文部科学省の調査によると、小6の学力テストで、年収と成績が比例しているという結果が出たそうです。今のような不況が続くと、年収による学力格差は、ほとんどすべての人にとって他人事ではありません。
この統計を見て、成績を上げるためにはやはり高いお金を払って塾に通わないとだめなのかと思った人も多いと思います。しかし、決してそんなことはありません。
塾などに通わず、高い教材も使わず、家庭だけで無料で成績をよくする方法はあるのです。
年収と学力格差の相関の原因は、二つ考えられます。
一つは、学校以外の学習時間が多いか少ないかによるものです。現在の学校は、一斉指導というスタイルで全員一律に勉強の説明をしています。反復が必要な定着学習は、学校以外の家庭や学習塾に任せています。この結果、学校以外の勉強時間が少ない子は、成績が上がらないのです。
しかし、塾に通っている子の方が成績がよくなるということは、実はあまり大きな問題ではありません。塾で上がるような成績は短期間で変化するものですから、子供が中学生や高校生になり自覚的な勉強をする時期になると、学力の差は解消していきます。例えば、小学校のときに算数の塾に通って得意だからといって、高校生のときまでそれが続くわけではありません。同様に、小学校のときに英語を先取りして勉強したからといって、中学校に入って英語が得意になるわけではありません。中学校での成績は中学生になってからの努力によるもので、高校での成績は高校生になってからの努力によるものだからです。ただし、国語の成績に関しては、小さいころの得意が大きくなってからも続く傾向が英語や数学よりも強くあります。しかし、これも絶対的なものではありません。
学力格差のもう一つの原因は、家庭での生活習慣によるものです。例えば、読み聞かせや読書の機会が多い子は成績がよいという結果が出ています。実は、
塾に行く行かないよりも、こちらの生活習慣の方が長期的に見て最も大きな問題なのです。
年収が高く生活に余裕がある家庭は、読み聞かせや対話や読書などの時間が確保できます。そのような余裕がない家庭では、子供は放任状態になります。そして、今の社会環境では、子供の遊びは、テレビやビデオやゲームやインターネットになりがちなのです。昔のように、紙飛行機を折ったり、鬼ごっこをしたり、おままごとをしたりするなどの工夫する遊びではなく、ただ目と耳から受ける刺激に反応するだけの遊びになりやすいというところに、現代の子供たちの遊び環境の大きな問題があります。
しかし、学校での反復学習の少なさと、家庭での知的時間の少なさの両方を共に克服する方法があります。それは、読書と暗唱を遊びとセットにすることです。
例えば、テレビを見る時間は毎日1時間などと決めておきます。それ以外にどうしても見たい番組があったときは、読書を50ページしたら、テレビを30分追加して見てよいという形にします。
同様に、ゲームも1日15分、休みの日は30分などと決めておきます。これは、子供がタイマーを自分で設定してゲームをするようにしておきます。ただし、ゲームは途中で急に終えることができないものも多いので、多少の余裕は見てあげます。とは言っても、最初から時間をルーズにするとあとから時間どおりにやらせるのは難しくなりますから、ある程度断固とした区切りをつける必要があります。
ゲームも、テレビ同様に、どうしても追加したいというときは、読書を50ページすませたらゲームを15分追加してよいという形にします。それぞれの家庭の実情に合わせて、読書30ページにゲーム30分などとしてもよいでしょう。
大事なことは「よく学びよく遊べ」ですから、ゲームもほどほど勉強もほどほどというやり方ではなく、たっぷりゲームをしてたっぷり読書をするという発想でやっていくことが前向きの考え方です。
現在は、読書以外に暗唱も家庭学習の中に取り入れることができるようになりました。例えば、暗唱を300字つっかえずに言えたらゲームを30分やってよいという形にすれば、暗唱だけで30分から1時間の自主学習ができます。
読書も暗唱も、親はただ見守っているだけで、手取り足取り教えるわけではありませんから、親がどんなに多忙な家庭でも十分にやっていけます。ただし、ときどき感心したり励ましたりする働きかけはあった方が勉強は進みやすいと思います。
