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江戸時代のなぞる勉強法 as/654.html
森川林 2009/10/12 22:11 


 江戸時代の文字の勉強法は、手本を筆で何度もなぞって真っ黒になるまで書く練習でした。紙が真っ黒になると、乾かしてまたなぞります。頃あいを見て、先生が清書をさせ、その清書に朱を入れるという勉強法でした。
 このなぞるというやり方によって、子供は、ただ文字を覚えるだけでなく、美しい文字の書き方も覚えていたのです。

 現代の勉強法では、漢字はやはり書いて覚えますが、その回数はあまり多くありません。間違いなく正しく書けるようになれば、それでできあがりです。その完成度を見るためにテストをするという仕組みになっています。

 欧米の人が日本語を勉強する際に、いちばん苦労するのが漢字だそうです。それは、やはり漢字を理解して覚えるという発想から勉強しているためだと思います。

 習得の第一段階は、やはり理解です。第二段階は、記憶です。記憶して再現できるようになれば勉強は完成です。しかし、その先に、更に反復して血肉化するという勉強があります。
 江戸時代の教育は、理解や記憶でとどまらずに血肉化するという目標で行われていたようです。

 この勉強法を現代に生かすには、どうしたらいいでしょうか。
 漢字の書き取りで言えば、まず、教科書体や筆記体のフォントを白抜き文字で大きくプリントします。その白抜き文字の上に、何色もの色鉛筆で何回も文字をなぞっていきます。
 このような書き方をすれば、漢字を覚えるだけでなく美しい漢字の書き方も同時に身につくようになります。

 なぞるという勉強法は、反復すること自体を目的にしています。だから、かえって飽きずに続けられます。理解や記憶という勉強法は、理解や記憶をするところまでを目的にしています。だから、かえって飽きやすいのだと思います。

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速読、多読、精読、難読の関係 as/653.html
森川林 2009/10/11 00:11 


 読書には多読という要素もありますが、ほかに、精読、難読という要素もあります。

 速読は、多読の土台となるものという点で重要です。多読がなぜ価値があるかというと、知識の材料を仕入れることができるからです。人間のものの考え方を三角形の面積と考えると、知識がその三角形の底辺となります。この底辺の知識が現実の世界を反映しています。そこに三角形の高さという思考力が掛けられます。この思考力は創造性とも呼ばれるものです。こうしてできた「現実的な創造」というものが三角形の面積に当たります。その点で、知識を幅広く仕入れるために本をたくさん読む、本をたくさん読むために速く読む、ということが必要になってくるのです。

 ところが、もう一方で、たくさん読むだけではなく深く詳しく読むということも読書の重要な要素です。精読というのは、遅い読書ではなく、繰り返し読む読書、つまり復読のことです。「読書百遍意自ずから通ず」という世界が復読の世界です。

 さらにもう一つの重要な読み方は、難しい読書、つまり難読です。難読は、知識を手に入れるために読むのではなく、考え方を身につけるために読むというような読み方といってもいいでしょう。この難読の対象となる本は、いわゆる古典と呼ばれている本です。古典と呼ばれている本を読む意味は、古典が当時の世界における革新の書だったという点にあります。なぜ革新の書だったかといえば、それはその当時のパラダイムに対して新しいパラダイムを提案した書物だったからです。新しいパラダイムは理解しにくい、つまり読みにくい。これが、難読が価値ある読書ということの意味です。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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