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オンライン少人数クラスの教育を、今後の教育改革の柱に as/4473.html
森川林 2022/06/02 09:27 


●動画:https://youtu.be/HwAgwQtTVyw

 今の学校教育のいちばんの弱点は、学力も生活環境も異なる子供たちを、30人から40人まとめて一斉に教えていることです。
 この学校教育のスタイルは、昔からある普遍的なもののように思われていますが、インターネットがなく、人々がある程度集まっている環境がある中でこそ生まれた歴史的なものです。この歴史的な教育環境を一挙に変えることはできません。
 そこで、今の学校教育の形を残したまま、その中でオンライン4人クラスの教育を生徒ごとの学力、興味、関心に応じて行うことが考えられるのです。

 学校教育の30~40人の学級の中で、オンライン4人クラスの教育を個別に行うとなると、日本の国全体で考えて、学校の中で教える先生のほかに、オンライン4人クラスで教える先生が必要になります。これまで1人の先生が同じ40人の生徒を教えていたとすれば、これからは1人の先生がさまざまな4人の生徒を教えるのですから、先生の人数は10倍になります。すると、人件費も10倍になります。
 しかし、この学習法によって子供たちの平均的な学力が上がり、その結果、創造力が上がり、その結果日本の生産力が上がれば、それで十分お釣りが来るのです。

 特に重要なのは、創造力です。
 国力とは、資源量でも、軍事力でも、資金力でもありません。その国がどれだけ新しいものを創造する力を持っているかということです。あらゆる価値の源泉は、創造の価値です。
 創造のわかりやすい例は、太陽が不断にエネルギーを生み出す仕組みを創造したことですし、植物が光合成という仕組みを創造したことですし、人間が言葉や火の利用を創造したことです。これらの大きな創造の下に、私たちを豊かにした日常的な小さな創造が限りなく生まれたのです。
 ところで、今ある植物は、光合成という創造をコピーして世界を豊かにしているのであって、新しい何かを創造しているのではありません。創造とは、単に出力が入力より大きいことではなく、出力が入力より大きい仕組みを作ることです。

 この創造力を育てることが、これからの日本のいちばんの目標であって、そのための教育予算の10倍などは、取るに足りない投資です。

 これまでの教育は、主に競争の教育でした。しかし、これからの教育は、創造の教育になる必要があります。

 先日、YouTubeでたまたま「The Lord of the Rings」という映画の一部を見ました。映画の主題とは関係ないかもしれませんが、この動画の中では、武器を持ち鎧をつけた数万の兵士たちが、ドラゴンや巨人などの力を借りて相互に戦い合います。

 このときに、ふと思ったのは、この人たちを養う食事はどうなっているのだろうということでした。たぶん、互いに自分たちで食糧の生産をするよりも、相手から奪い取った方が利益が多いと思うから、こういう戦いが行われているのです。

 誰もが貧しかったころは、戦争や競争はありませんでした。しかし、格差が生まれ、一部の地域が他の地域よりも豊かになり、豊かさの大きな差が生まれたときに、生産よりも戦争の方が利益になるという考え方が生まれたのです。

 しかし、人類は、これから誰もが豊かになる時代に移っていきます。少なくとも、生産よりも戦争の方が利益が多くなるという時代は終わりつつあります。
 今、私たちが、競争ということに関心を持つのは、この人類全体の歴史的な背景から来ています。だから、一歩先が見える人や子供たちは、競争ということにあまり魅力を感じなくなってきているのです。

 今の教育は、主として競争という価値観に立脚しているために、かなり無駄なことに時間を費やしています。教育の中で子供たちの人生にとって本当に大事なことを教えるというよりも、今後の競争で点数の差が付きやすい場所を勝ち抜くために教える内容が組み立てられています。子供たちに大事なことを教えるのではなく、間違えやすい場所で他人に勝つために学習内容が教えられています。だから、勉強は必要以上に難しい時間のかかるものになっているのです。

 もちろん、その子供にとって関心のあることであれば、難しくても時間がかかってもいいのです。しかし、今は、外側からの強制で、あまり意味のない難しいことを勉強せざるを得ない状態が作られています。

 この勉強時間を、子供たちの興味や関心に応じた創造の時間に作り変えていく必要があります。そして、従来の勉強が、その創造の勉強の土台作りとして行われるようになれば、勉強はもっと短時間で済む、しかし面白く意味あるものになります。

 この創造を中心とした教育のプラットフォームになるのが、少人数の対話のある、しかも個性や学力に応じて自由に離合集散のできる柔軟性を持ったオンラインの4人クラスの教育です。創造教育は、全員参加の少人数の教育の中でこそ可能になるからです。

