解説集 ライラック の池 (印刷版 )
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印刷版 は印刷物として生徒に配布されているものと同じです。
ウェブ版 は書き込み用です。
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最新版 には印刷日(
2024-09-14 00:00:00 )以降に
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4.1週
●ゴミ、長所と短所
書き方の流れ
第一段落(150〜200字)
ゴミというキーワードから、人間の生き方に結び付けた意見を考える。「ゴミでもリサイクルで資源として活用できる。何事もそのよい面を見て生かせるような人間になりたい」というような感じで。その意見に合わせて、ゴミというキーワードを生かしながら書き出しを工夫しながら状況実例を書く。「土曜日の朝八時。ゴミ収集車のさわやかな音楽が聞こえてくる。土曜日は缶やビンなどのリサイクルできるゴミを収集する日なのだ」という具合に。そのあと、「私は、この、ゴミのようなものも生かせるような人間になりたいと思う」と意見をまとめる。「そのためにはどうしたらよいだろうか。二つの方法が考えられる」と次の段落につなげる。
第二段落(150〜200字)
方法1。「第一の方法としては、やはりものごとのよい面を見るように心がけることだ」。第一の方法は、人間の心構えのようなところで書くと書きやすい。そのあと、その裏づけとなる実例を書く。「部活でうまくチームワークをとれない人がいたが、その人のいい面を見ると……」という感じで。ここはできるだけ体験実例で。
第三段落(150〜200字)
方法2。「第二の方法としては、今の減点主義の教育のような、マイナス面を直すことを中心にした社会風土を変えていくことだ」。第二の方法は、できれば社会的な広がりのある方法で。また裏付けとなる実例もできるだけ社会的な実例で。「エジソンは、1+1=2に疑問を投げかけて……」「織田信長は勉強もせずに野山を遊びまわり」というように。
意見。反対意見に対する理解を入れながら、最初に意見に戻ってまとめる。「確かに、欠点を直すことは大事である。しかし、ものごとのよい面を生かしていくことがそれ以上に大事なことである」。そのあと、書き出しのキーワードである「ゴミ」に結びつけてまとめる。「ゴミのように思えるものの中に宝物を見つけられるような広い心を持った人間になりたい」。途中に名言も。(うーん、盛りだくさんだなあ。^^;)
体験実例は、自分の体験をもとに書いていきましょう。社会実例は、自分の体験以外の話で、新聞や本に出ていた話などを入れていきましょう。
名言集に載っている名言は全部覚えておきましょう。また、本を読んでいい表現を見つけたら、自分でこの名言集に書き加えておいてください。
●「生き方の主題」は、「私は……のような生き方をしたい」「人間は……のように生きるべきである」という書き方です。
●ゴミ、長所と短所
構成図は、小3以上の生徒が書きます。小2以下の生徒は、絵をかいてから作文を始めるという課題になっているので、構成図は書かなくて結構です。
構成図を書くときに大事なことは、思いついたことを自由にどんどん書くことです。テーマからはずれていても、あまり重要でないことでも一向にかまいません。
たくさん書くことによって、考えが深まっていきます。したがって、構成図は、できるだけ枠(わく)を全部うめるようにしてください。しかし、全部埋まらなくてもかまいません。
枠と枠の間は→などで結びます。この矢印は、書いた順序があとからわかるようにするためです。作文に書く順序ということではありません。
構成用紙は、構成図の書き方に慣れるために使います。構成用紙を使わずに、白紙に自由に構成図を書いてもかまいません。
構成図を書きます。
頭の中にあるものをそのまま書くとき。
構成図で書くとき。
初めに絵をかきます。(絵はどこにかいてもいいです)
思いついた短文を書きます。(どこから始めてもいいです)
思いついたことを矢印でつなげていきます。
関係なさそうなことでも自由にどんどん書きます。
枠からはみだしてもかまいません。 全部うまったらできあがり。
▽構成図は、原稿用紙や普通の白紙に書いても結構です。
★ゴミ、長所と短所
