ミカンとメジロ
●動画:https://youtu.be/hDu6rb1sQvs
私は、何度も同じことを書きますが、人を批判することは好きではありません。
大事なことは、批判ではなく創造することだからです。
だから、批判のような話になるときは、必ずこちらの独自の対案を出しています。
日本の作文教育は、世界の水準を大きく超えています。
諸外国で、日本のように小学1年生から作文が書ける教育をしているところはありません。
なぜ、日本でそのような作文教育ができるかというと、日本語は、喋る音と書く言葉が一対一で対応しているからです。
数少ない例外が「わとは」「おとを」「えとへ」「小さいゃゅょっ」などです。
これらの例外を除けば、日本では、喋ることのできる子は作文を書けるのです。
このように恵まれた日本語環境で生きる子供たちにもかかわらず、作文の苦手な子は数多くいます。
また、作文教育のほとんどが、小学校の間で終わります。
小学校時代の中でも、作文教育が主に行われるのは、小学2、3年生までです。
小学校高学年、中学生、高校生と、作文指導は、次第に少なくなるか、なくなります。
それは、作文指導の理論と方法がないからです。
現在の作文指導のほとんどは、穴埋め作文のような構成メモと、赤ペン添削による指導です。
この指導で、作文が書けるようになる子は、もともと書ける子だけです。
また、中学生、高校生まで作文の学習を続けようとする子はいません。
齋藤孝さんが書いた「こども文章力」は、この低レベルの作文教育の現状を追認し、そのまま作文指導の標準としたものです。
作文教育を考える現場の先生やお父さんお母さんが、こういう作文教育でいいのだと考えれば、作文が書ける子は、もともと書く力がある子だけになります。
また、中学生、高校生まで作文の勉強を続けようとする子は出てきません。
なぜ、このような作文指導になるかというと、著者に、作文教育というものに対する理論と方法がないからです。
作文通信教育講座「ブンブンどりむ」は、齋藤孝さんが監修しています。
寄せ集めの作文指導で作文が書けるようになる子は、親がていねいにフォローしてあげることのできる子だけです。
私は、最初、「こども文章力」のそれぞれの章について、もっとよい別の指導の仕方があるということを書こうとしました。
しかし、ほぼ全ページについて書く必要があるとわかりました。
それぐらい、レベルが低いのです。
それで、以下は、簡単にまとめて書くことにしました。
より詳しい話を知りたいという方がいれば、コメント欄に書いておいてください。
■全体の感想
基本的な考え方は、穴埋め作文です。
「最初にどうして」「次にどうして」「最後にどうなった」という穴埋めの枠を埋めることができても、それを作文として長く書けるのは、もともと書く力がある子だけです。
そして、書く力がある子は、そういう遠回りなことをするよりも、直接作文を書きたいと思います。
学校でよく行われている構成メモの指導も、この穴埋め作文の指導と同じです。
■例文
この本に唯一載っている小学3年生向けの例文は、生徒の見本とするような例文になっていません。
第一に、題材に個性も感動もありません。第二に、「朝起きてから寝るまで」の作文のように構成が平板です。第三に、結びの感想が「うれしかったです」のような浅い感想で終わっています。第四に、たとえを使うというような表現の工夫がどこにもありません。
字数を埋めるために、出来事を順番に書いているだけの例文になっています。
■日記
日記で、何を書くかという穴埋めの提案をしていますが、日記で大事なのは、何を書くかではなく、どう書くかです。
また、そもそも、小学校低学年で日記を書かせる指導に意味はありません。
大事なことは、書かせる前に、本を読ませることです。
■読書感想文
物語の内容と自分のエピソードを結びつけようという書き方は、言葉の森の指導法とそっくりです。
言葉の森が、この読書感想文の指導法を始めたとき、同じような読書感想文指導をしているところはどこにもありませんでした。
本当は、この読書感想文の指導にこそ、具体的な例文が必要ですが、この本にはそれはありません。
(言葉の森の例文は、
感想文の書き方)
■将来の夢
将来の夢について、将来のことを書く手順が書かれています。
しかし、「将来の夢」という題名は、将来のことを書くのではなく、そう思った過去の実例を書くことが大事です。