 これからの日本に必要なのは、こういう大きなビジョンです。
 今、いくつかの政党が選挙演説している内容を時どきYouTubeで見ることがありますが、これらの演説の根底に流れているものも、やはり長期的なビジョンでなければなりません。
 今後の世界は、大きく変わります。大事なことは、目先の得失に流されず、大きな目で未来を見ていくことです。
 今後の教育改革のモデルとして、言葉の森は、オンライン4人クラスの教育を進めていきたいと思っています。

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記事 4472番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/11
学童クラブにおけるオンライン少人数クラスの教育 as/4472.html
森川林 2022/06/01 07:48 


●動画:https://youtu.be/wW8R3OmFboA

 学童クラブにおけるオンライン少人数クラスの教育の仕組みは、かなりシンプルです。
 まず、学童クラブの中に、パソコンとヘッドセットを1台又は数台置いたブースを作ります。ヘッドセットを使うのは、外部の雑音を防ぐためです。
 そして、ある生徒は、その学年に応じたオンライン4人クラスに参加します。他の生徒も、それぞれの学年やそれぞれの進度に対応したオンライン4人クラスに参加します。45分間の授業の中で、同学年同進度の生徒と読書紹介や作文発表をしながら作文を書きます。書いた作文は、スマホ撮影、又はデジカメ撮影、又はスキャナで画像を読み込みウェブにアップロードします。書いた作文や先生の講評は、自宅でも見ることができます。

 この学童クラブ内のオンライン学習の利点は、少人数クラスの個別指導が、学童クラブの指導員の手をわずらわせずにできることです。しかも、単なる個別指導ではなく、オンライン4人クラスの指導ですから、子供たちがそのオンライン学習の中で友達と交流しながら楽しく勉強できるという利点があります。また、授業に参加できなかった日は、他の曜日や時間のクラスに振替出席することもできます。

 オンライン教育は、よく対面教育と比較されることがあります。しかし、オンライン4人クラスは、オンラインの対面教育です。そして、オンラインですから、同学年、同進度、同趣味の生徒とのクラス分けも、随時できます。

 オンラインは中国語で在線的と言うようです。遠くにいる人と人が線でつながっているというイメージです。しかし、今のネット環境は、線でつながるというよりも、面でつながっているというイメージです。オンライン4人クラスの教育は、4人の個性ある生徒が面でつながっているということで、四人のオンライン対面教育と呼んでもいいと思います。

 ところで、オンライン教育は、低学年の生徒には向かないと言われています。しかし、個別対応ができる少人数のオンラインクラスであれば、幼児や小学1年生の生徒でも十分に対応できます。現に、言葉の森の基礎学力クラスや親子作文クラスは、幼長や小1の子が、毎週にぎやかに参加しています。
 このオンライン4人クラスの教育を、学童クラブでも利用できるようにすることを考えています。

 厚生労働省の2021年のデータによれば、全国の学童クラブは、約27,000か所、登録児童数は小1が約42万人、小2が約38人、小3が約29万人、小4が約15万人、小5が約7万人、小6が約4万人です。
 これらの子供たちが、放課後から夕方の時間を、単なる宿題やプリントをこなすような味気ない勉強ではなく、友達と対話しながら思考力と表現力を伸ばす勉強をすることができれば、時間の使い方はかなり有意義なものになります。

 リアルな通学教室でオンライン学習をするというのは、形の上ではブレンディッドラーニングに似ていますが、その方向はかなり違います。
 ブレンディッドラーニングは、例えば、現在の学校でも、生徒をそれぞれの習熟度に応じてスタディサプリなどで教える形で取り入れているところがあります。1人の先生が、一斉指導で数十人の生徒に同じことを教えるのに比べれば、このようなブレンディッドラーニングはかなり効果的です。
 しかし、この学習法をつきつめれば、そもそもブレンディッドである必要はなく、生徒は自宅でオンラインの動画教育を見ていればいいことになります。しかし、自分にとってどの動画を優先して見たらいいのか、どういう進度で進めばいいのかという個別的なことを教えてくれる人はいません。通学教室にいる先生でも、一人ひとりの生徒にそういうアドバイスはできません。
 だから、ブレンディッドラーニングは、単なる集団一斉指導よりも優れている面はあるにしても、リアルにおいてもオンラインにおいても、どちらもまだ不十分な学習になっています。
 オンライン教育は、オンラインの中で完結できる対面教育である必要があるのです。しかも、その対面教育の中に、友達との交流があることも、ある意味で必須です。それは、子供は友達の中で成長するからです。

 学童クラブ内でのオンライン4人クラスの学習は、パソコンとヘッドセットがあればすぐにできることですから、今後、言葉の森の作文学習を、学童クラブにも広げていきたいと思います。

