国語力の中心は、読解力です。
将来は、作文力がもっと前面に出てきますが、今は作文力を評価する方法が限られていることから、読解力が国語力の中心となっています。
その読解力は、読む力の縦軸と、解く力の横軸で構成されています。(図参照)
●小学1、2年生の読解力
「1A」となっているところは、子供が小学1、2年生のころの読解力です。このころは、読む力と解く力が同じような場所にあります。
それは、まだ読む力も解く力も初歩的な水準にあるからです。
このころの読解力は、読解のテストなどをしても正しくは把握できません。
小1、小2のころの読解力は、初めて見る文章をどれぐらいすらすら読めるかで把握できます。
つっかえながら読む状態のうちは、読書を楽しむということはまだできません。本を読んでいるように見えても、ほとんど眺めているのに近い状態です。
すらすら読めない子に読む力をつけるためには、第一に読み聞かせをして耳からの読書の時間を取ることです。
そして、第二に短い時間でいいので毎日音読の練習をすることです。
音読の練習を続けさせるコツは、どんな拙い読み方をしても、いつも褒め続けることだけです。
●小学3、4年生の読解力
小学3、4年生になると、読む力も解く力も少しずつ進歩してきます。
読むものが、絵本や短い物語から、次第に長い物語や説明文の本に移行する時期です。
また、問題の解き方も、解くコツを知っているかどうかがわずかに影響しますが、それはまだ大きなものではありません。
この時期に大事なことは、読書の質を上げていくことと、読書の量を確保することです。
読書の質を無理に上げようとすると、読書の量が低下します。
小学3、4年生の読書で中心になるのは、まだ読書の量の方ですから、たくさん読むことを基本にしつつ、説明文の本を楽しく読めるような力をつけていくのです。
そのときに、説明文の本を読む助けになるのが、その子の興味や関心です。
その子の興味や関心に合う本を、月に数回、図書館などで探すのがお母さんやお父さんの仕事になります。
●小学5、6年生の読解力
小学5、6年生になると、国語の問題が受験にも対応したものになってきます。
これが、「2B」の段階です。
読む力は「1」から「2」へと進歩していきますが、それだけでは問題を解くことができない場面が出てきます。
問題を解く力は、「A」から「B」に進みますが、これは本を読んでいて自然に進むわけではありません。解き方を身につけて、理詰めに解く力をつけなければ、「A」から「B」に進むことはできません。
それは、小学5、6年生の受験期は、読解力の重点が、読む力よりも解く力に移る時期だからなのです。
「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」が、読解の章で説明しているのが、この小学5、6年生が解く力をつけるための方法です。
解く力をつけることで、急に成績が上がるようになります。
逆に、この解く力をつけないと、国語の問題集だけをいくら解いても、成績はなかなか上がらなくなるのです。
●中学生の読解力
中学生の読解力は、小学5、6年生の読解力の延長にあります。
だから、勉強の基本は、理詰めに解く力をつけながら、その一方で読書の質を上げていくことにあります。
中学生になると、読書ということは学校でも家庭でもあまり周囲からうるさく言われなくなります。
学校の勉強が最優先で、読書はできたらすればいいというような感覚になりがちなのです。
しかし、この時期に読書の質を上げていくことが、その後の読解力に影響してきます。
読書の質を上げる方法のひとつが、問題集読書です。これは、問題集の問題文を読書がわりに読む勉強法です。
読む力のある生徒は、問題集の問題文を内容を楽しみながら読むことができます。問題集には、良質な物語文と説明文が豊富に掲載されているからです。
ただし、問題集の文章は、通常の読書と違ってあまりにも短いので、読むことに没頭することができません。
だから、中学生の時期は、通常の読書で読む楽しさを味わいながら、その一方で問題集読書で読む質を高める手助けをしていくといいのです。
●高校生の読解力
高校生の読解力では、読む力と解く力は更に分離してきます。読む力は「C」に進み、解く力も「3」に進みます。
このころになると、解く力がいくらあっても、読む力がないと解けない問題が出てきます。
大学入試センター試験などの読解問題では、読む力がないと、解く力だけでは満点を取ることはできなくなります。
読みやすい文章や普通の文章では、解く力を使って正しい答えを選べる生徒が、難しい文章になると理詰めに読み取ることができなくなるのです。
そのときに必要な読む力は、中学高校生時代の長い蓄積でできたものですから、短期間に読む力を上げることはできません。
だから、解く力とともに、難しい文章を読む力を、問題集読書や自分なりの高度な読書生活によってつけていく必要があるのです。
●大学生の読解力
大学入試センター試験で、ほぼ満点近い成績が取れるようになったから、読解力が完成したのかというとそうではありません。
その先に、読む力を更に伸ばす「4」の段階があります。これが、難解な専門書や哲学書を読む段階です。
この時期には、もう読解力を評価するテストのようなものはないので、解く力はあってもなくてもかまいません。だから、解く力は「A」でもいいのです。
ただし、口頭試問などで話をすれば、どのくらい読む力があるかということはわかります。
この難しい文章を読む力が「4」に伸びる時期は、高校3年生から、大学2、3年生にかけてです。
高校生のころは受験勉強に追われ、大学生になるとやがてすぐにが就職活動に追われるようになるので、大学生の最初の1、2年間は読む力をつける貴重な時期です。
しかし、日本の大学では、高度な専門書や哲学書を読破するという勉強をほとんどしません。
もちろん、大学生時代は遊びも含めて多様な経験にチャレンジする時期ですから、読書だけが大切なのではありません。
