高校入試小論文













 
 
高校入試小論文問題と解説1「生きるということは徐々に……」

■東京都立西高校 2010年度 600字
 生きるということは徐々に生まれることである。(サンテグジュペリ)
 象徴的なテーマなので、生き方の主題で。
 「生きる」「徐々に」などがキーワード。キーワードは、結びに生かすと効果的。しかし、生かすためには、文章力が必要になる。
 第一段落は、状況実例と意見。「小学生のころ、アサガオの植え替えをしたときに、水やりを忘れて枯れさせてしまったことがある。しばらく、そのままにしていてある日、見てみると、根の近くに新しい緑の葉が出ていた。それを見たとき、生き物の生命力に驚くとともに、待つことの意味について学んだような気がした。機械的なものは、壊れたときに待っていても直ることはない。しかし、生命や人間については、待っていると徐々に育つということが多いように思う。私もまた、徐々に生きることの大切さを忘れないようにしたい。」など。
 第二段落は、そのための方法1。「そのためには第一に、物事の可能性に目を向けることだ。昔、学校のテストでかなり悪い点数を取ったとき、先生が、『間違えるからそれだけ成長する』と教えてくれた。この言葉を聞いて、今できたかできなかったかということよりも、それをこれからどう生かすかを考えることが大切だと……。」など。
 第三段落は、方法2。「第二に、社会の側にも、『徐々に生きる』ことを待つようなゆとりが必要になる。現代の社会はともすれば、すぐに結果を見出そうとする。例えば……。」など。
 第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、世の中にはスピードと成果が要求されるものもある。例えば、織田信長が桶狭間に向かったときのように、その一番が勝敗を決する場面だ。しかし、人間の本当の成長は、徐々に生きることにある。私もこれから……。」など。

 
 
高校入試小論文問題と解説2「因果関係と相関関係」

■神奈川県立柏陽高校 前期 2010年度 60分 300字+300字

問1は省略。300字の感覚を身につけておくこと。消しゴムは使わずに、頭の中で全体の骨格を考えてから一気に書く。「理由」というキーワードを早めに使う。
 差がつかない問題なので、深く考えずに、多少はずれていてもいいからすばやく思いつくことが大事。例えば、「身長の高い人は体重も重い」「右目の視力がよい人は、左目の視力もよい」など。
問2
 600字程度の課題にも対応できるようにヒントは長めに書いてあるが、短くするためには実例などを省略してもよい。
 第一段落は、説明。「グラフを見ると、教科の種類に関係なくどの教科においても、朝食をとるグループの方が、朝食をとらないグループよりもペーパーテストの成績がよい。」など。
 第二段落は、考えられる要因1(字数を短くする場合は実例を省略してもよい)。「考えられる要因としては第一に、朝食をとる子は家庭における自分の時間管理ができているために、テストのための勉強もうまくやれるのではないかということである。例えば、私は毎日朝食を取っているが、それは夕方寝る時間がほぼ決まっているからで……。」など。
 第三段落は、考えられる要因2(字数を短くする場合は、要因は1つでもよい)。「第二の要因は、朝食を取る子は、小さいころから家庭での生活が安定しているため、テストの前に限らず勉強も計画的に進めているのではないかということである。私も小さいころ、夜更かしをしようとすると母親に、『毎日同じように生活する方がいいんだよ』とアドバイスされたことがある。……。」など。
 第四段落は、まとめ。「相関関係があるということと、因果関係があるということは、区別して考える必要がある。また、推測される因果関係についても、条件をさまざまに変えた調査によって裏付けることが必要だ。また、更に重要なことは、例外についての研究で、このグラフの例で言えば、朝食をきちんと取っているのに成績が悪い生徒や、朝食を全く取っていないのに成績がよい生徒がいれば、その背景を探る必要がある。」など。

 
 
高校入試小論文問題と解説3「日頃関心を持っている学問分野」

■千葉公立高校 特色化・一般入試 2009年度 60分 600~800字
 人間は長い歴史の中で、さまざまな見方や学問の力によって、自然現象や人間社会、人間の生き方などを探求してきました。あなたが、日頃関心を持っている学問分野を一つあげて、その分野があなたの生き方や考え方に与えた影響について書きなさい。

