解説集 ゲンゲ2 の池 (印刷版)
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印刷版は印刷物として生徒に配布されているものと同じです。
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2024-09-14 00:00:00)以降に
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1.1週
●宗教、独裁と民主主義
宗教は個人の思想信条の自由として考えられるものですが、人間が社会的な存在である限り、個人の問題ですまない場面も当然出てきます。
例えば、国家が徴兵制を採用しているときに、自分の属する宗教の「人を傷つけるべきではない」という信念からその兵役を拒否する権利が先進国では両親の自由として認められています。しかし、この宗教が「だから、国家は戦争をすべきでない」というところまで主張するとすれば、それは徴兵制を指示している人の思想の自由を逆に束縛することになります。
宗教の今日の社会における問題として考えてみましょう。
構成図の書き方
構成図は、小3以上の生徒が書きます。小2以下の生徒は、絵をかいてから作文を始めるという課題になっているので、構成図は書かなくて結構です。
構成図を書くときに大事なことは、思いついたことを自由にどんどん書くことです。テーマからはずれていても、あまり重要でないことでも一向にかまいません。
たくさん書くことによって、考えが深まっていきます。したがって、構成図は、できるだけ枠(わく)を全部うめるようにしてください。しかし、全部埋まらなくてもかまいません。
枠と枠の間は→などで結びます。この矢印は、書いた順序があとからわかるようにするためです。作文に書く順序ということではありません。
構成用紙は、構成図の書き方に慣れるために使います。構成用紙を使わずに、白紙に自由に構成図を書いてもかまいません。
構成用紙を使って構成図を書きます。
| 頭の中にあるものをそのまま書くとき。
| 構成図で書くとき。
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初めに絵をかきます。(絵はどこにかいてもいいです)
| 思いついた短文を書きます。(どこから始めてもいいです)
| 思いついたことを矢印でつなげていきます。
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関係なさそうなことでも自由にどんどん書きます。
| 枠からはみだしてもかまいません。 | 全部うまったらできあがり。
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1.2週
●(感)いつの時代でも
文字文化の衰退が、大人から子供へ伝える文化を途絶えさせた。
第一段落は、状況実例。「数年前、荒れる成人式が話題になった。また、同じころ、親父狩りなどという言葉に象徴されるように、年長者に対する権威が失われ、子供たちが大人のコントロールを離れて自由に振舞うようになった。かつて、中国で、文化大革命が盛んだったころ、紅衛兵という少年たちの破壊活動の中で、中国の科学の発達は大きく阻害されたと言われている。文字によって伝える文化の衰退は、単に大人の権威が弱くなったというだけではなく、その国の文化そのものの衰退と結びついていると言えるのではないか。(社会問題)」
第二段落は、その原因1。「第一の原因は、近年の著しい技術革新の速度に、文字文化が追いついていないことである。私も、新しい機械を使うときは、マニュアルを読むよりもまず動かしてみることにしている。また、最近ではマニュアルそのものを印刷せずに、インターネットで表示するという仕組みも増えている。(言葉の森だろ(笑))」
第三段落は、原因2。「第二の原因は、伝える知識が多すぎて、大人自身が何を伝えていいかわからなくなっていることである。江戸時代のころ、日本人の教養の基盤は四書五経と言われる古典だった。そのころは、教養の必須科目が決まっていたので、大人も自信を持って子供に伝統を伝えることができた。今は逆に、大人が子供に教わる分野も増えている。」
第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、映像文化などの発達は、知識の新しい取得の可能性を広げた。しかし、そのことによって文字文化が停滞するとしたらやはり問題だ。文字とは、単に情報を伝える手段なのではなく、文化そのものを伝える手段なのである。(自作名言)」
自然科学実例
幼児期に人間の手によって育てられなかった狼少年は、成長しても人間のように生活することができなかった。言葉による文化の伝達が人間の成長には欠かせないものだということがわかる。
1.3週
●(感)ぼくの身体で
<社会問題の主題>
「自分とは何か」という自我に関するテーマは、一般的には内面(感情や思想など)から話されるが、ここでは身体の面からとらえている。そのことに注目しよう。
