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作文の能率を上げる構成図と音声入力の方法 as/821.html
森川林 2010/03/12 06:17 




 構成図は、言葉の森では、小学3年生から書いています。音声入力は、通学教室で中学生以上の生徒が行っています。音声入力は、小学校高学年でもできると思います。


 書く時間がとれないときでも、10分間で1200字程度の文章がすぐに書けるという点が音声入力の利点です。しかし、役に立つのは主に、大学生や社会人になるでしょう。大学生の場合は、レポート提出などに使えます。


 音声入力は、ICレコーダーの機器が必要なため、通信教室では行っていませんが、以下の説明を参考にすれば、だれでも自宅でできると思います。ただし、通学教室の中高生を見ていると、音声入力は慣れるまで時間のかかる人が多く、しばらくの間は、音声化するよりも直接書いた方が書きやすいという人が多いようです。


 では、音声入力の方法です。


 まず最初に、構成図を書きます。音声入力は、文章を書くという作業ですから、その作業に入る前に、考える作業が必要になってきます。それが構成図です。この構成図も、慣れないうちは、直接作文を書いた方が早いという人が多いようです。何事も、新しいやり方は最初のうちはかえって手間がかかることが多いので、ついこれまでの慣れ親しんだやり方でやりたくなるのです。


 構成図に似ているものに、マインドマップという方法がありますが、手順が複雑なのでかえって時間がかかります。構成図は、普通のルーズリーフに、1本のペンで、短文と矢印で図を書いていくという書き方です。


 なぜルーズリーフがいいかというと、2枚以上にわたったときに、横に広げて見ることができるからです。1本のペンで書くといっても、書き込みが複雑になったときは途中で色を変えた方が読みやすくなります。短文と矢印で書くというときの矢印とは、構成図に書いた順番であって、文章化するときの順番ではありません。つまり、短文どうしの内容的な関係を表すものではなく、単純に短文を書いた時間的な順番を矢印で表しているということです。また、構成図に書くのは短文であって単語や長い文でないということも大事です。構成図に書く短文の平均的な字数は10-20字です。1文を1行で長く書くのではなく、2、3行に折り返してコンパクトに書きます。その方が矢印でつなげるときに縦にも横にも斜めにも結びつけやすいからです。

 言葉の森では構成用紙という小さい枠のある用紙を使っていますが、慣れてくれば無地の紙に書いた方が書きやすくなります。


 1200字の文章を書く場合、構成図で7、8分かかります。ただし、全く新しいことを構成図を使って考える場合は、もっと時間がかかります。


 構成図は、思いついたことをどんどん書いていきます。その文章のテーマに関係なさそうに見えることであっても、気がついたことは次々に書きます。構成図を書くということは、思考を外化することです。考えの材料をすべて表に出して見えるようにして、文章化のシミュレーションをしていることになります。


 構成図を書き終えると、自分が考えたことの全体の構造や文章化の方向がわかります。全体の方向がわかってから文章化するというのが、構成図を使った書き方の特徴です。文章には、考える過程と書く過程がありますが、構成図は、考える過程ですから、書くための予行演習のようなものです。構成図で思考の下書きをしたあとに文章化するので、文章を書きなおすということがほとんどありません。それで、音声入力がしやすくなるのです。


 音声入力は、慣れるまでなかなかうまく文章化できません。それは、これまでの長い習慣で、考えるスピードと書くスピードが結びついているからです。また、口に出して言う文章は、手で書く文章と違うところがあります。最も大きな違いは、日本語の場合、音声の文章は文末をあいまいにすることが多いということです。


「昨日は、どこに(行ったのですか)」
「ちょっと海に(行ったのです)」
「へえ、どちらに(行ったのですか)」
「うん、城ヶ島(に行ったのです)。それで、これ(お土産です)」
「わあ、くさやね」(そんなもんあるわけないだろ)


 これは、スピーチなどでも同じです。話をしたり聞いたりする場合には、普通はなかなか「。」の来ない文章を交わします。それでお互いに、言うことも聞くこともうまくできるようになっています。

