国語力をつけるには、解く勉強ではなく読む勉強をすることが大切です。だから、国語の勉強は家庭学習に向いているのです。塾に行って本を読むだけでは、授業らしくならないからです。
国語の勉強は、家庭学習で十分です。その家庭学習も、小学生では特に、ドリルよりも読書が勉強の基本になります。よく、問題を解く宿題の時間が多くて読書ができないという子がいます。解く勉強ばかりしていると、頭が悪くなります。
勉強には、実力をつけるための勉強と、勝負に勝つための勉強とがあります。問題を解く勉強は、実力が変わらないことを前提にした、勝負に勝つための勉強です。
勝負のための勉強は、受験勉強の最後にすればよい勉強です。例えば、国語の問題の解き方は、1時間もあれば説明できます。
●センター試験国語の解説に問題の解き方が載っています。
その子が解いた模擬試験や志望校の過去問の問題をもとに、1時間も説明すると、どの子も国語の成績が急に上がります。しかし、それは最後の仕上げにする勝負のための勉強です。普段の勉強でいちばん大事なのは、実力をつけるための勉強です。それが読む勉強です。
さて、では、どういう本を読んだらよいのでしょうか。ひとつは、易しい面白い本で多読をすることです。これは、その子の実感の持てるところで語彙の手足を増やすことにつながります。これが国語力の裾野になります。
例えば、「かいけつゾロリ」という子供たちに人気のある本で、「そのとき、ゾロリはひらめいたのです」「イシシとノシシは、顔を見合わせました」という表現があったとします。子供たちは、面白おかしく笑いながら読んでいるうちに、「ひらめいた」「顔を見合わせた」という語彙を実感をもって味わいます。このことによってこれらの語彙が豊かな手足を持つことになります。語彙の豊かな実感の裾野があるから、難しい本になったときも、文章を味わって読むことができるようになるのです。
多読とは異なるもうひとつの読書は、難読(難しい本を読むという意味で使っています)です。これが、国語力の頂上を高めることになります。また、この難しい文章が、実際の入試問題に出ます。「かいけつゾロリ」は入試問題には出ません(笑)。特に、受験前の1年間は、難読を中心に頂上を引き上げることが中心になります。しかし、低中学年で難読をさせると、易しい面白い本で多読をするという裾野を広げる勉強ができなくなります。
次回は、問題集読書の方法です。
構成図は、言葉の森では、小学3年生から書いています。音声入力は、通学教室で中学生以上の生徒が行っています。音声入力は、小学校高学年でもできると思います。
書く時間がとれないときでも、10分間で1200字程度の文章がすぐに書けるという点が音声入力の利点です。しかし、役に立つのは主に、大学生や社会人になるでしょう。大学生の場合は、レポート提出などに使えます。
音声入力は、ICレコーダーの機器が必要なため、通信教室では行っていませんが、以下の説明を参考にすれば、だれでも自宅でできると思います。ただし、通学教室の中高生を見ていると、音声入力は慣れるまで時間のかかる人が多く、しばらくの間は、音声化するよりも直接書いた方が書きやすいという人が多いようです。
では、音声入力の方法です。
まず最初に、構成図を書きます。音声入力は、文章を書くという作業ですから、その作業に入る前に、考える作業が必要になってきます。それが構成図です。この構成図も、慣れないうちは、直接作文を書いた方が早いという人が多いようです。何事も、新しいやり方は最初のうちはかえって手間がかかることが多いので、ついこれまでの慣れ親しんだやり方でやりたくなるのです。
構成図に似ているものに、マインドマップという方法がありますが、手順が複雑なのでかえって時間がかかります。構成図は、普通のルーズリーフに、1本のペンで、短文と矢印で図を書いていくという書き方です。
なぜルーズリーフがいいかというと、2枚以上にわたったときに、横に広げて見ることができるからです。1本のペンで書くといっても、書き込みが複雑になったときは途中で色を変えた方が読みやすくなります。短文と矢印で書くというときの矢印とは、構成図に書いた順番であって、文章化するときの順番ではありません。つまり、短文どうしの内容的な関係を表すものではなく、単純に短文を書いた時間的な順番を矢印で表しているということです。また、構成図に書くのは短文であって単語や長い文でないということも大事です。構成図に書く短文の平均的な字数は10-20字です。1文を1行で長く書くのではなく、2、3行に折り返してコンパクトに書きます。その方が矢印でつなげるときに縦にも横にも斜めにも結びつけやすいからです。
言葉の森では構成用紙という小さい枠のある用紙を使っていますが、慣れてくれば無地の紙に書いた方が書きやすくなります。
1200字の文章を書く場合、構成図で7、8分かかります。ただし、全く新しいことを構成図を使って考える場合は、もっと時間がかかります。
構成図は、思いついたことをどんどん書いていきます。その文章のテーマに関係なさそうに見えることであっても、気がついたことは次々に書きます。構成図を書くということは、思考を外化することです。考えの材料をすべて表に出して見えるようにして、文章化のシミュレーションをしていることになります。
構成図を書き終えると、自分が考えたことの全体の構造や文章化の方向がわかります。全体の方向がわかってから文章化するというのが、構成図を使った書き方の特徴です。文章には、考える過程と書く過程がありますが、構成図は、考える過程ですから、書くための予行演習のようなものです。構成図で思考の下書きをしたあとに文章化するので、文章を書きなおすということがほとんどありません。それで、音声入力がしやすくなるのです。
音声入力は、慣れるまでなかなかうまく文章化できません。それは、これまでの長い習慣で、考えるスピードと書くスピードが結びついているからです。また、口に出して言う文章は、手で書く文章と違うところがあります。最も大きな違いは、日本語の場合、音声の文章は文末をあいまいにすることが多いということです。
「昨日は、どこに(行ったのですか)」
「ちょっと海に(行ったのです)」
「へえ、どちらに(行ったのですか)」
「うん、城ヶ島(に行ったのです)。それで、これ(お土産です)」
「わあ、くさやね」(そんなもんあるわけないだろ)
これは、スピーチなどでも同じです。話をしたり聞いたりする場合には、普通はなかなか「。」の来ない文章を交わします。それでお互いに、言うことも聞くこともうまくできるようになっています。
文章化しやすい音声を入力するためには、意識的にやや短い文にします。長めの文の場合は、文の途中で区切ります。ICレコーダーで大体10文字から20文字ぐらいごとに録音を停止しながら音声を入力していきます。なぜかというと、再生するときに、その区切りごとに一度で入力できるからです。あまり長い文だと、短期記憶が追いつかないので、もう一度聞きなおして書くという書き方になってしまいます。
音声入力は、考えながら言うのではなく、1文を1息で言うようにします。もちろん、手作業でテキスト化する過程で追加や修正はあります。
言葉の森のこれまでの音声入力は、ヘッドセットとテキスト化ソフトを使っていました。これはこれで便利ですが、ソフトの機能がまだ十分でないことと、操作の手間がかかることという弱点がありました。そこで、音声化した文章をそのまま聞きながら書く方が楽だということがわかってきました。
長い文章を書く時間がとれないときは、とりあえず音声化で入力さえしておけば、あとで時間のあるときに書くことができます。また、大量の音声化した文章を、多人数で手分けして文章化することもできます。
音声化の入力に慣れておくと、音声化せずに書く文章も、書くスピードが上がります。1文を1息で書くコツがつかめるようになるからです。
もちろん、文章の価値は速く長く書くことにあるのではありません。書く内容を豊かにするために読書が必要になり、考える力をつけるために暗唱などの練習が必要になります。