しかし、最も読む力が伸びる時期に、難しい本を読む機会がないというのは、その後の知的生活の土台が作れないということです。
だから、多くの人が、高校3年生の学力がピークで、その後はなだらかに低下するようになっていくのです。
大学での勉強を充実させることが、これからの教育改革の一つの要になってきます。
そのためには、小学生のころから読書を中心とした読む力をつける勉強をし、受験期に入ったら集中的に解く力をつける勉強に切り換え、受験が終わったらまた高度な読書生活を再開するという形で読む力と解く力をバランスよくつけていくといいのです。
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解く力をつけると、国語の成績は急に上がります。
しかし、解く力をつけただけでは解けない問題がやがて出てきます。
それが読む力を必要とする時期です。
読書は、国語の成績には関係しないとよく言われますが、高度な読解問題になると、読書力が大きく影響してくるのです。
学校での勉強の間は、読書力は普通でも、解く力をつけていけば国語の成績は上がります。
しかし、大学生や社会人になると、国語力の中心は解く力ではなく、読書力になります。
だから、高校3年生の受験勉強が終わったら、まず高度な読書に力を入れていくことです。
そのためにも、小学校時代から読書を楽しむ習慣をつけていくといいのです。
昔、保護者懇談会で、「塾の先生から、『読書をしても国語の成績は上がらない』と言われたのですが、どうしたらいいですか」という質問があありました。
別に、国語の成績を上げるために読書をするのではないのですが(笑)、読書力と読解力の関係について、平面的に考えている人が多いようなので、読む力と解く力の関係についての記事を書きました。
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小1~小6の2.3週の授業の動画をアップロードしました。
鳥の村の学年ごとの資料室でごらんください。
https://www.mori7.com/tori/index.php?k=10
なお、鳥の村の発表室は画像アップロードにエラーが出ていましたが、現在はアップロードできるようになっています。
ただし、今後動画などをアップロードされる場合は、googleフォトなどにアップロードしたものの共有リンクのURLを貼り付けていただくようになります。
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千代田区立九段中等教育学校 A.Kさん
(担当講師より)
ほんとうに粘り強く勉強していたKさん。作文の課題も、納得がいくまで何度も何度も書き直していました。
今年の作文の問題は難易度が高かったようですが、何とか頑張れたということでした。
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子供が学校ごっこをするとき、やりたがるのは生徒役ではなく先生役の方です。
普段、生徒だから飽きているのかもしれませんが、先生の方が主役に近い感じがするからです。
だとしたら、普段の勉強も、先生役としてやってもらえばいいのです。
もちろん、大人数でみんなが先生役をやったらわけがわからなくなりますから、全員が順番に先生役をやれるような人数でです。
教えてあげることと、教えもらうことと、どちらが楽しいかと言えば、教えてあげる方です。
これは、家庭での親子関係でも同じです。
普通、親が教える役で、子供は教わる役です。
すると、親の方は、つい熱心になって教えすぎてしまうことがあるのです。
本当は、子供は自分で考えて、「やっとわかった」と言いたいのですが、親が熱心に教えると、自分の力でわかる前に、人にわからされてしまうのです。
そういう勉強は、能率がよいように見えても楽しくはありません。
小学校低中学年のころに親に教えられすぎると、子供は小学4、5年生のころから、親に教えてもらうことを嫌がるようになります。
それは、自分で苦労してわかりたいという気持ちがわいてくるからです。
だから、親や先生は、子供がまだ小さいころから、教えるのを途中で止めることを学ぶ必要があります。
すぐに簡単に教えられることでも、「うーん、どうしたらいいんだろうねえ」と一緒に悩んであげるのです。
少人数クラスでは、みんなが先生役ができます。
そのときの本当の先生の役割は、これまでの教える先生の役割と少し違ってくるのです。
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これからの勉強の仕方は、子供が、教わる役ではなく教える役をするような形になります。
その方が勉強が楽しいし、理解もより深まるからです。
そのために必要になるのが、少人数で学び合う仕組みなのです。
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amazonの売れ筋ランキングの「教育・学参・受験 > 小学教科書・参考書 > 国語」の分野で、「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」という長い書名の本が(笑)、ベストセラー1位となりました。
あらためてご、購入いただいたみなさん、ありがとうございました。
この本の読解の章がしっかり読まれると、国語の読解問題は満点近くになる人が増えると思います。
そうすると、国語の試験は、読解問題よりも記述や作文を中心にする方向に進みます。
しかし、記述問題は、採点の基準があいまいで誤差も大きいので、将来は、作文の試験をしっくり見る方向に行くと思います。
そのとき、この本の作文の章が、更に役に立つようになります。
「風が吹いたら桶屋が」の話のようになりましたが。
2019/2/9 4:30