 第一段落は、説明。「私がいちばん関心を持っている学問分野は、教科で言えば国語だが、学問として言うと文学ということになるだろうか。私は、昔から国語の授業が好きで、教科書などは学年が新しくなるたびに、その日のうちに全部読んでしまうことが多かった。また、国語の授業では積極的に発言し……。」など。
 第二段落は、影響1。「文学の分野を学ぶことによって、私は自分の経験だけでは得られない広い知識を得ることができた。また、現代の人だけでなく、過去の人がどのように感じ考えていたのかも知ることができた。例えば、私が好きな古典のひとつは『枕草子』で、その中で……。」など。
 第三段落は、影響2。「また、文学という学問を学ぶことで、私は自分でも文章を書き、自分の考えを表現することができるようになった。私は、今自分のブログで毎日感じたことを書いているが、文章を書くことによって、自分の知識を確かめる機会が増えた。例えば、あるとき、国際連合と日本の常任理事国化について意見を書こうとしたとき……。」など。
 第四段落は、まとめ。「学問分野には、理科や社会や数学などの分野もある。それらも確かに人類の進歩に大きく貢献してきた。しかし、私は、それらの学問分野の根底に、言葉によってものを考えるという文学の分野があるのではないかと思う。私はこれから……。」など。

 
 
高校入試小論文問題と解説4「野生化したアライグマによる京都の社寺の被害」

■京都府立桃山高校 2010年 40分 600字。 自然科学

 社会科学的な問題としてではなく、自然科学的な問題として考える。
 第一段落は、説明。「野生化したアライグマによる京都の社寺の被害のような例は、これからも形を変えて起こると思われる。現に、最近では、日本の湖沼に本来いないはずのブラックバスやカミツキガメが繁殖していることが問題になっている。ほかにも……」など。
 第二段落は原因。「その原因は、アライグマの国内持ち込みの例でもわかるように、アライグマがペットとして飼えるようなものでないという認識が足りなかったことになる。それは、ひいてはそういう知識を伝えることのできる科学者の責任だとも言えるのではないだろうか。原子力発電所などについても、国民が判断する材料はマスメディアから流されている情報だけであることが多い。このようなときに、科学者が……」。」など。
 第三段落は対策。「しかし、既に問題が起きている今できる対策は、やはり被害が拡大しないようにするためのアライグマの生態の研究である。人間と自然の生き物は共存する必要がある。アライグマ以外にも、クマやシカやスズメバチなど、人間の住んでいる場所の近くで摩擦を起こしそうな生き物は多い。これからの生き物を排除するのではなく共存していくことが大事である。……」など。
 第四段落は、まとめ。「確かに人間は自然をコントロールすることによって、住みよい世界を作ってきた。しかし、これまでは生き物たちの都合を考えずに、人間だけの都合で自然を改変してきた面が多い。これからは……。」など。

 
 
高校入試小論文問題と解説5「遺伝子組み換え作物のメリットとデメリット」

■名古屋大教育学部附属高校 2012年 600-800字

 第一段落は、状況実例。「遺伝子組み換え作物は、年々増加し、アメリカにおけるダイズ、トウモロコシ、わたなどは、2010年には90%前後の作付面積を占めるまでになっている。例えば、・・・・・・」など。
 第二段落は、意見1。「遺伝子組み換え作物が栽培、流通するメリットは、第一に、農業の効率化だ。例えば病害虫に強い遺伝形質などと・・・・・・。第二のメリットは、遺伝子組み換えというバイオテクノロジーの技術が進歩することだ。遺伝子組み換えにはまだ未知の要素も多い。それを広く実験することができる。・・・・・・」など。
 第三段落は、意見2。「遺伝子組み換え作物が普及することのデメリットもある。第一は、在来種が消滅してしまう危険性だ。自然の作物には多様な性質がある。遺伝子組み換えの単一の品種が広がることで多様な遺伝情報が失われてしまう可能性が高い。第二は、遺伝子組み換えが商業的に利用される危険性だ。例えば、特定の農薬や化学肥料と結びつかないと効果を発揮しない作物なども今後考えられる。第三に、最も大きい問題は遺伝子組み換え作物を摂取することによる長期的な副作用の危険性だ。・・・・・・」など。
 第四段落は、まとめ。「このように考えると、遺伝子組み換え作物の是非を論じるよりも更に重要なことがある。それは、遺伝子組み換えに限らず、科学技術を、国民に公開された形で発展させる必要があるということだ。・・・・・・」など。