 文章化しやすい音声を入力するためには、意識的にやや短い文にします。長めの文の場合は、文の途中で区切ります。ICレコーダーで大体10文字から20文字ぐらいごとに録音を停止しながら音声を入力していきます。なぜかというと、再生するときに、その区切りごとに一度で入力できるからです。あまり長い文だと、短期記憶が追いつかないので、もう一度聞きなおして書くという書き方になってしまいます。

 音声入力は、考えながら言うのではなく、1文を1息で言うようにします。もちろん、手作業でテキスト化する過程で追加や修正はあります。


 言葉の森のこれまでの音声入力は、ヘッドセットとテキスト化ソフトを使っていました。これはこれで便利ですが、ソフトの機能がまだ十分でないことと、操作の手間がかかることという弱点がありました。そこで、音声化した文章をそのまま聞きながら書く方が楽だということがわかってきました。


 長い文章を書く時間がとれないときは、とりあえず音声化で入力さえしておけば、あとで時間のあるときに書くことができます。また、大量の音声化した文章を、多人数で手分けして文章化することもできます。


 音声化の入力に慣れておくと、音声化せずに書く文章も、書くスピードが上がります。1文を1息で書くコツがつかめるようになるからです。


 もちろん、文章の価値は速く長く書くことにあるのではありません。書く内容を豊かにするために読書が必要になり、考える力をつけるために暗唱などの練習が必要になります。

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これから大学生になるみなさんへ as/820.html
森川林 2010/03/11 16:14 



 これから大学生になるみなさんへ、大学で学ぶ心構えを4つにわたって説明します。


 第1は、夏休み前までにサークルに入るとよいということです。それは、サークルの先輩からの情報が、大学生活では役に立つことが多いからです。

 しかし、サークルの中には、宗教団体や政治団体が背後にあるという例もあります。特定の宗教や政治の団体に入ることは、自分の可能性の幅をせばめます。何かの団体に勧誘されたら、まず情報を集めてください。インターネットの情報、友人からの情報、先輩からの情報と、多様な情報と照合して判断していくことが大切です。

 また、何かの集団にただ属するよりも、自分がサークルや研究会を立ち上げた方が得るものは多くなります。だれでも自分の好きな分野や、自分がこれから取り組んでみたい分野があります。その自分がやってみたい分野についてサークルや研究会を作って運営していくのです。


 第2は、大学生時代でなければできない挑戦の体験をすることです。高校時代までの友達と離れて、これまでとは異なる人に囲まれるということは、自分を変身させる大きなチャンスになります。高校までは、勉強のできることが大事でしたが、その延長で成績を上げたり資格を取ったりすることだけを考えていたのでは、大学生活の意義は十分に達成できません。就職試験などにおいても、大事なのは、成績や資格よりも、挑戦体験の有無です。挑戦体験で大事なのは、自分が責任を負うリーダーの立場で何かをすることです。


 第3は、暇なときにはとりあえず読書をするということです。大学生活は比較的ゆとりがあるので、差し迫って何もする必要のない時間が生まれます。そのときは、何しろ本を読むと決めておけば、あとで必ずよかったと思うはずです。

 大学生は、つい入門書や概論書や流行の本を読みがちです。しかし、学生時代に読まなければならないのは、1にも2にも古典です。古典と呼ばれる古今の名著は、現代の社会には一見役立たないように見えますが、実は生き方や考え方のバックボーンになるのです。


 第4に、言葉の森の勉強の中で、大学生になってからやっていくとよいことをいくつか挙げます。

 1つは、付箋読書です。本を読むときに、自分の本であれば傍線を引きながら、借りた本であれば付箋を貼りながら読んでいきます。そのときに、フォトリーディングをいう方法を練習すると、読書のスピードが上がります。また、付箋読書でたくさんの本を並行して読んでいくことができます。
●付箋読書の方法


 もう1つは、構成図を書くことです。今はブログやmixiなど情報を発信する機会が多いので、自分の考えを述べる場所を作っておくとよいと思います。その場所で文章を書くときに役立つのが構成図です。マインドマップという方法もありますが、手順が複雑なので、もっと簡単にできる構成図を練習しておきましょう。
●構成図の書き方


