今度、かんき出版から読解力と作文力の本が出ますが、そこに書いてある読解と作文の方法は、かなり理系的なものです。
理詰めで解く読解と、論理的な構成をもとに書く作文ですから、評価の基準も客観的です。
従来の国語の勉強は、教える人の主観による面が多かったので、共通の感性を持っている人にはわかるが、そうでない人にはわからないというものでした。
言葉の森は、設立当初から、客観的に誰でも共通してわかる作文を目指してきました。
そのために、項目指導という事前指導の方法を作り、また森リンという自動採点ソフトも作りました。
読解についても、多くの人のやっている読解問題の解き方は、合っていそうなものを選ぶということでした。
それを、言葉の森では、合っていそうでないものをなぜ合っていないかという理屈を明確にしながら選ばないという方法に切り替えました。ややこしいですが。
その解き方を理解した子供たちは、すぐに読解の成績が上がりました(詳しくは、本をごらんください)。
記述についても、言葉の森の指導法は、対比を意識して書くという方法です。
これで、記述問題も、焦点のはっきりした文章として書くことができるようになりました。
作文も、読解も、記述も、実力がつくだけでなく、うまく書けなかったり、選択を間違えたりした場合も、どこが原因でそうなったのかがわかります。
だから、確実に実力がつき、迷わずに勉強を進めていけるのです。
ところで、これまで言葉の森では、作文の方は作文検定試験ということで検定の枠組みを作っていましたが、読解の方は、質問があるときに答えるだけで特に何もしていませんでした。
それは、作文を書くだけでも時間の負担があるのに、その上読解まで勉強するとなると、生徒も保護者も大変だと思ったからです。
しかし、国語の成績を上げたいという人は多いと思います。
そして、国語の成績のかなりの部分は、読解問題として作られています。
漢字の読み書きの問題は、やれば誰でもできるようになるのでいいのですが、読解の方は勉強の仕方がよくわからないという人が依然として多いようでした。
そこで、今ある作文検定に続いて、今後は読解についても客観的な読解力を測定する読解検定試験というものを始めていきたいと思っています。
これは、ただ読解の試験をするだけでなく、どうしたら点数を上げることができるかということを理解しながら解く試験になりますから、確実に読む力がつきます。
「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」に、東大・京大の学生の読解力と、早稲田大・慶應大の学生の読解力の差が出ていました。東大・京大の学生の方が、有意に早稲田大・慶應大の学生よりも読解の点数が高いのです。
しかし、私はこれは実力の差だとは思っていません。
東大・京大の学生は、理詰めに解く読解の解き方を身につけています。
これに対して、早稲田大・慶應大の学生は、理詰めに解くのではなく普通に読んで解いているだけなのです。
理詰めに解けば満点近い成績が取れます。普通に読んで解くだけでは満点は取れません。
これが読解の点数の差になって表れています。
だから、早稲田大・慶應大の学生も、理詰めに解く読解の方法を身につければ、東大・京大の学生と同じ点数は取れるようになると思います。
さて、作文検定は、昔は会場がないとできませんでした。
だから、ある程度の人数が集まることが条件でした。
しかし、今は、ウェブ会議システムを使えば、自宅で受検することもできます。
ちょうど今の暗唱検定と同じ仕組みです。
ただし、読解検定は、解くのに時間がかかりますから、特定の日時を指定して行う形になります。
この読解検定は、語句の知識を問うような問題は出さず、また国語の穴埋め問題のようなものも出さず、ただ読解力を見ることに純粋に絞った試験にする予定です。
オンラインの少人数クラスのいいところは、全員、発表ができることです。
そして、その発表に対して、やはり全員が感想を述べることができることです。
これは、少人数クラスだからできることで、個別指導や一斉指導では、こういう全員参加型の授業というのはできません。
今、アメリカでは、ブレンディッド教育という教育方法が生まれています。
リアルな学校に生徒が集まり、そこで、個々にオンラインの授業を受けるという形の勉強です。
オンラインの授業は個別のメニューとして行えるので、どの生徒も自分の進度に合わせた学習ができます。
すでに日本でもこういう形の授業は行われていると思いますが、今後、このブレンディッド教育的な勉強の仕方が、教育の主流になってくると思います。
先日、言葉の森の港南台教室というリアルな教室で、新しく参加した生徒に、オンラインの作文の授業に参加してもらいました。
横浜の港南台の教室に来て、一緒に勉強する生徒は、東京だったり、大阪だったり、兵庫だったり、シンガポールだったり、ベトナムだったりとさまざまなところから参加しています。しかし、それでお互いに何の違和感もなく、話をして交流ができるのです。
1時間半近くの授業を行ってみて、今後この、通学教室でありながらオンラインで学習するというスタイルが授業の主流になるだろうと思いました。
この場合、通学するのは教室でなくてもいいのです。ある家庭に近所の子が数人集まり、そこで学年別のオンラインの授業を受けるという形であれば、子供は自宅か自宅のすぐ近くで、全国にいる同学年の友達と密度の濃い勉強ができるようになります。