役に立たないもの(と思われているもの)の使い道を考えてみる……という考え方もあると思います。先日、新聞の記事で見たのですが、海藻を食い荒らし、「迷惑ウニ」よ呼ばれるウニの被害が各地に広がっているそうです。ウニの食用部分は育っていないので、食用にもならないただの「迷惑ウニ」。三浦市では、特産の野菜の中でいたんで商品価値がなくなったものをウニに食べさせるという実験をしました。想像以上にウニは野菜をよく食べ、なんと、それによってウニの身もよく成熟し、うまみも充分のウニに育ったということです。迷惑ウニは食用も十分できるウニに成長し、破棄野菜も使い道が見つかる……まさに「Win Win」の結果となりました。こんなこともヒントになりそうですね。
4.2週
●科学文明の発達は(感)
内容:科学文明の発達は、人間の日常から手間を省く。便利さや快適さを求める人間の欲求が文明を発展させてきたことは確かである。しかし、生きる喜びとは、感性をとぎすまし、自然の大きさと人間の魅力を日々発見することにある。 似た例:家の中でねっころがりながら、テレビで大自然の番組を見ているよりも、実際に近くの山に登ったり川で泳いだりする方が生きている実感がわくでしょう。テレビゲームでサッカーをするよりも、実際に公園でサッカーをしたほうが、思い出に残ります。このような身近なところを出発点にして考えてみましょう。 意見:自分で実際に手足を使って行動してみることの大切さということで意見を考えてみましょう。反対理解は、本文に書いてあることを参考に自分で考えましょう。 名言:「経験は……」などが使えそうです。できるだけ自分で探してみましょう。
●科学文明の発達は(感)
【ミニヒント】 今「スローライフ」という生き方が脚光を浴びていますね。便利で快適な都会的生活を捨て、自然環境の良い田舎で、自給自足的暮らしを楽しむ生き方に、憧れる人が多くなりました。 身近な似た話としては、キャンプで、枯れ葉や枝を集め、河原で炊いたご飯は格別美味しかったですね。小学生のころ、ペットボトルで稲を育てた体験なども、思い起こして書いてみると良いでしょう。 また、宮沢賢治や、二宮金次郎(尊徳)などの伝記が、実例として使えそうですね。 郷土岩手の地を深く愛し、作品中に登場する架空の地名、理想郷を「岩手(いはて)」をエスペラント風にしたイーハトヴ)と名づけた詩人・童話作家・農業指導家・教育者である賢治は、 その空前・独特の魅力にあふれた作品群によって没後、世評が急速に高まりましたね。 薪を背負い歩きながら本を読む姿が、銅像となった二宮金次郎は、空き地に菜種を植え、出来た菜種と油を交換して、勤勉と倹約に努め、苦労を重ねながら、小田原藩の分家にあたる桜町領(栃木県二宮町)の再興に尽力しました。
●科学文明の発達は(感)
手間をかける、実際に行動してみる、という点では、メールやネットにたよるだけでなく、あいさつの声をかけたり、電車やバスの座席をゆずってあげたり、次の人のためにドアをおさえてあげたり・・・という、「ちょっとした手間」で生身の人と人とのつながりができる、ということがあります。ネットでは多くの人とつながれる利点がありますが、「顔が見える」つながりも必要ですね。
★科学文明の発達は(感)
<第一段落> 要約と意見
「私は、手間を惜しまず、自分の手足を使った生き方をしたい。」
<第二段落> 第一の方法
「そのための方法としては第一に、機械などに頼らず、自分でやってみることだ。」
(実例)
・エレベーターを使わず、階段を上るように心がけている。
・キャンプで料理を作るとき、火を起こすところから始めた。
<第三段落> 第二の方法
「第二に、学校教育の中にも体験型のものを多く取り入れていくことだ。」
(実例)
・学校の授業の一環として農作業を体験したことがある。
・田植えから米を育てたことがある。
<第四段落>
「確かに、便利なものを活用することは大切だ。しかし、「人が旅行するのは、到着するためではなく旅行するためである。」という言葉もあるように、私は、……。」
4.3週
●人びとが時間に(感)
内容:人びとが時間に追われるようになったのは、時計が発明されてからだ。さらにテレビ画面に時計が表示されるようになって、分刻みの行動が多くなった。しかし、人びとの時間への関心は、時間にとらわれないことにでなく、時間の能率的な使い方に向けられているようだ。 意見:時間を能率よく使うということも大切だが、時間にとらわれずに過ごすことも必要だ、という意見で。これまでの長文にも似た話はいくつか出てきましたね。「モモ」(ミヒャエル・エンデ)を読んだ人なら、灰色の男たちの例を考えつくかもしれません。 名言:結果ではなく途中の過程が大切だという意味で「人が旅行するのは……」。または、「時間を作る第一の方法は……」などが使えそう。自分でさがしてみましょう。