 3つめは、音声入力です、レポートの提出でも、自分のブログに書く記事でも、構成図をもとに音声入力で文章化していくことができます。忙しいときでも10分もかからずに1200字程度の文章を作ることができます。
●音声入力の方法


 4つめは、四行詩です。日常生活でふと何かいいことを思いついたとき、昔の人は短歌や俳句で表現しました。今は四行詩です。文章を書く時間がとれないときも、四行で自分の言いたいことを表すコツを身につけておくと役に立ちます。
●四行詩


 5つめは、暗唱です。自分がいいと思った文章を100字単位で区切って、毎日10分間暗唱していきましょう。そうすると、数ヶ月で発想力が伸びてくることが実感できると思います。
●暗唱の手引


 大学入学はゴールではなく、そのあとの社会に出てからの仕事がゴールです。自分がどういう社会人になるかということを常に考えながら、意義ある大学生活を送ってください。

 そのための前提として、現在、日本が危機にあるという自覚も必要です。日本は今、米国と中国という二つの大国のはざまにあって、少子化、高齢化、国家としての活力の低下という出口の見えない状況に置かれています。日本を建て直すための勇気と知性を育てるために、みなさんは、これから大学で勉強していくのです。


(外国の生徒のみなさんは、「日本」の部分を自分の国に置き換えて読んでください。)

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MM 20240611  
先生の書かれていることは今読んでもそのまま通じます。
10年以上経っても変わらず大事なことだと思います。

森川林 20240612  
MMさん、ありがとうございます。
これは、10年以上前の記事だったのですね。
ここに、ChatGPTの利用などを付け加えれば、今の記事になると思います。
ところで、いちばん重要なのは、大学生はちゃんとした本を読むことです。
しかし、つい遊んでしまうんですよね。

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問題集読書の四行詩の書き方 as/819.html
森川林 2010/03/10 04:33 


 問題集読書のあと、四行詩で感想を書きます。

 次の文章を読んだものとして、四行詩の書き方を説明していきます。(この文章は、小学4年生の7.3週の感想文課題になっているものです)


 母屋はもうひっそり寝しずまっていた。牛小屋もしずかだった。しずかだといって、牛は眠っているかめざめているかわかったもんじゃない。牛は起きていても寝ていてもしずかなものだから。もっとも牛が眼をさましていたって、火をつけるにはいっこうさしつかえないわけだけれども。
 巳之助はマッチのかわりに、マッチがまだなかったじぶん使われていた火打ちの道具を持ってきた。家を出るとき、かまどのあたりでマッチを探したが、どうしたわけかなかなか見つからないので、手にあたったのをさいわい、火打ちの道具を持ってきたのだった。
 巳之助は火打ちで火を切りはじめた。火花は飛んだが、火口(ほくち)がしめっているのか、ちっとも燃えあがらないのであった。巳之助は、火打ちというものは、あまり便利なものではないと思った。火が出ないくせにカチカチと大きな音ばかりして、これでは寝ている人が眼をさましてしまうのである。
 「ちぇッ」と巳之助は舌打ちしていった。「マッチを持ってくりゃよかった。こげな火打ちみてえな古くせえもなア、いざというとき間にあわねえだなア。」
 そういってしまって巳之助は、ふと自分の言葉をききとがめた。
「古くせえもなア、いざというとき間にあわねえ、……古くせえもなア間にあわねえ……」
 ちょうど月が出て空が明るくなるように、巳之助の頭がこの言葉をきっかけにして明るく晴れてきた。
 巳之助は、今になって、自分のまちがっていたことがはっきりとわかった。――ランプはもはや古い道具になったのである。電灯という新しいいっそう便利な道具の世の中になったのである。それだけ世の中がひらけたのである。文明開化が進んだのである。巳之助もまた日本のお国の人間なら、日本がこれだけ進んだことを喜んでいいはずなのだ。古い自分のしょうばいがうしなわれるからとて、世の中の進むのにじゃましようとしたり、なんのうらみもない人をうらんで火をつけようとしたのは、男としてなんという見苦しいざまであったことか。世の中が進んで、古いしょうばいがいらなくなれば、男らしく、すっぱりそのしょうばいは棄(す)てて、世の中のためになる新しいしょうばいにかわろうじゃないか。
 巳之助はすぐ家へとってかえした。

