●動画:https://youtu.be/al5AwugHxDI
国語力が低下している子が増えています。
国語力とは、漢字の書き取りをする力ではありません。
漢字の書き取りは、練習すれば誰でもできるようになる知識の勉強です
国語力の本質は読解力です。
読解力の発展したものが作文力ですから、当然、子供たちの作文力も低下しています。
国語力低下の原因をスマホやゲームに求める人がいますが、スマホやゲームをやめれば国語力が向上するわけではありません。
いけないものをやめるという考え方ではなく、いいことをするという考え方が必要です。
スマホやゲームや漫画やテレビがいけないのではなく、読書と対話が不足していることがいけないのです。
読書と対話が十分に行われていれば、スマホやゲームの害はありません。
せいぜい時間をコントロールしておけばいいだけです。
話は少し変わりますが、見落とされがちなのは、テレビやビデオで子供の意図とは無関係に音声が流されている環境に置かれることです。
特に、幼児期にビデオやCDで音声を聞かされ続けた子は、人間とのコミュニケーションが苦手になる可能性があります。
人間の成長にとって最も必要なものは、人間による言葉がけです。
その言葉がけの発展したものが、対話と読み聞かせと読書です。
本を読まない子の原因に、読み聞かせの不足があり、読み聞かせの不足の原因に、対話の不足があるのです。
対話とは何かというと、子供が興味を持って聞きたくなるような話を、折に触れて親がしてあげることです。
そのためには、親の努力も必要です。
しかし、それは作業的な努力ではなく、知的な努力ですから、親にとっても楽しい努力になります。
作業的な努力の代表的なものは読み聞かせです。
読み聞かせも、もちろん必要です。
しかし、読み聞かせの代わりに、親が面白い話を聞かせてあげることもできます。
親の知っている昔話や、その場でアドリブで作った物語を子供に聞かせてあげれば、それは親にとっても楽しい知的な努力になります。
対話や読み聞かせをたっぷりされた子は、自分から進んで本を読むようになります。
よく、幼児期にはたくさん読み聞かせをしたという人がいますが、それは、親にとっての「たくさん」であって、子供にとっての「たくさん」ではなかったのです。
子供が小学生になると、「もう自分で本を読みなさい」と突き放してしまう人がいます。
同じように、子供が中学生になると、「もう自分で計画を立てて勉強しなさい」と突き放してしまう人もいます。
子供が自立するのは、子供の方から自然にするものです。
それまでは、親が手とり足とり世話を焼いてあげればいいのです。
子供は、成長するにつれて自然に自立します。
大事なのは自立させることではなく、成長させることです。
その成長は、塾や学校での勉強ではなく、家庭での対話の中で親がしていくものなのです。
家庭での親子の対話を増やすコツはあります。
第一に、家族で食事をするときは、親子でいろいろな話をすることです。
子供から話を引き出すのではなく、親が楽しい話をしてあげるのです。
そのためには、家族がそろって食事をするようなときは、テレビやスマホは消しておくことです。
途中から家庭の習慣を変えるのは難しいので、子供ができるだけ小さいうちから、食事中はテレビやスマホは消すと決めておくことが大事です。
こういう小さな決まり事の積み重ねが、家庭の文化になります。
第二に、親が読書をすることです。
それは、子供の成長に合わせた理科や社会の読書です。
親が、面白い科学の話や、面白い伝記のエピソードを知っていると、身近な生活の場面に合わせた興味深い話を子供にしてあげることができます。
こういう話は、読書よりも心に深く残るので、子供の感受性や思考力や語彙力を育てます。
第三に、外部の機会を利用することです。
ひとつは、季節の行事です。
正月の遊びや、節分の豆まきや、春の花見や、年末の大掃除など、費用をかけずにできる行事はたくさんあります。
子供にプレゼントを渡すことが中心になる商業化された行事よりも、家庭で独自に工夫できる行事を生かすことです。
もうひとつは、生き物を飼うことです。
ザリガニやカタツムリやメダカやカブトムシなどは、あまり手間をかけずに飼うことができます。
犬や猫や手乗りの小鳥は、人間とのコミュニケーションが取れるので、子供の感情を豊かにします。
飼うことが大変ならば、ベランダや庭に、スズメの餌台を置いておくとか、アゲハチョウが産卵に来るサンショウの木を植えておくとかすることができます。
うまく行けば、珍しい鳥が来たり、スズメが巣を作ったり、アゲハチョウの幼虫が蛹(さなぎ)になったりする様子を見ることができます。
更にもうひとつは、これは宣伝ではありませんが、言葉の森の勉強を生かすことです。
作文の勉強では、子供の書く課題を事前に見て、その課題に合わせた親の体験談や意見を話してあげることができます。
創造発表の勉強では、親子で実験や観察や調査や研究の企画について、知的な対話をすることができます。
暗唱や音読の勉強では、その内容について親子で話をすることができます。
また、読書紹介や一人一言の時間に、みんなにわかるように話をすることは、子供の対話力を育てます。
勉強の知識を詰め込むことよりも、言葉を通して頭脳を活性化することが国語力になり、将来の学力につながっていくのです。