兵頭さんの「大学入学共通テスト 現代文が1冊でしっかりわかる本」を、題名にひかれて読んでみました。
中身は、とても真面目な本でした。
共感したのは、作者の兵頭さんが、国語の勉強法として、同じ文章を繰り返し読むことを説いていたことでした。
言葉の森の問題集読書も、1冊の問題集の問題文だけを5回以上繰り返し読むことです。
そう説明すると、多くの人が、「同じものを読むより、新しい文章をたくさん読んだ方がいいのでは」と言います。
また、「問題文を読むより、問題を解く方が大事では」と言う人もいます。
そうではないのです。ただ、同じ文章を繰り返し読むことによって、そこに書かれている語彙が、表面的な理解ではなく、実感を伴った理解になり、より深く読み取れるようになるのです。
精読とは、ゆっくり読むことではなく、繰り返し読むことです。
問題集読書の読み方は、原則として音読です。
原則としてというのは、高校生で勉強の自覚のある人は、黙読でもいいからです。
音読を続けていると、半年ぐらいで、作文に書く文章も変わってきます。
しかし、それだけ、問題集読書による進歩には時間がかかるとも言えるのです。
読解検定の問題の理詰めの分析は、勉強した翌日から成績が上がります。
しかし、その理詰めの分析の土台になっている読む力は、半年という長い時間がかかるのです。
この問題集読書で大事なことは、何しろ毎日続けるということです。
そのためには、しっかり読むことを子供に求めるべきではありません。
どんな読み方でもいいから、時にはふざけて読んだり、早口で読んだり、声色を変えて読んだりしてもいいから、何しろ毎日読み続けることです。
特に、男の子で元気のいい子ほど、ふざけて読みます。
同じ文章の音読は、退屈だからです。
しかし、退屈さを感じることこそ、その子の可能性です。
だから、どんな読み方をしていても、親の一言は、「難しい文章を毎日よく読んでいてえらいね」ということだけでいいのです。
養老孟司さんは、子供のころ虫が好きで、たくさんつかまえては標本などにしていたから、それを供養するために虫塚を作ったそうだ。
養老さんの話が面白いのは、すべて個性的な発想と体験に基づいているからだ。
個性のある人は、生き残り、個性のない人は社会に埋没する。
個性は、無駄なことや役立たないことに熱中し、やり続ける中で生まれる。
その個性の反対は、役に立つこと、みんなから認められること、効率のよいこと、今の社会の価値観に合っていることだ。
社会の価値観にぴったり合っているということは、今の社会と区別がつかないことだから、せいぜい優劣でしか自分の存在を示せない。
楽しい人生を送るためには、役に立つか立たないかという今の社会の価値観から離れて、自分の好きなことをしようと心がけることだ。