これまでの勉強の多くは、覚える勉強でした。
テストに出る範囲をしっかり覚えてさえいれば、いい点数が取れたのです。
数学は考える勉強だと言う人もいますが、これも解法を覚える勉強でいい点数が取れるようになります。
覚える勉強で、いい点数が取れれば、確かに最初は勉強が楽しくなります。
しかし、考える力のある子は、次第にそういう勉強に物足りなさを感じるようになるのです。
では、どういう勉強がこれからの勉強になるかというと、それは考える勉強、作る勉強です。
私(森川林)の教えている算数数学クラスと総合学力クラスでは、子供たちにオリジナルな問題を作ってもらうことにしています。
何の見本もなしに作るのは難しいので、自分がそれまでに解いた問題集の問題の中から、自分にとって難しかった問題を参考にして作るのです。
これは、考える勉強だから時間がかかります。
しかし、時間のかかった分だけ、その問題の理解が深まります。
また、それぞれの生徒の実力に応じて、多様な問題が作られます。
答えのある勉強は、家庭学習で毎日やっていくことができます。
しかし、それだけでなく、自分らしい思考力と創造力を生かす勉強もする必要があるのです。
【子供たちが作った算数数学の自作問題の例】
■問
長さが12センチの針金を2本に折りそれぞれ正方形を作ったところ2個の正方形の面積の和は8cm2になった。この時大きい方の正方形の一片の長さを求めなさい。(中2)
□答え
大きい方の正方形の一片の長さをxcmとする
大きい正方形を作るときに使う針金の長さは4x㎝であるから、小さい方の正方形を作るときに使う針金の長さは12-4xcmであり
小さい方の正方形の一
片の長さは12-4x/4=3-Xである
x>0かつ3-x>0かつxーxであるから
3/2<x<3・・③ 定義域を定める!!!
二個の正方形の面積の輪について
x^2+(3-x)^2=8 x^2+(9-6x+x^2)=8
2x^2-6x+1=0
2x^2+2(ー3)x+1=0
解の公式2 ー(ー3)±√(ー3)^2ー2×1/2=3±√7/2・・・④
③.④より大きい方の正方形の一片の長さは3+√7/2cm
■問
6人の生徒が1ヶ月間に読んだ本の冊数を少ない順に並べると、下のようになった。6人の生徒が1ヶ月間に読んだ本の冊数の平均値と中央値が等しいとき、aの値を求めてください。(中3)
1,3,5,a,10,12
□答え
a=8
解法
※上記のことから、5~10の値になるだろうと予想をしながら問題を解く。
1、6人の読んだ本の冊数の平均を表す。→31+a①
2、6人の読んだ本の冊数の中央値を表す。→6(全員)÷2(半分)=3(真ん中)
割りきれるので、3、4番目の本の冊数を割る2して表す。→5+a/2②
3、①と②を等式にして解く。
4、答えが分かる。
■問
6秒で、9999m走る人がいます。
この人は、分速何mですか。(小6)
□答え
6秒=6/60=1/10
9999÷1/10=9999×10/1=99990/1
=99990
A 分速99990m
思考力、創造力を必要とする勉強は、英語でもできます。
総合学力クラスの英語の授業では、英文の暗唱をしています。
しかし、この英文の暗唱も、本当は、自分の好きな英文を暗唱してもらうといいのです。
例えば、
リンカーンの演説や
キング牧師の演説は、YouTubeでも聴くことができます。
どうせ暗唱するのなら、自分が感動できる文章を暗唱する方がいいからです。
小学456年生のころは、耳の感覚が中学生のころよりもいいので、CDなどで聴いた音声のとおり、そっくりに暗唱することができます。
英語の文法的な学習は、中学生になってから進めることにして、小学生時代はまず音声を中心に学習するのがいいのです。
総合学力クラスの英語の授業では、英文暗唱のほかに、自由英作文を作ってもらっています。
どうせ作るなら、なるべく面白い文を作ろうということでやっています。
【これまでの生徒が作った自由英作文の例】
コップの中に山の形をした電車が落ちています。
A mountain-shaped train has fallen into the cup.
