学校や塾で行われている勉強は、答えがあれば誰でもできるようになるものです。どうしてもわからないという難しいものはありません。
わからないということが本当の問題になるのは、最先端のまだ誰もやっていないことに自分が取り組んでいるときだけです。
学校の勉強の世界は、だれでもわかるし、またできるようになっているのです。
特に、今は、インターネットでさまざまな情報、教材、先生、相談相手、友達を見つけることができます。
何をどう取り組んでいいかわからないというのは、ものごとの最初のときだけで、方向さえわかれば、あとは自分でどんどん進めていけるのです。
しかし、現在の社会は、教育環境があまりにも充実しているために、勉強のどの分野でも、人に教えてもらえる環境が整っています。
教えてもらうのが必要になるのは、運動や音楽やものの考え方や生き方など、主に身体的、精神的、文化的な分野です。
勉強として行われている知識的な分野は、教材さえあれば本来誰でも自分の力でやっていけるものなのです。
この知識的な分野は、人に教えてもらおうとすると、わかっていることもよくわからないことも同じように教えられるので、かえって学習の能率が低下します。
それでも、ひとりでやるよりも人に教えてもらう方が迷わずにできると考えていると、次第に自分で工夫するとか、自分で決断するとかいうことをしなくなってきます。
方法を他人に任せていると、次第に目的も他人に任せるようになるのです。
世の中に出れば、勉強はすべて自分で選び、自分の力で取り組まなければなりません。
特に、新しいことや自分らしいことを始めるときには、塾や予備校などはないのが普通です。
そのときに、自分で工夫し、自分で決めて勉強する力が生きてきます。
野口悠紀雄さんの「『超』独学法 AI時代の新しい働き方へ」には、これからの時代に、独学力がいかに必要になるかということが述べられています。
教わらないとわからないと考えていると、やることは限られてきます。
しかし、独学で学べばいいと考えると、現在はほとんどのことができるようになっているのです。
しかし、自分で行う勉強の難点は、強制力がないことです。
特に、小中学生のころはそうです。
定期テストや受験など当面の目標がないときは、地道に実力をつけるという気持ちにはなかなかなれないのが普通です。
人間は、テストや締切や競争がない中では、努力をつづけるということがなかなかできない存在なのです。
ここをどういう工夫で乗り越えていくかということが大事になります。
MOOCやスタディサプリなどのシステムが今後に更に普及すると、勉強は自宅で自分でするものという考え方が普通になってきます。
また、オンライン教育が更に発展すると、今度は、入学試験ということ自体がなくなり、誰でも好きな学校で好きなだけ勉強するということもできるようになります。
そのときに、自分の勉強に欠かせないものとして残るのは、一緒に同じ分野を興味を持って学ぶ友達だけになるでしょう。
しかし、こういう友達はすぐにはできません。何よりも自分が進歩向上していなけれが、同じように進歩向上している友達とは出会わないからです。
これからの勉強で大事なことは、自分で学ぶ力をつけておくことです。
それは、勉強にコストがかからないのはもちろんですが、それ以上に、無駄のない能率のよい勉強が進められるからです。
この自分で進める勉強が怠惰に流れないようにする枠組みが、友達と一緒に学び、担当の先生が勉強内容をチェックし、定期的に保護者と勉強の方向を相談するというシステムです。
学校や塾では、勉強の枠組みとしてテストを行います。
これは、生徒にとっても勉強の目標ができるというよい面がありますが、逆に言うと、他人のペースで勉強の目標を決められることによって、テストに間に合わせるための勉強になってしまう可能性があります。
勉強の目標を決めることは、長い目で見れば、自分の人生の目標を決めることにもつながります。
人に言われて行う勉強ではなく、自分の意思で行う勉強こそが、どの時代にも通用する本当の学力になっていくのです。
今の受験勉強は、得点差の大きい算数数学の成績が合否を左右する仕組みになっています。
この算数数学の学力を、自主学習でつけるということがひとつの目標になります。
本当は、算数数学の試験よりも、複数の小論文を書かせる試験の方が、生徒の実力を正しく反映すると思いますが、採点する側の手間の問題から小論文試験が普及するのは少し先になると思います。
しかし、AI採点の時代になれば小論文の試験はもっと広がるでしょうから、算数数学の勉強とは別に、難しい文章を読む勉強、つまり思考力をつける勉強を独自に進めていくことが、自主学習のもう一つの目標になります。
