ちょうど天外伺朗さんの本が届いたので、今日は午後、その本を読んでいました。
天外さんの言う「世界は分離から統合へと向かっている」ということは、私もうすうす感じていました。
教育についても、これまでの主流は分離の教育でした。
社会に出たあとに特に役立つわけでもない煩瑣な知識をなぜ詰め込むのかというと、それは子供のためというよりも、むしろ評価のためでした。
なぜ評価が必要なのかというと、評価による差をつけて、限られた資源を傾斜配分する必要があったからです。
その限られた資源とは、いい教材、いい先生、いい教育環境という資源です。
しかし、インターネットによる情報のオープン化によって、それらの資源は既にありあまるものになりつつあります。
これまでの教育は、いかによいものを吸収するかということでした。
しかし、吸収が誰にとっても制約でなくなった時代において、大事なことは吸収よりもむしろ創造になります。
では、創造を伸ばすために必要なものは何かと言えば、それは、自由な精神を持った友達と、自由な創造を許容する空間なのです。
教育において、最も価値あるものは、いい教材でも、いい先生でも、いい学校でもなく、いい友達集団と過ごした長い時間ということになっていくのだと思います。
そういう観点で、今の少人数オンラインクラスを運営していきたいと思っています。
そして、その子たちが成長して大きくなったあとも、ときどき那須の合宿所で同窓会をするのです(笑)。
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子供の教育を考えるには、これからの世の中がどういう世の中になるかを考える必要があります。
これからの世の中は、今よりももっとよい世の中になります。
そのよい見通しを前提に、よりよい世の中で生きる子供を育てて行く必要があるのです。
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ウサギとカメの話ですが、日本人はこの倦(う)まず弛(たゆ)まず努力するという姿勢を文化的に身につけているようです。
「転石苔を生ぜず」という言葉は、日本と欧米では正反対の意味でとらえられています。
ところが、今の社会は、情報も豊富でさまざまなツールやソフトも豊富なので、子供たちがつい目移りして次から次へといろいろなことに手をつけるという状態になってきました。
勉強の基本は1冊の参考書を5回読むことですが、多くの子は、それよりも5冊の参考書を1回だけ読むことを好みます。
時には、読みかけのものを更に何冊も読むということもあります。
子供がまだ親の言うことを聞く小学校低学年のころから、この1冊を5回という勉強の姿勢を習慣にしておくと、あとでその姿勢が必ず役に立ってきます。
この継続には、一緒に勉強を続ける友達というのも大事です。
言葉の森が、作文のオンライン少人数クラスを始めたのは、退屈になりがちな勉強を友達どうしの交流で活性化していこうと考えたからです。
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「長く続けられる習い事で「GRIT(やりぬく力)」を育てる」
https://www.mori7.com/index.php?e=2825
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「やり抜く力 GRIT(グリット)」という本に、成果をもたらすものは、才能ではなく、「やりぬく力」だと書かれています。
これは、実証的な調査研究なので、説得力があります。
日本には、「石の上にも三年」という言葉があります。
結果が見えないようなものについても、やり続けていると、そこから自ずから開けてくるものがあるということです。
こういう人生観は、その人の生活すべてにわたっていると思います。
これまで見てきた子供たちについても、やりぬく力のある子は、そのときは特に優れているように見えなくても、長い年月の間に必ず力をつけ、最初から才能があるように見えた子を追い越していきます。
このように考えると、子供に何か習い事をさせるときも、長く続けられるものを選ぶことがいいのだと思います。
小1から始めて高3まで続けられるようなものがあれば、それを中心にして子育てをしていくのです。
ただし、それは子供が好きなものであることが前提になります。
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世の中には、画期的ないい方法というものは滅多にあるものではありません。
勉強でも、仕事でも、長く続けることがいちばんいい方法です。
そして、その時間をかけたものが、その人の個性になっていくのです。
情報機器が発達した便利な世の中では、時間をかけずに済ませることのできるものが増えてきました。
しかし、だからこそ何に時間をかけるかということが大事になってきます。
子供の勉強も、能率よく全部やろうとするのではなく、大事なものに絞って時間をかけていく方が結局は本当の実力がつくのです。
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少人数クラスやオンライン学習用の分科会場を作りました。
Zoomの会場なので、zooにかけて動物広場としました。
