ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 767番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
開成中学の国語の入試問題推測(その1) as/767.html
森川林 2010/02/06 22:31 


 2010年の開成中学の国語試験の解答がインターエデュなどで掲載されています。
http://www.inter-edu.com/nyushi/2010/kaisei/jap.php
 しかし、問題文がないので、何がなんだかよくわかりません(笑)。
 そのうち、問題もどこかで発表されるると思いますが、とりあえず解答から推測して問題を作りました。ですから、これは正式の問題ではありません。あくまでも推測です。
 開成中の物語文は、屈折した心理を問うのが特徴のようです。
 説明文の問題の方は、また明日にでも。

■物語文

 嘘は私もしじゆう吐いてゐた。小學二年か三年の【■1】雛祭りのとき學校の先生に、うちの人が今日は雛さまを飾るのだから早く歸れと言つてゐる、と嘘を吐いて授業を一時間も受けずに歸宅し、家の人には、けふは桃の節句だから學校は休みです、と言つて雛を箱から出すのに要らぬ手傳ひをしたことがある。また私は小鳥の卵を愛した。雀の卵は藏の屋根瓦をはぐと、いつでもたくさん手にいれられたが、さくらどりの卵やからすの卵などは私の屋根に轉つてなかつたのだ。その燃えるやうな緑の卵や可笑しい斑點のある卵を、私は學校の生徒たちから貰つた。その代り私はその生徒たちに私の藏書を五册十册とまとめて與へるのである。集めた卵は綿でくるんで机の引き出しに一杯しまつて置いた。すぐの兄は、私のその祕密の取引に感づいたらしく、ある晩、私に西洋の童話集ともう一册なんの本だか忘れたが、その二つを貸して呉れと言つた。【■2】私は兄の意地惡さを憎んだ。私はその兩方の本とも卵に投資して了つてないのであつた。兄は私がないと言へばその本の行先を追及するつもりなのだ。私は、きつとあつた筈だから搜して見る、と答へた。私は、私の部屋は勿論、家中いつぱいランプをさげて搜して歩いた。兄は私についてあるきながら、ないのだらう、と言つて笑つてゐた。私は、ある、と頑強に言ひ張つた。臺所の戸棚の上によぢのぼつてまで搜した。兄はしまひに、もういい、と言つた。
 學校で作る私の【■3】綴方も、ことごとく出鱈目であつたと言つてよい。私は私自身を神妙ないい子にして綴るやう努力した。さうすれば、いつも皆にかつさいされるのである。【■4】剽竊さへした。當時傑作として先生たちに言ひはやされた「弟の影繪」といふのは、なにか少年雜誌の一等當選作だつたのを私がそつくり盜んだものである。先生は私にそれを毛筆で清書させ、展覽會に出させた。あとで本好きのひとりの生徒にそれを發見され、私はその生徒の死ぬことを祈つた。やはりそのころ「秋の夜」といふのも皆の【■5】先生にほめられたが、それは、私が勉強して頭が痛くなつたから縁側へ出て庭を見渡した、月のいい夜で池には鯉や金魚がたくさん遊んでゐた、私はその庭の靜かな景色を夢中で眺めてゐたが、隣部屋から母たちの笑ひ聲がどつと起つたので、はつと氣がついたら私の頭痛がなほつて居た、といふ小品文であつた。此の中には眞實がひとつもないのだ。庭の描寫は、たしか姉たちの作文帳から拔き取つたものであつたし、だいいち私は頭のいたくなるほど勉強した覺えなどさつぱりないのである。私は學校が嫌ひで、したがつて學校の本など勉強したことは一囘もなかつた。娯樂本ばかり讀んでゐたのである。うちの人は私が本さへ讀んで居れば、それを勉強だと思つてゐた。
 しかし私が綴方へ眞實を書き込むと必ずよくない結果が起つたのである。父母が私を愛して呉れないといふ不平を書き綴つたときには、受持訓導に教員室へ呼ばれて叱られた。「もし戰爭が起つたなら。」といふ題を與へられて、地震雷火事親爺、それ以上に怖い戰爭が起つたなら先づ山の中へでも逃げ込まう、逃げるついでに先生をも誘はう、先生も人間、僕も人間、【■6-1】いくさの怖いのは同じであらう、と書いた。此の時には校長と次席訓導とが二人がかりで私を調べた。どういふ氣持で之を書いたか、と聞かれたので、私はただ面白半分に書きました、といい加減なごまかしを言つた。次席訓導は手帖へ、「好奇心」と書き込んだ。それから私と次席訓導とが少し議論を始めた。先生も人間、僕も人間、と書いてあるが【■6-2】人間といふものは皆おなじものか、と彼は尋ねた。さう思ふ、と私はもぢもぢしながら答へた。私はいつたいに口が重い方であつた。それでは僕と此の校長先生とは同じ人間でありながら、どうして給料が違ふのだ、と彼に問はれて私は暫く考へた。そして、それは仕事がちがふからでないか、と答へた。鐵縁の眼鏡をかけ、顏の細い次席訓導は私のその言葉をすぐ手帖に書きとつた。私はかねてから此の先生に好意を持つてゐた。それから彼は私にこんな質問をした。【■7】君のお父さんと僕たちとは同じ人間か。私は困つて何とも答へなかつた。
 「思い出」(太宰治)より

