前回までは、作文の中身をよくする方法について説明しました。
今回は、作文の表現をよくする方法です。まず速くわかりやすく書く方法として音声入力法の説明をします。
文章というものは、あれこれ推敲を重ねたものよりも一気に書き上げたものの方が読みやすいということがあります。読むスピードは書くスピードの10倍以上あるので、書いているときは、同じ言い回しがあるなど不自然な箇所があってもなかなか気づきません。あとから自分の書いたものを読むと、不自然なところがよくわかります。
書くことと読むことではスピードに差がありますが、話をすることと話を聞くことは、同じスピードで行われるので、こういう問題は起こりません。音声入力は、読むスピードと同じ速さで書いていくことができます。このために読み手にとってわかりやすく書くことができるのです。
この音声入力の方法に欠かせないのが構成図です。つまり、音声入力をする前に、考える過程があらかじめできあがっている必要があります。これがもし構成図なしで考えながら音声入力をするのであれば、スピードはそれほど速くなりません。
ただし、日本語は音声入力には向かない言語です。それは、日本語は他の言語に比べて音素数が少ないために同音異義語が多くなるからです。将来、文脈で理解して漢字を変換する機能が充実すれば、音声入力はもっと使いやすくなると思います。
言葉の森で現在使っている音声入力のハードとソフトは次のとおりです。
amivoice(音声を文字に変換する有料ソフト)
voice-trek(ICレコーダー)
ヘッドセット(300円程度の安いもの)
unitemovie(複数の音声ファイルを結合するフリーソフト)
将来、インターネットで利用できるフリーのソフトがもっと増えてくれば、パソコン1台でだれでも音声入力が利用できるようになると思います。
音声入力の欠点は、誤変換の編集が必要になることです。同音異義語の編集などをしていると、正しく変換するのに時間がかかるので、パソコンに直接入力するのと時間的にはあまり変わりません。
では、音声入力は何が利点かというと、急いでいるときにとりあえず10分もあれば1200字程度の文章を書き上げることができるという点です。これは、直接入力であれば、まず不可能な速さです。しかも、文章の流れが自然なので、書いたあと読み返す必要のほとんどない文章ができあがります。
言葉の森の通学教室では、中学生以上の生徒に音声入力の方法を教えています。
しかし、これはやり方さえわかればだれでもすぐにできます。
音声入力ソフトなどを使わずに、ICレコーダーだけを使った簡単な方法は次のとおりです。
1、まず構成図を書きます。これは必須です。構成図を書かずに、考えながら音声入力をしたのでは、音声入力の利点は出てきません。
2、構成図を眺めて、文章に書く順番の見当をつけます。
3、音声入力に慣れないうちは、構成図の中に、接続語、助動詞、段落の有無などを書き込んでもよいでしょう。
4、ICレコーダーに文章を音声で入力していきます。一気に入れることもできますが、迷ったときはいったん停止して考えを整理してから続きを入れます。
5、入力が終わったら、ICレコーダーを再生しながら、文章を書いていきます。誤変換を直す必要がないので、音声入力ソフトを使うよりも速いかもしれません。
1200字程度の文章を書くのに、構成図が10分以内、音声入力が10分以内でできます。
勉強に忙しい中学生以上の生徒のみなさんは、ぜひこの音声入力法を試してみてください。
なお、ICレコーダーがあると、ほかにもいろいろ利用できます。
暗唱する文章を録音しておき何度も聴くということもできます。ふと思いついたことを録音してメモ代わりにすることもできます。
枕元に置いておき、面白い夢を見たときに、それを忘れないように録音しておくこともできます。
前回は、価値ある中身を書く方法として項目法の説明をしました。
今回は、創造的な中身を書く方法として構成図法の説明をします。
文章を書くということは、書く過程と考える過程に分けることができます。通常、書く過程と考える過程は融合しているので、考えながら書き、書きながら考えるという書き方が一般的です。しかし、この方法は実はあまり能率がよくありません。
構成図を使うと、考えの部分だけを独立させて深めていくことできます。書こうと思うテーマについて、自分の考えをビジュアルに書いていくだけなので、1200字程度の作文の内容が10分以内にできあがります。作文の一種のシミュレーションといってもよいでしょう。
全体像が簡単にできあがるので、構成図を完成したあとはただそれを文章化するだけです。中学生や高校生になると、作文を書く時間がないときは10分程度で構成図を書いて、その日はそれで仕上げという書き方もできます
作文は、書いている途中で中断することがなかなかできませんが、構成図であれば図を完成させておけば、あとですぐに文章化することができます。
【構成図の見本1】
小学生の生徒向けに書いた構成図の見本です。
【構成図の見本2】
中学1年生の生徒が実際に書いた構成図です。
【構成図の見本3】
私(森川林)がホームページの記事などを書くときに実際に書いている構成図です。