https://www.mori7.net/teraon/zoo.php
これは、オンラインで何人かのグループ勉強している生徒が、そのグループからいったん出て個別に話をしたいときなどに使います。
動物広場の会場に入るときは、名簿に生徒コードを入れてもらいますので、どの会場が利用されているかわかります。
ですから、まだ使われていない会場を使うことができます。
こういうZoom会場を多数作れば(100か所ぐらい)、生徒と先生の話も、電話やskypeを使わずに分科会場に移動して行うことができるようになります。
この分科会場/動物広場は自由に使って結構ですので、ご興味をお持ちの方は試しに入ってみてください。
その際、ほかの人とぶつからないように、生徒コードのある人はできるだけ生徒コードを入れておいてください。(ぶつかっても別にかまわないと思いますが)
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生徒のペースで、分科会を自由に利用できるように分科会場を作りました。
これで、先生とのオンラインの授業が終わったあとも、生徒どうしで集まって勉強の話の続きをすることができます。
だんだん部活のノリになってきました(笑)。
今後、この分科会場を100か所ぐらい作る予定です。
将来は、言葉の森の全講師がその分科会場で授業をするようになると思います。
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作文力をつけるいちばんのポイントは、事前の準備です。
事前の準備で特に大事なのが、テーマに関連した話をお父さんやお母さんとしてくることです。
予習シートや構想図を利用すれば、子供は自然に親に話を聞くようになります。
また、オンラインの少人数クラスでは、関連したyoutubeの動画などを紹介しているので、それらを見ながら対話を行えば更に楽しく話が進みます。
この親子の対話の中で、子供の語彙力や思考力が育っていきます。
子供たちが今行っている勉強のほとんどは、子供だけが取り組むものが多いはずです。
子供の勉強だから、子供が自分でやるというのは、答えのある勉強の場合はそれでいいのです。
しかし、作文は答えのない勉強ですから、親子で話す度合いによって、深くもなり浅くもなり、広くもなり狭くもなっていきます。
この親子の対話は、子供にとってだけでなく、親にとっても楽しい時間になります。
特に、学年が上がると子供との接点が少なくなりがちなお父さんにとっては、貴重な親子の触れ合いの機会になります。
そして、子供の考える力が最も育つのは、点数のつく勉強によってではなく、この親子の触れ合いと対話の中でなのです。
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「お父さん、お母さん、子供の対話のきっかけになる作文課題」
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言葉の森の作文課題は、小3からは、題名課題と感想文課題になります。
小2までは、自由な題名で書いていたので、小3の題名課題になると、誰も最初はとまどいます。中には、自由なままの方がいいと言う子もいますが、しばらくすると、題名課題の方が焦点が絞れていいと言うようになります。
しかし、初めての感想文課題のときは、どの子もほとんど書けないのが普通です。
実は、小3では感想文課題をやるのはまだ無理があるのですが、今の学校教育の中では、小学校低学年から感想文の宿題を出すところが多いので、それに対応するためにやっているのです。
さて、この題名課題も、感想文課題も、どちらも事前の準備が作文の出来を左右します。
料理では材料七分に腕三分という言葉がありますが、作文も同じです。いい材料が仕入れてあれば、あとはどういうふうに書いてもいい作文になるのです。
この材料集めで大事なことは、自分の体験だけではなく、両親に聞いた話や、今の社会で起きている話を盛り込んでいくことです。
取材によって材料の幅が広くなると、そのテーマを見る視点も一段と高くなってきます。
例えば、11.1週の小6の作文課題は、「うちにある古い物」ですが、単に家の中にある古くなった道具やおもちゃを持ち出して書いてみても、深い感想は書きにくいものです。
ところが、ここに、日本の歴史の中にある古いもの、世界文化遺産の例などを結びつけると、古いということの意味をもう一段深く考えることができるのです。
そして、こういう材料集めに、お父さんやお母さんが参加すると、子供と一緒に家族の知的な対話が生まれるようになります。
子供が小学校高学年になると、父親は子供との共通の話題がだんだん少なくなります。すると、自然に親子の話題が勉強や成績の話だけになってきます。
小中学生のころの思考力は、親子の対話によって育つので、家族でいろいろなテーマを幅広く話し合う機会があるといいのです。
こういう話し合いは、父親が単身赴任の場合でも可能です。
遠方にいるお父さんが、ハングアウトやskypeのグループ通話で参加できるような形で、毎週の家族の対話の時間を決めておくのです。
作文の課題は、ウェブで見ることができますから、お父さんも事前に子供の作文課題を見て準備をしておけば、更に充実した話になります。
こういう親子の対話は、小学校低学年のころからつけておけば、高学年になっても自然に続けられるようになります。