●人びとが時間に(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。「私は時間に縛られずに生きていきたい。」 第二段落は、方法1と実例。「そのための方法としては第一に、物事に熱中することだ。」体験実例としては、時間が経つのも忘れてゲームや読書に熱中した話を書いてみましょう。 第三段落は、方法2と実例。「また、第二の方法としては、ゆとりを持って生活することだ。」ゆとりを持って生活すれば時間に追われることなどないはずです。 第四段落は、生き方の主題と名言の引用。「確かに、時間どおりに規則正しい生活を送ることも大切だろう。しかし、『自分が考えるとおりに生きなければならない。そうでないと、ついには自分が生きたとおりに考えるようになってしまう。』という名言があるように、私は時間に縛られない主体的な生き方をしたい。」
Re: ●人びとが時間に(感)
時間に追われる現代人に関する、社会実例のヒント。 ★「スロー(遅い)フード」って知っていますか。マクドナルドなどのハンバーガーに代表されるのが、すぐに食べられる「ファスト(速い)フード」ですね。これに対するものです。この運動は、イタリアで始まりました。提唱者であるスローフード協会 会長 カルロ・ペトリーニ(Carlo Petrini)氏は 「私たちはスピードに束縛され、習慣を狂わされ、家庭のプライバシーにまで侵入し、 ファストフードを食べることを強制されるファスト・ライフというウィルスに感染しています。 そこで、ホモ・サピエンスは聡明さを取り戻し、我々を滅亡の危機へと追いやるスピードから、 自らを解放せねばなりません。」と言っています。 つまり、いいものを選び、じっくり時間をかけて料理して食べよう、という運動です。そういう生活のことは、「スローライフ」と呼ばれたりもしています。カルロさんによれば、和食はもともと、とてもいいスローフードだそうですよ。 ★また、2004年には、『スーパーサイズ・ミー』というドキュメンタリー映画が公開されました。これは、監督のモーガン・スパーロックが、自ら体を張って、「ファストフードを1日3食、30日間食べ続けたらどうなるか?」という疑問に挑んだドキュメンタリーです。実際のところ、30日を目前にして、ドクター・ストップがかかったそうです。やはり、「ファストフードは体によくない」ということが証明されたわけです。
●人びとが時間に(感)
できるだけ、「そうなるためには社会もこう変わるべきだ」ということも考えていきましょう。たとえば、「効率重視の社会環境を見直すことだ」という方法も考えられそう。携帯電話やパソコンの普及により、どこにいても、何をしていても、仕事に追われているビジネスマンがいい例です。どこにいても仕事ができる、ということは、どこにいても仕事やスケジュールに縛られているということも言えます。家にいながらにして、また移動中にも仕事ができる、というのは確かに効率がいいかもしれませんが、逆に、それが原因で人間は時間に追われてしまうというふうに展開できそうですね。
5.1週
●日本がいかに湿潤な国か(感)
内容:日本語にはオノマトペ(擬声語・擬態語)が多いが、特に水と関係のあるものが多い。オノマトペは、同質社会では微妙な伝達の機能を発揮できるが、異質な文化のなかに住む人には通じない。擬声語擬態語は抽象力を欠く低次の言語だとも言えるが、見方を変えれば、言語と音楽の接点にあるとも言える。
解説:擬声語擬態語の豊富さは日本語の特色ですが、同時に幼稚な言葉づかいに擬声語擬態語が使われることもよくあります。例えば、犬はワンワン、猫はニャーニャー、車はブーブーというような使い方です。
「滑らか」という日本語はほかの言葉に訳せますが、「つるつるした」はほかの言葉には訳せません。これは、擬声語擬態語が抽象性に欠けているからです。
この一見、低次で幼稚に見える擬声語擬態語も、同じ日本人どうしではものごとの微妙なニュアンスを豊かに表現する手段になっています。雨が「しとしと」と降っているか「ザーザー」と降っているかで、雨の様子はよりくわしく表現できます。同じ「おいしい」でも、「まったりとして、ほんわかと口の中に広がるようなほのぼのとした味わい」と言ったほうが、よりくわしく伝わるでしょう。(どこが)
意見は、擬声語擬態語に代表されるような豊かな表現を大切にしよう、ということで考えていくといいと思います。
