4月から新しく学校に通う1年生は、いろいろな可能性を持っています。そこで、親は、どのような習い事をさせようかと考えます。
英語、算数、国語、ピアノ、水泳、習字、算盤、バレー、体操教室、理科教室、自然体験教室、サッカー、野球、バスケットなどなど。いろいろなことをやらようと思いますが、その半面のびのび育てたいという気持ちもあります。しかし、学校の勉強が遅れては困ります。
そういうときにいちばんおすすめしたいのが言葉の森の作文の勉強です。
なぜでしょうか。
言葉の森で小学校1年生から作文の勉強を始めると、まず毎日の暗唱の習慣がつきます。そして、長文を読む力がつきます。もちろん、書く力もつきます。親子の対話ができます。書いたものが記念に残ります。国語力もつきます。何よりも、言葉の森で勉強をすることによって思考力がつき、学力の土台がつくのです。
思考力さえついていれば、英語、数学、国語などの勉強は、基本的には学校だけで十分です。
このように考えれば、毎日楽しく遊んで余裕のある生活が送れます。
幼稚園や小学校低学年で勉強を先取りすると、小学生の間は学校より先に進んでいるので、勉強がよくできるような錯覚を持ちます。英語の勉強では、中学生の最初のころまでよくできるような感じがします。
しかし、それが高校生に進むころには、みんな同じところに落ち着くのです。小学校低学年や中学年で先に進んだことは、高校生になるとすべて解消してしまいます。すると、そのために小さいころから苦労した勉強は何だったのかということになります。
勉強の習慣がついただけいいと思えば、そう言えないこともありません。しかし、毎日30分も1時間も勉強をすることによって圧迫されてしまうのは、思考力に最も必要な読書と対話の時間なのです。
小学校1年生のころは、花を咲かせる時期ではなく、根を張る時期です。その根とは、読む力と考える力です。
だから、読む力を重視した言葉の森の作文の勉強をするのが、小学校低学年ではいちばんいいのです。
さて、小学校の勉強は、基本的には学校だけで十分だと書きましたが、勉強の定着まで考えると、学校だけでは十分ではありません。先取りまでする必要はないが、定着だけはしっかりしていく必要があります。
今の小学校は、行事に追われています。勉強の合間に行事があるのではなく、行事の合間に勉強があるという形になっています。勉強はできなくても生徒の問題だから仕方ない、しかし行事がうまくいかないと先生の責任になる、ということになりがちなのです。
また、学校の授業は、理屈の説明が中心になるので、実際の練習量が不足してきます。練習量の不足が如実に表れるのは、漢字書き取りの間違いと計算間違いです。漢字や計算ができないのは、練習量の不足ですから、学校で宿題が出ないとしたら、その分を家庭で補う必要があります。
家庭での練習は、市販の問題集でかまいません。しかし、家庭での勉強は完璧にやる必要はなく、苦手にならない程度までできていれば十分です。
子供は、中学3年生になるころから初めて自覚的に勉強するようになります。その時期までに、思考力の土台をしっかり作っておくことが大事です。
小学校1年生の子供を持つお母さんお父さんは、見た目の華やかさや流行に迷わされず、本当に大切で長続きする勉強は何かということを考えて習い事の選択をしてください。
小2の男の子の保護者から電話がありました。もともと作文をよく書ける子だそうです。先生の電話のあとなかなか作文が書けなくて、1日かかってしまうこともあるそうです。しかも、お母さんの言うことを聞きません。自分で納得するように書きたいらしいということでした。
作文の勉強に2時間も3時間もかけるというのは、やり過ぎです。中学生以上の生徒の場合は、よいものを書こうとしていろいろと推敲しながら書くことも多いので、3時間ぐらいかかることもあります。しかし、小学2年生でそんなにやるのは、やはり時間のかけ過ぎです。
