公立中高一貫校で作文入試が増えてきたためでしょうか。作文教室に人気が出ているようです。高校の推薦入試でも、大学のAO入試でも、就職試験でも、作文や小論文の課題が出されるようになっています。これから、作文力をつけることはますます重要になってくるようです。
しかし、作文教室はやや乱立気味です。いろいろな教室がありますが、どういうことを基準に選んだらよいのでしょうか。
◆重要な基準
1、長年続いているか
子供に作文を教えるということは、ある程度文章力のある大人であれば、数ヶ月間はだれでもできます。1年間教えるということも、努力すればできます。
しかし、子供が小学1年生のころから教えて、その子が小学5、6年生になるまで継続して教えられるかといえば、そういう人はあまりいません。たとえ教えることができても、子供が飽きてやる気がなくなるのが普通です。
教えることは簡単だが、継続して教えることは難しいというのが、作文教室の特徴です。そのため、長年続いている教室はきわめて少ないのです。また、親が先生代わりになって教えるということも難しいのです。
言葉の森は、最初に生徒募集を始めたのが1975年、会社法人の設立が1985年と、作文教室としては最も古くからスタートしています。長年続いているということが、信頼性の証です。
2、作文を専門的に教えているか
作文の勉強は、子供が飽きるので、専門的には行いにくいものです。そのため、作文を教えている教室の中には、漢字の書き取りや国語の問題をやることを勉強の中心にし、作文はときどき書かせるという形のところも多いようです。たまに作文を書かせるのであれば、子供が飽きても何とか続けることができます。
しかし、そのような単発的な教え方で作文の実力がつくかといえば、それは疑問です。作文は、系統的なカリキュラムで、前回に書いたものをもとに今回はどう書いたらいいかを教える中で実力がついていくからです。
言葉の森は、週1回の作文指導を行っています。言葉の森で受講を始める前に、週1回で子供が飽きないかとか負担が大きくないかと心配される方もいますが、毎週同じ曜日の同じ時間に作文を書くというペースで勉強することによって本当の実力がついてくるのです。
3、中学受験の作文高校入試の作文に対応しているか
作文の勉強の成果が直接に生きてくるのは、やはり受験の場面です。言葉の森の生徒は、受験を目的にせずに作文の勉強を始めたという子がほとんどですが、作文の勉強をしていてたまたま受験で作文の課題があったときに、それまでの実力がすぐに生かせるというのは強みです。
受験作文の課題は、初期のころはだれでも書けるようなものが多いのですが、受験生が次第に準備をしてくるようになるので、年を経るにつれてだんだん書きにくい課題になっていきます。現在の受験作文の主流は、複数の文章を読ませてその感想を書かせるようなスタイルのものです。また、受験生が予想もしないような突飛な課題を出すところも増えています。
言葉の森は、通常の作文指導のほかに、受験コースを設けています。これは、作文入試に取り組む生徒が、入試の5ヶ月前から週1回のペースで志望校の過去問に対応した作文を書く練習をするコースです。過去問がない場合でも、これまでの経験を生かして予想問題を作って指導します。言葉の森が受験コース用に準備している課題は約800題ですから、どのような問題にも即座に対応できます。
4、高校生の大学入試小論文まで指導しているか
少子化の進展によって、大学入試全体がじっくり採点する小論文形式のものに移行しています。また、大学側の事情によって、優秀な生徒を早めに確保する必要からAO入試や推薦入試を行うところが増えています。
ところが、大学入試の小論文を個々の生徒に合わせて個別指導しているところは少なく、ほとんどが小論文の書き方を一斉に説明する形で指導しています。
受験生の立場からすれば、文章の書き方を一般的に説明されても実力はつきません。また、何人かの文章の添削例を見ても、それが自分の実力に結びつくわけではありません。自分の書いた文章を個別に批評してもらうことが必要なのです。
言葉の森の小論文指導は、個人別・志望校別の指導です。長年の実績があるので、どんなに苦手な子にもその子に合ったわかりやすい指導ができるとともに、どんなに高度な課題にも応えることができます。早稲田大、慶應大、上智大など難関大学の小論文入試には、これまでに多数の合格者を出しています。また、小論文形式ではありませんが、記述式の国語問題が多い東大、一橋大など国公立の大学入試にも合格者を出しています。
