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記憶力仮説(その1) as/400.html
森川林 2009/02/26 10:40 
 今日は、記憶力についての仮説を述べたいと思います。

 現在の社会では、知識の差が学力の差を生み出しています。少なくともそのような性格の学力評価がなされています。
 知識の量はもちろん、学力の一部です。しかし、大学入試問題の社会科のテストなどを見てみると、知識の差がほとんどすべての学力として評価されているような印象を受けます。
 本来、入試に出てくる知識の問題は、相対評価で競争させずに、到達度評価にすべきだと思います。必要とされる知識の量は、すべての人が百%到達できることを目標にしておくということです。
 ですからもちろん、入学も希望する人は百%を入学させることが目標です。
 全員入学がなぜ可能かというと、ネットによる人数無制限の教育ができる体制がすでにできているからです。そして、学生どうしが相互に切磋琢磨するコミュニケーションのグループをSNSのようなもので作っていけば、学習の密度を高めていくことができます。将来の教育は、そのようなものになるでしょう。

 現代は、知識の差が学力の差として評価されていることで、ある種の世襲制社会を生み出している面があります。ゆとり教育の中で、知識を身につけられない子と知識を身につけるノウハウを持っている子との差がますます広がります。そして、学歴という誰でも納得できる評価を前提にして、例えば面接試験で恣意的な評価を加味すれば、一見合理的な装いを持った世襲制社会が生まれるということです。
 こういう不自由な社会をを固定化しないためにも、誰でも百%の知識が身につくような教育が行われていく必要があると思います。

 では、知識のもとになる記憶力とはどういうものでしょうか。
 本来人間は、あらゆるものを記憶していると考えられます。例えば、サヴァン症候群の子供たちの中には、常識では考えられない優れた記憶力を持つ子がいます。
 しかし、一般の人にとって、記憶したものがすぐに思い浮かべられないのは、記憶した個々の素材に検索のためのインデックスがついていないからです。つまり、頭のどこかに記憶したものはあるはずだが、それを探し出すことができない、という仕組みになっているのです。

 ここからが仮説です。記憶の仕方には、三つの方法があると思います。
 第一は、ごく普通の何回も繰り返して覚えるという記憶の仕方です。ところが、英語の単語や社会科の知識を無理やり覚えても、覚えた記憶どうしの干渉作用が起こり、覚える量が多くなればなるほど、記憶の能率が低下していきます。そして結局、記憶の濃さは反復の量に比例するという形で定着します。このために、人間は限られた分野にしか専門的な知識を蓄積できないという状態になっているのです。
 第二は、現在流行している記憶術による記憶の方法です。この記憶術の方法というのは、自分が熟知している分野の引き出しを、更に、熟知している仕切り板で細分化して覚えていくという方法です。この記憶術は、テストのための知識を蓄積するには極めて有効です。また、ギリシア時代の雄弁術で使われていたように、スピーチなどの技術としてもかなり有効です。しかし、記憶術は単なる技術であって、真の学力が身につくのではありません。しかし、現代のテスト形式の成績はもちろん上がります。
 第三は、新しい記憶力の方法です。これは、すでに南方熊楠や塙保己一やシュリーマンや本多静六などの実践で知られている記憶法です。しかし、この記憶法の仕組みはまだ究明されていません。
(つづく)
(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)

マインドマップ風構成図
 記事のもととなった構成図です。

(急いで書いたのでうまくありません)

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PISA型読解力が要求されるようになった背景(質問に答えて) as/399.html
森川林 2009/02/25 05:32 
 英語や数学は、たとえ苦手であっても、中学生のころに本気でやれば、数ヶ月で得意になるというレベルまでの勉強ができます。
 しかし、国語の差は、いったんつくと埋めがたい差になります。ところが、点数の差でいうと国語の点数の差は小さく、英語や数学の差は大きいというのが普通です。そこで、多くの人は国語の点数の差を過小評価しがちです。
 国語は点数の差があると思ったときには、もうすでにかなり重症の状態になっています。国語力は、現在の日本では、小説の読み方のような教科と考えられている面がありますが、実は思考力そのものです。
 わかりやすい想像をしてみます。例えば、イエス・キリストと釈迦と聖徳太子が、現代の中学か高校の受験生になったとします。かなり想像しにくい話ですが。準備なしに英数国理社のテストをすると、結果はどうなるでしょうか。まず英語は0点でしょう。数学もかなり0点に近い点です。理科も社会もほとんど0点です。ところが、国語の読解問題だけは満点に近い成績なのではないでしょうか。しかし、イエスと釈迦と聖徳太子がそれから本格的に1年間勉強すれば、英語数学理科社会もたぶん高得点を取れるようになるはずです。
 このように、勉強で何か一ついちばん大事なものを挙げるとすればそれはやはり国語力なのです。ところが、国語力の差は、表面にはあまり大きく出てこないので、多くの人は、表面に差の出やすい教科の勉強を読書よりも優先してしまうのです。
 2006年のOECDの調査で、日本の生徒は読解力表現力の得点が低く、クイズの知識番組に出るような問題の得点は低くなかったということが明らかになりました。この結果は、きわめて重要な問題を示しています。つまり、日本の子供たちの本当の学力が低下しているのではないかということです。
 国語力の本質は考える力ですから、あらゆる勉強の基礎になっています。読解力、つまり読む力というものは、多様なものできるだけ早く理解し読み取る力です。表現力、つまり書く力というものは、様々に異なるものの関連性を見つけそれらを創造的に結びつける力です。
 国語の力をつけるためには、書く勉強としての作文の勉強が欠かせません。現在の国語の勉強は、選択式の読解の問題が中心になっています。それは、その方が採点しやすいからという理由によるものです。子供たちの国語力を本当につけるためには、もっと書く時間を増やしていく必要があります。書く力の評価をすべて人間が行うのは時間がかかるので、文章の自動採点ソフトなどを活用しながら書く勉強を学校で増やしていく必要があると思います。

