「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」に載せている作文の書き方は、テーマによっていくつもの型を使い分けるという方法です。
その型がわかりやすくなるように、敢えて「第一に……、第二に……」のような形を整えた書き方をしています。また、ほとんどの模範解答が四段落でまとめられています。
人によっては、こういう作文を、パターン化された作文だと言う人がいるかもしれませんから、あらかじめ説明しておきます。
「作文の書き方」のような本は世の中にあまり出ていませんが、少数出ているそれらの本に共通するのは、模範解答の作文が子供たちの実際に書いた上手な作文をもとにしている点です。
しかし、ほとんどの人は、模範解答を読んで勉強しようとは思わないはずです。
まず読むのは、解説の方で、解説を読んでわかったようなわからないような気になるが、実際にはよくわからないというのが正直なところだと思います。
なぜ模範解答を読もうとしないかというと、読んでも自分の作文に生かせる気がしないからです。
それは、模範解答に型がなく、偶然よく書けたものが選ばれているだけだからです。
「読解・作文力が身につく本」の作文の書き方は、テーマに合わせた一定の型を使った書き方をしています。
だから、解説だけでなく、模範解答を読んでも、なぜそう書かれているのかがよくわかります。
型があるからどれも同じような作文になるかというとそうではありません。
型に盛り込む中身に、その子の個性がいくらでも出せるからです。
同じ型の作文で、十人いれば十とおりの作文が書けます。
そしてまた、型に沿って書こうとすることによって、自分の実力が引き出される面があるのです。
例えば、複数の理由を書くという型があるとします。
一つの理由は誰でも思いつきます。しかし、複数の理由となると、その問題をもっと深く考えなければならなくなります。
また、反対意見に対する理解を入れるという型があります。
自分の意見を述べるだけでなく、自分とは異なる意見の理解できる点を考えることによって、自分の考えが更に深まります。
反対意見の選び方だけでも、浅い反対意見と深い反対意見とがあるのです。
今回の小学生向けの本には載せていませんが、中学生の作文で、実例として昔話を入れるという書き方があります。
すると、例えば、「国際社会における日本の役割」というテーマで、どのように「桃太郎」の話を入れるかというようなことを考えるようになります。
そして、この型がうまく決まると、「我ながらうまい!」と書いた本人が思うような作文が書けることがあるのです。
このように型があると、上達する方向がはっきりしてきます。
一方、型があると、どんなに苦手な子でもその型に沿って作文が書けるようになります。
言葉の森の作文の体験学習を受けると、すごく苦手だという子がすらすら書けるので、本人も一緒にいる保護者も驚くということがよくあります。
書く前に、その子の学年に応じた型を説明するので、ほとんどの子が書けるようになるのです。
普通、作文の型というと、「序論本論結論」とか、「起承転結」とか、「序破急」とかいう大枠しか思い浮かべないことが多いと思います。
言葉の森の場合は、これを学年別に何通りにも分けて段階的に身につける仕組みになっています。(この教材は、森林プロジェクトで提供しています。)
型を身につけるためには、ある時期はある型に慣れる必要があります。
そして、いろいろな型を身につけたあと、やがて型を意識せずに自由に書くようになるのです。
型が最もよく使えるのは、作文の試験に臨むときです。
それは、試験という限られた時間の中で、迷わずに全体の方向を決めて書き出すことができるからです。
こういう「型の作文」の書き方を説明しているのがこの本の特徴です。
だから、作文の書き方の章は、書き方の解説だけでなく、模範解答を読んでも面白く役に立つのです。