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毎日、こんなことばかり無邪気に書いているようですが(笑)、おかげさまでamazonの「参考書>国語」部門で1位になりました。
この本の読解の章は、子供に教える授業の教材としても使えると思います。
しかし、もっといい活用の仕方は、入試問題集などをもとに、選択問題の理詰めの説明を子供自身にさせることです。
勉強というのは、ただ聞いているだけよりも、自分から発表する方が面白いからです。
本当は、そういう教材を、読解検定問題作成委員会(仮称)で早く作りたいのですが、それを始めると、今でも遅れているほかの仕事が遅れてしまうので、もう少し落ち着いてからになります。
そのときは、また、みなさんのご協力をお願いします。
国語の得意な子は、読解問題を解くときに、すごく集中して読みます。
理詰めに読もうとすると、自然にそういう読み方になるのです。
しかし、ほとんどの子は、普通に読んで、普通に答えを選びます。
それは、ひとつには、理詰めに読むという方法を知らないからです。
もうひとつには、普通に読んでも、国語の場合はある程度の点数は取れるからです。
「これは当たったけど、こっちははずれた」とか(笑)。
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※その後、「在庫あり」に戻りました。2/9 3:00)
先ほど、amazonのページで、「読解・作文力」の本が、「通常1~2か月以内に発送します。」という表示になっていました。
在庫がなくなっているそうですので、お急ぎの方は、楽天ブックス(
https://books.rakuten.co.jp/rb/15782780/)や、ご近所の書店でご購入くださるようお願いします。
しかし、この調子だとamazonの順位は上がりませんが(笑)。
なお、ご購入前でも、購入される予定のある方は、小冊子郵送をお申し込みください。
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amazonの在庫がなくなり1~2か月待ちになっていますので、楽天ブックスやご近所の書店へ
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栄光学園中学校 T.U.さん
(担当講師より)
5年生の秋から受験勉強に専念されましたが、それまで毎週自分なりに目標を立てて、作文に取り組んでくれていました。
本当に嬉しいです。おめでとうございます!
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読解力がつく作文・感想文というのは、ただ作文を書くから読解力がつくのではありません。
自分なりに長文を読み、自分なりに考えて、自分なりの力作文を書くから読解力がつくのです。
作文の勉強をしている人は、作文を書くことが目的のように思っていますが、作文を書くというのは結果です。
目的は、書く前に、書くことを決めてくることであり、感想文の場合は事前に長文を読んでくることであり、お父さんやお母さんに取材したり自分でデータを調べたりしてくることであるのです。
小学校高学年や中学生になると、要領のいい子は、長文をあまり読まずに、ヒントを参考にしてそれなりにまとまった作文・感想文を書いてしまうことがあります。
作文だけを見ると、作文の勉強をしたように見えますが、それでは本当の力はつきません。
一方、事前に長文を読み、自分なりに考えたことを一生懸命に書く子もいます。
そういう子は必ず実力がついてきます。
書かれた作文という結果だけ見ると、違いはあまりないように見えても、その前の書く過程よって、将来の実力の伸びは大きく変わってくるのです。
ところで、通信教育の弱点は、作文を書く前の過程があまり見えないところにあります。
これが、寺子屋オンラインという少人数クラスだと、事前の準備がよくわかります。
それは、みんなの前で、自分の書くことを発表する機会があるからです。
作文を書くとぃうのは、小学校高学年以上の生徒にとっては、かなり精神的負担の大きい勉強です。
だから、小学校低中学年のころまでは、自分ひとりで作文の勉強ができたとしても、高学年からはある程度の枠組みがないと勉強ができません。
その枠組みのひとつとして有効なのが、オンラインの少人数のクラスです。
自宅ではなかなか作文が書けないという人は、寺子屋オンラインの作文クラスの体験をしてみるといいと思います。
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作文の勉強の本質は、書いた作文という結果にあるのではなく、書く前の考えたり調べたりする過程にあります。
だから、書いた作文を赤ペンでいくら詳しく添削しても、作文はある程度以上は上達しません。
それよりも、書く前の準備に力を入れるような勉強の仕方をする必要があります。
そのひとつが、小学生に渡している予習シートです。
もうひとつが、事前の準備をみんなの前で発表する寺子屋オンラインクラスのような枠組みです。
以前、教室に通っていた大学入試を目指す一浪の生徒が、教室で作文の練習をしたあとに言っていました。
「作文を書いたあとは、もうほかの勉強する気がしなくなっちゃうんですよね」
これが、ほかの勉強だったら、「数学の勉強が終わったから気分転換に英語の勉強でもやろう」となるのですが、作文の場合はそうではありません。
それぐらい、作文を書くというのは、高学年以上の生徒にとって精神的エネルギーを使う勉強なのです。
それをよく知らないお母さんは、「休んだ分も入れて、今日は三つ書いちゃいなさい」などと気楽に言うことがあるのです(笑)。
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