(新美南吉著 「おじいさんのランプ」より)


 まず、文章を読みながら、自分で、いいと思ったところ(よくわかったところ、面白かったところ)に傍線を引きます。借りた本などの場合は、傍線を引くのではなく付箋を貼っておきます。

 読み終えたあと、傍線や付箋の箇所を参考にしながら四行詩を書きます。

【1】四行で書く

 四行詩の基準は、四行で書くことだけです。ひとつの行は「。」が来るまで書く必要はなく、文の途中で改行してかまいません。また、1行の長さは、長くても短くてもかまいませんが、20字以内にまとめる方が読みやすいでしょう。

【2】引用でも感想でもよい

 文章を読んでの四行詩は、その文章の引用でも、その文章に対する感想でも、引用と感想を組み合わせたものでもかまいません。

【3】リズミカルに

 口に出して読んでみたときに、心地よく言えるようなリズムで書きましょう。リズム感は人によって違います。自分の好きなリズムで書いてください。
 次の例にある四行詩の「マッチを・忘れた・巳之助は」という行は、「4・4・5」のリズムがあります。「自分の・古い・商売を・見た」という行は、「4・3・5・2」又は、「7・7」のリズムがあります。どのリズムがよいというのではなく、自分が口に出して感じがよいと思うリズムで書いてください。

【4】あらすじや要約を書く例

 マッチを忘れた巳之助は、
 火打ち石を使おうとして、
 使えない火打ち石の中に、
 自分の古い商売を見た。

【5】たとえを使う例

 「古くせえもなア間にあわねえ」
 月が出て空が明るくなるように、
 巳之助の頭は、
 明るく晴れてきた。

【6】「ではなく」を使う例(「ではなく」は高校生の自作名言の練習で使う書き方です)

 自分の商売を守るために
 世の中の進歩を妨げるのではなく、
 世の中の進歩を助けるために
 新しい商売にかわるのだ。

【7】押韻を使う例(同じような音の言葉を組み合わせます)

 ランプは古い道具だった。
 電灯は新しい道具だった。
 世の中の進むのをじゃまする人もいるし、
 世の中の進歩を喜ぶひともいる。

 火打ち石は古い。
 ランプも古い。
 巳之助の頭も、
 古かった。

 なぜ四行詩で書くかというと、四行で作品としてのひとつのまとまりができるからです。

 四行詩は、作文を書くときにも使えます。いい着想がわいたが文章として長く書く時間がとれないというときは、四行詩で書いておくことができます。作文を書こうとすると30分や1時間はすぐたってしまいますが、四行詩であれば数分で書き上げられます。
 そして、あとから時間のあるときに、その四行詩のテーマをもとにして長い文章を書くこともできます。

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作文力をつけるために国語力をつけるという勉強 as/818.html
森川林 2010/03/09 08:35 



 言葉の森が小学生の作文指導を始めたころ、作文教室というものは世の中にはまだありませんでした。最初の生徒は、小学1年生が1人、小学6年生が1人の合計2人でした。

 しかし、言葉の森は、国語の問題や漢字の書き取りなどの勉強はせずに、作文の勉強だけを続けてきました。漢字の書き取りや国語の問題は、学校でも当然やっていますし、市販の問題集も豊富なので、自分ひとりでも十分にできるからです。

 ひとりでもできる国語の勉強に対して、作文は、ほかの人からの評価がないと、自分で自分の作文を評価することができません。また、ひとりで文章を書き続けるというのは、非常に継続しにくいものです。作文というのは、きわめて独学のしにくい勉強なのです。また、作文指導という分野は、方法論というものが確立されていず、どう教えたらどう上手になるかということがわかっていませんでした。

 だから、言葉の森は、長年作文指導だけを続けてきたのです。この基本路線はこれからも変わりません。ただし、作文力の土台として読む力が必要なので、読解力と表現力の土台を作るために、音読、暗唱、問題集読書などに力を入れています。