チョコレートが溶けてココアになりました。
The chocolate melted and turned into cocoa.
自販機の下に落ちていた1円玉を拾う
Pick up the 1 yen coin that fell under the vending machine
熱が37度しかないにもかかわらず、兄は早退しました
Even though the fever was only 37 degrees, my brother left early
犬が白目を向いて寝ている。
The dog is sleeping with his eyes rolled up.
小さい「ぁ」ってなんて言うの?
How do you say small "a"?
算数数学の自作問題にしても、英語の自由英作文にしても、答えのある勉強ではありません。
それぞれの生徒の関心と実力に応じて、自由に取り組むことができます。
それは、その勉強が、思考力と創造力を必要とする勉強だからです。
人間の頭脳は、自分が主体的に参加したときほど活性化します。
人の話を聞くだけなら、うたたねをしながらでも聞くこともできます。
しかし、自分が何かを作ったり発表したりするとなると、全身全霊で参加しなければなりません。
こういう思考力、創造力を必要とする勉強が、これから必要な勉強になってくるのです。
(つづく)
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記憶力ではなく思考力を育てることが、今後の教育の重点になります。
しかし、今の子供たちは、記憶の勉強に適応しているために、考える勉強を負担に感じることがあります。
考えるよりも、作業的に行える勉強の方を好む面があるのです。
だから、私は、できるだけ思考力や創造力を使うようなかたちで勉強を行うように工夫しています。
思考力、創造力を使う勉強の代表は、作文の勉強です。
作文は、自分なりに考えていかなければ書けません。
だから、作文の勉強をするときには、精神的なエネルギーが必要です。
ほかの勉強の多くは、記憶を再現する勉強ですから、やろうと思えばすぐに始められます。
作文だけは、やろうと思い、始めること自体が大変なのです。
これが、作文の通信教育で、提出ができなくなる大きな原因です。
言葉の森のオンラインクラスでは、同じクラスの4人から5人が一斉に作文を書き始めます。
だから、全員、作文の提出ができます。
作文を書くエネルギーを出すためには、みんなと一緒に一斉に始めるという共通の場が必要です。
しかも、その人数は4~5人という互いの顔と名前のわかる少人数であることが必要なのです。
さて、言葉の森の保護者で、低学年から子供に作文の勉強をさせる人の多くは、こう考えていると思います。
「学校で教わる勉強は、誰でもできる。それに更に上乗せするような勉強ではなく、もっと子供が自由に考えるような勉強をさせたい」と。
だから、低学年で作文の勉強を始めた子は、中学生や高校生になっても作文の勉強を続ける子が多いのです。
思考力、創造力を使う勉強は、作文以外の教科でも考えられます。
私が教えている国語読解クラスでは、問題集の問題文を読んで、その問題文をもとに五七五七七の短歌を作るという勉強をしています。
今後は、短歌だけではなく、その問題文の150字要約と、自分なりの感想や意見も書くという勉強にしたいと思っています。
これまでに子供たちが、問題集の問題文をもとに作った短歌の例です。
米とみそ 互いの欠点 隠し合う 2つがあれば 完全食だ(小6)
ミツバチは 身体の中に 時計がね 確かにあるよ 間違いなしだ(小6)
日本語の 間(ま)という言葉 意味豊富 空間的や 心理的(中3)
文理の別 若者たちの 無知を助長 教養のない 抜け殻を生み出す(高1)
予定表は 白紙のほうがいいけれど 白紙だと 不安になるのが 人間というもの(中2)
短歌を作るには、うまく言葉を選ぶための語彙力が必要になります。
その語彙力を育てるものは、多様な読書です。
国語読解クラスでは、これまでは、読解問題とその問題の解説と、問題集読書のチェックを行っていました。
しかし、こういう答えのある勉強では、考える力のある子にとっては物足りないと思います。
短歌、要約、意見という勉強なら、思考力と創造力を生かせます。
更に、ある人の意見に対して、ほかの人が質問や感想を言えば、ディスカッションをすることもできます。