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作文の通信教育は時代遅れか。これからは作文のオンラインクラス教育の時代に as/4471.html
森川林 2022/05/31 05:23 


●動画:https://youtu.be/ZDLk6bF-I0w

 言葉の森の作文指導は、以前は、電話による個別指導が中心でした。当時の通信手段は電話が中心でしたから、そういう方法しかなかったのです。しかし、その後、ZOOMを使えるようになって、言葉の森の通信教育はだいぶ変わりました。電話通信教育からZOOM通信教育に切り替える生徒が増えてきたのです。

 ZOOM通信教育の利点はいくつかあります。例えば、生徒に作文の書き方を説明しながら、他の生徒の参考になる表現を見せたり、関連する画像の説明を見せたりすることが、画面共有で簡単にできるようになります。
 今でもまだ電話通信で作文指導を受けている生徒は、半数以上いますが、これからは誰もがZOOMを利用して作文指導を受ける時代になると思います。

 このZOOMを利用する前の言葉の森のウェブ会議システムはGoogleハングアウトでした。しかし、使いやすさを考えて、今はすべてZOOMに切り替えています。

 もちろん、もっといい機能を持ったものがあれば、それを利用します。今、希望している機能は、個人通話機能です。みんながZOOMで一斉に勉強している中、先生がある一人の生徒だけに個別指導をする場面があります。現在は、それをZOOMのブレークアウトルームに移動する形で行っていますが、個人チャット機能のように、他の人の邪魔にならないように個人間で通話する機能があればかなり便利になります。この個人通話機能を生徒どうしで使えば私語機能とでもいうものになるでしょう。
 ZOOM、Google Meet、Microsoft Teamsのどこかが、いずれ実装すると思います。

 ところで、このZOOM利用の作文指導で一歩進んでいるのがオンライン4人クラスの作文指導です。
 わかりやすく説明するために、これまでの電話又はZOOMによる作文の個別指導を「作文個別指導」と呼び、ZOOMによる少人数クラスの作文指導を「作文クラス指導」と呼びます。

 違い1。
 まず、作文個別指導では、講師と生徒との授業の時間は10分以内です。次の生徒の指導と重ならないように7、8分の話になることが多いと思います。
 作文クラス指導では、講師と4人以内の生徒との授業の時間は45分です。45分の授業のあとも、生徒はそのZOOMの部屋に残って作文を書き続けることができます。

 違い2。
 作文個別指導では、先生の個別指導のあとは、生徒に任せる形なので、生徒がすぐに作文を書き出さなくてもわかりません。しかし、中学生以上の生徒は、「あとでやろう」と思って、先延ばしにしてしまうことがあります。それは、作文を書くということが、きわめて精神的な負担の大きい勉強だからです。
 それに対して、作文クラス指導では、参加している生徒がその場で一斉に作文を書き始めます。45分の授業時間内に書き終えることはありませんが、この必ず書き始めるということが大事なのです。そして、生徒が作文を書いている間に、先生は生徒を1人又は2人ずつ呼んで、個別指導を行います。だから、個別指導という点は作文個別指導と変わりません。

 違い3。
 作文個別指導では、生徒と他の生徒との間の交流の場は当然ながらありません。
 それに対して、作文クラス指導では、授業の前に全生徒の読書紹介があります。この読書紹介で、読書量が増え、読書の質が上がり、読書のジャンルが広がる生徒が実に多いのです。また、短時間で、読書紹介の要点をまとめ、必要に応じて質問や感想を述べる力が育ちます。全員の読書紹介という学習法は、4人程度のクラスだからこそできるものです。
 読書力を高めるには、こういうシンプルな仕組みが必要です。「朝の10分間読書」というシンプルな方法で、子供たちの読書量が増えました。同じように、毎週の読書紹介というシンプルな仕組みで、子供たちの読書の質も量も高まります。しかし、この読書紹介は、4人程度の人数でなければできない方法なのです。

 違い4。
 作文個別指導には、他の生徒との作文を通しても交流の機会はありません。あるとしても、年に数回の作文発表会だけです。
 作文クラス指導では、毎月第4週は作文発表会があります。そこで、他の生徒の作文を読み、感想を述べる時間があります。作文を書くもともとの目的は、赤ペンで添削してもらうことではありません。自分の書いたものをみんなに伝えるということです。みんなに伝えるという目的があるからこそ、構成や題材や表現や主題を工夫することが大事になるのです。