算数数学の勉強は、1冊の問題集を完璧に解けるようにすることですが、受験勉強に合わせるためには、1学年先までの勉強を早めに終わらせておく必要があります。それは、受験期の1年間に受験問題に特化した勉強をするためです。
これまで、紙ベースの問題集の独学では、この先取りの勉強というものがなかなかできませんでした。
しかし、スタディサプリなどの授業を利用すれば、高学年の先取り勉強はかなりやりやすくなっています。
算数数学の先取り勉強にしても、国語の問題集読書を中心にした難しい文章を読みこなす勉強にしても、またテーマを決めて作文を書く勉強にしても、いずれも今の学校では強制力を持った指導はしにくいのが現状です。
そこで、言葉の森では、子供たちが自分で必要な勉強を進めることのできる枠組みとして、自主学習コースを作りました。
これは、Zoomの会議室で、自分のペースで勉強を進め、その勉強の終わりに先生が勉強の内容をチェックするという学習システムです。
これまでは、先生と生徒との一対一の勉強でしたが、今後は発表学習コースと同じように、同学年の生徒がどういう勉強をしてどのへんまで進んでいるかといいうことが共有できるように、友達との交流という要素を取り入れていく予定です。
また、小中学生の勉強は、親の関わりがなければ、軌道修正がなかなかできません。
決められたことをただやるだけでなく、必要に応じて重点を変えるというのは、やはり保護者の協力が必要になるからです。
自主学習コースで基本的な勉強をする習慣をつけた子は、学力が能率よく伸ばせることはもちろんですが、それよりも大きなことは、高校生になっても大学生になっても、自分で決めた勉強を行う姿勢ができることです。
今の社会では、家庭でいながらにして手軽に楽しめる娯楽がいくらでもあります。
これに対して、子供たちの生活を外からの強制力でコントロールしようとすれば、そのコントロールがないところではかえって際限なく娯楽に埋没するようになります。
娯楽とも上手に共存しながら、向上心を持ち続けて勉強をするためには、自主学習の習慣と、それをときどきチェックしてくれる先生と保護者と、一緒に勉強を続ける友達というものが必要です。
そういう新しい勉強のスタイルを、自主学習コースで広げていきたいと思っています。
今、馬に乗ったり、剣術の練習をしたりする人はいません。しかし、江戸時代はそれらが誰でもできるということが常識でした。
世の中は大きく変化しています。身近なところでは、小売業の世界ではアマゾンの一人勝ちが更に進み、その他のプレーヤーはすべて負け組になりつつあります。(「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」より)
そして、アマゾンの一人勝ちが進むことによって、これまで小売業が吸収して雇用は、急速に失われています。
これと同じことが、社会のあらゆる面で起きてくるというのが、これから来る未来の社会に待っている事態です。
ときどき、生徒のお母さんから、「漢字が苦手なのですがどうしたらいいでしょう」という相談を受けます。漢字の書き取りは、勉強時間に比例します。既に書ける人から見れば簡単に見えることであっても、その習得にはかなり長い時間がかかっています。しかし、それに必要なのはかけた時間だけです。
漢字のテストは毎回満点、計算は人よりも何倍も速く正確にできるという能力を子供が持っていたとしても、その能力が、今後社会に出てから世の中を渡っていく武器になるかというとそういうことはもうありません。できないよりもできた方がいいが、できなくても特に問題はないという程度の能力なのです。
同じことは、今行われている勉強のかなりの部分で言えることです。小中学校の義務教育時代の勉強は、誰でも大体できていればいいのであって、そこで高得点を目指すものではありません。
しかし、実際には、試験に合格するために、80点を90点にしたり、90点を100点にしなければなりません。
それは、時間をかければ誰でもできることですから、そこに時間をかけた分、もっと大事なことに費やすべきだった時間が削られているのです。
では、費やすべきだった時間は何かと言えば、それはこれから来る社会でたくましく生きていく能力を育てるための時間です。
その能力さえ育てておけば、今勉強として行っているようなことで80点を90点にするとか、90点を100点にするとかいうことは、あとからいくらでもできます。
大事なのは、真の学力を育てておくことであって、テストの点数に表れる表面の学力を育てることではありません。テストの学力は、真の学力の結果であって、テストの学力が目的ではないのです。