しかし、高校3年生になってから受講を開始することは残念ながらできません。受験間際になってから受講する生徒に対応すると、言葉の森の通常の授業が圧迫されてしまうからです。ただし、小学生のときに言葉の森を受講していて、途中で受験や部活のためにいったん中断していた生徒が高校生になって再開するという場合には対応しています。そして、言葉の森にはそういう生徒がかなりいるのです。
高校生になって急に小論文を勉強する必要性が出てきたとき、小論文を指導してくれる予備校や塾を探してみると、志望校に合わせた課題で個別に指導してくれるところはほとんどありません。そこで、言葉の森で受講を再開するのです。
5、どんな先生が教えているかわかるか
作文教室の中には、有名な先生や肩書を持った先生が教えているところもあります。しかし、それらの先生がすべての生徒を指導しているわけではもちろんありません。作文指導は時間がかかるので、ほとんどの生徒はその有名な先生以外の先生が教えています。
ところが、その実際に教えている先生がどういう先生かはわかりません。いい先生であることは当然ですが、どういう先生かある程度わかったうえで受講したいというのが保護者の気持ちです。
言葉の森は、指導している先生がどういう先生でどういう指導をしているかわかるようにしています。また、電話指導で子供と直接話をするので、保護者と電話で連絡をとる機会もときどきあります。教えている先生と直接話をすることができるというのが、言葉の森の親身な指導の土台になっています。
6、通信は電話指導があるか
作文の勉強は、そのほかの国語、算数、英語などの勉強と比べて、スタートするときの負担が大きいという特徴があります。
子供がすぐに作文を書いて、あとは先生の評価を見るだけということであれば苦労はしません。しかし、ほとんどの場合、子供に作文を書かせることが大変なのです。
課題がやさしいときは、それでも無理矢理に書かせることができます。しかし、やさしい課題の作文をいくら書いても、作文の実力はつきません。その子にとって難しい課題に取り組むことで本当の実力がついていきます。
では、難しい課題を子供が自分の力で取り組むことができるでしょうか。ほかの教科であれば、答えや解法の説明を読んで自分なりに理解することができます。自分で理解できないときでも、近くにいる親が助けてあげることができます。しかし、作文の難しい課題は、ヒントをいくら見ても書けないときは書けません。それは、ヒントがその子に合わせたヒントではなく、一般的な生徒を対象にしたヒントだからです。
そのときに、電話指導の説明があれば、その子の理解度に応じた書き方をアドバイスすることができます。
言葉の森の通信指導の特徴は、電話指導があることです。もともと言葉の森は通学教室からスタートし、通学できない生徒のために通信コースを開設しました。指導の効果を維持するために、電話による指導が欠かせなかったのです。
言葉の森の電話指導は、担当の先生が毎週電話で説明をします。生徒の質問があるときだけ電話で対応するというのではありません。また、担当の先生の電話説明を聞いたあと、やはり途中で書けなくなったというときも、電話で質問をすれば追加の説明を聞くことができます。更に、欠席した場合のふりかえ授業も電話指導で行います。
言葉の森の生徒の作文提出率がきわめて高いのは、毎週の電話による指導があるからです。電話を聞いたあとすぐに作文を書くというスタイルで勉強ができるので、家庭でも楽に作文の勉強が続けられるのです。
7、読む学習に力を入れているか
作文の力は、作文を添削することによってつくのではありません。特に、小学校の低中学年のころは、書いたものをいくら直しても、それで作文が上手になるわけではありません。添削で作文が上手になるのであれば、日本中の子供のほとんどは作文が上手になっています。
赤ペンによる添削は、作文の指導法の一つですが、添削よりも大事なことは作文力の土台となる読む力をつけることです。読む力をつけながら添削するのであれば、添削が生きてきます。読む力をつける指導をどれだけ行っているかが、作文教室の評価の大きな基準です。