読書は、深く考える力をつけます。小学校5年生以上になり、国語も算数も文章題が増えて考える問題が多くなると、読書力のある子はどんどん成績を上げていきます。
暗唱は、物事を丸ごと把握する力をつけます。算数・数学の問題でも、小学校の中学年までは簡単な計算でできる問題が中心ですが、学年が上がるにつれて文章題や図形の問題が増えてきます。算数数学の考える複雑な問題でも、解法を丸ごと把握してしまうやり方をすれば成績をすぐに上げることができます。このような形で数学を得意にした有名な人を挙げると、本多静六、今西錦司、岡潔などです。和田秀樹さんも、高校時代に苦手な数学を、解法を丸ごと自分のものにするという方法で得意にしたそうです。
つまり、読書と暗唱によって頭の中身さえよくしておけば、成績は必要なときにいつでも上げることができるのです。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)
↓ 作文体操。左から、意見→展開1→展開2→展開3→まとめ。
公立中高一貫校の入試では、考える問題が出されます。
作文の入試も、考える形の問題が特徴になっています。
その考える問題を大きく分けると次のようになります。
・学校生活や家庭生活に関する問題。これは、生活文よりもむしろ意見文の形で出されるところが増えています。「学校で協力して何かを成し遂げた経験」など
・人間の生き方や人生論に関する問題。身近な出来事としてどのように生きるかを問う問題です。「努力や継続の大切さ」など
・身近な時事問題。子供が考えることのできる時事問題なので、宇宙、環境、福祉などの話題で、「君ならどうするか」と問う問題です。大学入試で出るような社会性の高い難しい時事問題は出ません。
・比較文化論や言語言葉に関する問題。これは、国語の入試問題にもよく出てくるので、入試問題自体が資料として使えます。
・象徴的な課題。「空」「窓」「山」など漠然とした問題です。
どんなジャンルが出ても、共通して対応できる勉強法があります。
勉強法の第一は、対話です。家族の対話によって問題意識や身近な実例を身につけていきます。特に時事問題は、時事問題集のような本で学ぶよりも両親の話を通して学んだ方が確実に応用力がつきます。
第二は、実際に作文を書くことによって、自分が使える体験実例や知識実例の整理をしておくことです。予想されるテーマについてとりあえず10本作文を書いておくことが目標です。あるテーマで一度書いておくと、似たジャンルの課題すべてに対応できるようになります。
第三は、構成的に考える習慣をつけることです。これは言葉の森の勉強法の特徴です。大学入試の小論文でも使える構成は、次のような形です。
・最初に状況説明と意見を書きます。
・そのあと展開1、2、3と続きます。
・最後にまとめます。
この展開部分は、原因、対策、理由、方法などそれぞれの課題に合わせてさまざまな形で書くことができます。
文章構成を考えて書く習慣がつくと、どんなテーマでも迷わずに書き出すことができるようになります。
作文入試対策でいちばん大事なのは、実際に書く練習をすることです。
言葉の森では、1週間に1回作文を書く練習をします。
そこで見つかった誤字は、20回以上書いて正しい書き方を覚えておきます。また自分が文章に使う言葉は、習っていない漢字も含めてできるだけ漢字で書けるようにしておきます。同じような言い回しが続いているところは、変化のある表現に直しておきます。そして、その直した原稿を頭に入れておき、同じテーマで何度も書く練習をしていきます。
毎回新しい作文を書くのではなく、1週間に1回新しい課題に取り組み、その間はそれまでに既に書いたテーマで、同じように書けるかどうか試してみるという勉強していきます。
作文というのは、勉強の集大成です。その子が持っている知識、経験、語彙などをすべて動員して文章という形に表す勉強です。
その勉強の基礎になるものは、読書と暗唱と対話です。
読書と暗唱と対話で力をつけて、実際に作文を書く練習で表現力を身につけるという勉強スタイルが、これからの時代の中心的な勉強の形になってくると思います。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)