●動画:
https://youtu.be/-kPW_3xTVfg
言葉の森が問題集読書を提唱したのは、もう30年近く前になります。
問題集読書は、問題集の問題文を読書がわりに読むだけという単純な勉強法ですが、その単純さ故に、実行できる子はほとんどいませんでした。
その代わり、問題集読書を実行できた子は、必ず国語の成績が上がりました。
問題集読書がなぜ続けにくいかというと、問題集の問題を解くような勉強に比べて、あとに形として残るものがないので、張り合いがないからです。
しかも、1冊の問題集を音読で5回以上繰り返し読むという勉強法ですから、張り合いがないわりに忍耐力や継続力が必要な勉強だからです。
ほとんどの子は、音読を嫌がります。それは、黙読よりも時間がかかるからです。
また、子供が音読をしていると、ほとんどの保護者はその音読を聞いて何らかの注意をしたくなります。
日本語は母音言語なので、読んでいる声を軽く聞き流すことができないからです。
しかし、音読を注意された子は、だんだん注意する人の前では音読をしないようになります。
だから、音読を聞いている人は、常に褒めてあげることが必要なのです。
音読の褒め方は、こうです。
子供がどんなに下手な読み方をしていても、
「難しい文章をよく読んでいるね」
とか、
「だんだん読むのが上手になってきたね」
とかいう励ましの言葉を言ってあげるのです。
すると、何も注意しなくても、必ず上手に読めるようになってきます。
さて、実行の難しい問題集読書の家庭学習を、確実に実行させる方法として始めたのが国語読解クラスの勉強です。
国語読解クラスでは、その子の問題集読書の読んだ範囲について質問をします。
しかし、まだすらすら答えられる子は、一握りです。
多くの子は、元の文章を見ながらでないと答えられません。
それは、読む回数がまだ5回以上になっていないからという面もありますが、音読ではなく黙読で表面的に読んでいる子が多いからということもあると思います。
さて、先日、保護者の方から速読についての質問がありました。
実は、言葉の森のサイトにも、速読のページがありました。
しかし、今はほとんど使っていません。
「長文速読問題」
https://www.mori7.com/kai/
「長文速読の磯」
https://www.mori7.com/iso/
(横書きの表示で見てください)
読書のスピードの大人の平均は、1分600字ぐらいです。
文庫本の1ページが約600字ですから、1ページを1分で読めれば普通の読書スピードです。
この読書スピードを時々測ってみると、速く読む意識がついてきます。
読書が遅くなる原因のひとつが、少し前に戻って読み直すという読み方です。
ですから、読んだところを手で隠しながら読んでいくと、自然に読書のスピードが上がります。
しかし、この速読法は、大人になってからやればいいのであって、子供のころは、速読よりもまず難しい文章を普通に読める難読力の方が大事です。
その難読力の練習が、問題集読書になるのです。
ところで、問題集読書は、普通の読書の代わりになるかというと、そういうことはありません。
読書には、熱中して読むという面があります。途中で止まらなくなって読むことがあるのが読書です。
問題集読書は、薬を飲むような勉強法です。問題集読書に熱中して止まらなくなるということはありません。
だから、問題集読書は、読書の代わりにはなりません。
それと同じように、短編の集まった本や、「5分で読める○○」や、「○○の名作20選」というような本も、熱中して読む本にはなりません。
子供には、熱中して読める本に出合うことが必要なのです。
●動画:
https://youtu.be/j9p6fXQqghc
国語読解の苦手な子が増えています。文章を読んで理解する力が弱いのです。
共通点は、あまり本を読んでいないことです。
読むとしても、絵が多く字の少ない本とか、長いひとつながりの本ではなく短編がいくつも並んだ本とかいうものが多いのです。
では、本を読まずに、空き時間は何をしているかというと、YouTubeを見たりゲームをしたりしているのです。
もちろん、YouTubeもゲームもいいのです。
問題は、そのために本を読む時間を取れなくなることです。
しかし、保護者の多くはそれが問題だと気がついていません。
子供は学校にちゃんと行っているし、出された宿題も一応やっているから大丈夫だと思ってしまうのです。
今の学校には、教育力はなくなっています。
小学生時代にいちばん大事なのは、文章を読んで理解する力をつけることですが、学校ではそれ以外の時間が多すぎます。
しかも、算数の授業では、基礎を身につけるよりも難しい問題をクイズのように解かせる趣味的な授業もあります。
理科、社会も、授業を面白くするために、難しい問題を出すことが多いのです。
更に、勉強とは関係のない行事の時間と、行事の準備のための時間が多すぎるのです。
子供の学力は、学校ではなく、家庭でつける必要があります。
そのためには、親子で対話をする時間を作ること、子供が読書をする時間を作ることが必要です。
ところが、多くの家庭では、子供に算数や国語の問題集をやらせるような勉強をしています。
問題集を解くような勉強は、勉強の習慣がつくこと以外の意味はありません。
問題集を問いて学力がつくということはないのです。
対話と読書の不足が学力の不足として表れてくるのは、高学年になってからです。
小学4年生のころまでは、表面的には何も問題ないように見えます。
読書をしない子でも、人との話だけは普通にできます。
むしろ活発に話をするので、学力があるように見られることもあります。
学力の差がはっきりするのは、作文を書くようなアウトプットの勉強をするときです。
作文の学力は、それまでのすべての学力の集大成ですから、すぐに上達することはありません。
だから、作文に、その子の本当の学力が表れるのです。
子供の学力を育てるのは、学校ではありません。
また、家庭でやる問題集でもありません。
ただ、親子の対話と読書の習慣を続けることです。
対話と読書で育った子は、いざ勉強が必要になったときには、すぐにその勉強の力をつけることができます。
読書力のある子は、勉強だけして早めに成績がよかった子をすぐに追い越してしまうのです。
今、小学生の子をお持ちのお母さんは、家庭での対話と読書にできるだけ時間を割くようにしていってください。
対話のコツは、子供の長文音読や理科実験の発表を利用することです。
子供が長文を読んでいたら、その長文に関係する親の体験談を話してあげるのです。
子供が暗唱の練習をしていたら、その暗唱の内容に関連する親の体験談を話してあげます。
また、理科実験の発表の時間があったら、一緒に発表のテーマを決めて、そこで子供と一緒に相談してあげます。
本当は、お母さんだけでなく、お母さんとお父さんがともに対話に参加できるようになるのが理想です。
いちばんいいのは、当の子供そっちのけで、お父さんとお母さんの話が弾むことです。
子供はそういう話を聞いて、語彙力と話す力と聞き取る力を育てていきます。
読書については、毎日必ず本を読む時間を作ることです。
子供だけに読ませるのではなく、家族全員で読む10分間読書の時間を設けることもできます。
子供は、親の後ろ姿を見て育ちます。
親が楽しそうに本を読んでいれば、子供も、自然にそういう大人になりたいと思います。
だから、日常生活の中で、親が本を読んでいる姿を見せることも大事なのです。