小学3年生の題名課題と感想文課題になったころから、家族で作文の課題について話をする時間をとっていくと、作文の勉強と家庭の対話が連動して、勉強面でも子供の生活面でもより充実した取り組みができるようになります。
今週から、小3~小6のオンエア講座「作文と勉強」モニターを始めました。
その際に、作文の課題に関連したyoutubeの動画を参考資料にしました。こういう動画などを見ながら親子で作文の課題についてのいろいろな対話をしていくと面白いと思います。
小3「たまごやきを作ったこと」
・半熟目玉焼きの作り方
・卵を片手で割る方法
・卵を立ててみる
小4「わたしの好きな食べ物」
・世界で一番美味しい食べ物 ランキングベスト50
小5「木のぼりをしたこと」
・道具を使った木登り
・縄を使った木登り
・手と足の力で木登り
小6「うちにある古いもの」
・日本世界自然遺産]
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思考力は、思考することによって育ちます。
しかし、普段の生活で、子供が思考する必要のある場面というのはなかなかありません。
ところが、作文のテーマに関連した話をお父さんやお母さんとするときは、子供は思考力を働かせて親の話を聞きます。
この親子の対話が、理解力、語彙力、表現力、つまり思考力のもとになる力を育てていくのです。
https://www.mori7.com/index.php?e=3289
よく思考力を育てる教材というのがありますが、教材では思考力は育ちません。
思考力は、考えて話を聞いたり、考えて話をしたりするという人と人との対話の中で育ちます。
その対話の相手としていちばんいいのが、やはりお父さんやお母さんなのです。
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昨日の保護者懇談会で、発表学習クラスの運営についていろいろな要望がありました。
そのひとつは、同学年の作文構想図の交流をもっと時間をかけて行いたいというものです。
しかし一方、異なる学年、特に上の学年の人の発表を聞くのがとても参考になるという声もありました。
もうひとつは、親どうしが話し合う場もあるといいという意見でした。
小学5年生以降は、作文の課題が難しくなるので、子供にとっても親にとっても本格的な勉強が始まるような感じになります。
しかし、異なる学年の子供たちが集まって発表したり感想述べあったりする場も独自の意味があると思います。
そこで、今考えているのは次のようなことです。
第一に、学年混在の全体の発表のあと、それぞれの生徒が自分の興味や関心に応じて別の分科会場で話を続け、終了時間になる前にまたメイン会場に戻ってくるというやり方です。
例えば、その分科会としては、同学年の作文構想図の話し合いをする分科会、読んでいる本を紹介する分科会、暗唱の練習をする分科会、静かに実習をする分科会など、自由に決めて友達を誘い、そこで子供たちが自分の手で会議を運営するのです。
最初の全体の発表に1人5分かかるとして約30分、各人の希望による分科会で15分という時間配分です。
そして、メイン会場に戻り、全体の会合が終了したあとにも、また引き続き自分たちで分科会に戻って話を続けることができるというふうにしたいと考えています。
第二は、保護者の交流の場所を、Google+コミュニティの「寺子屋オンライン受付所」の中に、学年別のカテゴリーとして作り、そこで同学年の子供を持つ保護者が自由に意見交換をするという形を考えました。
これはもちろん、ほかの学年のところに行って書き込みをすることもできます。
ということで、早速、「寺子屋オンライン受付所」に学年別のカテゴリーを作りました。
ご意見ご要望またご質問などがある方は、Google+コミュニティに書き込んでくださるといいと思います。
寺子屋オンライン受付所
https://tinyurl.com/y72h7azq
また、今後できるだけ勉強終了後のミニ懇談会も行うようにしたいので、保護者の懇談会と子供の分科会が重なってもいいように、それぞれの家庭では、パソコンやスマホの端末を2台用意されるといいと思います。
ただし、その場合、複数の端末が近くにあるとお互いのスピーカーの音をマイクが拾ってしまうことがあるので、ヘッドセットを用意するか、別の部屋で行うようにしてください。
オンラインの少人数クラスは、たぶん日本初の新しい試みなので(笑)、今後も多くの方の要望を取り入れながら運営を工夫していきたいと思います。
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オンライン少人数クラスでの勉強がこれまでの勉強と異なる点は、自分がよりよい発表をすることが勉強だというところです。
これまでの勉強は、ただ聞くだけという形が多かったので、子供たちはTV番組を見るような姿勢で授業を受けていました。
人の話を聞くよりも、自分が話した方が力がつくのは、取り組み方の熱意が違うからです。
ふと、茨木のり子の詩の一節を思い出しました。
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学校 あの不思議な場所
校門をくぐりながら蛇蝎(だかつ)のごとく嫌ったところ
飛び立つと