言葉の森は、作文力の土台をつける指導として、長文の暗唱と読書の自習を行っています。特に暗唱の自習は、毎週先生が電話で自習の進み具合をチェックするので、ほとんどの子が長い文章でもすらすらと暗唱できるようになります。暗唱は、単に文章を覚えるという勉強ではなく、暗唱することによって語彙と語彙とのつながりが広がり、考える力が育つことによって、文章を書く力がつくという学習なのです。
◆ちょっと重要な基準
8、無料体験学習が受けられるか
実際にどんな教材でどんな先生が教えるかということが、事前にわかれば安心です。
言葉の森は、電話指導による2回の無料体験学習があります。体験学習を受けたあと、まだ時期が早いと思えば、そのまま終了し、またしばらくしてから無料体験学習を受けることもできます。
無料体験学習の教材は、実際に受講するときの教材と同じです。指導する先生も曜日も時間も同じです。長文暗唱などの自習については時間がかかるので、入会が決まってから1ヶ月かけて少しずつ説明していきます。
何度も無料体験学習が受けられるというのは、指導の内容に自信があるからです。
9、休んだ場合の振り替えがの授業があるか
毎週の決まった授業だと、受講できない日も出てきます。かといって、授業の曜日や時刻が決まっていず、いつでも自由に提出していいということであれば、逆に提出率が低くなります。
言葉の森の授業の特徴は、休んだ場合も別の日にふりかえて授業を受けられることです。授業に柔軟性があるので、ほとんどの生徒が無理なく勉強を続けられるのです。
10、教材はオリジナルなものか
作文の勉強に関心を持つ人が増えてきたために、教材作成会社が準備する教材も豊富になってきました。しかし、出来合いの教材の弱点は、生徒の個別の要求に応えられないことです。
言葉の森の作文教材は、すべてオリジナルで、毎年新しい教材を追加しています。このため、生徒のどのような要求にも対応する指導ができるのです。
◆あまり重要でない基準
1、通信か通学か
通学の作文教室も増えてきました。通信よりも通学の方が続けやすいとだれもが思いがちです。確かに、添削だけの通信指導であれば、通学の教室の方が確実に作文を書く機会を増やせるでしょう。
しかし、大事なのは指導の中身です。作文を書かせることはだれでもできますが、作文の実力をつける指導はなかなかできません。それは、通信指導であっても、通学指導であっても変わりはないのです。
しかも、言葉の森の通信指導は、電話による先生の説明を勉強のスタートの合図として始められます。それは、通学教室で先生が説明をしてから書くことと全く同じです。また、書いている途中でわからないことが出てくれば、すぐに電話で質問することができます。個別の質問が簡単にできるという点では、通学教室でみんなの前で質問するよりもずっと個々の生徒に対応しやすい勉強になっています。
実際に、言葉の森の通信の生徒は、作文の提出率がかなり高いという特徴があります。意外なことに、わざわざ通わなければならない通学教室よりも、電話指導のある通信教室の方が続けやすいのです。
2、有名な先生がいるか
作文教室の中には、有名な先生が監修しているものもあります。それ自体はよいことですが、その先生が個々の生徒の指導にまで責任を持っているわけではありません。大事なことは、実際に指導にあたる先生がどのような指導をしているかです。
言葉の森では、担当する先生がその生徒の指導に責任を持ってあたります。また、個々の生徒の実力をつけるために、教室全体で対応しています。大事なことは、有名な先生がいるかどうかではなく、指導の中身です。
3、教材がカラフルで楽しそうか
作文教室の中には、カラフルな教材で楽しく勉強できそうなものもあります。楽しく勉強するのはもちろんよいことですが、ここで考えなければならないことは、小学校低中学年で楽しく勉強できるというのはどういうことかということです。
課題がやさしくて、すぐに取り組めて、先生が褒めてくれるという教え方であれば、小学校低中学年のころはだれでも楽しく勉強ができます。しかし、それで実力はつくのでしょうか。
楽しさは大事ですが、勉強を進める中では、必ずその子の実力を超えた難しい課題が出てきます。そういう難しい課題に取り組み、その課題を克服する中で作文の実力はついていきます。このように考えると、楽しい教材というのは、実力がつかなくてもよい教材となってしまう可能性もきわめて高いのです。
