ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 510番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
受験にも役立つ上手な作文の書き方 as/510.html
森川林 2009/06/03 11:31 


 小学校高学年の生徒から、作文をもっと上手に書くにはどうしたらいいのですか、という質問がファクスで送られてきました。一緒に送られてきた作文を見ると、それなりに上手に書けています。しかし、もっと上手にするにはどうしたらいいのかということをその子に話しました。


 今日は、多くの皆さんに関心のある「上手な作文を書くにはどうしたらいいか」ということについて説明したいと思います。

 まず、上手な作文と一口に言いますが、実は、上手な作文の定義ははっきりしていません。しかし、上手な作文と感じられるものは実際にあります。それをどのように考えていたらいいのでしょうか。


 その定義に入る前に、まず、文章書くということの社会的、歴史的な意義を説明したいと思います。

 文章の役割というものは、書き手と読み手の関係によって四つの歴史的な段階があります。


    ┃受け手
    ┃多┃少
━━━━╋━╋━
与え手多┃3┃4
   ━╋━╋━
   少┃2┃1


 書き手も少なく読み手も少なかった時代には、役に立つ文章ということが文章を書くことの意義でした。

 しかし、歴史的には、「役に立つ文章」以前の時代もありました。書き手も読み手も、ともにきわめて少なかった時代です。例えば、ギリシア時代では、プラトンはあまり本を読まなかったそうです。読むに値するような本そのものが少なかったからでしょう。プラトンの師であるソクラテスは、もっぱら弁証法という対話によって思索を深めました。ソクラテスが木の陰でじっと立って何事かを考えているというような光景がよく見られたそうです。当時は、文章を書くということがあまり一般的ではなかったので、考えを深めるためには、他人とディスカッションをするという方法が中心だったのです。

 ところがその後、ペンや紙が発明され文章を書く手段が普及することによって、弁証法による対話の代わりに、文章を書くことによる自己との対話が可能になりました。つまり、書くということの本質は、最初は自己との対話だったのです。

 しかし、その後、読み手が増え、更に書き手が増え、更に書き手がもっと増えるというような歴史の発展の中で、次第に書く意義が変化してきました。それぞれの時代に対応する文章の意義は、読み手が少ない=役に立つ、読み手が多い=わかりやすい、読み手がもっと多い=面白い、書き手の方が読み手よりも多い=その人らしい、となります。しかし、もともとの文章を書く本質は、自己との対話だったということです。


 この文章の社会的意義と、上手な文章を書くということとは、別の次元の価値になっています。

 例えば、悪文だが役に立つ文章、悪文だが面白い文章、悪文だがその人らしい文章、というものがあります。これと似た例として、悪筆だがその人らしい文字というようなものがあるのと同様です。

 上手な文章を書くことよりも、むしろ役に立つ、面白い、その人らしい文章を書くことの方が、文章の本質的な価値になります。しかし、これらの本質的な価値は、文章が上手に書けるという自分なりの自信がないと表に出しにくいのです。よく、話をすると面白いが、書いた文章を見るとあまり面白くないという人がいます。シンデレラの本質は、美しい心でしたが、シンデレラは衣装がなければ舞踏会に行くことができませんでした。つまり、価値ある内容を表に出しやすくするために、上手な文章を書くという意義があるのです。


 ここで、上手に書くことの大切さに話がつながりました。

 しかし、スポーツなどにおいて、試合の勝敗とそのチームの実力との間に、相関は高いが必ずしも一致しないという関係があるように、文章の上手さについても、上手さと実力の間に、相関は高いが必ずしも一致しないという関係があります。

 文章を書く実力は大きく分けると、字数力、語彙力、思考力、実例力などになります。このうちの字数力というものは表面的な実力のように見えますが、実は意外と重要で、その生徒の実力がどのくらいあるかということは、どのくらいの字数が楽に書けるかということと関連しています。字数には、書くことに対する慣れと豊富な話題が必要です。一方、語彙力、思考力、実例力は、広い意味での考える力です。この、文章を書きなれていることと、考える力のあることが、文章の実力を支える要因になっています。


 さて、このあたりから、受験にも使える上手な作文の書き方になっていきます。以下の内容は、簡単にエッセンスだけ書いていますが、本当はかなり密度の濃い話です。


 文章の上手さというものを言葉の森では四つに分けて考えています。

 それは、構成、題材、表現、主題という四つの分類です。これらのほかに、表記というものもありますが、これは、書き方を間違えていない、あるいは読みにくくないということですので、上手さの要因というよりも、文章を書く上での前提のようなものです。

 さて、第一は構成です。構成は文章全体の流れです。説明文や意見文の場合は、わかりやすい流れということになりますが、事実中心の文章では、伏線のようなものも構成に入ります。読んでいる途中で伏線が発見されると快感を感じるという心理が人間にはあります。「あそこでこうだったから、ここでこうなったのだ」ということが自分なりわかると、発見の喜びがあるのです。これは、説明文でも同じで、書き出しの文章と途中のキーワードと結びの文章が対応していると、読み手はその文章に居心地のよさを感じます。

 第二位は題材です。この題材の面白さは、個性、挑戦、感動、共感、ユーモアなどと分けて考えることができます。コンクールに入選する作文には、この題材のよさが欠かせません。しかし、題材は実力よりも、どちらかと言えば偶然に左右されるものです。この点から見ても、実力と上手さは必ずしも一致しないということがわかります。

 第三は表現です。この表現という分野が、文章の上手さという点で最も微妙な説明を要するところです。人間は、いい表現に出合うと、気持ちのよさを感じます。それは例えば詩的な文書に対して感じる快感と同じようなものです。言葉の森では、光る表現ということで、名言を自分で作ったりことわざを加工したりするという指導をしています。この光る表現が入ると、それだけで、文章の印象が何割か上手になります。