では、その真の学力は何かと言えば、それは、学校で行われている勉強をもとにした思考力と創造力です。
学校で行われている勉強ができるということは、出発点にすぎません。それは、やればだれでもできるようになることだからです。大事なことは、その出発点から自分なりに考える力と、それを更に創造的に発展させる力を育てていくことです。
しかし、思考力と創造力は、何もないところから生まれるわけではありません。ぼんやりテレビゲームをしながら思考力と創造力を伸ばすということはまずありません。やはり、現在の学問の世界をもとにして伸ばす能力なのです。
言葉の森では、発表学習コースという名称で、子供たちが自分なりの勉強や実践を毎回発表するという勉強を行っています。
発表する素材の中には、理科や社会の勉強もあれば、教科の範囲にない自分の興味の分野もあります。国語や算数数学の分野もあれば、作文や暗唱の分野もあります。また、自分が行ったさまざまな経験の発表もあります。
それぞれ、自分の行った勉強や実践を、自分なりに学問的に深め、それらを創造的に発表しています。
小学校低中学年の場合は、保護者の協力も必要ですが、その保護者との協働や対話の中で、子供たちは学問の面白さや創造の面白さに目を開かれていきます。
そこで行われている勉強は、ただ知識を覚えてテストで百点をとればいいという勉強ではなく、自分なりに考えて表現する勉強です。
こういう勉強を通して身につけた思考力と創造力が、これからの社会で子供たちが生きていくための本当の武器になるのです。
今はまだ多くの人が、理屈では、世の中が大きく変わるらしいとは思っていても、実感としてそう感じているわけではありません。
そのため、とりあえずは学校の成績さえよくしておけば、あるいは、いい学校に入ることさえできれば、それから先は子供が自分でうまくやっていくだろうと考えています。
しかし、時代はもうそういう牧歌的な見通しが通用する社会ではなくなっているのです。
未来の社会は予測できません。ある程度の予定は立てられても、本当のことはわかりません。しかし、どういう時代になっても、思考力と創造力さえ育てておけば、その社会で自分なりに活躍する場を作ることができます。
そして、それは単に試験でいい成績を取るということとは別の、独自に育てていく能力と、そのための生きる姿勢なのです。
発表学習コースの時間割はこちらです。
▽発表学習コースのクラス一覧表
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
1700 | ■なね先生[学] | ■なね先生[学] | | | ■なね先生[学] |
| | ちはや 小3 女 | | | |
| | かんたろ 小3 男 | | | |
| | ゆう 小1 女 | | | |
1800 | ■なね先生[学] | ■ゆり先生[学] | ■かなた先生[学] | ■むらた先生[学] | |
| | 花 小2 女 | リンリン 小3 女 | 瑞風 小3 男 | |
| | リリー 小3 女 | なおや 小3 男 | ゆうゆう 小4 男 | |
| | あーちゃ 小4 女 | ねこ 小3 女 | | |
| | | ばら 小3 女 | | |
| | | | ■とおか先生[学] | |
| | | | バレリー 小3 女 | |
| | | ■きら先生[学] | なつ 小3 女 | |
| | | 謙信 小2 男 | ゆり 小4 女 | |
| | | ドラゴン 小4 男 | | |
| | | こうき 小3 男 | | |
| | | ヨーヨ 小3 男 | | |
1900 | | ■つかだ先生[学] | ■おおにし先生[学] | | ■きら先生[学] |
| | 紫式部 小4 女 | リリー 小5 女 | | 金メダル 小3 男 |
| | 毛利元就 小4 男 | あお 小6 男 | | さとしゃ 小4 男 |
| | 信玄 小4 男 | Jupi 小6 女 | | クレヨン 小3 男 |
| | 清正 小5 男 | | | カレー君 小5 男 |
| | 早雲 小5 男 | | | E231 小5 男 |
| | 忠勝 小5 男 | ■とうこ先生[学] | | もりちゃ 小3 男 |
| | 政宗 小6 男 | 四季島 中1 男 | | |
| | | さやさや 中1 女 | | |
| | | さとみ 中1 女 | | |
| | | サーサ 中1 男 | | |
※現在は、言葉の森の生徒であることが受講の条件になっています。それは、勉強の一部が作文の勉強と関連しているからです。