伝記実例では、宮沢賢治などが挙げられそうです。宮沢賢治の童話には、ふんだんに擬声語擬態語が使われています。童話の内容とともに、この擬声語擬態語が読み手に懐かしい気持ちを与えているようです。
●日本がいかに湿潤な国か(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。「擬声語擬音語に代表されるような豊かな表現を大切にする生き方をしたい。」 第二段落は、方法1と実例。「そのための方法としては第一に、本をたくさん読むことだ。」たとえば宮沢賢治の童話には、ふんだんに擬声語擬態語が使われています。表現力を身につけるために読書は欠かせません。直接的表現の多い詩について書いてもいいでしょう。 第三段落は、方法2と実例。「また、第二の方法としては、感性を豊かにすることだ。」いろいろなことを感じ取ることが表現するための第一歩だと言えるでしょう。まずは五感を研ぎ澄まして、何かを感じ取ろうとする心がけが大切です。 第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに、抽象性のある理性的な言葉の方が事実をより正確に伝えることができる。しかし、『全てに効くという薬は、何にも、たいして効かない。』という名言があるように、私は擬声語擬音語に代表されるような豊かな表現を大切にする生き方をしたい。」
Re: ●日本がいかに湿潤な国か(感)
日本語のオノマトペ(擬声語擬態語)の豊かさを示す例として。 今や日本が世界に誇れるサブカルチャーとなった漫画、アニメですが、特に漫画の背景に書き込まれるオノマトペを見ると、日本語がいかに表現力が豊かで、かつ可塑性がある(いろいろに変化することができる)言語であるか、よくわかります。 海外、アメリカのコミックなどを見ると、擬声語も、「BOOM!」(ブーン)とか「BOMB!」(爆発音)、笑い声なら「HA HA HA!」など、決まったものがほとんどです。それに比べて、日本語のオノマトペの多様なこと。しかも、今新しく勝手に作っても、だいたいの感じは伝わりますね。「ドゴーン」「バビューン」「どげしっ」……etc。さらには、発音できない「あ゛」や「え゛」などに至るまで、自由自在です。みなさんは逆に、このような多様な表現をあたりまえのように思って、日常何も感じずに使っているのかもしれませんね。
5.2週
●何を読むかという前に(感)
要約のヒント:読書については、まず夢中で読むという体験をすることが必要である。とにかく面白く楽しい本を読んで、読書の楽しさを知るとよい。テレビによっても楽しみは味わえるが、それは、私たちを外へ引き出すものである。それに対し、読書は自分の中へ引き戻し、自由自在に豊かに想像力の翼を広げることができ、自由感をもたらすものである。読書の楽しみを知ることによって、日常のいろいろな楽しみ、スポーツ、映画、音楽なども一段と豊かに深く楽しめるようになる。 名言のヒント:「読書とは、自分の頭で考えることではなく他人の頭で考えることである。(ショーペンハウエル)」「読書は人間を豊かにし、討議は人間を役立つようにし、文章を書くことは人間を正確にする。(フランシス・ベーコン)」「読書を廃す。これ自殺なり。(国木田独歩)」「部屋に書籍がないのは、体に魂がないようなものだ(キケロ)」など。 意見のヒント:読書の大切さということで書いていきましょう。小さいころに読んだ本で印象に残っている本などを思い出すと書きやすいでしょう。反対理解は二つ考えられると思います。(1)「読書だけでなく実際にいろいろなことを体験することも必要だが」、(2)「自分が苦手だと思う難しい本も試しに読んでみるということも必要だが」。
●何を読むかという前に(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。「私は何かに夢中になれる人間になりたい。」 第二段落は、方法1と実例。「そのための方法としては第一に、途中であきらめずに最後までやり遂げようとする強い意志を持つことだ。」読み始めたときにはあまり興味を感じない本でも読み進めていくうちにそのおもしろさがわかってくるということを経験した人は多いと思います。これと同じように、何か新しいことをするときに、ある程度続けているうちにそのおもしろさがわかってくるということはよくあります。 第三段落は、方法2と実例。「また、第二の方法としては、好きなことを集中してできるような環境を整えることだ。」学校のようにチャイムで時間を区切られるような生活ではなく、自分の好きな時間配分で生活できれば言うことなしですね。現実にはなかなかむずかしいですが……。^^; 第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに、夢中になれることだけをやっていればよいというわけではない。しかし、『自分の心のうちに持っていないものは何一つ自分の財産ではない。』という名言があるように、私は自分の夢中になれるものを大切にして生きていきたい。」
