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記事 575番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
読む力、書く力、遊ぶ力 as/575.html
森川林 2009/08/02 22:33 

 ↑ 夏の青空とケヤキの木

 これまでの教育は、知識を覚えることが中心でした。

 しかし、これからの教育技術の発達によって、ものごとを丸ごと把握する力を多くの人が身につけられるようになると、知識力の差は次第に小さなものになっていくでしょう。

 その後の時代に重要になるのが、人格力、創造力、表現力などです。これらは、読む練習と書く練習によって身についていきます。しかし、読み書きの力と同じぐらい重要なものがもう一つあります。それは遊ぶ力です。

 ルソーは、自分が子供のころに本を読みすぎたことが、自分の性格をアンバランスなものにしたと考えていました。その反省から、子供を自然に育てることを重視した教育論を主張しました。

 ルソーの反省は、現代にもあてはまります。子供のころに読む練習に力を入れすぎると、バランスのよい発達ができなくなることがあります。特に現代は、遊び自体が見る遊びになりがちです。テレビ、漫画、ゲーム、インターネットなど、見るだけで体をあまり使わない環境に置かれていると、勉強も読むことが中心で、遊びも見ることが中心になるという偏った生活になります。

 遊びの重要な要素は、手足など体を使って、現実や他の人間と交流することです。この交流によって、読みすぎや見すぎから来るアンバランスを回復していくのです。

 江戸時代の寺子屋の光景を見ると、勉強よりも遊んでいる子の方がずっと多い場面がかなりあります。この勉強と遊びを共存させる仕組みによって、江戸時代は当時の世界最高の識字率を誇りながら、人間的にバランスのとれた教育を行っていたのです。そういうことが可能だったのは、当時の勉強が、筆者や素読の反復という型を模倣することが中心だったからです。

 読み書きの反復学習と遊びの共存という学習の仕方は、夏休みなどの家庭学習について、大きな示唆を与えてくれます。

 今は、塾に行って授業を聞き問題を解いてくるというような勉強をする人が多いと思いますが、そのようなことに時間を使うよりも、気の合った友達数人で遊びながら、音読や暗唱や筆写の反復学習をすれば、手間もかからず、楽しく実力のつく勉強ができます。

 たぶん、将来はそういう寺子屋的な家庭学習をするところが増えてくると思います。

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これからの学力―人格力、創造力、表現力 as/574.html
森川林 2009/08/01 22:18 

 ↑ 夜明け前の東の空

 未来の社会で、これから求められる学力を考えてみました。

 これまでの社会では、限られた入学定員と固定的な社会の階層構造の二つの条件から、知識力を中心とした入学試験が行われていました。その試験に合格すれば、よりよいパスポートが手に入るというような社会の仕組みになっていました。

 しかし、本当は、人間の知識力に点数で差がつくような違いがあること自体がおかしいのです。学校の成績が5段階評価などで分けられるということに、多くの人は慣れて当然のように考えていますが、本来は、ほとんどすべての子供が全教科満点になるような教育をするべきなのです。そして現在、教育技術の発達によって、人間どうしの知識力の差は次第に少なくなっています。やがて、知識の差でテストをするような競争に意味がなくなり、みんながよい成績を取れる社会がやってくるでしょう。

 そして同時に、将来は限られた入学定員ということに意味がなくなるような社会が到来します。それは、インターネットの発達によって、学ぶ場所と時間という制約が大幅に緩和されるからです。そのような時代に、どのような評価が人間に対して行われるのでしょうか。

 これからの知識産業社会の中では、どんな職業でも知識が必要になります。しかし、だからといって、知識が人より多ければ有利になるというわけではありません。それよりも、人格力がその人の評価を決めるというような社会になってきます。人格力とは別の言葉で言えば、勇気や知性や愛や思いやりに溢れた人間であるという力です。そして、これは江戸時代に多くの寺子屋教育によって目指されていた教育の目的でもありました。歴史は一巡して、江戸時代の教育の原点に再び戻るような時代になっているのです。

 しかも、未来の社会では、江戸時代のころの人格力にとどまらない、より豊かな学力を可能にする条件が生まれています。それは、自由な政治体制と、活力ある産業社会の中で、人間が創造力と表現力を発揮して、自分の個性を社会の貢献に結びつけることのできる社会という条件です。

 現在の英語、数学、国語、理科、社会などの教育は未来の社会でももちろん続きます。しかし、それらの学力で試験の点数をつけるというようなことに意味がなくなり、誰でもどの教科にも満点近い成績を取れるような社会がやってきます。そのような時代に必要な本当の学力として、人格力、創造力、表現力を育てていくことを今から考えていく必要があると思います。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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