森のようになつかしいところ
今日もあまたの小さな森で
水仙のような友情が生まれ匂ったりしているだろう
新しい葡萄酒のように
なにかごちゃまぜに醗酵したりしているだろう
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昨日の発表交流会で、イチゴのヘタは、花びらかガクかという議論がありました。
そのときに、子供たちがあれこれ考えて話している様子が、まるで何かがごちゃまぜに発酵しているような感じで面白かったです。
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作文指導をしていると、保護者の方からよく聞かれる相談の中に、もっと上手にするにはどうすればいいのかということがあります。
作文を見てそれをより上手になるように直す、という添削の方法によって上手にできる範囲は限られています。
作文を上達させるためには、直すよりも先に作文力を伸ばす必要があるのです。
伸ばす前に直していくと、そのときは多少よくなったように見えても、そのまま直し続けて上達するわけではありません。
それよりも、自分の書いたものが直されるというストレスで、子供は作文を書くことがだんだん負担になってくるのです。
直すよりも先に伸ばすことを考えるというのが、作文の勉強の基本方針です。
しかし、そういう考え方で作文指導を行っているところは、学校や塾も含めてほとんどありません。
では、伸ばすためにはどうしたらいいかと言うと、それは準備をすることなのです。
その準備とは、第一に題材の準備です。
あるテーマについて、子供の考えた実例だけでなく、お父さんやお母さんの体験談も話してあげるのです。
また、自分で調べる力がある子供であれば、そのテーマに関連する資料をデータが入るような形で調べるのです。
第二に、そのテーマについて親子で話し合うことです。
大人の視点を知ることで、子供は、感想をより深めて書いていくことができます。
題材をふくらませていくことと主題を深めていくことが作文の準備で、その準備ができた上で書いた作文の表現を工夫して行くという形で作文を上達させていきます。
その表現の工夫とは、低中学年であれば個性的なたとえ、高学年や中高生であれば(言葉の森で自作名言と呼んでいる)光る表現などです。
書き終えたあとの作文については、その作文のよく書けたところを褒めるだけというのが基本です。
作文は、直して上達させるのではなく伸ばして上達させるという基本を忘れないように子供の作文を見ていってください。
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子供の作文を直して上達させるというのは、教える側の自己満足にすぎません。
作文は直ったように見えても、子供の作文力は変わりません。
何度も同じように直されている間に、子供はだんだん書くことを嫌がるようになります。
作文を直すよりも先に、作文力を伸ばす必要があるのです。
作文力は、書くことで力がつく部分と、読むことで力がつく部分とがあります。
しかし、ほとんどの人は、書くことだけで作文の勉強を見ています。
書いたあとの作文をどう直すかということよりも、書く前の作文をどう準備するかということの方が大事なのです。
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ハイパー作文の5.1週の動画をアップロードしました。
これは、小学校高学年、中学生の受験作文の予行演習として説明しているものです。
この課題で作文を書く必要はありませんが、問題と解説を見て、お父さんおかあさんと似た例を話し合ってみるといいと思います。
>
https://youtu.be/wKNt7sHQxA0
※ハイパー作文の動画は、オンライン発表作文クラスの高学年、中学生向けの資料として載せているものです。
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受験作文の書き方を5分で解説しています。(中学受験向け、高校受験向け合わせて10分です)
短い動画ですが、重要なところに絞って解説しているので受験生には参考になると思います。
この解説を書くのに平均して1本15分ぐらいかかっています。
こういう解説が、もう1,420件にもなるので、今度この一部を出版する予定です。
これで、小中学生の受験作文の解答レベルがぐんと上がるのではないかと思います。
そうすると、人間の手による採点はますます大変になるので、早く人工知能による採点を導入するといいと思います。
そのアイデアは実はあるのです。今の森リンとは違う仕組みですが。
いつか時間ができたらそのプログラミングをしたいと思っています。
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保護者懇談会でよく出る質問が、いろいろな教科の勉強の仕方です。
勉強の基本は、ごく簡単で、1冊の参考書を繰り返し読むか、1冊の問題集を解けない問題がなくなるまで繰り返し解くかということだけです。
繰り返しの回数は、4、5回です。
どんなに難しい問題も、4回もやればほとんどができるようになります。
成績が上がらないのは、いろいろなことをまばらにやっているからです。
