ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 959番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
メディアとしての教育 as/959.html
森川林 2010/07/11 17:02 



 「メディア」という言葉を、ここでは、世論形成に影響力を持つ理念や情報の「媒体」となるものという意味で使います。


 江戸時代、貝原益軒は「和俗童子訓」を著しました。「和」は「漢」の反対で、「俗」は「雅」の反対です。つまり、益軒は、当時のエスタブリッシュメントである「漢」と「雅」に迎合しない立場を鮮明にして、教育論や人間論を著したのです。

 益軒の著作は、当時台頭した版木による出版方法で、一躍日本中に広がりました。江戸時代の主要なメディアは、政治のシステムと宗教のシステムでしたが、出版という新しいメディアが、これら既存のメディアを超えて、新しい日本の文化を作ったのです。


 では、現代のメディアは何でしょうか。

 テレビや新聞というマスメディアは、かつて大きな影響力を持っていましたが、経営が広告料に依存するような仕組みになっていたために、次第に金権化していきました。このため現在、メディアとしての影響力は、急速に低下しています。

 広告に依存するという点では、グーグルなどのネット産業も金権化する可能性を持っています。グーグルは、今検索エンジンのトップを走っていますが、そのサービスの本質はリアルなものではなく、アルゴリズムというバーチャルなものですから、今後何かのきっかけで影響力が急に減少するということもあり得ます。

 出版やインターネットは、金権による影響力を排した自由な発言が可能な場ですが、これらのメディアは選択した人にしか届かないという弱点を持っています。

 宗教は、昔も今も一定の影響力を持っていますが、根本的に民主主義と両立しない面があるので、日本ではある程度以上広がることはありません。

 日本の政治を実質的に動かしていた官僚制は、責任の所在が不明なまま大きな影響力を持っていましたが、今後の政治改革で権限を制限されていくと思われます。

 日本の表の政治は、権力の中枢が分散化していたために、統一性のあるリーダーシップを発揮できないでいました。この傾向は今後変わっていくと思いますが、まだしばらくは混乱が続きそうです。

 教育もまた、ひとつのメディアとしての役割を持っています。しかし、教育を担う現在の学校は、理念という価値観が不在のまま、進学実績だけを目標にした塾や予備校と同じようなものになっています。

 一方、進学の目標となっている大学も、就職予備校化するとともに、AO入試などにより学力の裏づけのない学歴を量産し、国際的な評価からはずれたガラパゴス化した教育機関になっています

 日本で唯一成功したメディアは、企業による仕事を通しての教育でしたが、これは現在、派遣労働の常態化によって急速にその力を失いつつあります。


 日本という国の最も優れた点は、国民ひとりひとりの知的、倫理的水準が高いことでした。

 世界中のほとんどの国は、国民性悪説に基づいて政治を運営していますが、日本の政治は基本的に国民性善説に基づいて運営することができました。しかし、その土台となる国民性も、自然に任せて維持できるものではなく、日々の教育的な営みの中で初めて高い水準を保てるものです。

 こう考えると、これからのメディアとして期待されるものは、新しい教育に支えられた新しい政治になるのではないかと思います。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 

記事 958番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
公立中高一貫校の受験コースの歴史(つづき) as/958.html
森川林 2010/07/10 09:03 



 受験生の読解力、表現力を評価するのに、作文や感想文を書かせるよりもいい方法があります。それが聞く力のテストです。


 なぜそれがいいかというと、第一に、問題作成が簡単だからです。第二に、評価の仕方もきわめてシンプルだからです。そして第三に、受験生の読解力、表現力が作文の試験よりもはっきり表れるからです。


 教室で先生が生徒に課題のヒントを説明するとき、先生の話に応答して、自分でもいろいろと話す子がいます。こういう子は、よく理解している子です。更に、応答は特にしなくても、先生に聞いた説明を作文の中にうまく盛り込んで書く子がいます。こういう子も、よく理解している子です。

 ですから、言葉の森の電話指導で、先生の説明を聞き、その説明を生かして作文を書ける子は、それだけで十分な実力があります。

 受験に臨む生徒の中には、「先生から聞いて書くのではなく、自分の力で書かないと本当に実力があるかどうかわからない」と言う人がいます。しかし、実際は聞いて書けるというだけで十分です。聞いて理解して書ければ、それが実力なのです。


 この仕組みを逆に読解力と表現力の試験の問題作りに生かすことができます。その方法は、まず、説明文の文章を放送などで流します(1200字の文章であれば3分ぐらい)。受験生はそれをメモをとりながら聞きます。そのあと、聞いたとおりをそのまま文章として書き出します。これで、受験生の文章理解力と文章表現力の両方の実力がわかります。

 ここでわかる実力よりも更に難しい、構成力、実例力、表現力、意見力などは、入試で評価しなくても、入学後の指導で実力をつけることができます。入試で評価するのは、高度な作文力ではなく、この基礎的な読解力、表現力だけで十分です。聞いたことをメモして書き出せれば、それがその子の国語の実力になります。評価は単純に、どれだけの字数まで書けたかということで見ることができます。


 今後、以上のような試験が出てくるとなると、その対策でいちばん大事なのは、メモのとり方に慣れておくことです。

 家庭での勉強法は、簡単です。お父さん又はお母さんが、国語の入試問題の説明文を読んであげ、子供はメモをとりながらその話を聞きます。そのあと、そのメモを見ながら自分がどんな話を聞いたかを口頭で説明します。

 文章は、読んで理解するよりも、聞いて理解する方が、読解力の実力の差がはっきり出ます。日本語は、同音異義語が多いため、読むときはそれを漢字という表意文字でカバーしながら理解しているからです。

 ですから、家庭で子供の読解力をつけるいちばん簡単な方法は、親子が楽しく会話をすることです。そして、その対応の際に、お父さんやお母さんが、少し意識して心持ち難しい言葉を、できるだけ長い文で話すようにするといいのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
受験作文小論文(89) 公立中高一貫校(63) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習