寺子屋オンラインの少人数クラスでは、集団の力学がよい形で働くことがあります。
例えば、あるクラスで、一人の子が暗唱をすらすら言うと、それを見たほかの子が感心して、その後みんなが暗唱をするようになったということがあります。
親子の関係だけで暗唱を続けようとすると、無理なくできる子もいますが、場合によっては親が強制し子供が反発するという関係になってしまうこともあります。
みんなでやっていると、それが無理なくできるようになるのです。
しかし、これは、少人数クラスの力学と家庭での習慣の両方がなければうまく行きません。
家庭では、毎日の暗唱時間を確保することが大事で、その習慣を成果として引き出し、やる気を高めるのが集団の力学です。
また、作文のアドバイスでも、ある子に、直接、「もっとこう書いた方がいい」とアドバイスをすると、その子の元の作文を否定するような形になってしまうことがあります。
しかし、ほかの子の作文のよいところをみんなの前で褒めると、ほかの子もそのよいところを身につけるようになるということがあります。
よく、「よいところを褒めるか、悪いところを直すか」ということが作文指導の二つの方法論として論議されることがありますが、グループで作文指導をしていると、どの子も全部よいところを褒める形で、ほかの子も自然に悪いところを直すようになるという理想的な形になることがよくあるのです。
作文以外でも、ほかの子のよいところにみんなが影響を受けて、そのグループ全体がよくなるということがあります。
例えば、みんなの作文を発表したあと、順にほかの子に対する質問や感想を言ってもらうことがあります。
そののとき、最初はほとんどの子がうまく質問や感想を言えません。
それは、相手の作文や発表を注意して見ていないからです。
だから、うろ覚えで、直前の発表についてとってつけたような感想を言ったり、中には、感想が「ありません」と済ませてしまう子も出てきます。
ところが、中に、ほかの子の発表すべてについて簡単なメモをつけておき、全員についてひとことずつ簡潔な質問や感想を言えるような子が出てきます。
すると、みんながその感想の言い方に感心して、やがてどの子もそのような感想の言い方ができるようになるのです。
入試の作文課題などで、放送を聞いて答えるという問題が出されるところがあります。
こういう問題のときは、聞いたことを的確にメモしておくことが必要になります。
ところが、多くの生徒は日常的な学習の中で、人の話をメモしながら聞くという習慣を持っていません。
ですから、少人数クラスでの感想の発表は、勉強にも将来の社会生活にも役立つコミュニケーション力をつける機会になっているのです。
現在、寺子屋オンラインクラスは、担当できる講師がまだ少ないせいもあり、本格的な募集を行っていません。
しかし、今後は、個別指導でも、集団指導でもない、5、6人の少人数クラス指導といいうものが広がってくると思います。
そのために、今後、寺子屋オンライン講師育成講座に力を入れていく予定です。
▼寺オン作文クラスの質問感想の様子
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昔の子供は、上の子と一緒に遊ぶ中でいろいろなことを身につけました。
親に言われても難しく感じてなかなかできないことが、友達が一緒だと自然にできるようになったのです。
子供の成長には、そういう集団の力が欠かせないのだと思います。
子供たちの感想の述べ方が、毎回前向きで感心することが多い。
みんなが互いに相手のいいところを見ているということがよくわかる。
どの子も、性格がいいなあ。
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長野市立長野中学校 S.T.さん
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△写真は本文とは関係ありませんが、言葉の森の新しい仲間、白文鳥のブンちゃんです。(本の装丁は現在作成中)
少し先の話になりますが、2月5日に、かんき出版から、「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」(中根克明著)が発売されます。
内容は、読解問題の解き方、記述問題の書き方、作文問題の書き方で、解答例と解説を読むだけで、読解力、記述力、作文力が身につくようになっています。
というのは、この本は、問題集の体裁になっていますが、問題を解くことが主ではなく、解答例と解説を読んでもらうことが主だからです。
ですから、子供さんが読むだけでなく、お父さんやお母さんもぜひ一緒に読んでいただきたいと思います。
本の書名は、「小学生のための」となっていますが、内容は、中学生にも、高校生にも通用するかなり高度なものです。
読解、記述、作文のいずれも、類書にはない内容になっています。
読解については、感覚的な読解ではなく、理詰めの読解という方法ですから、理数系の人の方がかえって理解しやすいかもしれません。
国語は満点を取りにくい科目と言われていますが、良問であれば本来満点が取れるものです。
この解説を読むと、国語の問題の解き方の発想が変わると思います。
この本に書かれている方法で、これまで受験間際の中学3年生、高校3年生も勉強してきました。
「センター試験満点講座」の読解の方法も、この本に書かれているとおりです。
ですから、この本の読解の章をしっかり読むと、中学生、高校生も、国語読解の点数がアップします。
記述については、「対比して書く」という方法論で解説しているので、この方法で記述の練習をすると、記述力だけでなく思考力もつきます。
こういう基準を明確にした記述の指導というのは、これまでになかったと思います。
作文については、どういうテーマが出ても、一定の構成にあてはめて書き上げるという形で解説しています。
この方法の利点は、書き方に迷いがなくなることです。ですから、作文のテーマによる出来不出来というものがなく、いつでも自分の実力を発揮できるようになります。
作文の書き方を解説した類書を見てみると、(1)書き方だけを解説して解答例がないものや、(2)解答例として生徒が書いた作文でよく書けたものを並べただけのものや、(3)解答例が抽象的な説明と意見に終止し具体例に乏しいものなどがほとんどです。
言葉の森の解答例は、書き方の基準を決めているので、この書き方を身につければ、誰でも一定の水準以上の作文が書けます。
この作文指導も、これまで中学入試だけでなく、高校入試、大学入試にも生かしてきたものですから、中学生、高校生が読んでも参考になります。
ただし、中学生、高校生は、構成の仕方が更に増えるので、その方法についてはまたいずれ書く機会があると思います。
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読解力について書かれた本で、これまで唯一感心したのは、田中雄二さんの「センター試験国語1・2」(三省堂)でした(絶版です)。
記述力については、参考になる本はありませんでした。
作文力については、独創性という点で感銘を受けたのが、山崎宗次さん(故人)の「カンカラ作文術」でした(1984年の本です)。
先人たちのよいところを吸収するとともに、言葉の森のこれまでの指導の蓄積をもとにして書き上げたのが、今回の「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」です。
ですから、内容的にはかなり密度が濃いと思います。
今さっき、校閲の方から、読解の解説の内容についていくつか質問がありました。
これまで、言葉の森の生徒で、こういう質問をしてきた人はみんなすごく優秀でした。
読む力のある人は、納得できるまで質問をするのです。
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