<複数の理由>
…理由1:自分が抱く自己イメージと周囲のとらえ方のギャップに気づいたとき、自己の理想像(または自分が抱いていた自己像)の追求・現実化に躍起になる。現代社会では、自己像が否定されることは自己否定につながりやすい。
…理由2:人間は目で見たときに感じた印象で物事を判断する。「中身が大事」といいながら、何気なく他人を見た目で判断する私たちの日常。
<実例>
・リストカットをして生きている実感を得る若者。内面と外面の「私」はつながっている。内面としての自我が定まらない現代において、身体感覚で「私」を確かめようとする。しかし、「私」がない私は現実に現実感を抱けず、「生きている」実感が得られない。
・ハンセン病に対する偏見は、身体に現れた症状に対する偏見でもある。人は見たときの印象で判断を下し、それによる思い込みは根深い。多くの公害病患者や「障害者」を隠し、隔離した時代はそう遠くはない。
・ダイエット食品で肝機能障害をおこし、死亡者が出た事故。
<反対意見への理解>
想定される反対意見
…人間は「私」という内なる自我を肉体で覆い、肉体を通して他者を交流する。だからこそ身体も自我を形成する重要なものであり、他人を外見で判断することは有効な手段である。人と人との交流は身体があるからこそ可能なのだから、身体を改造することでイメージを修正するのは自己表現であり、自己実現である。
→内面における自我がしっかり定まっていない限り、身体での自我形成や自己認識は、自己破壊という問題を引き起こすのでは。
2.1週
●(感)しかし、ここで面白いのは
課題文の前半部分に焦点をあてて考えてみましょう。あなたには好きなものがありますか? 寝食忘れて、金と時間と労力をかけてでもやりたいことはありますか?
*社会問題の主題:無趣味人間が多くなっていますね。同時に特技がない人も。履歴書の趣味と特技の欄を記入するときに苦労する人が多いのです。休みの日はゴロゴロ、ブラブラ。定年退職した人にうつ病が多いという統計もあります。
*複数の理由1:子供は好奇心旺盛で、何にでも夢中になりますね。何を見ても新鮮で感受性も豊かだからでしょう。一方で、大人になるにつれ、私たちは仕事や勉強で忙しく、疲れ果てていきます。心が麻痺し疲れていては、何にも興味がわかないし、何をしても感じるものは少なく、疲れるだけ。
*複数の理由2:自分の意思が無視され、社会(親や教師や世間)の意思が行動の選択基準になります。勉強、生活規則、習い事、仕事、社会人としての自分の役割など、よく考えると私たちは自分の意思ではなく強制されて生きているのではないでしょうか。自分の心が分からなくなれば、何をしたいのかも分からないはずですね。
*反対意見への理解:確かに、私たちは社会の要求に従わなければ生きていけないし、「成功」すれば多くの輝かしいものが手に入ります。けれども、私たちはパンのみで生きているわけではありません。
2.2週
●(感)ヨーロッパのコトバでは
<読解のヒント>
抽象的な言葉が多く出てきて理解しにくいでしょうが、「ぴん!」ときた言葉を頼りにして身近な例に結び付けましょう。
例えば、西欧と日本の自然観の違いとして伝統的な建築物や庭園のあり方が題材にされますね。またそこから派生したのが科学技術のあり方です。
つまり、自分とは別のものとして自然をとらえる西欧、自分の一部として自然をとらえる日本(東洋)という図式で論じられることが多いことを知っておくと読解に役立つでしょう。
<社会問題の主題>
西欧から科学技術が入ってきてからの近代や現代日本のあり方を探ってみましょう。例えばこんなテーマ。
1.「郊外」という場の出現:かつて私たちは住むところと働くところは同じだった。けれども今は、働く場所は都市、住む場所は郊外。しかもわざわざ森や山を壊して、故郷に似せた「棲家」を造る。
2.リゾート地への移動:首都近郊に住み働き、休暇には自然豊かな地域に出かける。かつては反対だったのでは? しかも私たちは自動車などの乗り物で移動し、排気ガスを撒き散らし、大量のゴミを捨て、山登りの際には貴重な山草を引っこ抜く。私たちは自然を壊しながら自然を楽しんでいる。皮肉なことにその自然はかつて私たちが暮らしていた場所なのに。
3.故郷から思い出作りの場所へ:私たちはかつて自然の中で暮らしていた。けれども近代化によって人々は都市に集まり、自然は生活の場ではなく、思い出作りの場に変わった。私たちにとって自然はもはや自我の一部ではなく、対象物なのである。
4.ガーデニングブームの弊害:自我から切り離された自然を自分の世界に囲い込む行動としてガーデニングをとらえてみよう。都心ならずも自然豊かな郊外にある住宅街でさえ、庭には珍しい草花が植えられている。雑草や「害虫」を取り除くために薬品が使われ、美しく珍しい花々を手に入れるために自然破壊や品種改良が暴走している。
<複数の原因>
西欧式近代化、都市化、自然破壊、科学技術の進歩による便利な生活。身近なところからエピソードを探してみよう。現代日本社会に住む私たちにとって、自然は生活の「アクセサリー」になってはいないか?