●何を読むかという前に(感)
第一段落は、身近な実例と意見。「私は、小学生のとき、よく読みかけた本が止まらなくて、夜中まで読んでいたことがあった。そういう夢中で読むという生き方を大事にしたい。」など。 第二段落は、方法1。「そのための方法としては、第一に、好きなものを読むことだ。私が小学生のときに熱中した本は、……」など。 第三段落は、方法2。「また、もう一つの方法としては、読書の大切さをもっと学校教育の中に取り入れることだ。小学生のころは、毎週読書の時間があったが……」など。 第四段落は、まとめ。「確かに、読書以外にも大切なものは多い。例えば行動力などもそうである。しかし、私は……」と、最初の意見に戻ってまとめる。
5.3週
●創造には、情念の力がいる(感)
要約:「必要」という言葉の表現として英語には「ニーズ」と「ウォント」がある。「ニーズ」は理性による判断から生まれるものであるのに対し、「ウォント」は内なる欲望から生まれるものである。新しい物を生み出す、創造するためには、飛躍というものが必要であり、この飛躍の原動力が「ウォント」である。 伝記人物実例:宮沢賢治は、最愛の妹が亡くなった日、その死についての3つの長い追悼の詩(「永訣の朝」「松の針」「無声慟哭」)を作りました。心の中の内なる欲望が彼にそれを書かせたのでしょう。このほか、歴史上に名を残している人の行動の動機はどれも「ウォント」です。大分県の青ノ洞門は、禅海がのみ一本で三十年かけて掘ったトンネルです。宇宙飛行士、土井隆雄さんの夢も「ウォント」から出発していたのでしょう。 体験実例:「明日から朝早く起きて勉強をしよう」と思ってもなかなかふとんから出てこられません。しかし、「明日は遠足だ」となると、目が覚めたとたんにガバッと起きてしまうでしょう。そんな身近な例を念頭において考えてみましょう。 意見:「必要だからする」のではなく「したいからする」という内なる熱い動機が大切だという意見です。しかし、自分の能力や社会のニーズなど、客観的な条件を考慮しなければ、単なる無謀な賭けになってしまうかもしれません。反対意見への理解は、「確かにニーズを見きわめるも大切だが」というところで。 名言:「人生に意味はない。あるのは欲望だ。欲望があるから、バラはバラらしく花を咲かせている」「知識がはしごを作ったのではなく、二階に上がりたいという熱意がはしごを作ったのだ」など。
●創造には、情念の力がいる(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。「私は、「必要だからする」というのではなく、「したいからする」という内なる熱い動機を大切にする生き方をしたい。」 第二段落は、方法1と実例。「そのための方法としては第一に、目標を定め、その目標を実現させるという強い信念を持つことだ。」将来の夢を実現させたいという強い思いがあれば自然とやる気が湧き出てくるものです。高校受験にしても、志望校が具体的に決まっているのとそうでないのとではやる気が違いますね。 第三段落は、方法2と実例。「また、第二の方法としては、社会の固定観念に惑わされないことだ。」いい大学を出ていい会社に就職して……という狭い考え方にとらわれていたのでは、結局は「必要だからする」という考え方に流されてしまいます。内なる熱い動機を大切にするためには社会の固定観念に惑わされず自分の心の叫びに耳を傾けなくてはなりません。 第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに、今やらなければならないことを見きわめることも大切だ。しかし、『知識がはしごを作ったのではなく、二階に上がりたいという熱意がはしごを作ったのだ。』という名言があるように、私は自分の内側から湧き出るような熱意を大事にして物事に取り組んでいきたい。」
6.1週
●テレビで見える戦争の部分と(感)
内容:テレビでは見えない部分がある。テレビによって見えている部分と見えない部分とを総合的に判断することによって、初めて、真実に近づくことができる。しかし、人間はテレビで見たことは自然に納得してしまいがちだ。現代では、あらゆる分野がテレビに露出される機会を求めている。
