ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 562番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
発表する文化の先にあるもの as/562.html
森川林 2009/07/20 20:16 


 王様は言いました。「おいしいものが食べたい」。そこで、腕に自信のある国中の調理人が様々な料理を作りました。ところが、優勝したのはめざしでした。という漫画を昔読んだことがあります。

 ラーメンとカレーとチャーハンで、どれが一番かと問うことはできません。好き嫌いという主観的なことは言えますが、どれが最もすぐれているかという順番をつけることはできません。

 芸術作品も同じです。「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」と「かにかくに渋民村は恋しかりおもいでの山おもいでの川」と、どちらがすぐれているかという問いは、普通はしません。

 もちろん、何のために評価をするのかという目的が明確であれば、その目的に沿った評価や点数化はできますが、目的がないときの点数化というのはできないのです。

 しかし、このような芸術作品にも、ある方法で順位をつけることができます。それはその時代の人気投票によるものです。例えば、好きな料理でカレーが350票、ラーメンが320票と票が入れば、順位が決まります。つまり、主観が集積したものが客観性になるというのが投票の理論です。

 作文も似ています。ある目的に沿った評価として見れば作文にも点数がつけられますが、感動する作品を客観的に評価することはできません。できるとすれば、人気投票のような形です。作文には、それぞれ味があるからです。

 これは、読む学力の評価と書く学力の評価の違いと考えることができます。読む学力は、目標が限定されているので、テストで点数化することができます。書く学力は、テストや点数化にはもともと不向きで、ただ発表することが書くための動機になります。読む学力は、いい点数をとることが、書く学力は、人に見てもらうことが、その動機となっているのです。

 これまでの社会では、テストの文化が大きな比重を占めていました。しかし、これからの社会では、発表の文化が大きく広がっていきます。

 しかし、実は発表の先にもう一つ別の文化があるのです。

 なぜ花はきれいに咲き、なぜ鳥は美しく歌うかといえば、それは昆虫や仲間を引き寄せるためという目的があるでしょうが、それだけでは説明しきれないものがあります。花が咲き鳥が歌うのは、生存のためという目的を超えて、美を表現すること自体が嬉しいからなのです。それは、自分が花や鳥の気持ちになるとわかります(笑)。

 「葉隠」に、剣術の修行の段階についての話があります。まず、弱くて自信がないとき。これは、使えません。次に、ある程度強くなり自信もつき、人の長所や欠点がわかるようになり、いろいろ批評もしたくなる時期。このころになると、役に立ちます。しかしその先に、人の長所や欠点だけでなく、自分の長所や欠点もわかるようになり、自信はあるが黙っている時期があるそうです。

 普通の人はここまでですが、さらにその先に、どこまでいっても無限に進歩の先があることが分かり、ひとりで進歩し続ける境地があるというのです。

 読む学力は、テストや点数で評価できます。これは、剣術で言えば、人の欠点もわかり批評もしたくなる時期でしょう。しかし、その先の書く学力は、評価ではなく発表自体が動機になります。剣術で言えば、自分の長所や欠点もわかり自信はあるが黙っているという時期でしょう。しかしさらにその先に、無限の進歩があるというような境地に達するような時期がやってくるのだと思います。それが、テストの文化、発表の文化のあとに来る道の文化です。

 カレー、ラーメン、チャーハン、それぞれに個性があるというのは発表の文化です。その先に、カレー道、ラーメン道、チャーハン道という無限の進歩をめざす境地があります。

 王様の料理コンテストで優勝しためざしの先に待っているものもまた、めざし道という道の文化なのだと思います。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 作文教育(134) 

記事 561番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
中高一貫校の作文入試は、長さと速さと誤字のなさがポイント as/561.html
森川林 2009/07/19 10:26 


 中高一貫校の作文入試は、長さと速さと誤字のなさがポイントです。

 作文の評価には多くの例外がありますが、一般に、作文の字数と実力との間には、かなり高い相関があります。しかも、中高一貫校の作文入試では、速度が要求されます。学校によっては、30分で800字書くなどという課題のところもあります。大人では、この時間ではほとんどの人が書き上げることができません。そして、800字の作文で誤字が一つもないということも、普通の大人ではほとんどの人ができないと思います。

 では、その三つの対策を述べていきます。

 まず、作文の長さについては、材料をふやしていくことが必要です。そのために、予想される課題について家族で対話をして、ほかの人の体験や感想を聞くということが役に立ちます。また、実際に自分で作文の中に書いたことのある実例や表現は、作文試験に使いやすくなります。材料をふやすためには、何度も書いて、書きなれるることが必要です。

 次に、速度についてです。速度速くするコツは、全体の構成を先に考えることです。これが、言葉の森の指導の特徴です。書きながら考えるのではなく、考えてから書くという書き方をしていきます。

 しかし、考えると言っても、構成に5本も10分も書けるわけにはいきません。課題を見たら、全体の流れをすぐに考え、それを作文用紙の余白にメモとして書きます。そのあと、書いている間は、時どきそのメモに戻りながらほとんどノンストップで書いていきます。したがって、普段の練習でも、消しゴムは極力使わないようにして書きます。考えてから書くという書き方をするためにも、やはり書きなれることが必要になってきます。

 第三に、誤字を少なくすることについてです。作文の評価は、採点者の負担が大きいので、少しでも誤字があった作文はその場でボツという評価がされます。誤字の減点は、最も大きいのです。一ヶ所の誤字は大目に見られることもありますが、二ヶ所誤字があればまず合格は難しくなります。

 しかし、この誤字は、実際に自分で作文を書いてみないと、どういう誤字があるのかわかりません。作文の中に使ってしまう誤字は、普通の漢字の書き取りの練習では直せません。誤字をなくすためには、やはり何度も書いて他の人に指摘してもらう必要があります。一般に、高校生の作文で800字の文章に一ヶ所誤字がある人は、毎週作文を書いても必ず800字で一ヶ所程度、新たな誤字が出てきます。この誤字がなくなるのに、ほぼ1年近くかかります。それぐらい勘違いして覚えている誤字は、自分の力では直しにくいのです。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)


この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
受験作文小論文(89) 中高一貫校(11) 公立中高一貫校(63) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習