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暗唱とイメージ記憶 as/636.html
森川林 2009/09/18 09:54 


 言葉の森は、なぜ暗唱に力を入れているのでしょうか。

 第一は、作文力をつけるためです。作文力は、借文力です。

 第二は、読解力をつけるためです。「韋編三絶(いへんさんぜつ)、意(い)自(おのずか)ら通ず」と言われているように、繰り返し読むことによって理解の質が変わります。

 第三は、勉強力をつけるためです。暗唱をしていると覚えることが苦にならないという気持ちになってきます。どんなに難しいことでも、気長に反復すればできるという確信がわくようになるのです。

 そして第四に、暗唱は発想力もつけることができます。これは暗唱によって、左脳の言語脳と右脳のイメージ脳の連係がよくなるためだと思われます。


 よく、丸暗記ではなく考える力をつけることが大事だということが言われます。しかし、そこで言われるような丸暗記が役に立たないのは、それが断片的で量も少ないものだからです。

 学力の本質は、全体の構造を丸ごと把握するぐらいまでレベルを高めた記憶です。その全体把握された記憶の土台の上に、様々な知識が蓄積され、自分なりの思考のが可能になるのです。


 さて、長文暗唱では、覚える文そのものはかなり長くても、ひとまとまりの歌のようにすらすら言えるようになります。しかし、文の書き出しのところがなかなか覚えられません。書き出しの言葉を覚えるための方法が、イメージ記憶です。

 イメージ記憶で大事なことは、第一に、単純な語呂合わせをすることです。

 第二に、できるだけ絵になるようなイメージ化をすることです。

 第三に、自分のよく知っているもの、例えば体の一部などにオーバーに結びつけるということです。

 体の部分に結びつける方法では、数が限られていますが、これを自分の住んでいる場所などと組み合わせることによって、結びつけるパターンはもっと増やすことができます。


 体と場所とイメージを結びつけるというのは、一種のエピソード的な記憶です。例えば、「あの道の角を曲がったときに頭の上に鳥のフンが落ちてきた」という経験をしたことがあれば、「道の角」と「頭の上」と「鳥のフン」が、しっかりと一つの全体的な経験として結びつきます。

 「道の角」で「頭の上」に落ちてきたのは何ですか。「鳥のフン」です。
 「頭の上」に「鳥のフン」が落ちてきたのはどこですか。「道の角」です。
 「道の角」で「鳥のフン」が落ちてどこにですか。「頭の上」です。

 「道の角」と「頭の上」と「鳥のフン」が、三つの異なる事象として結びついているのではなく、初めから一つのトータルな経験の三つの側面として把握されているのです。つまり部分を組み合わせるのではなく、全体を先に把握するというのがイメージ記憶の方法です。


 勉強とは、学問のトータルの全体を様々な知識や方法に分解し、その知識や方法を自分の頭の中で改めて全体に組み立て直すという過程です。これは人間が、食べ物を消化することになぞらえることもできます。食べ物の対象は、ご飯や味噌汁という全体です。それが消化作用によって、アミノ酸やブドウ糖に分解され、自分自身の体の中で改めて全体的なものとして構成され直します。

 この消化の過程を細分化して消化しやすくするのが、スモールステップの学習法です。これに対して、暗唱というのは、食べ物を丸ごと飲み込んで、あとでゆっくり消化するという方法です。


 以下は、イメージ記憶の具体例として、港南台で生徒に説明した資料です。

イメージ記憶

1、まず、自分の体に順番(じゅんばん)をつけてみましょう。



2、書き出しの言葉をイメージ化して、自分の体にできるだけオーバーにくっつけましょう。

【小1・小2】の  の長文
ドッカーン……休み時間に……ぼくたちの先生も……そのうちに……クレーンカーが……
  
頭(あたま)のてっぺんがドカーンと爆発(ばくはつ)した。休んでいる小人がピューンと飛んできておでこにつきささった。バク(ぼく)が走ってきてひだり目にドスーンとぶつかってきた。  


【小3・小4】の  の長文
一学期の……今度の……自分で……そのとき……ところが……
  
1個の楽器があたまにドーンとぶつかってきた。コンドルが飛んできて、おでこをガスガスとつっついた。自動車(じ)がブンブン(ぶん)と走ってきて左目にドシンとぶつかった。  


【小5・小6】の  の長文
先生は……私は……小さな目ですが……しわの中の……でも、先生の……
(担任の)先生が頭のてっぺんで授業をしている。タワシ(わたし)がおでこをゴシゴシとこすっている。チーター(ちい)が走ってきて左目をひっかいた。ワシ(しわ)がバサバサと飛んできて右目に爪を立てた。電話(で)が鼻の穴に入ってきて、もしもし(も)と言っている。


【中・高】の  の長文
A few……What is……That was……the biggest……Tell……
 
冬(few)の雪ダルマが頭のてっぺんに乗っている。ホワイト(What)歯みがきチューブの中身がおでこにくっついた。ザーッと(that)雨が左目に降ってきた。ビッグマック(biggest)が右目に飛び込んできた。 

 文の書き出しだけをイメージ化して体にむすびつけていきましょう。

3、続きの文章も、書き出しの言葉をイメージ化しておきましょう。

 書き出しの言葉をイメージ化しておくと、暗唱する文章が900字になってもすぐに思い出せます。
 そのために、まず300字を何十回も音読してすらすら言えるようにしておくことが大事です。
 このあと、1・2・3の文章の続きも、書き出しの言葉をイメージ化しておきましょう。

4、来週は、4・5・6の文章だけを暗唱してきましょう。

 来週は、4・5・6の文章だけを暗唱できるようにしてきましょう。
 その際、文章を暗唱をしながら書き出しの言葉のイメージも考えておきましょう。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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中高一貫校受験の作文は、過去問のジャンルに合わせて as/635.html
森川林 2009/09/16 15:36 


 受験コースの保護者の方から、「過去問は文章課題なのに、題名だけの課題をやるのはなぜか」というご質問がありました。

 言葉の森では、問題の形式は二次的なもので、問題のジャンルが最も大事だと考えています。というのは、問題のジャンルに出題者の発想の傾向が出るからです。

 問題の形式は、出題者の意思で時々変化することがあります。また、公立中高一貫校入試は年数が浅いので、パターンが変わる可能性があります。ですから、出題されそうなジャンルに合わせて、本人が内容を考え、父母と話をしておくことが最も大事な対策になります。

 内容ができていれば、形式の変化にはすぐに対応できます。目安としては、いろいろなジャンルで10本作文を書いておくことです。そうすれば、どのような形式の問題が出ても大丈夫です。

 志望校の入試説明会では、次のようなことがよく言われます。「作文をよく見て評価します」「文章が読み取れているかどうかを見ます」。

 しかし、テストする立場からいうと、実際にそういう評価は時間がかかるのでなかなかできません。また、テストを受ける立場からいうと、短時間でそのような要求を満足させる作文はまずできません。

 ですから、実際の試験では、
1、課題文のキーワードを押さえておく
2、文章に一貫性を持たせる、
3、できれば内容を充実させておく
ということが目標になります。

 言葉の森の受験コースの指導の重点は、(3)内容、(2)一貫性、(1)キーワードの順です。

 また、言葉の森の指導の特徴は、構成的に書くようにアドバイスすることです。構成を意識して書くと、出来不出来の差が小さくなるからです。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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