作文も、国語も、考える勉強としてやっていくことが大事なのです。
(つづく)
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現在の教育の問題点の第二は、知識を記憶し再現するための教育が中心になっていることです。
その理由は、知識の記憶と再現は、答えがひとつしかないので採点がしやすいからです。
また、昔は、さまざまな知識を記憶しておくことが、生活する上でも勉強する上でも役に立ったからです。
しかし、今は、ものの考え方と、そのために必要な知識の探し方さえ知っていれば、ほとんどのことは間に合います。
もちろん、身体化された知識は、ある程度は必要です。
それは、基本的な日本語力、計算力、数学力、そして、理科や社会の分野のさまざまな科学的知識です。
話は少し変わりますが、そういう知識を記憶する力をつけるのに役立つのは、小学校低学年からの暗唱です。
ところで、現在の学校教育で行われている知識の勉強は、子供たちにとって必要な知識の範囲を超えて、成績の差をつけるために行われているのです。
では、どうしたらいいかというと、未来のテストは、教科書も参考書も辞書も電卓も、すべて持ち込み可で行うようにすればいいのです。
子供たちが社会に出てから何かを学ぼうとするときと同じです。
学校の中でだけ、子供たちが何も持たない原始人であるかのようにテストが行われているところに問題があるのです。
そもそも、記憶力で差をつけようとするところに、大きな問題があります。
記憶で差をつける勉強をさせられているので、子供たちの勉強も、一夜漬けのような記憶に頼った勉強になります。
今の勉強では、成績は、かけた時間に比例します。
しかし、かけた時間に比例するような勉強の内容そのものに問題があるのです。
本当に評価する価値があるのは、記憶力ではなく思考力です。
私(森川林)の教えている算数数学のクラスでは、子供たちに質問するときに、よくこう言います。
「この問題はどうやって解くの? 答えまでは言わなくてもいいから、考え方を言ってね」
問題の解き方さえわかれば、あとの答えを出すことは誰でもできるのです。
また、子供たちに解けない問題があったときは、こちらから教えることはせずに、こう言います。
「次の週までに、先生に説明できるように考えてきてね」
大事なことは、考えることなのです。
(つづく)
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現在の教育の問題点の第一は、受験のための教育が中心になっていることです。
学校は、生徒に差をつけるために、間違えやすい問題を出します。
生徒の人生にとって重要な問題を出すのではなく、間違えやすい問題を出すのです。
すると、塾や予備校は、その入試問題に合わせて、間違えやすいところの勉強に力を入れます。
学校側は、塾や予備校の対策を上回るように、更に間違えやすい問題を出します。
子供にとって生きていくのに役立つような大事な問題ではなく、試験をする側にとって選抜しやすい間違えやすい問題を出すことを中心に教育が行われているのです。
子供は、もっと本当に大切なことを中心に学ぶべきです。
そうすれば、今よりもずっと短時間で必要な学力を身につけることができます。
では、どうしたらいいかというと、今の受験勉強を超える方法を考えるよりも、受験がいずれなくなるという未来を考えることです。
受験があるのは、受け入れる生徒に定員があるからです。
生徒に定員があるのは、限られた場所に、限られた机と椅子があり、限られた先生が勉強を教える仕組みになっているからです。
オンラインで勉強を行い、オンラインの友達どうしの自由な選択で一緒に学ぶクラスメイトを選ぶようになれば、受け入れる生徒の数を受験で選抜する必要はなくなります。
今、受験に合わせて勉強している子供たちは、いずれ受験がなくなることを見越して、自分にとって大事だと思う勉強に力を入れていくことです。
受験に合わせた勉強ではなく、自分自身の向上のために勉強するということです。
将来、世の中に出たときにどういう実力をつけていくかということを考えて勉強していくのです。
それには、幅広い教養も含まれます。
しかし、それは受験のための教養ではなく、自分の将来の人生のための教養です。
(つづく)
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