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記事 548番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/5
父母の声より(その1) as/548.html
森川林 2009/07/06 12:37 
▼5回の指導で驚くほどの進歩(小3父母)

 体験を入れて5回の指導を受けただけで、親が言うのも変ですが、驚く進歩です。大きく変化したのは、書こうという気力です。「作家気取り」で「ここはこうした方がいいと思わない?」……と鉛筆片手に考え考え書き上げています。最近学校から持ち帰ってきた作文は「会話文を入れる」「たとえ」「思ったこと」「擬音」全てをクリアしていて、大きな花丸でした。以前は、担任の先生から話をさせると素晴らしいのに、書かせると今一つ、とてももったいないとの評だったのですが、今回は好評でした。

●書き出す前の指導(言葉の森より)

 子供は目標がわかると、やる気が出ます。その目標が、ちょっとがんばれば達成可能だと分かると、更にやる気が出てきます。

 通常の作文指導は、まず書かせて、そこから評価をするというやり方が多いと思います。目標なしに書かせて、あとから評価をするという指導です。俳句や短歌の添削であればそういうやり方も可能ですが、作文の場合、書き上げたものを評価するという方法にすると、書き出すまでのハードルが高くなってしまいます。大学受験生のように試験が迫っている生徒は、それでも書き出すことができますが、試験のようなものの特にない小中学生が作文を書く練習をする際は、書き出すための事前指導が重要になってきます。この事前指導があることによって、子供自身が何を要求されているかわかるということが、勉強を進める上で大切です。

 この場合、親や先生など周りの大人は、事前指導したもの以外の評価はしない、という抑制を自身に課しておくことが必要です。アドバイスをするのは、書いたあとではなく、次の作文を書き出す前にするというのが作文の勉強をスムーズに進めるコツです。

 子供たちが意欲的に取り組めるように、更にわかりやすい指導をこれから心がけていきたいと思います。

▼ニュースにも興味を示すようになった(小3父母)

 いつもお世話になっております。欠かさず作文は書いて、先生とのやり取りも楽しんでいる様子です。さて、最近、3年生になって、長文音読の題材がよくテレビに出てくると、「この話、「言葉の森」で読んだ話だ!」と言って、ニュースなどに興味を持つことが多くなりました。ありがとうございます。

 一つ心配なことは、そろそろ塾などでやる長文読解が長くなり、いつも時間に追われて習い事をしている娘は、どうしても長文をゆっくりと作者の気持ちになって考えることができず、そのときの直感で答えているようです。親からは何かアドバイスすることがあるのでしょうか?

●読解の問題は、問題文からヒントを見つけるように読む(言葉の森より)

 難しい言葉でも、一度接したことがあると身近に感じます。中学1年生の課題で「アイデンティティ」の話がありますが、高校生でもこういう言葉を知らない人はかなりいます。ふだん接する文章は、その学年に応じた易しいものが多いので、勉強として読む文章はできるだけ日常生活を超えた話題のものを読んでいくといいと思います。

 さて、国語の読解で「作者の気持ちになって考えることができない」のは、時間がないからだと思います。読解の問題は、問題文中に必ずヒントがあります。そのヒントをつかむように読むことが大切です。ほとんどの子は、自分の直感で登場人物の心情を読み取ろうとします。ふだんの読書はそういう読み方でいいのですが、国語の問題は問題文中からヒントを見つけるように読んでいかないと得点は取れません。

 間違えた問題を一緒に分析してみて、どこにこの答えのヒントがあるかということを納得させると力がついてきます。

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質問と意見(39) 

記事 547番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/5
日本の優れた技術や文化はどうして生まれたか as/547.html
森川林 2009/07/05 21:47 




 日本は、豊かな雨と豊かな太陽に恵まれた国です。そして長い間、平和な時代が続きました。このような国では、場合によっては、南の島でバナナを食べて毎日昼寝をするような、停滞した平和な国になっていたかもしれません。しかし、それを競争や闘争のような方法ではなく、平和の中で文化の洗練度を深める方向で発展させていったというところに日本の文化の特徴があります。


 人間が成長してから学ぶ学問や技術という材料は、どの国もそれほど変わりません。と考えれば、日本のすぐれた文化は、材料ではなく、その材料を入れる枠組みの中にあると考えることができます。幼児期までに形成された認識の枠組みの中に、日本のすぐれた文化の秘密があります。その枠組みとは、日本語の枠組み、日本の生活の枠組み、日本の文化の枠組みなどいくつか考えられますが、最も大きなものは、長い間の平和の中で培われた察し合いの文化という枠組みです。


 察し合いの文化は、譲り合いの文化を生み出しました。交通事故で車と車がぶつかったときも、まず「すみません」と謝るのが日本人です。謝ったら不利になるなどという発想は、日本人にはありません。

 察し合いの文化は、人に対してだけでなく物に対しても向けられました。針供養というのは、一年間仕事をしてくれた針に対する感謝の気持ちを表す行事です。

 このような文化が、自然や社会に対する深い観察を生み出し、その自然や社会に自分を合わせるという対応の仕方を作り出していきました。これが、日本の優れた技術や文化を生み出す土台になったのです。(しかし同時に、学問の世界では、膨大な文献を消化することを優先するという傾向も生み出しました)


 日本の察し合いの文化に対して、欧米など日本以外の国は、長い間の戦乱の歴史の中で、自己主張の文化を形成しました。自己主張の文化は、ディベートの文化です。相手の気持ちや物の様子を謙虚に観察しようとするよりも、相手を自分に合わせて判断することをまず考えるのが自己主張の文化です。この文化の中では、観察はどうしても大まかになります。

 日本人が歪みの中に美を見出せるのは、城の石垣の石組みのように歪みを個性として生かすことを知っているからです。日本以外の国で、歪みよりも均整の美が好まれるのは、均整のとれたものは自分の考える用途に合わせて利用しやすいからです。


 このように考えると、日本人の子育てで大事なことは、相手の気持ちを考える察し合い文化を守っていくことです。これは、もてなしの文化といってもいいと思います。このもてなしの文化が、平和と豊かさ中でも進歩を続けるという日本の国の特徴を生み出したのです。

 相手が喜ぶように行動する、例えば、席を立ったらイスをしまう、玄関を上がったら履物をそろえる、食事をとったらあとを片付けやすいようにしておく、立つ鳥は後を濁さない、こういうような生活を繰り返していくことが、実は、日本が世界に誇る優れた技術や文化のもとになっています。


 勉強は材料です。その材料を入れる枠組みを作っているのは生活です。普段の生活の中で、相手の気持ちを考えるように行動することが、実は教育の出発点になっているのです。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)


マインドマップ風構成図

 記事のもととなった構成図です。


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