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物語文の国語力は、共感して読む力 as/708.html
森川林 2009/12/14 22:27 


 ときどき、国語の成績のことで相談を受けることがあります。先日も、子供の国語の成績が悪いというお母さんから、悪かったというテストのファクスを送ってもらいました。そのテストを分析して、電話でお母さんに話し始めると、「実は、私はまだその問題を読んでいないのです」という話でした。

 このように、ほとんどのお母さんが、テストの点数だけを見て、中身を見ていないということがあります。模試などでは、分野別に漢字が何点、物語文が何点、説明文が何点などと分けて表示してくれるものもありますが、そういう表面上の分析よりも、まず親が中身を自分の目で見る必要があります。

 これは、国語に限らずほかの教科についても言えることです。また、入試についても、模試の偏差値などよりもずっと確実にあてになるのは志望校の過去問の出来具合です。点数のように加工されたデータに左右されるのではなく、もともとの生のデータに直接当たってみることが大切なのです。

 さて、ほかの教科はよくできているのに国語だけがおもわしくないという場合、意外と多いのが時間不足という原因です。前半がよくできているのに後半に×が多いという場合は、明らかに時間不足です。

 国語力のある子は、問題文を気合いを入れて一回だけ読み、設問にも一発で答えるような解き方をします。国語力のない子は、何度も繰り返し読むような読み方をするので、どうしても時間が不足してくるのです。

 問題文の読み方には、コツがあります。一つは傍線を引きながら読むことです。印象に残ったところに線を引いて読んでおくと、再読する必要があったとき必要な箇所がすぐに見つかります。
 もう一つは、特に物語文を読むときのコツですが、その物語に没入し状況をありありと実感しながら読むことです。こういう読み方をすると、微妙な設問に対しても問題文にいちいち戻らなくても答えることができます。

 速く読む力、共感して読む力は、国語の勉強によってではなく、読書の経験によって作られます。小学校の中学年までは、勉強よりも読書を優先した方がいいというのはこうした理由からです。
 大学入試センター試験などでも、説明文の読み方と物語文の読み方はちょっと違います。説明文は、知的に理解して読んでいけばいいので、ある意味で内容を要約しながら読むような読み方で読んでいけます。

 しかし、物語文はあらすじをまとめながら読むものではありません。その物語が描いている場面に入り込み、自分もその物語の中を生きているような感じで読むものです。そのような読み方をすると、登場人物の微妙な心情も手に取るようにわかってきます。そして、この読み方は、まさしく読書によって培われる読み方なのです。

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問題集読書で国語力をつける as/707.html
森川林 2009/12/12 20:56 


 先日、ホームページの記事で問題集読書のことを書きました。何人かの方からそのやり方についての問合せがありましたので、より詳しく書きたいと思います。

 まず、問題集読書の意義は、三つあります。一つは、難読、つまり難しい文章を読む機会を増やすということです。もう一つは、復読、つまりその難しい文章を何度も繰り返して読む機会を作るということです。そして最後は、時代性、つまり現代という時代の思潮を知るということです。

 この時代性ということについて言うと、国語の問題は社会の問題よりも時代の風潮をよく反映しています。例えば、これまでは地球温暖化がよく国語の問題に取り上げられていましたが、今は地球温暖化のデータそのものに疑問が投げかけられています。あと数年もすると、地球温暖化や二酸化炭素の問題はもう国語の問題としては出てこなくなるかもしれません。
 同じように、私が学生のころは、丸山真男の日本ダメ論が流行していました。しかし、その後、そのダメと思われていたところが実は日本の長所だったのだという論議が出てきました。そのうち、またしばらくすると、その日本の長所と思われていたところが実は欠点だったのだという話が出てくるかもしれません。
 大学入試の国語問題を読んでいると、新聞やテレビにはあまり出てこない文化の流れというものが感じられます。

 問題集読書の方法は、まず問題集を分解するところから始まります。全国の入試問題1年間分というのはかなり分厚いので、そのまま読もうとすると、本棚から出すたびに「どっこいしょ」と言わなければならないからです。
 その分解した問題集を、40ページぐらいずつまとめてきれいな表紙をつけてホッチキスで止めます。この40ページが1週間分で、毎日6ページぐらいを目安に読んでいきます。読みながら、印象に残ったところに傍線を引きます。傍線でなく付箋をつける方法でもかまいません。
 言葉の森の通学教室では、その付箋をつけたところを参考にしながら四行詩で感想を書くようにしています。読書ノートを1冊用意して、毎日四行詩を書いていくのです。四行詩ということがピンと来ない場合は、四行の引用や感想でもかまいません。

 問題集読書について、ときどき質問を受けることがあります。
 「天声人語のようなコラムを読むのはどうですか」と聞かれることがあります。天声人語は、難読というには軽すぎます。
 「要約するのはどうですか」という質問もあります。要約をしてもかまいませんが、面倒なことは長続きしません。時間をかけずに気楽に毎日続けられるものの方がいいのです。
 「なぜ問題を解かないのですか」という質問もよくあります。問題を解こうとすると、ただ読むだけのときよりも数倍の時間がかかります。そして、その結果○がついた問題は、もともとやらなくてもできた問題ですから解いただけ時間の無駄だったわけです。また、×がついた問題は解答を見てもできるようにはなりませんから、やはり解いただけ時間の無駄だったことになります。

 問題の解き方には、実はコツがあります。そのコツは、正しいものを選ぶのではなく、正しくないものを選ばないで残ったものを選ぶということです。この方法は、一般論として説明してもなかなかできるようにはなりませんが、実際にその子の解いた国語問題をもう一度解きなおしながら説明すると、だれでも1時間ぐらいですぐに理解できます。その結果、高校生でも一挙に点数が上がるということがよくあります。
 しかし、その点数が上がるのは、その子の実力のところまでです。だから、普段の国語の勉強は、解き方のコツのようなことはする必要がなく、ただ実力をつけるための勉強に徹していればいいのです。その実力をつける勉強法が読む勉強です。

 言葉の森の通学教室では、今、長文暗唱と付箋読書(問題集読書を含む)を組み合わせた自習をしています。昔の言葉の森の自習は、音読と読書でした。音読と読書は、真面目にやっていれば必ず実力がつきますが、音読と読書という方法自体に外から見てチェックする仕組みがないので、どうしても言葉かけだけで終わりがちだという面がありました。今、暗唱や付箋読書をしている子供たちは、今後確実に力をつけていくと思います。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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