私は昔から、ものを考えるときに、思いついた言葉を線で結んで図を書いていました。文章で書くと、時系列で順番に読まなければなりませんが、図であれば空間的に読むことができます。すると、自分の書いたものを見て、あれこれ考えをふくらませることができます。
そんなある日、マインドマップという方法を知りました。それを見ると、自分がこれまで図で書いていたものと同じだと思いました。そこで、個人の方法としてではなく、だれでもができる方法として構成図という書き方を考えました。
マインドマップは、カラフルで見た目がきれいです。また、大きい紙の真ん中から渦状に書き出します。マインドマップ自体に、ひとつの作品としての面白さがあります。
構成図は、手書きで、黒のペンだけで、紙のはしから書き出します。ちょっと味気ないです(笑)。はしから書き出して紙がいっぱいになったら、次の紙に続きを書きます。それらの紙を広げて並べて見ることができるので、小さいテーマでも、大きいテーマでも同じように書くことができます。
構成図の基本は、(1)短文を(2)書いた順に(3)矢印で結んでいくというものです。思いついたことをどんどん書いていくので、無駄なことも出てきます。しかし、無駄な部分はあとで文章を書くときに省略すればいいだけですから気にしません。
短文を書くのには、ちょっとしたコツがあります。短文どうしを上下左右どの方向にも矢印でつなげられるように、できるだけボックス状に書いていくことです。20字ぐらいの短文であれば、7文字ぐらいで改行して3行に分けて書くということです。文というよりも、思考のユニットという感じです。
書いていて、矢印が進まなくなったら、別のところからまた矢印を出して考えます。文章を書くのではなく、短文をつなげていくだけですから気が楽です。
文章は、時系列で書いていくので、過去に戻って直すのは難しいという面があります。文章は、先に進むという形でしか書けません。
ところが、構成図は、過去に戻って直すことが容易です。どこからでも矢印の枝を出して、考えを広げていくことができます。ただし、矢印は時間順がわかるように書いているので、前に書いたところに戻って矢印を出すと、時間順がわからなくなってきます。時間順というのは意外と大事で、構成図をあとで見直すときに、自分がどういう順番で考えを進めていったかがわかると、そのときの思考過程がそのまま思い出せます。
そこで、前に書いたところに戻ったり、話題が大きく変わったりしたときには、ペンの色を変えることにしました。普通はそれほど複雑な構成図を書くことはないので、黒ペン1本で間に合いますが、大きいテーマを考えて、構成図が何枚にもわたる場合は、色分けしておくと便利です。黒で書いていて、話題が変わったら紺色に、また話題が変わったら青色に、以下、緑、オレンジ、ピンク、赤などと色を変えていきます。赤まで行ったら、その先はまた黒に戻ればいいので、色数をそれほど多くする必要はありません。
構成図を書いているうちに、構成図は、作文のシミュレーションだということがわかりました。作文は、スタートしたら、既に書いた部分の手直しはなかなかできませんが、構成図は前にさかのぼっての修正がいくらでもできます。修正が終わって、全体の見通しがはっきりしたら、それから一挙に作文を書けばいいのです。
もちろん、あらかじめ書こうとする内容がすっかりわかっているものであれば、構成図を使わなくても直接文章として書いていけます。また、小学生のころに書く事実中心の生活作文では、時間の順序に書くという流れがあるので、構成図を使って書く利点はそれほど大きくはありません。しかし、書こうとする内容の全体像がまだはっきりつかめていない説明文や意見文の場合は、構成図のシミュレーションが役に立ちます。
構成図を書いているうちに、この構成図が更に大きな効果を発揮するのが音声入力で文章を書く場合だということがわかりました。音声入力の長所は、速く書けるということですが、もっと本質的な長所は、速く書けるので、文章の全体像を頭に入れたまま一つ一つの文章を書くことができるという点です。今書いているこの文章も、1800字程度ありますが、音声化の時間は10分もかかっていません。このように速く音声入力ができるのは、構成図を書いていて、その構成図を見ながら音声化しているからです。
音声入力は、ICレコーダーという機器が必要なので、まだ通学教室の一部でしかやっていません。しかも、教室でやると、周りの人がいるので音声化しにくいということがあります。今後もっとやりやすい方法にして、通信教室で自宅でもできるようにしたいと思っています。
私は昔、読む本に傍線を引いていました。しかし、それでは、ほかの人が読めません。また、借りた本には、傍線を引くわけにはいきません。
また、読みかけた途中のところには、表紙をはさんでいました。しかし、見た目があまりよくありませんし、表紙がはずれてしまうことがありました。
そこで、傍線を引く以外の方法として、付箋を貼る方法を考えました。幅7ミリ程度の小さい付箋が、文房具店で売られています。計算すると、1枚0.25円ぐらいです。しばらくその付箋を使っていましたが、わざわざ買って使うとなると、もったいないという気持ちが出てきます。
そこで、だれでもいくらでも使えるようにと思い、手作りの付箋を考えました。材料は、紙とはさみと「はがせるのり」です。読書をしていて手もとに付箋がなくなったときでも、紙を3枚ぐらい用意してぺたぺたと作れば、わずか5分ほどで600枚ぐらいの付箋が簡単にできあがります。ほとんど無料なので、いくらでもふんだんに使えます。
(付箋の作り方は、ここ→
https://www.mori7.net/mori/mori/husenn.html )
本を読んでいておもしろいところがあると、縦に付箋を貼っていきます。付箋は、本の外に出るようにします。同じ本をあとから読むと、付箋を貼ってあるところで、「ここがおもしろかったんだなあ」とわかります。付箋を貼った箇所だけ飛ばし読みをしていけば、その本を2回繰り返して読んだことと同じになります。
また、本棚に入れておくと、外から付箋が見えるので、その本をしっかり読んだということがわかります。付箋をはがすときは、本をとじたまま、まとめてはがすことができます。もともと手作りの付箋ですから、もったいないということがありません。また、付箋を貼る方が、傍線を引くよりもずっと手軽にできるということもわかりました。この手作りの付箋によって、読書の能率が大幅に向上しました。
最初は、おもしろいところに縦に貼っていただけですが、その後、読みかけの途中のところには、横に貼るようにしました。本を読んでいて、途中でちょっと一休みというところで、本の横に出るように付箋を貼っておきます。すると、次に読むときに、読みかけの場所がすぐにわかります。本を何冊も並行して読んでいるときに、これはかなり役立ちます。そして、ほとんどの本は、自然に最後まで読み終えるようになりました。
読みかけの途中で付箋を貼る場所は、本の右ページと決めておき、上から順に階段状に貼っていきます。すると、読んだ経過が実感としてわかります。
家庭での10ページ読書にも、この付箋読書を取り入れることができます。手作り付箋の作り方はきわめて簡単ですが、最初は市販の小さい付箋を買ってやっていってもよいと思います。
ただし、傍線を引いたり付箋を貼ったりしたくなるのは、主に説明文の本です。物語文の本は、わざわざ面白いところに付箋を貼る必要がありません。そのかわり、読みかけのところに横に貼るということだけをしていくとよいでしょう。
問題集読書の場合は、説明的な文章が多いので、この付箋を貼る方法が役立ちます。傍線を引いて読んでもいいのですが、付箋を貼りながら読むというやり方に慣れておくと、将来難しい本を読むときの読書にも使えるようになると思います。