<反対意見への理解>
確かに都市化や便利な生活は、日本が近代化され高度経済成長を経た後、不可避な運命なのである。都市化に自然破壊は伴う。自然がなくなれば人々は自然とともに暮らすことはできない。しかし、だからといって自然を求めて自然を破壊することは許されるのだろうか。自然とは何かを今一度考えて、私たちの生き方、社会のあり方を見直したい。
2.3週
●(感)デカルトが述べたことで
<社会問題の主題>
私たちが見ている世界こそが真実だと思い込むことは、人間至上主義につながっている。世界はすべて人間のために作り変えられる、破壊される、搾取される。ペットショップや動物園で見世物にされ売られる動物たちの世界はどうか? 人間が住むために破壊される山や森の世界はどうか? 生体実験に使われる動物たちの世界はどうか? 人間の楽しみのために釣られる魚の世界はどうか? 観光客の餌付けで増えてしまったからと殺される猿の世界は?
*社会問題の実例を長文実例として書いてみてもよい。
<複数の理由>
・弱肉強食の自然界の中で私たち人間だけが文明というものを持ってしまった。そのことは人間を自然界の強者にした。
・科学技術の発達による自然の支配がほしいままになるにつれ、世界は自分たちのものと錯覚してしまっている。
・都市化により自然と人間の生活は区切られた。人間はもはや自然の一部でない。
・人間の欲求というものは際限がない。
<自然科学の実例>
自然をねじふせることが自分の首を絞めることにつながる例は多い。新たな耐性菌や感染病の発生、治水事業による洪水、森林伐採や建設による土砂崩れ、乱獲による食糧危機、飢餓と飽食、人口爆発と少子高齢化。こういったことは、私たち人間以外の世界の構成員たちも生きていることを証明する。
<反対意見への理解>
確かにこの世界で人間は強者である。しかし世界は人間だけのものではないことを自覚しなくては、究極的には私たち人間が滅びることへとつながっていくだろう。人間は創造主たりえない(自作名言)。
3.1週
●(感)社会の仕組みの正しさ
アマルティア・センは世界的に有名な経済学者である。彼は資本主義システムの中でどうやって平等に富を分配するかを追求している。
ここでは経済に関わらず、平等や公平とは何かということを身近な体験から考えてみよう。
<社会問題の主題>
・アメリカでマイノリティーに対する保護策、つまり社会の平等のために、アファーマティブアクションという政策が実施されました。ハンディをもっている人に優先権を与えるというものです。それはハンディを持っていない人たちから大変な反感をかいました。
もしあなたが大学を受験するとき、ハンディキャップをもった人たちに何らかの優先権が与えられたら、あなたはどう思いますか?
