日本の経済が持ち直してきたと言われます。もともとリーマンショックによって世界経済が落ち込んだのは、それまで旺盛だったアメリカの需要が急速に収縮したからです。しかし、その後アメリカに代わるものとして中国の市場が成長しました。日本の景気回復も、中国の市場に依存したものです。
しかし、その内実は、日本ではもはやあまり売れなくなったものを中国の市場に供給したり、日本ではもはやあまり人が集まらなくなった観光地に中国人の観光客を呼び入れたりしているようなものではないでしょうか。
中国の13億という人口に目を奪われて、「そこに市場があるから売る」という対応をしていれば、その市場はやがて中国自身の生産によってカバーされるようになるでしょう。したがって、中国市場による景気の一時的な回復は、長期的には日本経済のより大きな後退を引き起こすと思われます。
日本は、中国という市場に頼るのではなく、日本の内部でより高度な市場を創造していく必要があります。
世界のインフラ整備に需要を見出すという考えももちろんありますが、その需要は、期間は長いもののやはり一時的な需要です。日本経済の本質的な発展のためには、永続的な需要を作り出す必要があります。
医療、介護、福祉など後ろ向きの産業に需要を見出すことは、経済の発展に結びつきません。少子高齢化社会の先進国という特徴は、経済的なものではなく主に文化的なものにとどまるでしょう。
新しい高度な市場とは、外需としては研究開発産業、内需としては教育文化産業になると思います。
研究と教育の分野に新産業を創造するためには、意識的な呼び水が必要です。その呼び水とは、投資を先行させてバブルを作り出すことです。
オランダのチューリップバブルは、植物の生産という希少性の維持しにくい分野で起こったために数年間で破綻しました。その後のイギリスの南海泡沫事件、フランスのミシシッピー計画のバブルは、いずれも約束された果実が手に入らないことが明らかになって破綻しました。
日本の土地バブルやアメリカの住宅バブルは、実物の資産である土地や住宅に裏付けられていましたが、その土地や住宅がそれ自体新たな果実を生み出すものでないことがわかることによって破綻しました。
アメリカのITバブルは、マネーゲームで巨大化して破綻しましたが、それは単なるバブル崩壊ではなくIT産業における生産性の向上という果実をアメリカと世界にもたらしました。
今の日本に求められているものは、教育、研究、文化、芸術の分野で、将来大きな果実をもたらす可能性のあるものに向かって、政策的なバブルを作り出していくことです。世界経済の収縮に対抗するためには、途上国の発展に期待するのではなく、先進国が創造的なバブルを作り出し、新「米百俵」政策を打ち出していくことだと思います。
作文でも感想文でも、なかなか書き出せないとか、長く書けないとかいう場合の原因は、材料不足にあります。
その証拠に、楽しい出来事があったときは、ほとんどの子供は長い作文を書いてきます。
逆に、楽しい出来事でも、長く書けないのは、「明日の○○が楽しみ」という未来のことを書く作文です。これは、出来事がまだ始まっていないので、書きたい気持ちは十分にあっても、書くための材料がないからです。こういう未来のことを作文に書く場合は、去年の似た話などを思い出して書くというのがコツです。
さて、作文が長く書けないときは、構成図を使って書くと、長く書けるようになります(言葉の森では、小3から構成図を使って書く練習をしています)。しかし、作文が長く書けない子は、構成図もなかなか書けないという面があります。
では、構成図をうまく書くためにはどうしたらいいのでしょうか。
実は、構成図という名前にやや問題があって、子供は、作文と同じようによく考えて書かないといけないという気持ちを持ちがちです。しかし、そうではなく、構成図は脱線してもいいので、思いついたことを次々と書いていくことが大事です。
短文と短文の間は矢印で結んでいきますが、その矢印は、作文に書く順序ではなく、自分が思いついた順序があとでわかるようにするための矢印です。
構成図は、ブレイン・ストーミングのような雰囲気で気軽に自由に書いていくものなのです。
ときどき、構成図がなかなか埋まらない子がいます。「先生、ここまでしか書けない」と、途中で投げ出します。そういう子は、大抵の場合、「作文用紙に直接書いた方が簡単だ」と言います。
言葉の森の構成図は、作文の設計図のようによく考えて書くものではなく、材料になりそうなものをとりあえず全部自由に並べてみるというものです。
構成図が埋まらない子は、先生の横に座らせて、子供と話をしながら、先生が枠をどんどん埋めていくようにします。気軽に書くのが大事なので、先生が、「それからどうしたの」と聞いたときに、子供が「えーと、忘れちゃった」と言えば、構成図に、「えーと、忘れた」などと入れます。そこで、子供が「ははは」と笑えば、その「ははは」も書いてしまいます。このような感じでやっていくと、楽しくお喋りをしながら、ものの10分もかからずに構成図を全部埋めることができます。
構成図の枠が全部埋まってから、「はい、これで作文を書いてごらん」と言うと、ほとんどの子は普段よりも長い作文を、ずっと早い時間で書き上げてきます。つまり、材料があれば、作文は書けるということなのです。
このように構成図の書き方がわかった子は、次の回からは、自分で構成図を全部埋めてくるようになります。
構成図がすばやく全部埋められるようになったら、「それから」「それで」と時間の順序で埋めていくのではなく、ある場面だけを詳しく書き出していくとか、「前の話」「似た話」「聞いた話」などに話題を変えて書くなど、構成図を立体的に埋めていく指導をすることができるようになります。
構成図の書き方を、大人が子供につきっきりで教える時間は一見長くかかるように見えますが、一回教えれば、その次からはほとんどの子が自分の力でできるようになります。
家庭で勉強していて、作文が長く書けないとか、構成図がなかなか埋まらないとかいう場合は、一度、お父さんやお母さんが一緒に構成図を埋めて、「構成図は気軽に何でも書いていい」という感覚を伝えてあげてくださるといいと思います。
▽構成図の書き方
https://www.mori7.net/mori/mori/kouseizu.html