 よく、作文の勉強だけで大丈夫なのか、もっと幅広く国語全体の勉強をした方がいいのではないか、と言う人もいます。

 しかし、先に述べたように、国語の勉強は、自分ひとりでもできるものです。他の人から教えてもらう利点はあまりありません。また、国語とは、読む力をつけることが勉強の中心ですから、もともと教えてもらって力がつくという性質のものではないのです。

 一方、作文の勉強をしていると、作文の勉強がきっかけになって、国語全体の成績が上がることがあります。

 先日、中学3年生の生徒の保護者から電話がありました。高校生になると、どういう勉強になるのか教えてほしい、という質問でした。高校生の課題は、中学生の課題よりも難しくなり、それに応じて項目も難しくなるというだけで、基本的なやり方は全く変わりません。そのお母さんの話では、「作文を習っていて本当によかった」「これまで習った習い事の中でいちばんよかった」「書くことが得意になった」「本人も暗唱を毎日やっている」「これからも続けていきたい」ということでした。

 作文の学習を始めて、作文だけでなく国語全体の成績が急に上昇する子がいます。そういう子に共通するのは、もともと読む力の土台があったということです。その読む力が、作文を書く練習をすることで引き出されるようになったのです。

 作文というものは、国語力の集大成という面があるので、そういうことがよくあります。しかし、同時に、読む力がない場合、作文の勉強だけで読む力を伸ばすことはできません。同様に、漢字の書き取りが苦手な子を、作文の勉強だけで漢字を書けるようにすることはできません。読解力や漢字力は、独自の学習が必要だからです。読解力の場合は、暗唱、音読、読書、問題集読書などによって力がつきます。漢字力は、書き取りの練習をしていくしかありません。

 しかし、このような土台ができた子は、作文の勉強を始めると、国語力、作文力が急につくようになるという面があります。

 世間では、作文力は、国語力の一部のように考えられています。それは、学校で、国語の勉強は毎日のようにあるが、作文の勉強はたまにしかないからです。だから、一見、国語の勉強をしっかりやっていれば、作文の勉強は特にしなくても済むように思われがちです。

 しかし、そうではありません。作文力は、国語力の集大成であり、国語力の広い裾野の上に作文力という頂上があるのです。だから、作文力を見れば、その子の国語力がわかります。しかし、国語のテストの成績を見ても、その子の作文力はわかりません。

 中心になるのは作文力で、作文がしっかり書けるようになることが勉強の目標です。その目標を達成するために、土台としての国語力が必要になるという関係にあるのです。

 作文が得意な子は、国語も得意です。しかし、作文の勉強をしていれば自然に国語の勉強もできるようになるのではありません。逆に、作文の力をつけるために、国語の力をつける必要があります。

 その国語の力をつけるための勉強の基本は読書です。しかし、読書だけでは国語力をつけるのに時間がかかるので、言葉の森では、読書の中の国語的な面を抽出した学習として、暗唱や問題集読書に力を入れているのです。

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家族の対話が生まれる作文の勉強 as/817.html
森川林 2010/03/08 08:12 



 勉強というと、ひとりでポツンと机に向かって取り組むイメージがあります。たまに、子供が、ひとりで勉強していてわからないことをお父さんやお母さんに質問すると、お父さんかお母さんがちょっと面倒そうに教えます。そして、「何で、こんなこともわからないの」などと言うこともあります(笑)。

 ところが、作文の勉強は少し違います。それは、対話が可能な勉強なのです。ただし、うまくやるための工夫は必要です。その工夫とは、作文の書き方に関する批評はせずに、その作文に書かれている内容を認めてあげることです。

 言葉の森の作文の勉強における対話の第1は、音読と暗唱です。例えば、朝の食事の前の時間に、食卓で子供たちが大きな声で暗唱をします。子供たちの元気な暗唱は、聞いていても楽しいものですが、暗唱する当の子供たちも10分間で達成感のある勉強ができるのが楽しいものなのです。

 その暗唱の長文が、対話の種になります。テレビの番組を見て話題にすることはよくありますが、子供の読んでいる文章を家族の対話の材料にする方が更に話がはずみます。暗唱以外に、課題の長文を1ページ音読している子もいると思います。課題の長文は、更に豊富な話題を提供してくれます。