「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、人間は目に見えたものはそのまま信じてしまう傾向があります。言葉で聞いたものには批判的な見方ができますが、実際に目に見えたものには批判的な姿勢はなかなかとれません。
テレビには、事実を目に見えるかたちで報道するという面がありますが、これを逆に利用して、都合の悪いものを見えなくするという操作をすることもできます。しかし画面を見ている人は、何が隠されているかということにはなかなか気がつきません。
例えば、A君とB君がけんかをしているところを報道する番組があったとします(そんなのあるかいな)。A君がB君をやっつけているところだけを報道して、B君がA君を逆にやっつけているところを報道しなかったとしたら、その番組を見ている人は、だれもが「A君のほうが悪そうだなあ」と思うでしょう。これが、国際問題のレベルで行われてしまうことがあるというのが、テレビの持つ情報の操作性ということです。
目に見えるものをそのまま信じてしまうのではなく、隠されているものを批判的に見ていくことが、現代の情報社会を生きている私たちには必要になっているのです。このことを自分の生き方に結びつけて考えてみましょう。
●テレビで見える戦争の部分と(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。「目に見えるものをそのまま信じてしまうのではなく、その裏側にあるかもしれない真実を見極められる人間になりたい。」 第二段落は、方法1と実例。「そのための方法としては第一に、目に見えるものをそのまま受け入れるのではなく、まずは疑ってみることだ。」目に見えるものを、素直に受け入れるだけでは情報に踊らされてしまうこともあるでしょう。 第三段落は、方法2と実例。「また、第二の方法としては、まず自分の考えを持つことである。」自分の考えも持たずに受け身でいると、情報に流されやすくなってしまいます。まずは、自分の考えを持ち、主体的に映像による情報を捕らえることが大切です。 第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに、映像による情報はわかりやすく、効果的に情報を伝えることができる。しかし、『花はだれが見ていなくても咲いている。』という名言があるように映像の裏側にあるかもしれない、ただ一つの真実を見極められる人間に私はなりたい。」
6.2週
●国際感覚があるということは(感)
内容:国際感覚を身につけている人とは、「自分なりの意見をきちんと持っている人」「それを正確に人に伝えられる人」「常にステレオタイプの発想をさけようと努めている人」「海外のことだけでなく、日本についてもよく知ろうとしている人」「異文化と正面から向き合おうと心がけている人」などである。時代は国際化時代から地球時代へと移り変わりつつある。これに対応して国際感覚だけでなく地球市民としての意識が要請されるようになってきた。地球市民は、地球で暮らすすべての人びとが人間らしく生きることをたがいに保障しあうという理念によって結びつくものである。地球市民であるということは、私たち一人一人を包み込むもっとも普遍的な定義である。 意見:自国の利益だけでなく全地球的な利益を優先することの大切さ。身近なクラスや部活などの問題をもとにして考えると実感がわくと思います。部活のみんなの利益のために、自分の都合を犠牲にするなどということはよくありそうですね。自分の利益よりも全体の利益を優先する人の方がみんなから信頼されるというのはどの世界でもあります。それは、環境問題など全地球的な問題が増えてきたこれからの国際社会でますます求められてくるものでしょう。少し前のフランスの核実験などはその反対の例と言えそうです。 名言:「自国に対する賞賛が……」「私たちの幸福が……」。
●国際感覚があるということは(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。「私は、自国の利益だけでなく全地球的な利益を考えられる人間になりたい。」
第二段落は、方法1と実例。「そのための方法としては第一に、自分の意見をしっかりと持つことである。」自分の考えを持たずに周囲に流されているだけでは、全地球の利益など考えられません。クラスの話合いなどでも、自分の意見をしっかり持ち、それを周囲に伝えていかなければクラス全体の利益を考えているとは言えませんね。
