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解説集 ワタスゲ の池 (印刷版 /印刷版 /ウェブ版 /最新版
印刷版は印刷物として生徒に配布されているものと同じです。ウェブ版は書き込み用です。 https://www.mori7.com/mine/ike.php
最新版には印刷日(2024-09-14 00:00:00)以降に追加されたもの(グレーで表示)も掲載されています。

4.1週 
●疑問を持つことの大切さ、ゴミ
書き方の流れ
 第一段落(150〜200字)
 状況実例と意見。例えば、「今日の社会では、与えられたマニュアルに疑問を持たない人が多い。先日も……。私たちは、もっと疑問を持つことの大切さを見直すべきではないか。そのために考えられる方法は二つある」。
 第二段落(150〜200字)
 方法1。「第一の方法としては、あらゆることを一度自分なりに考え直してみることである」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。「例えば、私もバスケットのシュートフォームを初めは言われるままにしていたが、どうしてもうまく入らないので、その原因を自分なりに考えてみて。すると……」。
 第三段落(150〜200字)
 方法2。「第二の方法としては、学校教育でも一人ひとりの生徒が疑問を述べ合うことができるような余裕のある運営をしていくことである」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)。そのあとその裏づけとなる実例。「OECDの調査によると、日本の高校生の勉強嫌いの割合は…」。
 第四段落(150〜200字)
 反対意見への理解を入れながらまとめ。「確かに、素直にものごとを受け入れる姿勢というものは大事である。しかし……」

 小論文の課題は、自分の問題であるとともに日本の社会の問題としても考えていきましょう。

 名言集に載っている名言は全部覚えておきましょう。また、本を読んでいい表現を見つけたら、自分でこの名言集に書き加えておいてください。

●「当為の主題」は「……べきである」という書き方です。
●疑問を持つことの大切さ、ゴミ
 構成図は、小3以上の生徒が書きます。小2以下の生徒は、絵をかいてから作文を始めるという課題になっているので、構成図は書かなくて結構です。
 構成図を書くときに大事なことは、思いついたことを自由にどんどん書くことです。テーマからはずれていても、あまり重要でないことでも一向にかまいません。
 たくさん書くことによって、考えが深まっていきます。したがって、構成図は、できるだけ枠(わく)を全部うめるようにしてください。しかし、全部埋まらなくてもかまいません。
 枠と枠の間は→などで結びます。この矢印は、書いた順序があとからわかるようにするためです。作文に書く順序ということではありません。
 構成用紙は、構成図の書き方に慣れるために使います。構成用紙を使わずに、白紙に自由に構成図を書いてもかまいません。
 

構成用紙を使って構成図を書きます。
頭の中にあるものをそのまま書くとき。
構成図で書くとき。
初めに絵をかきます。(絵はどこにかいてもいいです)
思いついた短文を書きます。(どこから始めてもいいです)
思いついたことを矢印でつなげていきます。
関係なさそうなことでも自由にどんどん書きます。
枠からはみだしてもかまいません。全部うまったらできあがり。


 

▽構成図は、原稿用紙や普通の白紙に書いても結構です。


4.2週 
●ふつう死は、心臓が(感)
 脳死の問題は、技術的な問題ではなくむしろ倫理的な問題です。それも、人類がこれまで遭遇したことのない新しい倫理の問題を提起していると言ってよいでしょう。よい悪いをすっきりと割り切ることのできない問題にどう対処していくか、一人ひとりの人間観が問われているとも言えそうです。
Re: ●ふつう死は、心臓が(感)
 第1段落は、要約と「当為の主題」。「我々は、技術の進歩に見合うだけの精神を持つべきだ。」「技術の進歩につれ、倫理観も変革していくべきだ。」など。

 第2段落は、方法の1。「そのための方法としては第1に、現実から目をそらさず、問題点を明らかにすることである。」など。「体験実例」は、困ったことがあったとき、冷静に対処できたかどうか。ピンチの時に、動揺してしまって失敗したことはないでしょうか。

 第3段落は、方法の2。「また、方法の第2としては、問題に対しては、大勢でよく議論を尽くすことだ。」など。「体験実例」か、できれば「社会実例」を。「平成21年5月21日から実施される裁判員制度は、実際の刑事裁判に一般の市民が関わり、裁判官と一緒に刑を決めるというものだ。他の人間の罪を裁き、その人生をも左右する裁判員には、将来、誰もがならなければならなくなる。皆で議論を重ねることが、ますます重要になってくるだろう。」

 第4段落は、「反対意見への理解」と「自作名言」を入れて「当為の主題」に戻ります。「確かに、技術の進歩は目覚ましく、人間の意識の方がついていけなくなりがちである。しかし、○○は……ではなく、……である。(「自作名言」)だから我々は、……すべきだ。」