■問いを立てて書く
テーマを考えて理由と結論を書く書き方が漠然と説明されています。
しかし、問いを立て、その理由を述べるには、問い自体に対比が必要です。
「BではなくAだと思う」という対比があればこそ理由が書けます。
■観察したことを書く、比較したことを書く
観察したこと、比較したことなどという作文の課題が書かれています。
こういう「○○作文」というような作文指導をしている先生は多いと思います。
しかし、作文指導は、いろいろなことを思いつきでやらせるものではなく、ひとつの方針に沿って指導するものです。
■調べたことを書く
調べることとして定義、背景、経緯などを調べると書かれています。
しかし、調べたことを書く際に大事なことは、データ(数字や固有名詞)を入れることです。
また、作文を書いている途中でデータを調べるのではなく、すでに調べたデータを作文にあてはめるという考え方をする必要があります。
そうしないと、調べるだけで時間がかかってしまうからです。
■この中学校を選んだ理由(志望動機)
志望理由として、その学校のこと、自分のやりたいことを書くと書かれています。
しかし、志望動機は、ただ学校のこと、将来のやりたいことを書くのではなく、自分の過去の実績をもとにして書くことが大事です。
このコツを知らない人が多いです。
■小学校時代の思い出
行事に参加したこと、知らない土地や人に出会ったこと、芸術やスポーツを見て感動したことなど、思い出の例が羅列されています。
しかし、思い出という実例が先にあるのではなく、自分の考えが変わったというような主題を先に立て、その主題に合った実例を見つけるのが書き方のコツです。
■自分の長所と短所
自分の長所と短所をよい面悪い面の両方から考えてみようと書かれています。
しかし、長所と短所は、自分で考えるより先に、家族に聞いた話をもとにすることによってより客観的な作文になります。
小学生の作文指導は、家族の対話とセットになっているのです。
■物語の要約(浦島太郎)
要約の仕方として、すでに知られている浦島太郎の話をもとに、言葉をしぼりこむということが書かれています。
しかし、要約は、実際の文章を読んで要約の練習をしなければ書けるようにはなりません。
言葉の森の要約の仕方は、
こちらです。
■報告文、キャッチコピーの作り方、手紙の書き方
この本を読んで、報告文、キャッチコピー、手紙の書き方までやろうという子は、まずいないと思います(笑)。
センリョウ
●動画:https://youtu.be/_AqE5OhYYrw
大人は、「書く」という結果を見がちだが、「書く」前提として「読む」がある。
読む量が少なければ、うまく書けない。
そのうまく書けないことを添削でいくら直しても、やはりうまく書けるようにはならない。
しかし、読む量が増えれば、直さなくてもうまく書けるようになる。
小学校では、2年生ぐらいで日記を書く指導が増える。
たいていの親子は、そこで、何を書いていいかわからなくなる。
「何を書くか」というところに目が向くから、書くことがなくなる。
作文通信教育講座ブンブンどりむの監修者、齋藤孝さんの「こども文章力」でも、「日記は『したこと』を思い出すところからスタート」(P16)と言っているが、これは日記指導の本質を知らない人の話。
「( )を食べた、( )を見た、( )に行った」などいくら穴埋めの言葉を入れても、すぐに書くことはなくなる。
日記は、「何を書くか」ではなく、「どう書くか」と考えるのが大事。
例えば、「たとえを入れて書く」「会話を入れて書く」「どうしてかというとという言葉を入れて書く」「色や音を入れて書く」「ダジャレを入れて書く」という書き方だ。
これなら、毎日、その日の朝ごはんのことを書いたとしても、毎日新しいたとえやダジャレを思い出して書ける。
そして、何よりも、目標があることと、自分なりの創造があることが楽しくなる。
勉強は、つまらないことを義務感としてやらせるのではなく、主体的で楽しくできることを親や先生が工夫してやらせることだ。
※私は、人を批判するのは好きではありません。
批判するよりも、自分で新しいものを創造することが大事だからです。
しかし、勘違いした作文教育の方法が広がれば、それは多くの人にとってマイナスです。
だから、あえて名前を挙げて、どこが問題なのか、そしてどうしたらいいのかを書くことにしました。