ミニトマト
詩人の工藤直子さんが、「
まるごと好きです」という自伝的な本の中で次のようなことを書いていました。
勉強かスポーツかで何かをしているときに、ある先生が、「がんばるためには、自分よりひとつ上の人を目標にして、その人に勝つようにするといい」とアドバイスをしてくれたそうです。
そのとき、工藤直子さんは、話はわかるけれど、全然ピンと来なかったと思ったそうです。
私も、その気持ちはわかります。
競争して相手に勝つということが、実感としてよくわからないのです。
もし、そういう競争の場面があり、相手がすごくがんばっているなら、勝ちは相手に譲ってもいいとさえ思います。
そんなに勝ちたかったら、勝ってもいいよ、という感じです。
自分自身の大学入試のときも、合格はしましたが、そのために落ちた人がいるのはかわいそうだなあというのが最初に思ったことでした。
そのことを、入試結果の報告のときに、ふと担任の先生に言うと、怒られました(笑)。
競い合うことによって上達するということは確かにあります。
しかし、「葉隠」には、次のようなことが書かれています。
最初は、自分はまだだめだと思う。これは役に立たない。
次に、人に勝つようになり、自分は強いという気持ちになる。これは役に立つ。
しかし、更にその先に、勝ち負けを超えた無限の道があることがわかるようになる。
世の中の多くの人は、人に「勝つ」ことができて、社会の「役に立つ」ことができるところまでを目標にしています。
しかし、それは、まだ途中の段階です。
その先に、勝ち負けを超えた無限の精進の世界があるのです。
面白い記事を見ました。
▽「通信簿」を廃止した小学校が問うテストの点数付けや運動会の勝ち負けの意味
「負ける悔しさを味わわせてほしい」「競争も大事だ」という保護者の声に愕然
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/75591
====引用ここから====
(通信簿を廃止した校長先生の話)
「企業ではプレゼンして負けたらそれでお終いです」と勝つことの重要性を主張する保護者の声もいただきましたが、私が言いたいのは、一緒に働いているチームのメンバーは仲間だということです。そこでは、蹴落とし合いやランク付けはしない方がいい。得意なところを活かし合いながら助け合った方がいい。
====引用ここまで====
言葉の森の指導方針は次のとおりです。
1.国語、数学、英語について、テストの点数はつける。しかし、100点が取れるまで解き直す。
どうしても100点を取れないときは、先生が解法を説明する。
2.学期に1回の通信簿のようなものは出さないが、先生が、その生徒について気づいたことがあれば個別れんらく板で保護者に連絡をする。
3.成績はオープンでもいいと思います。
大事なのは、他人との比較ではなく、自分自身の向上だからです。
そして、「競争から協力へ」の先にあるのが、「協力から創造へ」の世界です。
その話はまたいつか。
イモカタバミと言うらしい。
私は、これまで、子供が過ごす時間の多くが家庭で、学校は子供が過ごす時間の一部と思っていました。
しかし、よく考えてみると、学校に、朝9時から15時までいるとすれば、学校の時間は約6時間です。
家庭の時間を、夕方5時から夜10時までと朝の1時間とすれば、これも約6時間です。
すると、学校に行って同じクラスの友達と一緒にいる時間の方が、子供の生活に大きな影響を与えるだろうということがわかります。
子供の生活は、学校の担任のクラス運営の仕方で左右されるということになるのです。
クラスというものの意義がわかりやすく書かれた本がありました。
「クラスはよみがえる:学校教育に生かすアドラー心理学」
https://www.amazon.co.jp/dp/4422111272/
「アドラー心理学でクラスはよみがえる:叱る・ほめるに代わるスキルが身につく」
https://www.amazon.co.jp/dp/442211641X/
これを見ると、競争的なクラス運営ではなく、協力的なクラス運営によって、子供たちが生き生きと勉強や遊びをしていくことがわかります。
言葉の森のオンラインクラスは、時間的には子供の生活のごく一部ですが、協力的なクラス運営ができるように工夫していきたいと思っています。