 対話の第2は、作文です。小学校1、2年生までは自由な題名ですから、どこかに遊びに行ったり、面白い出来事があったりしたときに、作文の材料として使うことができます。また、普段の何気ない日常生活の中でも、身近なものをたとえを使って表現する遊びができます。たとえを作る能力とダジャレを作る能力は共通していますから、日常生活でダジャレを使うことも、子供の言語感覚を育てることにつながります。

 小学校3年生以上は題名が決まっている課題なので、次の週の課題に合わせて、作文に書く材料を準備することができます。例えば、「虫をつかまえたこと」「玉子焼きを作ったこと」などの題名の場合は、その題名に合わせて実際に経験をしてみることもできます。また、「がんばったこと」「初めてできたこと」などの一般的な題名でも、家族で話題をふくらませていくことができます。例えば、「初めてできたこと」などという題名の場合は、次のような話ができるでしょう。

父「来週の課題は、『初めてできたこと』か。お母さんは、どんなことがあった」

母「そうねえ。小学生のとき、初めて自転車に乗れたときが感動的だったわねえ」

子「あ、ぼくも、それある、ある」

父「お父さんが初めて自転車に乗ったときは、そのまま曲がれなくてへいにぶつかったなあ」

子「へえ」(笑)

母「いなかにいるおじいちゃんにも、電話で聞いてみようか」

 作文の勉強における対話の第3は、書き上がった作文についてです。しかし、ここで大事なことは、書き方の注意や批評はしないことです。子供が書いたものに注文をつけるのではなく、書かれている内容に共感して読んであげることが大切です。

 中学生になると、子供は親とはあまり話をしなくなります。それは、子供が内面的な成長をしている時期なので、話をしないことが、ある意味で子供の成長にとって必要な時期でもあるのです。しかし、小学生のときまでに家族でたっぷり対話をしていれば、中学生や高校生になっても、必要なときにいつでも心をこめた話をすることができるようになります。

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作文が上手な子も下手な子も、どちらも先を見た指導で as/816.html
森川林 2010/03/07 04:33 
 高校生で作文が上手な子も、小学生のころは普通でした。



 幼稚園年長から小学1、2年生にかけて、作文のすごく上手な子がいます。このような子をどう指導したらいいのでしょうか。

 この子たちがなぜ上手なのかというと、本が好きで、読んだ本の文体や語彙がすっかり身についているからです。つまり、自分で書いているというよりも、読んだ本の文体で書いているのです。これは、いい意味での模倣ですが、本人にとってはごく自然に自分の言葉として出てくるので、模倣という意識はありません。

 しかし、こういう子供たちも、成長とともに自分らしさが出てきます。すると、これまでの本の文体から抜け出そうとして、一時的に作文が下手になることもあります。そして、また新しい内容に合った新しい文体の模索が始まります。このようにして模倣と模索を繰り返して次第に自分の文体ができてくるのです。

 ですから、小学1、2年生で作文の上手な子を、もっと上手にさせようとは考えないことです。その時代の表現を楽しむとともに、文章を書く習慣を継続し、学年が上がったときに必要な文章力をつけていくという展望で考えていく必要があります。

 しかし、もちろんただ書かせるだけではなく、上手な子には、次のような点に留意しながら指導していきます。

 第1は、体験です。作文に書く題材となる自分らしい体験を増やしていくことです。

 第2は、取材です。作文に書く題材を広げるために、両親や祖父母に取材したり、関連する事柄を調査したりすることです。

 第3は、観察です。作文に書く対象をよく観察して、自分の目や耳を使って書くことです。

 第4は、比喩です。自分が書き表そうとする対象を自分らしいたとえで表現することです。

 第5は、感想です。自分が心の中で思ったことを、できるだけ自分らしい感想として書いていくことです。

 つまり、上手な子の指導は、作文の書き方以外の指導という面が大きくなるのです。

 高校生で、作文が好きで上手な子がいます。その子たちのほとんどは、小学生のころ普通に上手という程度の作文を書いていました。つまり、書くことが楽しいという程度に上手な作文であって、決して目を見張るように素晴らしく上手な作文を書いていたわけではありません。