 表現の分野では、もう一つ、もっと大事で微妙なことがあります。それは、多様な語彙が使われているということです。これは文章自動採点ソフトの森リンでかなりの程度正確に評価することができます。上手でない文章は、全体に単調な語彙しか使われていません。この語彙の単調さは、読書経験の少なさと結びついています。本をたくさん読んでいる子は、作文に使える語彙が自然に豊富になります。読んで理解できる語彙と、書くときに使える語彙は、その量がかなり違います。書く語彙は、読む語彙よりもずっと少ないのが普通です。

 言葉の森では、小学校5年生から常体で書くという練習をしていますが、これは、小学校の5年生あたりから、教科書に載っている文章で常体の割合の方が多くなるからです。一般に、敬体の文章よりも常体の文章の方が、説明的な文章であったり、大人向けの文章であったりすることが多い傾向があります。子供たちの作文を見て、最初から何も指示しないのに常体で書いてくるという子は、それだけで難しい本をよく読んでいて語彙が豊富だということがわかります。小学校低中学年で既に常体で書くような子は、一般にかなり本好きな子です。ところが、普通は、大学生になっても、常体ではなく敬体で書く人の方がずっと多いのです。

 第四が主題です。主題とは、読み手にとって価値ある意見や立場が書いてあるるかどうかということです。文章に書かれている意見に読み手が共感すると、その文章が上手に感じられます。逆にいうと、自分の考え方や感じ方と相反する文章は、上手には感じられません。説明文や意見文では、主題はその文章の立場や意見などになりますが、事実文では、主題はその文章の背後にあるトーンのようなものになります。上手に書いてあるが何か暗いものがあるという文章と、同じ上手さで何か明るいものが感じられるという文章とでは、普通は、自然に明るさが感じられる文章の方が上手に感じられるということです。


 さて、ここまで説明すると、作文を上手に書くコツがわかったと思います。それは、言葉の森で勉強することはもちろんですが、その土台として、たくさんの本を読み、たくさんの挑戦的な経験をしていくということです。

 そして、その上手さを土台にして、真に価値ある文章を書くことを作文の勉強の目的にしていってください。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)


マインドマップ風構成図

 記事のもととなった構成図です。



(急いで書いたのでうまくありません)

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

森川林 20090603  
 最初にかいた猫の耳のある女の子の絵がわかりにくかったので、男の子の絵にしました。(^^ゞ

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
作文の書き方(108) 受験作文小論文(89) 

記事 509番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
言葉の森の教室の特徴 as/509.html
森川林 2009/06/02 09:10 


 言葉の森の作文教室の特徴を説明します。

 第一は、学習塾のようなものではないということです。どこかの学校に入ることが目的で、ここでの勉強がその手段となるような形の勉強を目的にしているわけではありません。言葉の森は、読み書き考える力をつけること自体を目的としています。その結果、受験に合格したり、コンクールに入選したりする子が多くいるということなのです。

 第二は、たぶんどこよりもわかりやすい指導している点です。どんなに苦手な子供でも、言葉の森に来れば作文を書き出すことができます。本人も親も初めてこんなに書けたと驚くことが多いのですが、言葉の森ではごく普通に行っている指導です。

 第三は、たぶんどこよりもハイレベルな指導しているということです。小学生から高校生まで書くことにどんなに自信がある子でも、言葉の森に来ればそこでまた新たなことを学ぶことができます。ほかのところでは教えてもらわないような指導の蓄積がたっぷりあるからです。

 第四は、家庭での教育を大事にしている点です。勉強をすべて教室でお任せにしてもらうのではなく、家庭の教育がサポートする形の学習を考えています。子供たちを育てるのは、学校や塾などの外にある機関ではなく家庭だからです。家庭で、子供の作文に関心を持ち、長文をもとに家族の対話をしたり、作文の課題をもとに両親の子供のころの話を教えてあげたりすれば、勉強の効果は何倍も大きくなります。

 第五は、子供たちに勉強のノウハウを教えるようにしている点です。方法が分かれば、自分で勉強を続けていくことができます。特定の教材や機器に頼らなければできないような形の勉強は行っていません。教材や機器にあたるものは、ほとんどすべてインターネット上で公開しています。

 第六は、読む力書く力考える力をトータルに考えている点です。作文を書くだけではなく、その土台としての読む力や考える力を育てることに力を入れています。作文は、日本語力の集大成となるものですが、作文の勉強だけしても力はつきません。日本語力の裾野にあたる読む力や考える力を育てることが作文の勉強には欠かせません。

 第七は、幼稚園や小学校低学年から、高校生大学生社会人までのトータルな指導の流れを考えている点です。これまでの生徒たちの中には、小学校一年生から初めて高校三年生や大学生になるまで勉強を続けた人が何人もいます。小学生の間に上手な作文を書くことが目的なのではなく、将来大人になったときに書く文章の準備として小学生の間の勉強をしていくように考えています。

 第八は、これらの土台になる考えとして、作文というものの哲学的なビジョンを考えている点です。現在の日本の社会に作文の教育をどのように位置づけるかということを考えて指導を行っています。ですから、作文を単に日本語の力として考えるだけでなく、日本の文化や日本人の心として考えていきたいと思っています。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)


 明日は、これらの特徴を個々に説明していきます。


マインドマップ風構成図

 記事のもととなった構成図です。



(急いで書いたのでうまくありません)

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
言葉の森の特徴(83) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習