ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 918番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
暗唱の教材は何がよいか as/918.html
森川林 2010/05/30 22:16 



 暗唱という学習法には、伝統があります。しかし、現代ではこの暗唱という方法は、あまり一般的ではありません。そのため、理論化が不十分で、ともすれば形式にこだわる傾向が出てきます。

 その形式化が最も強く出るのが教材選びです。暗唱の教材というと、ほとんどが古典的な名文から選ばれています。古典的な文章から選ぶのは、文化的な教養を身につけるという点ではいいのですが、暗唱という学習法で徹底してやるほどのものではありません。

 暗唱の教材は、その学年の子が書く作文と同じか少し高いレベル、つまり自分が文章を書く際に生かせる日本語で書かれていることが大事です。漢文を直読するような素読も、文化的な意味ではとてもよいことだと思いますが、それだけでは現代日本語の助詞や助動詞の感覚がわかりません。

 これまで、暗唱という学習法は、小学校低中学年までの勉強のように思われていたために、大人が読むような古典を読ませることが中心になっていました。しかし、暗唱を中学生や高校生まで継続できる勉強と考えれば、その学年で書く作文に結びつくような文章を読む方がずっとよいのです。


 では、暗唱の学習はいつごろから始めたらよいのでしょうか。小学校1年生ぐらいからというのが理想です。小学校1、2年生のころは、暗唱の学習が全く苦になりません。しかし、小学校3年生以上で始めると、軌道に乗るまで本人がかなり苦しい思いをするようです。ただし、言葉の森の暗唱法は、手順どおりにやれば、だれでも必ずできるようになるので、問題はできると確信が持てるようになるまで継続できるかどうかということになります。


 暗唱の勉強を幼児期から始めるのは早すぎます。本当は、うまくやれば早すぎるということはないのですが、早くから始めようとすると、やり方に不自然さが伴ってしまうことが多いのです。幼児期は、ある特定のやり方を徹底するよりも、母親や父親ができるだけたくさん話しかけたり読み聞かせたりするという、言葉の生活を豊かにするという感覚でやっていくのがよいと思います。


 では、暗唱の学習はいつごろまで続けたらいいのでしょうか。教室の子供たちを見ていると、中学生ぐらいからだんだん暗唱ができなくなります。学校の勉強が忙しくなるということもありますが、それとともに、物事を理解する力が育つ時期なので、単純に反復する勉強というものがしにくくなるからです。しかし、作文力は、高校生になるまで毎年変化していきますから、高校生まで続けていく方がもちろんよいのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
暗唱(121) 

記事 917番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
意識工学の理論 as/917.html
森川林 2010/05/29 09:58 



 今日は、ちょっと堅い話です。(^^ゞ


 未来の教育の重要な一つの分野は、心身教育です。その心身教育の中の一つの重要な教科が意識工学になると考えられます。

 意識についての研究は、アメリカなどを中心に進められていますが、現代の科学のパラダイムではカバーできない面があるようです。そのため、当面の研究は、哲学と工学に担われるようになるでしょう。(どうして、現代の科学のパラダイムでカバーできないかというと、研究の大勢が、意識を媒介する物質やその測定に明け暮れていて、一向に成果を上げていないように見えるからです)


 科学のパラダイムを超える哲学として今求められているものは、欧米の文化が築いてきた個体としての人間という考え方を克服する哲学です。

 もちろんに、人間には個性を持つ個体としての面があります。しかし、それと同時に、個人は、世界との固定した境界を持たない、全体と濃淡の差でつながっている、全体の一部としての面も併せ持っています。

 全体の一部というのは、より厳密に言うならば、単なる部分としての一部ではなく、部分の中に全体を再現したフラクタルな一部でもあるとも言えます。それは、個体が単に世界を構成する部品なのではなく、一つ一つが世界の雛形となる、全体としての個体だということです。あたかも、一つ一つの細胞が、その生物体の持つすべての遺伝情報と同じものを持っていることと同じであるかのようです。


 では、どこで、人間は、世界と一体化しているのでしょうか。方向は、三つあると考えられます。

 第一は、私たちの身体を構成する材料となっている自然や土地です。人間は、その土地から取れる作物を食べて生きています。食べ物は、人間という個体から離れた対象なのではなく、その個体と分かちがたく結びついている、個体の一部となっている世界でもあるのです。

 第二は、私たちの身体の遺伝子に組み込まれている情報です。遺伝の情報は、だれひとり例外なく両親から受け継ぎ、その両親は更にその両親から情報を受け継ぎ、何十代、何百代とさかのぼれば、人間は結局、その家族や民族や人類の歴史の中で存在していることになります。

 想像すればわかるように、自分の中に流れている生命の情報は、戦時中や戦前の親や祖先の中にも流れていたものであり、それは更に明治時代、江戸時代をさかのぼり、鎌倉時代、平安時代、奈良時代、弥生時代、更には縄文時代にも、同じように連綿と流れていたものです。決して、自分の誕生ととともに突然生まれて育ってきたものではありません。

 第三は、私たちの、ものの見方、考え方、感じ方、そして、行動の仕方を形作っている文化です。それは、目の前に広がる世界が、私たちの個体が見ているものであると同時に、私たちの文化という全体が見ているものでもあるということです。

 例えば、春、軒先にツバメが飛んでいるときに、私たちが感じる何かは、私たちが生まれてからの短い経験で作られたものではありません。日本の文化の長い伝統を背景にして作り上げられてきたものです。それは、これから春に向かい、育てた稲が次第に実るとき、虫たちを捕食してくれる働き者のかわいい仲間としてツバメたちを迎えた、私たちの先祖のものの見方感じ方なのです。


 このようにして、人間は、世界から自立した個体であるとともに、世界という全体と連続的に結びついた、全体としての個体という面を持っています。しかし、ここで、その全体というものの焦点をどこに置くかということが問題になります。

 人間は、地球の自然、人類の歴史、人間の文化という三つの方向で、全体の一部として生きています。しかし、ここで言う自然、歴史、文化は、それぞれの時代によって異なる深さを持っています。それぞれの時代によって、異なる深さに密度の濃い岩盤を持っていると言えるのです。

 はるか遠い未来の人間は、自分自身を、地球と人類と世界の一部として生きていくでしょう。一方、はるかな過去の時代には、人間はごく身近な狭い範囲の自然と歴史と文化の中で生きてきました。

 ところが、現代は、近代の国家主権が、さまざまな深さの全体の中で最も密度の濃い層として全体を形成している時代です。とすれば、私たちがつながる全体とは、日本の自然と歴史と文化という全体です。

 しかし、それは、より狭い過去にさかのぼろうとする日本ではなく、未来の地球、人間、世界につながる広い日本でなければなりません。それが、日本の抽象化という意味です。


 意識工学の根底にあるものは、人間が孤立した個人ではなく、自身の中に全体を反映した個人であるということと、その全体とは現代の社会にあっては、日本の自然と歴史と文化により密度の濃い土台を持つということと、その日本という土台を世界に共通する普遍的な全体にまで昇華させていく展望を持つ必要があるという考え方です。


 かなり堅い話になった……。^^;

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

訓明 20131026  
20年前筑波大学教授の猪俣修二先生が会長の意識工学会に参加していました。難しい式はわかりませんでしたが、概念がとても面白く参加させてもらいました。仏教とくに法華経の説く世界観を話す方がいました、気の世界を話した方もいました。植物の先生もいました。この理論の読んで思い出しましたみなさんいかがしているのでしょうか。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習