暗唱の仕方で大事なコツは三つあります。
一つは、毎日練習をすることです。
練習にかかる時間は10分程度です。
毎日やるためには、朝ご飯の前などの毎日確実にできる時間帯を暗唱練習の時間と決めることです。
もう一つは、すらすら読めるようになるまで、文章を見て読むようにすることです。
文章を見ずに読んで、途中でつっかえたり、思い出して読んだり、読み間違えたりすると、そのつっかえたり思い出したり読み間違えたりしたところが癖になってしまうので、あとから直そうとしてもなかなか直りません。
暗唱の初めのうちは、文章を見てゆっくり正確に読んでいくことです。
正確に読めるようになったら、できるだけ早口読むように切り換えていきます。
第三に、暗唱は覚えることを目標にするのではなく、回数を決めて音読を繰り返すことを目標とすることです。
回数は30回が基準です。
大人でも、100字程度の同じ文章を30回繰り返して音読すると暗唱できるようになります。
低学年のうちはもっと回数が少なくても暗唱できるので、その子に合った回数を決めて読むようにしてもかまいません。
大事なことは、覚えられたからおしまいとするのではなく、決めた回数を音読したからおしまいというふうにすることです。
なぜ、覚えることを目標にしないかというと、覚えることを目標にすると、難しい文章や長い文章になったときに、できないと言う子が出てくるからです。
回数を繰り返すというだけなら、誰でも例外なくできます。
覚えることが目標ではなく、音読を繰り返すことが目標とすることによって、その結果として自然に覚えていたという結果になるのです。
ところで、低学年のうちは文章を読み取る力がないために、文章を繰り返して読むということがスムーズにできない場合があります。
その場合は、最初から本人に読ませるのではなく、お母さんが音読するのを聴かせるだけでもいいのです。
聴いているうちにだんだん真似をして言えるようになります。
すると、やがて文章を目で追いながら音読もできるようになってきます。
低学年のうちは、気長に、半分遊びのような感覚で続けていくことが大事です。
幼稚園年長から小学2年生までは、暗唱の力が最も伸びる時期だと言われています。
この時期に、子供が負担を感じないやり方で暗唱の力をつけておくと、学年が上がってからも暗唱のコツが分かるので、その暗唱力を語彙力や記憶力や表現力に活かしていくことができます。
自主学習クラスで、算数数学の問題を解いている子に、「難しかったらすぐに答えを見るんだよ。算数数学は、考えない勉強だからね」と言うと、子供も保護者も、「そんなので、いいのですか」と聞きます。
そんなのでいいのです(笑)。
(以下、算数数学を略して算数)
受験までの算数は、答えのある勉強です。
学問としての算数は、答えがあるかどうか分からない勉強です。
だから、学問としての算数は、いくら考えてもいいのです。
長い時間考えることによって、答えが分かる瞬間が来るときがあるからです。
趣味として算数の勉強をする場合も同様です。
しかし、受験の算数は、答えを出すことが目的の勉強です。
そして、受験の算数では、すべて誰かの作った答えがあることが前提になって問題が出されています。
どんなに難しい問題でも、答えがあることがわかっているならば、すぐにその答えを見ればいいのです。
算数の問題で、誰でもできるのは代数系の問題です。
だから、難関校では受験生に差をつけるために、代数の問題よりも図形の問題を中心に試験問題が出されています。
図形問題は、できるとできないの差がはっきりしているので、点数の差をつけやすいからです。
この図形問題を解く力をどうつけるかというと、それをパズルの一種と考えるのです。
しかし、楽しみながらやるパズルではなく、答えを早く見つけることが目的のパズルです。
だから、問題は見たらすぐに答えを見るのが最も能率のよい勉強の仕方です。
このやり方で、図形を中心にした算数の問題集を1冊、解けない問題が1問もなくなるまでやるのです。
すると、新しい図形の問題を見ても、解き方のパターンがわかるようになります。
この図形問題の勉強の仕方は、公立中高一貫校の問題の勉強の仕方にも共通しています。
考える問題と言われるものであっても、特定の答えが想定されているのですから、問題を見たらすぐに答えを見て、「この問題はこういう答えだ」ということを理解する勉強を中心にしていくのです。
しかし、たぶんこういう勉強の仕方をしている子はほとんどいないと思います。
多くの子がやっている勉強法は、できる問題をいつまでも解いてみたり、できない問題をいつまでも考えていたりというやり方です。
そして、保護者の多くもそれが普通の勉強の仕方だと思っています。
勉強を趣味としてやるのであれば、それでもいいのです。
しかし、受験勉強に関して言えば、それは実は正しい勉強法とは正反対の勉強法です。
なぜなら、できる問題を解くことも、できない問題を考えることも、ただ時間がかかるだけだからです。
できる問題は、解く必要はありません。
できない問題は、すぐに答えを見て、問題と答えの組み合わせを理解するという勉強法が正しい勉強法です。
味気ない感じがすると思いますが、受験勉強自体が味気ないものですから、できるだけ短時間で効果の上がる勉強の仕方をしていくといいのです。
この勉強法で夏休みの一か月間、算数の勉強に取り組めば、その後の成績は驚くほど向上します。
ところが、たぶん学習塾では、こういう勉強の仕方をしません。
できる問題を解かせたり、できない問題を考えさせたりする勉強がほとんどだと思います。
それは、その方が教えやすいことと、生徒もそれで勉強した気になりやすいからです。
そして、多少は、時間をかけて勉強しただけの効果はあるからです。
しかし、本当は、家庭の自学自習で、できない問題の答えを見て理解する勉強を中心にしていくといいのです
算数の勉強の仕方について語る人の多くは、算数を教える専門家です。
だから、自然に時間のかかる勉強の仕方を説明します。
それは、他の教科、国語の場合も英語の場合も同様です。
そういう専門家の意見に従うと、勉強はどんどん時間のかかるものになっていきます。
勉強の本質を理解すれば、もっと能率のよい勉強の仕方ができます。
算数は、1冊の問題集をできない問題が1問もなくなるまで繰り返し解くことです。
この場合は、解くというのは解き方を読んで理解することです。
英語は、英語の教科書を音読暗唱することです。
そして暗唱ができたら暗書することです。(暗書は見ないで書くという意味の造語)
国語は、問題集読書をすることと、読解検定で百点を取ることです。
ただし、問題集読書と読解検定は、受験期の勉強法ですから、受験期に入る前の基本の勉強法は、読書と暗唱と親子の対話です。
受験勉強全般に関して言えば、まず志望校の過去問を答えを書き込みながらやってみることです。
そして、その過去問を基準にした勉強を進めていくことです。
勉強法の本質は、どれもシンプルなのです。
ときどき、「読書感想文の書き方」とか、「図形問題の解き方」とか、タイトルにひかれて読む記事がありますが、ほとんどの場合、隔靴掻痒(かっかそうよう)という感じになることが多いです。
専門家の説明は、なぜか複雑なわりにわかりにくいのです(笑)。