・税金はそもそも富を分配する装置です。しかし現実の日本社会では、貧しい人も税金を支払い、減税措置政策は豊かな人たちが得するようなものです。福祉政策はどんどん切り捨てられていっています。
<複数の理由>
弱者に対する社会の態度、例えば、排除、圧迫、偏見など、かつての負の遺産が私たちの引け目として残っているのではないでしょうか? そのために極端な措置や意識(同情や義務感など)が強く働きます。
また一方で、既得権益を手放すことは至難の業です。生活レベルを上げることは簡単ですが、いったん豊かな生活を体験してしまうと、自ら身を削って、貧困や危険にさらされている人たちにゆとりを分けてあげることは難しいものです。
ボランティアや慈善事業が同情の上に成立し、同じ生活をすることに踏み切れない人々は大勢います。
<自然科学の実例>
人間以外の生物は文明や文化を持ちません。ですから人間以外の生物の世界は弱肉強食です。人間だけが、平等や公平ということを考えられるのです。
けれども、自然界では自分が生きるのに必要な分だけしか消費しません。対して人間は必要以上に蓄積し、消費します。ここに貧富の格差が生まれるのです。
自然界は公平や平等という概念からは程遠いように思いますが、究極に考えればそうではないかもしれません。
そして、地球上の生態系を壊しているのは人間だけだという事実に目を向けるべきでしょう。
3.2週
●(感)漱石は、イギリスでの
人はそれぞれ考え方がが異なるのに、一つのルールに統一されてしまう。すると個人と社会の関係に軋轢が生じます。成熟した個人主義のように、異なる考えを慣用に受け入れ、社会が柔軟に変わることが理想ですね。
あなたが属する社会とあなた自身がうまくいかなくて悩んだことはありませんか? そんな体験を材料にしてみましょう。
<社会問題の主題>
二方向からテーマを取りあげることができます。一つは、社会の頑なさ。もう一つは行過ぎた個人主義。
テーマ例1:イラク人質事件を例に、人質になった人たちへのバッシングなどに見られる個人の行動・卒業式での日の丸掲揚と国歌斉唱に反対する教員の処分・さまざまな市民運動に対する世間の無関心や偏見
テーマ例2:学級崩壊・フリーターの急増・引きこもりや不登校児の急増・マナーやルールの乱れ・地域生活の崩壊・人間関係の希薄化・政治経済への無関心
<複数の原因>
〜例1に関して
近代市民意識の低さ、村意識の根深さ、「出る杭は打たれる」日本社会の伝統、中流階級意識の浸透、教育による統制、常識至上主義、保身主義
〜例2に関して
「私」の肥大化、既成秩序の崩壊、価値観の多様化、東西冷戦の終焉、団塊世代への反目、異常な都市化、情報媒体の発達と多様化
<自然科学実例>
安楽死、脳死判定、臓器移植などの問題を取り上げると、死と生の定義は人間の数と同じくらい存在します。しかし、法律によって、日本では安楽死の幇助は殺人とされることがほとんどですし、脳死も臓器移植も十分な議論のないまま法律で定められてしまいました。
ですから、個人がどんな死を迎えたいのかということは全く無視されるどころか、犯罪という問題にまで行き着いてしまいます。中絶に関する問題も同じですね。
私たちの社会は、個々人の生死までも一つのルールに統一しようとするのです。
<反対意見への理解>
確かに夥しい人が共に生活するためには、ある一定のルールが必要です。ルールは人々が暮らしやすいようにあるべきです。けれども、人は一人ひとり違うということを受け入れない今の社会では、ルールは人々が暮らしにくい方向に作用しています。
3.3週
●(感)時間の進行と
<身近な例を探そう>
時間とはなんぞやという難解なテーマでも、自分の体験の中からなんとかエピソードを探し出そう。例えば、何かを目指してがんばっている自分の経験、進路について曖昧にしか考えられない自分、この時間(暇な時間、自己紹介に与えられた3分、試験時間など)をどうやって過ごそうかと悩んだり。そういう経験はないかな。
<社会問題の主題>
私たちはあまりにも時間にとらわれすぎているという点から社会問題を探してみよう。例えば、「労働者の年齢制限」「二十歳になったら自動的に大人になってしまう制度と実態のズレ」「年齢的弱者(高齢者、子供)の決め付け」「あまりにも融通の利かない毎日と、それに反目する人びと(フリーター、引きこもりなど)」「○月○日は〜〜をする日」「約束事で忙しい人たち」「分刻みにスケジュール化されている私たちの日常」など。
<複数の理由>
自然の中で暮らし、共同体の構成員もさほど多くはなく、生活がシンプルだった前近代社会では、時間を数値化して、小刻みに行動を決める必要なかった。けれども機械が発明されてから、人びとは忙しくなり、生活は煩雑になり、共同体の構成員も膨大になり、その中でスムーズに社会経済が機能するためには時間の数値化は必要だ。
また、異なる文化、異なる価値観、異なる生活をする人とうまくやっていくには、共通のものさしが必要だ。
時間を数値化することで生を効率よく合理的にしようとしたが、実際は時計に振り回されている、あるいは時計に縛られているのが実状だ。
<反対意見への理解>
確かに時間というものを数字で表すことは、近代社会で生活するには非常に便利なものだ。効率よく私たちは限られた一生を過ごすことができる。しかし、効率や合理性は必ずしも生を豊かにするのだろうか。
時間が数値化されていない文化は今でも存在する。テレビで垣間見る彼らの生活は私たちが見失った何かをしっかりと持ち続けていることに気づく。