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読解力語彙力の男女別苦手克服法(質問に答えて) as/398.html
森川林 2009/02/24 03:50 
 昔テレビで、連想ゲームというものがありました。女性は、聞いてわかるというのが男性よりも得意です。男性は、書かないとわからないという傾向があります。
 例えば、日常生活の場面でも、説明を聞くときに、聞くだけで理解できるのが女性です。男性は、説明書を読んだり、又は、聞いた説明を自分なりに書いてみないと理解できないということが多いと思います。
 これはなぜかというと、女性は、いろいろな現象を並列的につなげて丸ごと理解するのが得意だからです。男性は、現象のつながりだけでなく、その現象が内部でどういう関連になっているかということが見えないと現象どうしを結びつけることが難しくなるようです。国語の問題でも、理詰めで解くような解き方を教えると男の子は点数が上がります。
 聞いてわかるというのは、見てわかることよりも、より直感的な理解であり、印象を丸ごと実感して把握するするというような理解の仕方です。このような理解の仕方が得意なのは一般に女性です。また、物事を実感的に把握することが得意な人は、一般に国語という教科が得意です。女性と国語は、相性がいいのです。
 しかしこういう女性の特徴、又は国語の得意な人の特徴は、同時に他の勉強に対する弱点にもつながっています。
 女性や国語の得意な人は、自分の感覚をもとにして物事を考えるという傾向があります。ですから、何かを考える場合でも、身体的な実感を感じられるような理解の仕方をします。そこで、理数系が苦手になることが多いのです。
 理数系は実感の世界ではなく、どちらかといえば操作の世界です。実感で理解しようとするとかえってわかりにくくなるというのが理数系の特徴です。例えば、「3分の2を2分の1で割る」というような問題があった場合、実感的に考える子は、3つあるうちの2つのリンゴを2分の1で割るなどと考えるので、かえって理解できなくなります。
 また、二乗して負になる虚数というのも、実感として理解することはできません。これは単純に、実数の世界で説明しにくいものを説明する理屈として操作的に導入した概念だと考えればいいのです。
 4次元というのも同じです。縦・横・高さという3次元の実感の世界にもう一つ別の次元があるということを実感で考えようとすると、時間のようなものが思いつきます。しかし、3次元に加わるもう一つの次元は、別に時間でなくてもいいのです。明暗でも大小でも寒暖でも、要するに縦・横・高さ以外の別の区分が別の次元になります。もっと言えば、世の中にA的なものをB的なものがあると考えるとABが一つの次元となります。と考えると、5次元、6次元、n次元といくらでも操作的に多次元を考えることができます。しかし、実感の延長で考えると、縦・横・高さ・時間の次に来る具体的なものを思いつかなくなるので、より高い次元というものを理解しにくくなってしまうのです。
 国語の得意な子が、中学生高校生になって数学や物理が苦手になるのは、二つの分野の学問の性格の違いが、実感と操作の違いであるということがよくわからないからです。ですから、勉強の内容を教える前に、本当は、教える人がそういう性格の違いを説明してあげればいいのだと思います。
 今西錦司は、学生時代、文系の仲間の中でひとりだけ数学が得意でした。友人が、どうして数学が得意なのか聞いたところ、要するに数学は覚えてしまえばいいのだと答えたそうです。文系的な発想をする人は数学を実感として把握しながら解こうとしがちです。ところが操作的に割り切れる人は、実感がない世界でもそのままそういうものだと思って解いていくのです。今西錦司は、数学が操作の世界だと早めにわかっていたのです。
 いったん学問の分野によって要求される発想の性格が違うことを理解したら、そのあとは、自分の得意な発想に結び付けて苦手な分野を克服していくことになります。理屈の得意な人が、実感の世界を理屈で理解しようとするとよくわからなくなります。しかし、その二つの世界の性格が違うのだということをふまえた上で、実感の世界を理屈の世界に還元(換言)して理解していくとスムーズに理解できるようになります。
 例えば、「閑さや岩にしみ入る蝉の声(しずかさやいわにしみいるせみのこえ)」という句をそのまま理屈で理解しようとすると、「しずかさ」と「せみ」がうまく結びつきません。しかし、これは実感の世界の話だと割り切った上で、おしるこでも塩を少し入れるとより深く甘みが感じられるようになるのと同じことだと理屈的に理解すればすんなりと理解できます。実感をそのまま感じられる人は最初からそのように感じればいいのですが、実感が苦手な人は得意な理屈に還元して理解するということです。
 逆に、「分数の割り算はひっくり返してかける」という算数の世界についていけない子は、それが操作の世界だと思わずに実感の世界の出来事だと考えているから理解できなくなっています。日常生活の中で分数で割るというような経験はないからです。二つの世界が違うことを理解した上で、「分数ちゃんは『割る』のが苦手なので、すぐひっくりかえって『かける』になる」などと実感的に理解しなおせばいいのです。
 論説文と物語文の得手不得手や語彙力の得意分野についても同様のことが言えます。基本になるのは勉強の量ですが、量だけではカバーできない苦手分野は、自分の得意分野に結び付けて理解するのが苦手を克服するコツです。

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