先日、昔お世話になったある出版社の方から相談がありました。
一流企業のある会社で、採用されている新人がみな高学歴の人たちなのに、文章力がかなり見劣りがするということで、どういう対策があるかというような相談でした。
現在、小中学生でも、作文力の低下という傾向が幅広く見られるようになっています。
昔も、作文を書けない子がいましたが、今の子供たちの中には さらに重症な子も増えてきています。
その最も大きな原因は、読書を通して文章語に接する時間が少なくなったことです。
テレビや YouTube やインターネットの SNS の断片的な文章に接していると、自分が文章を書くときにも、同じように断片的な言葉しか出てこなくなるのです。
今の受験勉強は、文章力がなくても、知識を詰め込めばなんとかなるという面があります。
ですから、高学歴にも関わらず文章が書けないという問題が起きているのではないかと思います。
この問題を解決する道は、しっかりした文章を読むことと、それをもとにして自分の考えを感想文という形でしっかり書く練習をする以外にありません。
ところが、文章を読むことは独学でひとりでも何とかできるとしても、文章を書く練習をひとりで続けることはまずできません。
与えられたテーマでひとまとまりの文章を書くということは、かなり負担の大きいことだからです。
また、文章を読むことも、本当は、社会人になったあとでは独学ではなかなかできません。
軽い文章はもちろん誰でも読めますが、本格的な古典と呼ばれるような文章は、学生時代まででなければ読めないからです。
そこで今、社会人のための文章講座を開くことを考えています。
言葉の森は、最初に設立した段階で、小学生から社会人までの作文指導をすることを考えていたので、現在も既に高校3年生を卒業したあとの大学生社会人向けの教材を途中まで作ってあります。
しかし、その後、システムがあまり複雑にならないように、現在のように高校3年生までの課題でいったん卒業ということにしたのです。
今後、社会人の方で文章力を身につけたいという方も学べるように、社会人向けの課題を復活させることを考えています。
今の段階で、社会人の方が言葉の森の作文を受講される場合は、小学6年生相当から始めるようになります。(もちろん、小学1年生から始めることもできますが。)
小学6年生の、「複数の実例プラス一般化の主題」が、作文・小論部の基本ですから、小6の課題を1年間こなすだけでも、文章力はかなりつきます。
その後、中1から中3までの意見文の書き方を身につければ、文章を書くことに関しては、かなり自信がつくようになると思います。
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学校教育で最も力が伸びる時期は、高3からの数年間だと思います。
ところが、今は、高3は受験勉強に追われ、大学生になれば遊びっぱなし(笑)となることが多いと思います。
ただし、大学生は、高校生までのような教科書的な勉強をする時期ではありません。
もっと自由に高度なことを考える時期です。
だから、本当は、この時期に読書と作文に力を入れることが重要なのです。
言葉の森は今は高3で卒業ということになっていますが、実は、大学生になっても続けたいという人は多いのです。
そして、本当は、作文力は高3からまた一段と質的に向上します。
高3から大2ぐらいの間に、難しい文章を読んで論説文を書く練習をすると、考える力はかなり伸びます。
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「見える学力見えない学力」を書いた岸本裕史さんは、家庭塾というものを開いていました。
これは、勉強の土台は、家庭での学習にあるという考えにもとづくものです。
同じ考えで行われていたものに、初代総裁を平澤興氏が務めていた全家研の運動があります。
今は、学習塾の隆盛に押される形で、そういう家庭で自分の計画で行う勉強は少なくなっているのではないかと思います。
しかし、勉強の本来の姿はこの家庭塾なのです。
どんなに面白くわかりやすい授業を聞いても、それは、頭の表面を通り過ぎて行くだけです。
その知識が自分の中に定着し、さらに他の場面にも活かせるようになるためには、その勉強を繰り返し実習するという時間を欠かすことはできません。
ところが、学習環境が豊かになるにつれて、面白い授業を見るだけの勉強の時間が増え、自分でそれを定着させる時間が減っているという状況があるのです。
そのために、塾に長時間通うような勉強をしているのになかなか成績が伸びないとか、塾から出される宿題の量が多くて負担だとかいう問題が起きているのです。
小中学生の勉強は、教科書に準拠した分かりやすい参考書があれば、特にうまく教えてくれる先生がいなくても家庭で十分にやれるものです。
子供たちが勉強の時間をかけるところは、知識を面白く教えてもらうところではなく、それを定着させるために自分で勉強をするところなのです。
自主学習クラスでは、教材を決めて子供たちが自分のペースで勉強をしています。
分からないところは解法を見て自分で理解するか、又は、自分で理解できないときはお母さんやお父さんに聞くかします。
お母さんやお父さんも教えにくい問題のときは先生に聞きますが、ほとんどの勉強は子供が自分で答えを読んで理解できるものですから、人に教えてもらう時間は自然に少なくなります。
わからないところだけ人に聞く勉強なので、最初から最後まで人に教わる勉強よりも、ずっと能率がよい勉強になるのです。
この自主学習クラスのような勉強が、これまでなぜなかったかというと、オンラインで子供たちが集まって一緒に勉強するという仕組みがなかったからです。
言葉の森が始めた自主学習クラスは、古き良き家庭学習の伝統を、オンラインの技術で新しく作り直したものです。
また、単に古いものを新しい技術で復活させただけではなく、教育の目的も新しい理念に基づいて作り上げています。
それは、単に与えられた知識を詰め込むだけではなく(詰め込みの勉強ももちろん必要なことはありますが)、自分の個性を発見し、その個性を生かし、考える力を伸ばし、創造する力を育てるという教育の理念です。
この自主学習クラスを、作文クラス、発表学習クラスと同じようにこれから広げていきたいと思っています。
そして、この自主学習クラスの講師を担う人は、森林プロジェクトで作文講師資格を取得した全国の志ある仲間たちなのです。
▽自主学習クラスの授業から(最後のまとめの部分)
https://youtu.be/GQ4Ei_hUayE
自主学習クラスの勉強の時間のほとんどは、自分で行う実習の時間と、先生と生徒が個別に話す時間です。
しかし、授業の最初と最後は、短時間の交流の場として、みんなで話をする時間をとっています。
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勉強は、本来自分でやるものですが、子供たちには年齢に応じた特性というものがあります。
それは、小学1、2年生のころはお母さんと一緒に勉強したいということで、小学校中高学年から中学生にかけては友達と一緒に勉強したいということです。(高校生になると、ひとりで勉強するようになりますが)
だから、先生と一対一の個別指導ではなく、また能率の悪い一斉指導でもなく、少人数の自主学習が適しているのです。
自主学習の生徒で、前からやっている人は、カメラを机上に向けています。
すると、どんなことをやっているかわかるので、ノートのとり方などについてもアドバイスをすることができます。
小学生の子によくあるのが、行を空けずにびっしり書いていることです。
また、計算式を縦に並べずに、横に並べていくことです。
そんな些細なことも、勉強の能率を上げるためには結構重要なのです。
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