昔の子供たちは、モノクロの味気ない教材でみんな実力をつけていきました。確かに現代のようにビジュアルな環境では、カラフルで見た目のきれいな教材でないと子供は興味を示さないかもしれません。しかし、大事なことは外見ではなく、実際の勉強の中身です。
言葉の森の教材は、地味なことで定評があります。挿し絵もあまりなく課題集はホッチキス止めです。しかし、教材をなぜきれいに製本しないかというと、毎日のように教材を部分的に修正してよりよいものに改良しているからです。教材が地味で一見質素に見えるところに、指導の充実度が表れているとも言えるのです。
【関連ページ】
作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信
作文の通信教育の教材比較 その1
作文の通信教育の教材比較 その2
作文の勉強は毎週やることで力がつく
前回の読書法の話に引き続いて、今回は作文の方法です。
作文を書く方法を考える前に、作文というものは何かということを考えておきたいと思います。
作文は二つの側面に分かれます。一つは作文の中身です。もう一つは作文の表現です。
中身について大事なことは、一つは創造的であることです。もう一つは、創造的ということではないが価値ある中身が書かれているということです。
表現について大事なことは、一つは速くわかりやすく書くということです。もう一つは美しく個性的に書くということです。
価値ある中身を書くためには、体験と読書によって作文に書く内容を充実させていく必要があります。ですから、いい作文を書くために、書くことを準備してくる、家族に取材してくる、長文や本を読んでおくなどということが大事です。
価値ある中身を書くために書くことをあらかじめ準備できるように指示するという方法が項目法です。
作文を書く際に、「会話を思い出す」「たとえを入れる」「似た話を書く」「昔話の実例を入れる」などの項目指導は、今でこそいろいろなところでやられているようですが、言葉の森が初めてこの項目指導を行ったときは、いろいろな批判がありました。代表的なものは、「どうして、作文を書く前に『会話を入れて書く』などという指導ができるんだ。(書く中身がまだわかっていないのに)」というものでした。
今は、こういう批判はほとんどありません。言葉の森で勉強していることが、作品を書くということではなく、作文を書くための勉強をしているということがわかってきたからだと思います。そういう批判があった当時は、作文教室という言葉もありませんでした。
この項目指導をすると、作文を書くのが苦手だという子も、すぐに書けるようになります。小学校低中学年の場合は、「会話を入れて、たとえを入れて、思ったことを入れて書く」という簡単な項目指導だけで、子供は書く中身の方向がわかるのですらすら書き始めます。
この項目指導は、書くことを助けるので、苦手な子もすぐに書くための指導として使われます。しかし、学年が上がると次第に項目のレベルが上がっていくので、書くことが得意な子がもっと上手に書くための指導になっていきます。例えば、小学校高学年で「ことわざを書く」「一般化した感想を書く」という項目や、中学生で「複数の理由を書く」「名言を引用する」などの項目です。
子供たちの多くは、作文の書き方を系統的に教えられたことがなく、ただ書かされて添削をされるという教え方をされています。
そのため、小学校低学年のときに自分なりに自信を持って書いた作文が厳しく批評されるなどの経験を通して、書くことが苦手になってしまう子も多くいます。
そういう子が初めて言葉の森の教室に来ると、最初は緊張していますが、
項目指導を始めると見違えるように生き生きと書き始めます。項目指導で大事なことは、作文を書いたあとに、項目として指導したこと以外の批評はしないということです。
たまに、こういう教え方をする人がいます。「会話を入れて書いてごらん」と作文の指導をしたあと、子供が書いてきた作文を見て、「感想がちゃんと書けてない」「文がだらだら長すぎる」「点の打ち方がおかしい」などという評価をしてしまいます(笑)。これでは、子供がかわいそうです。指導していないことは評価しないのが原則です。少なくとも、批判になるような評価は、指導をちゃんとしてから行うことが必要です。
(つづく)