第三段落は、方法2と実例。「また、第二の方法としては、広い視野を持つことである。」一つの角度からだけ物事を見るのではなく、全体を見回せるような広い視野を持つことが必要でしょう。クラス内で意見が分かれたときなど、自分の意見を主張するだけではなく、全体を見回して、反対意見にも耳を傾け、相手の立場になって考えてみることも大切ですね。
第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに、自国の利益を守ることも大事である。しかし、『私たちの幸福が、ほかの人びとの不幸に支えられているのであってはならない。』という名言があるように自国の利益だけではなく、地球全体の利益を常に考えながら生きていきたい。」
●国際感覚があるということは(感)
実例の紹介 方法の1 自分の意見をしっかり持つ 「頑固親父という家長」 方法の2 視野の広い人 「ガンジー」
★国際感覚があるということは(感)
第二段落の方法1と実例。「そのための方法としては第一に、自分の利益だけを考えるのではなく、全体の利益を考えて行動することである。」自分の利益、たとえば自国の利益だけを考える行動をすると、資源の無駄遣いや環境汚染など地球環境にとって悪影響を及ぼしてしまうことがあります。また、スポーツの試合でも、スタンドプレーをして自分だけが目立っても、チームが負けてしまっては何にもなりません。「チームに貢献する」ことの大切さが、サッカーや野球では重視されていますね。
6.3週
●現代では学術研究の場において(感)
実例のヒント: 偏差値をもとに医者になることを決めた学生が、その発想のまま将来医者になったとしたら、人の痛みを分かる気持ちは持てないかもしれません。また、町医者は風邪でもけがでもなんでも診療してくれるが、専門科医は、専門以外のことは診療できない(してくれない)というような例も考えられるでしょう。最近のニュースを見ていると、政治家・官僚・金融界の一連の不祥事は、接待やカラ出張、ヤミ献金をおかしいと感じない常識の欠如にあるようです。 意見のヒント: 狭い専門よりも広い教養をという意見で。科学者の社会責任として、核兵器を作れる科学者は同時にそれがどういう場面で使われるかにも関心を持たなければならない、というような例が考えられるでしょう。ノーベルは、科学者であるとともに、社会的視野も持っていたので、ダイナマイトが戦争で使われることに心をいためました。これからはそういう視野の広さ=教養が必要ということで書いていくと書きやすいでしょう。反対意見は、専門家として一つのことに専念し、深く追求していくことも必要だがというところ。 名言のヒント:「家の批評ができるのは……」「辞書のような人間になることではなく、辞書をうまく使えるような人間になることが勉強の目的である」「名医という言葉があるかぎり医学は科学ではない」「私たちの人生は、私たちが費やしただけの価値がある」など。
●現代では学術研究の場において(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。「私は、専門的な知識だけではなく、幅広い教養を身につけた人間になりたい。」 第二段落は、方法1と実例。「そのための方法としては第一に、得意な分野、好きな分野以外のことや一見無駄に思われるようなことにも目を向けることである。」一つのことに熱中することはもちろん大事ですが、ときには、より道をすることによって幅広い知識を身につけることができます。先生や友達の影響で、これまで興味のなかったことに目を向け、意外な収穫があったというようなこともあるでしょう。また、さまざまな分野の本を読んでみるのも一つの方法でしょう。 第三段落は、方法2と実例。「また、第二の方法としては、学校などでも知識をつめ込むだけの教育をするのではなく、幅広い教養が身につくような教育をすることである。」教科書をもとにした勉強だけではなく、さまざまな体験を通して、生きていくために必要な教養が身につくようにカリキュラムを工夫する必要があります。 第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに、一つのことに専念し、深く追求していくことも大切である。しかし、『辞書のような人間になることではなく、辞書をうまく使えるような人間になることが勉強の目的である。』という名言があるように、私は、専門的な知識だけではなく、幅広い教養を身につけていきたい。」