例えば、塾からもらったプリントもやって、学校から出された宿題もやって、通信教育の課題もやって、市販の問題集もやってというような、いろいろな勉強を1回だけやるようなことを増やしているから、時間ばかりがかかって力がつかないのです。
ところが、そういうことを話しているうちに、ふと、勉強よりも大事なことがあるのを多くの人が忘れがちなのではないかと思いました。
勉強よりも大事なものは、読書です。
成績は、勉強をすれば誰でも上がるようになっています。
しかし、本を読んで考える力は、すぐにはつきません。
表面に見える成績の差よりも、この読書力の差の方がずっと大きいのです。
毎日本を1時間読んでいる子と、毎日本を10分しか読まない子の読書量の差は、数年たてばかなり大きなものになります。
しかし、その差は表面には出てきません。
この表面に出てこないところに、本当の実力があるのです。
作文も読書と同じです。
毎週1回作文を書く子と、学校の宿題が出たときだけ作文を書く子との、考える力の差は数年立てばかなり大きなものになります。
その考える力とは、その子の内面を豊かにする力のことです。
読書や作文と並んでもう一つ大事なことは、自分で主体的にやってみることと、何かに熱中する経験です。
与えられたことを与えられたとおりにやるのは、時間がかかりません。だから、能率よく見えます。
勉強の多くは、こういう能率のよいやり方で組み立てられています。
これに対して、子供が何かに興味を持ち自分から進んでやろうとすることは、無駄が多く、遠回りのことばかりやっているように見えます。
しかし、この経験があとで生きてくる本当の実力になるのです。
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「勉強をコントールする力をつける――そのための親の勉強観」
https://www.mori7.com/index.php?e=2921
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今、子供たちの身の回りには、さまざまなやらなければならないことが押し寄せています。
それは、大人も同様です。
最近、時間が不足するという人が増えているのは、生活の本質に関係のないような雑事があまりにも増えてきたためです。
大人の場合は、それでも自分で計画を立てて自分の生活をコントロールすることができます。
しかし、子供はこれからそういうことを学ぶ時期にいるのですから、自分で生活をコントロールすることはまだできません。
だから、親が子供に、大事なことで継続することと、大事でないことで適度に抑制することを教えてあげる必要があります。
それは食べ物の好みのコントロールと同じで、子供が好きな甘いものばかり食べさせるのではなく、野菜などもきちんととることをすすめることと共通しています。
子供の時間のコントールを考えるときに、大事になってくるのが、親の勉強観です。
学校や塾で言われたとおりにやっていると、子供の勉強時間はどんどん長くなります。
どの先生も、自分の教えていることが大事だと思っているからです。
その結果、誰からも何も言われない読書の時間が削られてしまう子も多いのです。
小学生のころは、長い目で見れば、勉強よりも読書の方が大事です。
今の成績をよくすることに追われて、読書を後回しにしている子は、かえってあとで伸びなくなります。
例えば、漢字の書き取りテストなどをすれば、出来不出来の結果がすぐに出ます。
結果が出るものは、誰でもつい優先してしまいます。
しかし、読書はしてもしなくても、結果として出てくるものはありません。
だから、読書は置いておいて、まず漢字の勉強をということになってしまいがちなのです。
両方できるのがもちろんいいのですが、どちらが大事かと言えば、明日の漢字のテストより今日の読書の方です。
これは、異論のある方も多いと思いますが、これまでいろいろな子供たちを見ているとそういうことがわかるのです。
だから、親は、できるだけ長期的な視野で子供の成長を考え、子供の生活時間を考えていく必要があります。
思考発表クラブでは、毎週、子供たちに今読んでいる本を紹介してもらいます。
互いの本の紹介が刺激になるのか、どの子もいい本を選んできます。
こういう読書を柱とする勉強をしていくことが、将来の子供たちの大きな力になっていくと思います。
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勉強の結果は、外からすぐ見えます。だから、多くの人は勉強を先に考えてしまいます。
しかし、本当に大事なのは、その子の内側を豊かにすることです。
それが読書と作文と経験です。
子供が成長してから大切だったとわかるのは、成績ではなく内面の豊かさの方なのです。
大きな山があり、その狭い一本道をみんなが競争して登っていったというのが、工業時代の教育でした。
文化時代の教育は、そうではありません。
一人ひとりが自分の個性の山を、特に誰とも競争する必要はなく登っていけばいいのです。
その登っていく途中で、ツールとしての学力が必要になります。
その学力をつけるのが勉強であって、勉強自体が競争の目的ではありません。
子供の教育を考えるとき、親や先生のそういう大きな教育観が必要になると思います。
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