 そういう普通に上手な子供たちが、中学生のころから少しずつ書き方を変化させて、高校生になると高校生の思考力にあった読書力と文体を身につけて上手に書く力をつけていきました。小学生の上手さの延長ではなく、それぞれの年代に応じた読書力と思考力を身につけて、上手さの内容を変化させつつ成長していったのです。

 小学校低学年のころの作文の上手さは、低学年の子供のかわいらしさと似ています。低学年のころのかわいさがそのまま成長するのではなく、途中で反抗や脱線があって、親をときどき困らせて(笑)、だんだんと自分らしい個性と魅力のある人格になって成長していくのです。

 では、逆に、小学校1、2年生ですごく下手な子の指導はどうしたらいいのでしょうか。これは、心配いりません。低学年のころは、みんな似たり寄ったりで作文が下手です。コンクールに入選するような上手な子と比較するから下手に見えるのであって、もともとは下手な方が自然なのです。

 こういう子供たちの指導は、第1に自信を持たせること、第2に読む力をつけることです。書くことを直接指導するのではなく、書くことの土台となるところに力を入れていくことが大事です。何を書いても、いいところを見つけて褒めてあげて、その一方で毎日、暗唱と読書を気長に続けていくことです。

 褒めることと読むことを気長に続けながら作文を書いていると、代り映えのしない状態がいつまでも続くように見えますが、やがて、ある日ふと忘れたころに、「あれ、いつのまにか上手になっていた」と気がつくのです。

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不況に勝つ作文 as/815.html
森川林 2010/03/06 04:00 


 不況は、これからますます深化する可能性があります。

 すると、子供の教育に関しても、必要最低限のものにしぼって、余分なものは削っていこうという動きが出てきます。

 では、何を残して、何を削ったらいいのでしょうか。

 残すものは、本当の学力です。削ってもいいものは、見た目の成績です。


 お母様方の中には、最初から成績で上位を走っていればあとあとまで有利だと考える人が多いと思いますが、そんなことはありません。小学校のときの成績と、中学生になってからの成績、高校生になってからの成績はどんどん変わっていきます。

 今のところ、最終的に大学入試でどういう実力をもって臨むかということが大事ですが、実は、大学に入って卒業したあとも、人間の実力は日々変化していきます。いい会社に入ったり、いい職業についたりすれば一生安泰だというようなことは、これからの世の中ではもうないのです。


 では、何が大事なのかというと、それは、激流の時代の中で、魚の釣れる場所を見つけて確保しておいてあげることではありません。どんな流れにあっても魚が釣れるという釣り方を教えてあげることなのです。

 今ある人気職業のかなりの部分は、子供たちが大きくなる十数年後には不人気職業になる可能性があります。既にニュースにも流れているように、現在、構造的な危機に陥っている企業のほとんどは、数年前には超人気企業でした。同じことは、石炭産業の最盛期にも起こっていました。今の危機が、決して一時的なものではなく、かつての石炭産業の危機と同じものだと認識することが、これからの社会をたくましく生きていくための前提となります。


 では、そのような時代に、子供たちにどういう教育をしたらいいのでしょうか。


 第1は、家庭です。どんなに優れた立派な教師よりも、実の親の方が子供を正しく育てることができます。教育の最後の鍵は、知識でも技術でもなく情熱です。子供がよりよく成長してほしいと願う親の気持ちは、どれほど優れた力量の教師の技術よりも、はるかに大きく子供に影響を与えます。親はまず、そのことに確信を持つべきです。子供は、学校や塾で育てるのではなく、家庭で育てるのです。


 第2は、日本語です。日本語で読み書き考える力さえついていれば、ほかの勉強は全く問題ありません。英語も数学も理科も社会も、学校の勉強だけで十分ですし、もし学校の勉強で不足している分があったとしても、受験期の集中的な独学ですぐに追いつくことができます。そのためのノウハウは、豊富にあります。