この言葉の森の少人数クラスは、ブレンディッド教育と似ていますが少し違います。
ある意味で、ブレンディッド教育の先に行くものになると思います。
ブレンディッド教育では、みんなが同じ場所に集まり、勉強の内容はオンラインで個別に行うという形です。
言葉の森の少人数クラスで大事にしていることは、全員に発表する機会があり、全員に感想を述べる機会があるようにすることです。だから、どの子も主体的に参加できます。
もちろん、ブレンディッド教育のような個別メニューの勉強をすることもできます。
しかし、それ以上に大事なのは、受け身の勉強をするのではなく、自分から主体的に取り組む勉強を行いそれを発表し、他の生徒と交流することなのです。
しかし逆に、この少人数クラスの教育を、従来の勉強と同じつもりで受けようとすると、かえって中身の乏しい勉強になってしまう可能性があります。
それは、友達の、それぞれに工夫はしていても拙い発表を聞くよりも、優れた専門家の授業を聞いた方がずっと能率よく勉強ができるはずだからです。
だから、授業を受けることに意味があるのではなく、自分が発表するために研究したり実験したりという工夫をすることに意味があるのです。
その勉強の仕方を、具体的に算数数学の例で言えば、従来の勉強は、先生から難しい問題の上手な解き方を教えてもらうことでした。
しかし、発表型の学習の場合は、自分なりに理解できた問題をもとに、自分が似た問題をできるだけ面白く作ることになるのです。
なぜ面白く作る必要があるかというと、少人数クラスには、同年齢の自分の発表を聞いてくれる友達がいるからです。
優れた先生からいい授業を聞くことと、自分が似た問題を作って発表することと、どちらがあとまで残るかといえば、それは大体において、自分が発表した勉強の方です。
そして、今後インターネット学習が広がると、優れた先生というものは、実際の教室にいる先生ではなく、ネットの向こう側にいる少数のタレントのような講師に限られていくのです。
少数のタレント講師による一律の授業を、多数の生徒が、個別メニューの中でとは言っても同じように受け、その理解度を測るためにテストが課せられるとしたら、勉強の能率は上がっても従来の受け身型の勉強とあまり変わりません。
これからの時代に必要なのは、自分から進んで何かを作り出すことですから、聞いて理解する能力以上に、創造的に考えて発表する能力が求められるようになります。
受け身の勉強の終着点は満点を取ることですから、誰がやっても同じ結果になります。しかし、発表する勉強はそれぞれにその個性が表れます。
この個性どうしのぶつかり合いの中で必要になるもう一つ能力がコミュニケーション力です。
コミュニケーション力とは、単に自分の言いたいことを上手に表現する力だけではありません。
相手のいいところを見る力や、困っている相手を助ける力や、又は、批判に対しては正しく反論する力や、逆にみんなを楽しくまとめる力などの総合力です。
そういうコミュニケーション力は、実際に同年齢の子供たちと接する中でしか育ちません。
このコミュニケーション力を、遊びやスポーツや音楽のような非言語的なものだけでなく、作文や学習という言語的、知的なものを中心に行っていことができるのが、オンラインの少人数クラスの学習の特徴です。
この記事の末尾に紹介する動画の中で話している生徒は、小2から小4までの学年です。
小学校低中学年から、こういう形で、毎週自分の研究してきたことを発表し、読んでいる本を紹介し、ほかの人の発表に対して感想を述べるということを続けていけば、子供たちの思考力とともに、コミュニケーション力も育ちます。
これが発表型の勉強の、ほかでは代替できない利点なのです。
ところで、このように自分からテーマを見つけてオリジナルに研究し発表を行うということができる生徒は、小学生の場合は高学年のそれもかなり優秀な子に限られます。
だから、小学校低中学年の場合は特に、子供たちの研究や発表を手助けしてあげる保護者の役割が必要になります。
現代の社会では、ほとんどの大人は仕事に追われていますから、子供の研究発表に余裕を持って付き合う時間が取れる人は一人もいないと思います。
しかし、子供の成長にとっては、限られた時間ではあっても、この親子の知的な交流がとても大切なのです。
この親子の関わりの中で、子供は、勉強の中身だけでなく、勉強に対する姿勢や、物の見方考え方や、物事が思いどおりに行かなかったときの対処の仕方など、人生をたくましく生きる知恵を学んでいくのです。
▽オンラインクラスの互いの発表に対する感想(小2~小4)
※今、寺オン講師育成講座で募集しているのは、この授業のように、生徒どうしの発表や感想を司会してくれる先生です。
作文講師資格講座の受講が済んでいる方は、ぜひこの寺子屋オンラインの講師育成講座にお申し込みください。
ほかの人の発表に対して感想を言う場合、小学校低学年の子のほとんどは、隣にいる(ことが多い)お母さんやお父さんに、「ねえ、なんて言う?」などと聞いてから話をします。
そう聞くのは、もちろん真面目な子だからです。
これまで、間違ってはいけないということをしっかり学んできたので、感想のような自由な発言についても間違ったことを言ってはいけないという気持ちが働くからです。
しかし、そういう子もすぐに、お父さんやお母さんに聞かずに自由に自分の思ったことを話すようになります。
些細なことのようにも見えますが、こういう自立心も、机上だけで学べるものではなく、やはり実際の行動を通して学ぶものなのです。