しかし、同時に、作文を書くというのは、小学生の子供にとって絵をかくとか工作をするとかいうことと同じ面があるので、本人が楽しみながら書いているのであれば、それは遊びの一種として見ていても差し支えありません。
今回の相談の場合、お母さんの話では、本人も家族も時間がかかることで困っているということでしたので、アドバイスをしました。
作文が書けないという場合、書けない状態が何分かたつと、あとは時間がたつほど書けなくなっていきます。15分も書けない状態が続くと、あとは30分でも1時間でも書けません。時間がたてばたつほど、何を言っても書けなくなります。だから、親のアドバイスは最初の5分が勝負なのです。
子供が書き出せない場合は、親が、書く文章を言ってあげます。「『きょう、ぼくは朝七時におきました』。はい、書いてごらん」「よく書けたね。じゃあ、次は、『朝ごはんのおかずは、なっとうとたまごやきでした』。はい、書いてごらん」「じゃあ、次は……」このようにいくつかの文を言ってあげると、途中から子供は必ず、「あ、わかった。もう言わないで。自分で書けるから」と書き始めます。最初の呼び水だけが必要なのです。
もし、このように書かせても、子供が途中から自分で書き出せないという場合は、お母さんがずっと最後の文まで言ってあげてもかまいません。何しろ書き上げたという成功体験を積み重ねることで、作文を書く力がついてきます。
お母さんが言ってあげるかわりに、長文を学年の100倍から200倍の字数まで書くということでもかまいません。子供が、自分で考えて自分の力で書くということにこだわる必要はありません。一回一回の作文を見るのではなく、長期的に作文の力をつけるのだということを考えて、何しろ何かを書くという行動をさせることが大切なのです。
ところが、今回の相談の場合は、お母さんが手伝ってあげると言っても、子供が言うことを聞かないということでした。
この場合、アドバイスの仕方にコツがあります。それは、問題が起きたあとに対応するのではなく、問題が起きる前に対応しておくということです。
小学校で運動会の練習をするようなとき、ベテランの先生は次のような指示の仕方をします。
「これから、玉入れをします。先生が笛を吹いたらはじめてください。そして、先生が2回目の笛を吹いたら玉入れをやめて元の場所に戻ってください。はい、ピー」
子供は1回目の笛で一斉に玉入れを始め、2回目の笛で一斉に元の場所に戻ります。
若い先生は次のような指示の仕方をします。
「これから、玉入れをします。先生が笛を吹いたらはじめてください。はい、ピー」
みんながわあっと一斉に玉入れを始めます。先生がそろそろ終了にしたいと思って、
「はい、もうやめなさい」
と言ってもすぐにはやめられません。大声で、
「やめなさい」
「やめなさいったら、やめなさい」
「どうしてすぐにやめられないの!」(笑)
指示の仕方のコツは、問題の起きたあとのことを織り込んで準備しておくことです。
勉強を始めさせるときも、終わらせるときも同じです。
お母さんが突然思い出したように、
「あ、そうだ。勉強始めなさい」
と言っても、子供は素直に言うことを聞けません。
「あと、15分ぐらいしたら、そろそろ勉強を始めようね」
とあらかじめ言っておいて、それから指示をすればスムーズに言うことを聞けます。
勉強を終わらせるときも同じです。
始める前に、「○分ぐらいまでで終わりね」と言っておき、その時間の来る15分ぐらい前になったら、「あと、15分ぐらいで終了だよ」と言っておけばスムーズに終えることができます。
この「あらかじめ」は、あらゆることに共通する大事なコツです。
中学受験で勉強している子に、
「何しろ合格までが目標だから、合格したら何をしてもいいからね」
と言っていたとします。
合格したあと、子供は解放感で遊び始めます。そして、勉強の習慣が戻らない^^;ということも多いのです。
受験勉強をしている最中に、
「合格が目標だけど、本当に大事なことは合格した学校でしっかり自分を成長させて立派な人間になっていくことだからね」
と、あとのことまであらかじめ言っておくことが大切なのです。