以前、言葉の森を体験学習だけをした小6の生徒のお母さん方から質問がありました。体験学習のときは、小6の子が、課題が難しくてよくわからないと不満を言ったので、そのままで終わってしまったそうです。
作文を書いているときにわからないことが出てきたら、すぐに教室にお電話をくだされば、追加の説明をできたと思います。
お母さんは、まだ言葉の森の勉強をさせたいと思っているそうです。というのは、
その小6の子が、算数の計算は中2のレベルまで進んでいるのですが、小5の文章題で解けないものがあるのだそうです。一度やると、答えは覚えてしまうのに、解き方がわからないというのです。
しかし、これは国語力の不足という程の大げさな話ではありません。そういう面ももちろんありますが、それよりも単に算数の考える問題ができていないというだけです。
中学生の勉強でいちばん差がつくのは数学です。そして、高校入試で差がつくのは、図形と文章題です。計算問題は、普通の計算力があれば十分です。しかし、
文章題が解けなければ、これから数学は苦手教科になってしまいます。
そこで、この小6の子の今後の勉強法をアドバイスしました。
まず、
教科書よりも少し難しいレベルの市販の問題集を1冊購入し、できなかった問題だけを反復して解くようにします。教科書の問題は易しすぎるので勉強になりません。
そして、その問題集のできなかった問題について、子供が自分で解法読んで理解します。解法を読んでも理解できなかったところだけ、親が一緒に解法を見て考えてあげます。
親が子供の勉強を見てあげるときに大事なことは、同じことを何度聞かれても決して怒らずに気長に同じように説明するということです。できなかった問題を一度で理解する子は、まずいません。
二度や三度ではなく、四度も五度も同じことを説明して初めてできるようになるのが普通です。
この、できなかったところの反復が数学の勉強の要ですが、この勉強は子供にとっては苦痛の多い勉強なので、なかなかひとりでは続きられません。そして塾でも、このような反復の勉強をするよりも、解ける問題と解けない問題を取り混ぜて次々と解いていく方が教えやすいので、子供ができなかった問題だけ反復するという勉強はなかなかしないのです。したがって、これは家庭でやっていく勉強になります。
英語の勉強については、教科書の暗唱です。1ページを20回から30回音読すると暗唱できるようになります。これも、家庭でなければなかなかできない勉強です。
国語については、高校入試の問題文を繰り返し読んでいくことです。これも、家庭でやる方が能率よくできる勉強です。
更に余裕があれば言葉の森で作文の勉強をしていくといいと思います。
つまり、中学生の勉強は、塾に行ってももちろんいいのですが、家庭で取り組む方がずっと密度濃く能率のよい勉強ができるのです。
この小6の子の下に小2の子がいるそうです。この子も今、算数の計算の勉強をしているそうです。
しかし、小学生で算数の先取りは不要です。その学年の算数が人並みにできていればそれで十分です。
その代わり、国語力だけは学年に関係なくつけておく必要があります。
国語力さえついていれば、数学や英語は、中学生や高校生になってやる気が出たときにいつでも上げることができるからです。
なぜこういうことが自信を持って言えるかというと、実際にそういう例をいくつも見ているからです。
小学校低学年から、算数の計算問題を学年より先取りしてやっている子供たちがいます。漢字の書き取りも学年より先にやっています。小学校高学年になると、英語の勉強も先取りします。
その一方、小学生のころは、本をよく読むだけで、算数は学校でだけ、漢字の書き取りも学校でだけ、英語はもちろんやらずに中学生になってから初めて教科書で勉強するという子供たちがいます。
その両者の子供たちを見ていると、小学生のころは勉強を先取りしている子供たちの方がよくできるように見えます。また、中学1年生の最初のころまでは英語を先取りしていた子の方が英語の成績が上です。しかし、中学2年生になる前に、英語の先取りの差はなくなってしまいます。そして、
高校生になると、勉強を先取りしていた子供たちよりも、読書が好きだった子供たちの方が、英語も数学も国語もぐんぐん成績が上がっていくのです。
小学生のころの勉強が無駄だというのではありません。小学生のときに勉強をすれば、そのときには確かに成果が上がります。しかし、その学力がそのまま中学、高校と自動的に続くわけではありません。
小学生のときに勉強の先取りしていた子供たちで、引き続き中学生や高校生になってもよくできる子がいます。しかし、それは、先取りしたからではなく、中学生や高校生になったときに努力したからです。
大事なのは先取りすることではなく、それぞれの学年でその学年にふさわしい勉強をすることです。そして、そのときに、いちばんの土台になるのが、対話と読書によってつけた国語力なのです。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)
付箋読書をすると、読むスピードが上がります。また、読み始めるきっかけが作りやすくなります。そして、最後まで読み終えることが多くなります。つまり付箋読書は読書をしやすくする効果があります。
暗唱の木を使うと、暗唱を始めやすくなります。また、その暗唱を最後まで続けやすくなります。
同様に、構成図を書くと、作文が書きやすくなります。
付箋読書、暗唱の木、構成図という方法に共通するものは、フィードバック効果が働いているということです。
通常、人間の行動は、意志があってから行動が始まり、その結果を見て再び意志が強化されるという流れで進んでいきます。しかし、読書、暗唱、作文などは、結果が残りにくいという共通点があります。読書や暗唱は形として残らず、作文は形としての結果が出るまでに1時間ほどの時間がかかるからです。
ところが、付箋や暗唱の木や構成図を使うと、予測される結果が先に形のあるものとして表示されるので、それによって意志が強化され、行動が起こりやすくなり、その行動がまた結果として現れるというサイクルが成り立つようになります。
読書の場合は、「読書をする」という目的が、付箋という形によって、「貼る」という行動を引き出し、読書のしやすさを生み出します。
付箋読書をしていると、読んだ結果が形として残るので、つい一挙に最後まで読んでしまうようになります。そして、読み終えたあと、付箋を貼ってあるところを再読すれば、更に深い読み方ができます。
暗唱の場合は、「暗唱をする」という目的が、暗唱の木という形によって、「折りたたむ」という行動を引き出し、暗唱のしやすさを生み出します。タイマーで計る形だと、どのくらいまで読んだかという途中経過がわかりません。
暗唱の木を折っていると、「今、何回だから、あと何回ぐらいですらすら言えるようになるだろう」という見通しが立ちます。また、暗唱の木が形としての残るので、「今日で何日目だから、あと何日ぐらいで何字まで暗唱できるだろう」という見通しも立ちます。
作文の場合は、「作文を書く」という目的が、構成図という形を通して、「材料を並べる」という行動を引き出し、作文の書きやすさを生み出します。作文を書くときは、原稿用紙に直接本番として書くので、書き出すための気合いが必要になりますが、構成図は作文のシミュレーションなので気軽に書き出すことができます。そして、
構成図を書くことによって、自分の考えがはっきりしてくるので、作文に取りかかりやすくなります。
以上のように、ツールの本質をフィードバックを助けるものと考えると、勉強に使うツールのいろいろな可能性が見えてきます。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)