 このような考えから、言葉の森では、今、通学できる作文の家庭教室という仕組みを考えています。家庭で、お母さんが、言葉の森の教材を使いながら自分の子供に作文を教えるシステムです。また、教える技術に自信のある人は、自分の子供だけでなく近所の子供を教えることもできます。

 言葉の森の勉強の内容は、暗唱、作文、読書ですが、勉強の中で最も教えにくい作文を指導できるのであれば、そのほかの英語や数学は簡単に教えられます。だから、英語や数学でつまずいているに子は、作文以外の指導をすることもできるでしょう。しかし、基本的にすべての教科は独学でできるものなので、先生は大きな方向と重要なポイントを教えるだけで十分です。


 言葉の森の通学家庭教室の制度は、まだ試運転中ですが、現在の通信教室の指導は、既に通学教室での指導に必要な内容をすべて盛り込んでいます。

 これから不況が深化すると、ますます子供の教育について真剣に考えざるをえなくなりますが、そのときこそ言葉の森の作文教育を子供の成長のための最も確実な土台と考えていってくだい。


 なぜこのように言えるかというと、いろいろな方から、言葉の森で習っていて本当によかった、いちばんプラスになった習い事が言葉の森だった、という声をよく聞くからです。そのときのプラスになったというのは、単に受験で役に立ったということだけではありません。もっと大きく人間形成の上でも役に立ったということです。教育の根幹は、学力向上と人間形成で、それを支えるのが言葉の森の作文指導なのです。

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森川林 2010/03/05 02:56 




 先生に対する話し方で、小学3年生までは、「先生、これとって」という言い方をする子がほとんどです。低中学年は、親しみを持ってもらう方が勉強を進めやすいので、そういう言い方でもかまいません。

 しかし、小学5年生以上になると、機会を見て、「先生、これをとってください」と改めるようにします。高学年からは、ある程度けじめをつけた方が勉強を進めやすくなるからです。そのとき、一緒に、「お父さんが」「お母さんが」という書き方を、「父が」「母が」という書き方にするように説明します。


 さて、敬語の使い方で間違いやすいものがいくつかあります。


 第1は、二重敬語です。

 「言う」の敬語として「言われる」「おっしゃる」がありますが、これを重ねて「おっしゃられる」とするのは二重敬語です。間違いというほどではありませんが、やや不自然です。


 第2は、謙譲語を敬語として使ってしまう場合です。

 「申す」「いただく」「うかがう」「おる」「まいる」「いたす」などは謙譲語ですが、「(目上の人が)申されました」「(目上の人に)いただいてください」「(目上の人に)うかがってください」という言い方をしてしまうことがあります。


 第3は、「お○○する」「ご○○する」は謙譲語だということです。

 「私があなたにお話しする」は謙譲語です。だから、「あなたが私にお話しする」は、謙譲語を相手に使っていることになります。相手の尊敬語として使う場合は、「あなたが私にお話しいただく」「あなたが私にお話しくださる」などになります。

 「私がご連絡します」「私がご案内します」も、謙譲語です。だから、「あなたがご連絡してください」「あなたがご案内してください」は、謙譲語を相手に使っていることになります。「あなたがご連絡ください」「あなたがご案内ください」が尊敬語です。


 「私があなたにご連絡します」「私があなたにお知らせします」というのは、自分の言うことに「ご」や「お」をつけておかしいのではないかと思う人もいるかもしれませんが、これは、自分の動作に対する「ご」や「お」ではなく、相手に対するていねいさを表すものですから間違いではありません。


 第4は、外部の人に、自分の身内の目上の人のことを話すときに尊敬語を使ってしまうということがあります。

 例えば、会社の外の人に、「うちの会社の社長がおっしゃっています」などと言ってしまう場合です。この場合は、「うちの会社の社長が申しております」が謙譲語で正解です。


 中には、身内の人に尊敬語を使うだけでなく、更に多重敬語を使ってしまう人もいます。

「うちの会社の社長がおっしゃられておられます」


 更に、ていねいな言い方をしようと思って、「社長」を「お社長」などと言ってしまうのも、やはり正しい敬語とは言えません。

「あ、お社長、これは、この間旅行に行ったときのお土産です」

「ほう、ありがとう。何だね」

「お奈良漬です」

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