 
 
高校入試小論文問題と解説6「情報化社会」の問題

■都立国際高校 2009年度 60分 600字。

 「べき」という意見と、複数の方法で書いていくといいでしょう。
 第一段落は、状況実例。「私たちは、多種多様な情報に囲まれて暮らしている。朝、起きれば、新聞やテレビのニュースが飛び込んでくる。インターネットで必要な情報を検索すれば……。私たちは、これらの情報に流されるのではなく、情報を主体的に活用していくべきではないだろうか。」など。
 第二段落は、方法1。「そのための方法は、第一に、情報を実際の経験に結びつけることだ。例えば、世界にはまだ貧しい国がたくさんあるという情報を知ったら、その国に行ってみるというようなことだ。私は、一年前の夏休み、ひとりで東北まで自転車で行った。そのとき経験したことは……。」など。
 第三段落は、方法2。「第二の方法は、情報をただ受け入れるだけでなく、自分からも発信していくことだ。私の友達には、自分のブログを作っている人が多い。私も、ブログでよく自分の考えなどを発表している。自分から情報を発信しようとすると、ただ単に情報を知っているだけでなく、それを消化して考える知性が必要になってくる。先日も、私は、消費税のことについて記事を書こうとして、自分が詳しい知識をあまり持っていないことに逆に気づいた。このように……。」など。
 第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、情報は、判断や行動の前提だ。正しい情報をまず手に入れることが大事で、そのための情報の価値は当然ある。しかし、その情報を手に入れることだけで満足するのではなく、その情報を経験や知性に結びつけることによって、より価値あるものにしていくのが、私たちのするべきことではないか。」など。

 
 
高校入試小論文問題と解説7「セレンディピティ」

■宮城県仙台第二高校 平成20年資料


 第一段落は、「残念なことです」の説明。「現代は、情報がきわめて手に入りやすくなっている。しかし、その情報を鵜呑みにしていては、せっかくの正しい情報を生かすことができない。情報を集める能力よりも、情報をかぎわける能力が必要な時代になっているのに、そのことを自覚していない人が多い」など。
 第二段落は、その原因。「セレンディピティ能力がこれまであまり重視されてこなかった原因は、これまでの時代のほとんどが、情報不足の時代だったからである。昔、私の家には百科事典があり、わからないことがあるとそれを引いて調べた。しかし、今はインターネットで……」など。
 第三段落は、対策。「大事なことは、一つは、教育の一部としてセレンディピティ能力を育てることである。これまでの教育は、与えられた正解を探す形のものが多かった。……。もう一つは、一人ひとりの自覚である。私の家では、テレビでニュースを見たあと、家族で話し合うことがある。そのたびに……」など。
 第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、基礎的な知識に関しては、与えられたものをまず受け入れて消化するということも大切である。しかし、……」など。

 
 
高校入試小論文問題と解説8「自分が工夫して解決した体験と将来の目標」

■川西緑台高校 2009年度 50分

 1、省略。150字という字数の感覚をつかむために、自分で自由にテーマを決めて、消しゴムを使わずにできるだけ早く指定の字数でまとめる練習をするとよい。
 2、
 自然の仕組みを利用して工夫した例を考えるとよい。
 第一段落は、説明。「私も自分の生活に、動物たちの身体の仕組みを生かしたことがある。」など。
 第二段落は、実例1。「第一は、寒さをしのぐ方法だ。私は、寒いとき、スズメが体をふくらませて空気を羽の間に入れていることに気づいた。そこで、これまでシャツの上に着ていたセーターを、シャツの内側に着てみた。すると、もこもこして動きにくくなったが、空気がセーターの間に入り、外の寒さをやわらげることができた。」など。
 第三段落は、実例2。「第二は、運動会の徒競走で速く走る方法だ。私は、チーターが速く走れるのが、爪を地面にひっかけて加速をつけているからだと知った。そこで、それまで底がつるつるだった運動靴を、小さなスパイクがついているものに買い換えた。その結果、コーナーを曲がるときも足が横滑りしなくなり、これまでよりも速く走ることができた。」など。
 第四段落は、まとめ。「このことから私は、自然界には、人間の生活に生かせるヒントが数多くあることを知った。私は将来科学者になりたいと思っているが、この経験を生かして……。」など。


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