 違い5。
 作文個別指導でも、作文クラス指導でも、生徒がその日の課題の予習をしてくることが大事になっています。しかし、作文個別指導では、予習をせずに先生の話を先に聞く生徒もいます。
 作文クラス指導では、その日に書く作文の予習を発表する時間があります。これは、必ずしも全体の中で行うわけではありませんが、事前に書くことを準備して作文の授業に臨むことが前提になっているのです。

 違い6。
 ところで、作文クラス指導での作文の送り方はすべて作文画像のウェブ送信かテキストのウェブ送信です。作文個別指導のような郵送のやりとりはありません。
 今は、郵便局の配達日数が長くなったので、郵送によるやりとりはもう時代遅れになりつつあります。その日に書いてすぐ翌日に投函しても、先生がそれを見て翌週までに生徒に送り返すということは物理的にできなくなっています。作文の画像送信、又はテキスト送信であれば、先生の手元には書いた直後に作文が届きます。
 ところで、作文画像のウェブ送信についての質問が時どきあります。
 作文画像のウェブ送信では、すぐに作文が先生に届きますが、先生による赤ペン添削はありません。
 この赤ペン添削に郷愁を感じる人は多いと思いますが、赤ペン添削は、集団一斉指導という制約の中で生まれたやむを得ざる指導法です。また、事前指導がなく事後評価だけに力を入れる旧来の作文指導法の延長で生まれた指導法とも言えます。だから、赤ペン添削だけで作文が上達するということは、まずありません。

 言葉の森の作文指導は、事後評価よりも事前指導に力を入れています。それが、毎学期の作文項目指導です。そして、作文の指導法は、先生が全員に講義をするような一斉指導ではなく、生徒一人ひとりが自分の課題と項目に取り組むためのアドバイスをする個別指導です。だから、指導の詳細は、事後の講評と口頭によるアドバイスでカバーできるのです。
 赤ペンで誤字や誤表記を直してもらいたいという人もいますが、それは先生が講評の中で指摘するだけで十分にできます。また、なかなか治らない誤表記、例えば、文のねじれや常体と敬体の混在などがあるとしたら、それは直し方の問題ではなく、生徒の読む力の問題なのです。

 違い7。
 作文個別指導と作文クラス指導を比べて、現実的に違うのは、生徒の意欲です。
 3月1週の作文試験の際の作文の字数を小4と小5の生徒全員について調べてみました。その結果、作文クラスの生徒の作文は、作文個別の生徒の作文に比べて、平均100字も字数が多かったのです。例えば、作文個別の生徒が800字書いているとしたら、作文クラスの生徒は900字書いているということです。この字数の違いが意欲の違いです。
 もちろん、もともと意欲的に作文の勉強に取り組んでいる生徒は、作文個別指導でも、作文クラス指導でも同じようにがんばっています。特に、中学生や高校生の生徒で、時どき森リン大賞に載るような生徒は、どういう指導法でも、自分の中に学習意欲があるので同じように力作を書いています。しかし、多くの生徒は、他の生徒との交流の中で作文を書く方が意欲的に作文の学習に取り組めるということです。


 以上、作文個別指導と作文クラス指導のいくつかの違いを考えると、これまでの作文通信教育は時代遅れになったと言えます。特に集団一斉指導の赤ペン添削では、上達するのはもともと意欲的な生徒か、受験直前で意欲的にならざるを得ない生徒だけです。
 ある生徒がどれだけ上達しているかを測る指標は、小学生の場合は1年間で字数が100~200字伸びているかどうかです。中学生高校生は、森リン点が86点以上になっているか、又は1年間で2ポイント以上伸びているかどうかです。(言葉の森の生徒の場合は、「検索の坂」で自分の作文評価を見ることができます。)

 作文力は、その生徒の真の学力を表しています。
 今はまだ評価の仕組みがないために、作文試験は限られており、その評価もかなり曖昧です。だから、学校でも作文指導はほとんどなく、生徒は知識の詰め込みのような勉強に追われています。
 しかし、いずれ森リンのような作文評価の仕組みが広がれば、子供たちの勉強のスタイルは大きく変わります。単なる知識力よりも、思考力や表現力が重視されるようになります。思考力の発展したものは創造力です。そして、社会に出て本当に役立つのは、この思考力や表現力や創造力の方です。

 私は実は、森リンのもっと先のアイデアを持っています。それはAI森リンと言ってもいいと思いますが、深層学習で森リンを作り直すことです。ただし、その開発の時間が取れないためにアイデアにとどまっています。これはやろうと思えば数週間もあれば十分にできることですので、AI森リンを公の役に立つために開発する人又は会社であれば、このアイデアを譲ります。
 人間が考えることは似通っていますから、世界ではすでに同じことに着手している人がいると思います。こういう文化的なことは、日本が先を越して世界に貢献する必要があると思います。

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