あまりやる気の見られない、何しろ早く書いておしまいにしたいという、いたずら好きの小2の男の子にこんな話をしました。
「いいかい。君が大きくなって、やがてお父さんになるんだ。そうすると、やはり子供が生まれてその子が小学校2年生ぐらいになるんだ。するとある日、その子が、『ねえ、パパが小学校2年生のときは、どんな作文を書いていたのぉ』(子供の真似をして)と聞くんだよ。そこで、君が今書いているこの作文を見せるんだ。すると、その子が、『わあ、パパっておもしろい作文書いていたんだねえ』って喜ぶんだよ。いいかい。そういうことを考えて、いい作文を書くんだよ」
その日は、ていねいな字でしっかり内容のある作文を書いていました。
書き方のテクニックのような話はいくらでもできます。しかし、そういう話をする以前に、いい作文を書こうとする子供の心がいちばん大切なのです。
家庭でも同じです。たくさん書いたらごほうびをあげるとか、出来が悪かったら勉強を増やすとかいうのも、たまにはゲームのような感じで面白いかもしれません。しかし、賞や罰に適応した子供は、賞や罰がなければ動かないようになります。
人間は、心意気で動くときにいちばん力が出ます。話の内容というよりも、その話をしているときの親や先生の雰囲気で心を動かされるのです。
植物はどうして光のある方に曲がるのか
土の中から、植物の芽が出てきました。芽は光に向かってどんどん伸びていきます。
しかし、もしこれが、上からおおいがかぶせられているところで出てきた芽だとしたらどうなるでしょう。芽は、まっすぐ上に伸びるのではなく、光の差し込む方に体を曲げて伸びていきます。
植物の芽が伸びる方向を決めているのは、植物ホルモンです。
麦の芽の先の方に、オーキシンという植物ホルモンが作られます。このオーキシンは、光が普通に当たっているときは、芽の下の方に移動して芽を伸ばしていきます。
しかし、光が例えば左側からしか当たらないところでは、陰になっている右側の方に移動します。すると、植物の芽の右側だけが成長して伸びていくので、植物は次第に左側に曲がっていきます。こうして、植物は光の当たっている左側に向かって成長するようになるのです。
オーキシンには、下の方に移動するという性質もあります。植物が横に倒れると、オーキシンは倒れた植物の下の方に移動します。すると、植物の地面に近い方だけが成長して伸びていくので、植物は次第に起き上がってきます。こうして、植物は倒れても自然にまっすぐ起き上がるようになっているのです。
「どっこいしょっと」
「あれ、オーキシン君、何してるの」
「横にたおれちゃったから、オッキしてんの」
森林の移り変わり
山火事やがけ崩れなどで、植物がなくなり土の地面がそのまま出てくるところがあります。
そこに最初に生えてくるのは、栄養がなくても成長できるコケです。
そのコケがだんだんと地面に栄養をあたえていくと、次に生えてくるのは背の低い草です。
その草がくさってだんだんと地面の栄養を豊かにしていくと、次に生えてくるのは低い木です。
低い木は更に地面の栄養を豊かにしていきます。また低い木は太陽の光をさえぎらないので、次には光の好きな高い木が生えてきます。光の好きな木には、クヌギ、ナラ、シイ、イチョウ、マツなどがあります。明るいところに生えている木です。
高い木はもっと地面の栄養を豊かにしていきます。高い木は太陽の光をさえぎるので、次に生えてくるのは光の弱い方が好きな高い木です。弱い光の好きな木には、ブナ、アオキ、ヒイラギ、マサキ、ヤツデ、スギなどがあります。暗いところに生えている木です。
では、次に生えてくるのは何でしょうか。弱い光の好きな高い木の下に生えてくるのは、やはり弱い光の好きな高い木です。
こうして、森林は、弱い光の好きな高い木になって安定していくのです。
「あれ、アオキ君、元気がないね」
「うん、がけ崩れで周りの木がなくなったら、急に明るくなっちゃたんでね」
「そうかあ。アオキ君、光が苦手だったもんね」
「もう、青息吐息だよ」
「そんなこと言わないで。ヒッカリしてよ」
花の咲く時期
花は、葉っぱの変化したものです。植物は、葉をしげらせて成長します。しかし、ある時期になると、葉をしげらせることをやめて、葉のかわりに花を作るようになります。
この時期は、植物によって違います。一つは、日が長くなる冬から春にかけて花を咲かせるアブラナやヒメジオンなどの植物で、もう一つは、日が短くなる夏から秋にかけて花を咲かせるアサガオやキクなどの植物です。
植物は、夜の長さがどれだけ長いかによって、花を咲かせる時期を知ります。これを利用して、アサガオを暗いところに置き夜を長くすると、まだ小さいうちに花を咲かせるようになります。
また、キクの夜の時間にときどき明るい電気をつけて、夜が短いように思わせると、キクは冬になってからやっと咲くようになります。
植物には、日の長さに関係なく、温度によって咲く時期を決めるタンポポやヒマワリなどもあります。
では、人間は何によって花を咲かせる時期を決めるのでしょうか。
「うーん。うちのお母さんはいつも笑ってばかりいるから、年中花が咲いているみたいだなあ」
「ゼラニウムみたいなお母さんだね」
体を守る仕組み
人間の体は皮膚によって守られています。食べ物でも、真空パックされたものは長持ちします。それは外から細菌が入り込めないからです。同じように、皮膚も人間の体の中に細菌が入り込めないようにぴったりと体全体をおおっています。
しかし、人間の体にはぴったりおおえないところもあります。それが呼吸をするための鼻やのどや肺と、食べ物を消化するための口や胃や腸です。また、怪我をしたところも、皮膚が破れて外から細菌が入りこみやすくなります。
皮膚のないところから進入した細菌は、条件がいいとねずみ算式に増えていきます。人間の体の中には細菌と戦う細胞がありますが、その細胞が増えるよりも早く細菌がどんどん増えると、人間は病気になってしまいます。しかし、時間がたつとだんだんと戦う細胞が増えてくるので、やがて病気から治っていくのです。
いったん細菌と戦った体には、その戦いを記憶する細胞ができます。その記憶する細胞があると、同じ細菌がやってきてもすぐに戦う細胞を増やすことができます。こうして、人間は病気にかかって治る経験を繰り返すうちに、どんどん強くなっていくのです。
「人間の体ってすごいんだね」
「うん。細菌なんてばいきんみたいなもんだよ」(そのままだけど)
「でも、インフルエンザは手ごわいね」
「そうだなあ。細菌も、最近さあ、いい気んなってんからなあ」
「インフルエンザは細菌じゃなくてウイルスでしょ」
「まあ、そうウイルスぁいこと言わないで」