【■1】雛祭りを別の言葉の漢字二語で書きなさい。……節句

【■2】「私は兄の意地惡さを憎んだ」のはなぜか。四〇字以内で答えなさい。
 ……卵を手に入れるために蔵書と交換していたことを知りながら、すでに手元にない本をわざわざ読みたいという言うから。

【■3】「綴方」は、現代の言葉で何と言いますか。……作文

【■4】「剽竊」の意味を書きなさい。……他人の作品をそのまままねること。

【】この文章で著者は二とおりの綴方の書き方を対比して考えています。それはどういうものですか。
 ……ほめられるために嘘を書くこと
 ……真実をそのまま書くこと

【■5】「先生にほめられた」とあるが、その綴方のどういう内容がほめられたか。三〇字以内で書きなさい。
 ……頭が痛くなるほど勉強したうえに、月を愛でる風流さ

【■6-1】作文に書かれた「いくさの怖いのは同じであらう」に対して、訓導が【■6-2】「人間といふものは皆おなじものか」と聞いたのは、どういうことを言いたかったからか。四〇字以上五〇字以内で書きなさい。
……おまえは臆病で戦争が怖くて逃げるのかもしれないが、他の連中は恐れず勇ましく戦いに挑むのだ。

【■7】「君のお父さんと僕たちとは同じ人間か」のあと、訓導は何を言おうとしたか。自由に想像して一五字以内でその言葉を書きなさい。
 ……そもそも人はそれぞれ違う。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

森川林 20100206  
 その後すぐに、実際の入試問題を見せてもらいました。^^;
 大体似たような感じでした。

森川林 20100206  
 実際の問題では、太宰治の文章は現代仮名づかいになっていました。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
国語問題(15) 

記事 765番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
中国、アメリカ、日本、教育。 as/765.html
森川林 2010/02/06 05:12 


 四題話のような題名ですが。(^^ゞ


 中国は、輸出主導から内需拡大に経済政策を移行させているようですが、同時に経済がバブル化し国内の矛盾が高まっていると言われています。

 一方、アメリカは、強力な財政政策で国内経済に輸血を行っていますが、その大半が金融部門の救済に消費され、実体経済の回復には結びついていないようです。

 そして、肝心の日本は、巨大な財政赤字を抱え、これ以上の財政政策を行う余裕がなくなりつつあります。


 このような中で、多くの国が、自国の利益のために他国の犠牲を求めるという姿勢を打ち出していけば、それは二度の世界大戦を引き起こした構図と同じです。

 他国を犠牲にして自国を助けようと思うのではなく、自国の内部の努力で経済のソフトランディングを目指さなければなりません。特にアメリカ(笑)。


 アメリカは、今後、経済の縮小に見合う形で軍事力の削減を行っていく必要があります。そして、民主主義に立脚した農業とサービス業の静かな大国として暮らしていくべきです。アメリカ一国が圧倒的な経済力と軍事力で世界のリーダーを自認していた時代はもう終わりつつあります。


 そして、アメリカの軍事力の空白によって生まれる国際社会の無秩序状態は、日本が提唱する新国連によってコントロールされるようになるのが未来の理想の姿です。これまでアメリカの国益のために戦略を練っていた優秀な人材は、新国連で、一国の国益のためにではなく、地球全体の利益のために戦略を練っていくようになるでしょう。


 世界の仕組みをこのように変える力は、暴力によってもたらされるのではありません。現代の矛盾に満ちた社会を、新しい理想の社会に変える展望を実際に指し示す国が登場することによって、アメリカも、中国も、そして世界中の国がその国の内部から自分の国を変えていくのです。


 その新しい展望を示す国にいちばん近い位置にいるのが日本です。日本が、今後、新しい哲学のもとに、新しい政治、新しい経済、新しい教育を生み出し、それを実現した社会を作っていけば、それは軍事力のような強制によってではなく、文化的な権威によって自ずから世界を変革する力になっていくのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
政治経済社会(63) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習