を先に考えてしまいます。
 しかし、本当に大事なのは、その子の内側を豊かにすることです。
 それが読書と作文と経験です。
 子供が成長してから大切だったとわかるのは、成績ではなく内面の豊かさの方なのです。


nane 20180422  
 大きな山があり、その狭い一本道をみんなが競争して登っていったというのが、工業時代の教育でした。
 文化時代の教育は、そうではありません。
 一人ひとりが自分の個性の山を、特に誰とも競争する必要はなく登っていけばいいのです。
 その登っていく途中で、ツールとしての学力が必要になります。
 その学力をつけるのが勉強であって、勉強自体が競争の目的ではありません。
 子供の教育を考えるとき、親や先生のそういう大きな教育観が必要になると思います。


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森林プロジェクトで描く未来の教育のビジョン as/3284.html
森川林 2018/04/21 11:46 

 今回の記事は、遠い未来の話まで含めたビジョンです。

 言葉の森の教育の目標は、子供たちの個性、知性、感性を育てることと、日本を守りよりよい国にしていくことです。
 その二つを両立させるビジョンが、ひとことで表すと、「明日の日本を支える子供たちを育てる」という言葉です。

 子供たちの学力や人間性や創造性を育てることと、日本を守り発展させることを、次のような形で実現していきます。
 まず当面は、オンラインの作文や学習を進め、本当の役に立つ学力を育てる教育を行っていくことです。
 その背景には、現在の受験学力が本当に役立つ学力になっていないという考えがあります。このことは、またいつか書きたいと思います。

 将来、このオンラインの少人数クラスの教育は、そのままオンラインの学校になるようにして行く予定です。
 多数の少人数クラスが集まった形が、一つの学校になるということです。

 この少人数のオンラインクラスを支える先生は、森林プロジェクトのメンバーです。
 小中学生の子供たちの教育で最も大事なのは、教える先生の人間性です。
 人生経験のある高い理想を持つ先生が、子供たちの共感力や文化力を育てることが第一の条件で、その先生の学歴などは関係がありません。
 むしろ、関係がある経歴としては、学歴ではなく職歴の方です。

 このオンラインの少人数クラスを統合したオンラインの学校は、オフラインの「森の学校」と連携するようにします。
 森の学校は、自然の豊かな田舎に作り、オンラインで学ぶ子どもたちが年に何回かその森の学校で交流できるようにします。

 そして、森の学校の周辺に子供たちや先生たちが継続的に集まるようになれば、そこが学問や教育を核にした一つの町になっていきます。
 ちょうど城下町や門前町と似たような経過で、学校を中心に輪のように形成される町で、学輪町というようなものになっていくのです。

 その学輪町で進めていくことが二つあります。
 一つは、子供たちの創造的な教育を、よりリアルな形で行うことです。
 オンラインでは十分にできない様々な設備や素材を用意して、そこで子供たちが実際の手作業で創造的なものを作る環境を作っていくのです。
 この創造は、子供たちだけでなく、大人も行えるので、ここから創造的なリアルなものの生産が生まれます。
 もう一つは、子供たちを教える森林プロジェクトの先生が、自分の得意な分野を生かして新しい教育科目を作っていくことです。

 江戸時代に様々な新しい文化が生まれたように、これからの時代は既存のメジャーな文化に限定されない個性的で多様な文化が生まれる時代になります。
 限られた科目で全員が同じゴールを目指して序列化されるような社会ではなく、各人が自分の個性と関心を生かしてその個性的な分野で第一人者となるような文化の多様化の時代がこれから生まれるのです。
 そして、その創造的な文化は、その文化を教える仕組み自体がひとつの産業になり、日本の経済発展に寄与していくことになります。
 これが、創造文化教育産業です。

 このようにして、日本の国内で軌道に乗った「森の学校」や「森林プロジェクト」のシステムを、次は世界に輸出していきます。
 その際に、システムを輸出するだけではなく、そのシステムの根底にある日本の文化というものも世界に広げていくのです。

 それは、日本の文化をそのまま他国に広げるというのではなく、日本の文化の精神を他国の文化を活かす形で広げていくということです。
 世界が日本のような国になれば、地球はもっと平和で穏やかで創造的で幸福な星になっていくと思います。

 さて、日本の国土面積は、海洋まで含めると世界第6位です。

「日本の国土面積は約38万k㎡で世界61位。しかし領海と排他的経済水域(EEZ)は計447万k㎡で、海の広さなら米国、オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、カナダに次いで世界6位だ。日本の近くには深い海が多く、EEZ内の海水の体積で比べると世界4位という計算もある。」(朝日新聞Globeより)

 中国が、ユーラシア大陸に向けて現代のシルクロードを作ろうとしているように、日本は、東に広がる海洋に向けて新しい日本列島を作っていくことができます。
 その新日本列島を形成する土地は、メガフロートです。
 数多くの新しい島が海洋に作られ、それらの島がそれぞれ独特の特区を形成できるようにすれば、そこでさまざまな社会や文化の実験が行なわれます。
 そこで、旧来の日本では既得権益のためにやりきれなかった新しい試みを次々に実現していくのです。

 このようにして、日本だけでも、新しい社会のビジョンを作り、更にそれを世界に広げていくことが、日本をよりよい国にしていく展望です。

 この創造教育と日本教育の世界化と並行して行なっていきたいのは、人間の幸福を育てることを目標とした心身教育です。
 これまでの人類の歴史を見て、イエスキリストやブッタや聖徳太子や空海のような様々な優れた人物が実際に存在していたことを考えると、あらゆる人がそのレベルまで達するような教育が生まれる可能性はいつか実現すると思います。

 そのときにこそ、地球が、この広大な宇宙の中で、真に生命の理想を実現する惑星になっていくのだと思います。

図は、森の学校の前身となる夏休みの那須合宿教室のイメージです。(馬はまだいません。プールもまだありませんが。)

この記事に関するコメント
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森川林 20180421 1 
 今回の記事は、超長期のビジョンです。
 しかし、こういういい世の中が意外に早く来るのではないかという気がします。
 人間の思いついたことは、いつか必ず実現します。
 足元は見ずに、いつも遠くの山の向こうを見て仕事をしていきたいと思います。

nane 20180421 1 
 いい世の中を作るのは簡単です。
 みんながいっせーのせで、いい人間になればいいだけだからです。
 理屈の上では何も困難なことはないので、何千年たってもそうならないのは、自分の利益だけを考える気持ちがまだ人間の中にあるからです。
 だから、これからの教育に必要なものは、受験学力ではなく、本当の学力、共感力、文化力、創造力になると思います。
 エゴイズムは、もちろんあってもいいのです。
 しかし、誰かが言ったように、「我もよし、人もよし、我の方がちょっとよし」ということでやっていけばいいのです。


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