4.3週 
●何はともあれ(感)
 15秒のコマーシャル音楽と全体がひとつの大きな作品となっているクラッシック音楽の違いを文化の問題として考えてみましょう。
 かつて、芸術や学問のさまざまな分野で「大○○」が支配していました。大思想、大宗教、大論文、大長編小説、巨大戦艦ヤマトなど(これは違うか)。クラッシック音楽のような表現スタイルも、始めがあり終わりがあり全体のテーマがあるという意味で大音楽でした。これらの「大○○」によって、作り手は自身の人生観や世界観を訴えようとし、受け手もその作者の人生観や世界観に共鳴しようとしたものです。ベートーベンの「ジャジャジャジャーン」を聴くと、なぜか「よし、がんばるぞ」という気になってくるでしょう。
 ところが、現代はそのような「大○○」はあまり周囲に見られません。豊かさと忙しさの中で、正面から世界や人生を論じるという姿勢はかえって敬遠されるようになってきました。
 この説明文を、現代の社会の問題に結び付けて「…べきではないか」という意見にまとめてみましょう。「クラッシック音楽が表現していたようなじっくりと傾聴する文化をもっと見直すべきではないか」と書いてもいいですし、その反対に、「そのような時代を懐かしむべきではない」と書いてもいいでしょう。その意見のあとにそれを実現するための方法を複数書いていきましょう。
●何はともあれ(感)
 第一段落は、要約と当為の主題。「クラシック音楽の一部分を15秒で流すような軽薄短小の文化に流されるべきではない。」
 第二段落は、その方法と体験実例。「そのためには、物事の原点に目を向けることだ。私も、漫画(「バガボンド」という題名で現在人気がある)の宮本武蔵に関心を持ったのをきっかけに、吉川英治の全巻に挑戦してみた。(体験)」
 第三段落は、方法2とユーモア表現。「第二には、学校教育などでもっとじっくりと物事を考える場を作ることだ。すぐに正解を出すことを要求する社会では、第二の田中さんや小柴さんは生まれない。生まれるとしたら、クローン人間でだろう(笑……どこが)」
 第四段落は、自作名言と意見。「軽薄短小とは社会の流行ではなく、社会の病弊なのだ。」

5.1週 
●たとえば、折り紙を(感)
 内容:3分の2の4分の3を、計算をしないで折り紙で答えを出す方法がある。知性とは頭の中で計算するものだけではなく、経験を生かすものという見方に変わりつつある。学校の文化の中で有能だった人が学校で教えられない分野でも有能であるとは限らない。場への適応力が有能さの本質である。

 解説:「石橋を叩けば渡れない」の著者西堀栄三郎さんは第一次南極越冬隊長でした。南極に着いて宿舎を作るときに、日本から持ってくるはずの釘がないことに気がつきました。そこで、西堀さんは、壁を立てて重ねそこに水をかけ、南極の寒さで凍りつかせることによって無事に宿舎を建てました。こういう機転は、知識の勉強をしているだけではなかなか生まれません。

 現代の社会では、知識があれば、それがその人の能力のほとんどであるかのように思われがちですが、知識は人間の能力の一部でしかありません。私たちは、知識ももちろん含めた、場への適応力をもっと育てていくべきでしょう。

 歴史上の人物でも、とっさの機転で窮地を脱したという例が数多くありそうです。そういう人がしばしば学校で劣等生であったり社会ではみだし者であったりするのがおもしろいところです
●たとえば、折り紙を(感)
 第一段落は、状況実例と意見。「昔の友達に、成績はあまりよくないが、遊びにかけては天才という子がいた。ある日……。私は、適応力をもっと高く評価すべきだと思う。」
 第二段落は、その方法。「そのためには、第一に、臨機応変という発想をもっと高く評価することだ。例えば……」
 第三段落は、方法2。「また、学校教育でも、ペーパーテストだけでなく、実習や実験など応用力が試されるものを重視すべきだ。例えば……」
 第四段落は、まとめ。「確かに、体系的な知識を身につけることは大切だ。しかし……」

5.2週 
●一つの集団は(感)
 内容:一つの集団は、裏切者と犠牲者を生み出すことによって完成される。神に対する絶対的な帰依だけでは、集団は不安定である。集団の内部を律する緊張を生み出すために、キリスト教は内部にユダという裏切者を生み出した。集団がこのような自己完結を目指すのは、集団が衰弱しはじめている証拠である。

 解説:キリスト教にユダが現れず、キリストが長生きして晩年は孫たちと幸せに暮らしていたという展開になったら、キリスト教の性格はもっと違ったものになっていたでしょう。

 あらゆる組織は裏切り者と犠牲者を必要とするというのは、国内がピンチになると他国との戦争を始める国の例などで考えられそうです。また、人が何人か集まると、すぐに派閥のようなものができます。その派閥の結束力は、他の派閥との拮抗関係によってもたらされます。学校のクラスなどでも、先生の悪口を言っていると盛り上がるでしょう(笑)。裏切者や敵対者がいなくても活力を維持できる集団や個人を私たちは目指すべきでしょう。

 名言は、「自国に対する賞賛が他国に対する軽蔑によって支えられているのであってはならない」など。
●一つの集団は(感)
 第一段落は、要約と意見(当為の主題)。「私たちは、内部に敵を作らなくてもやっていけるように、個々人がもっと強くなるべきだ。」
 第二段落は、方法と体験実例。「まず第一に、心構えとして、うまく行かないことを他人のせいにするのではなく、まず自分の努力不足として考えることだ。私も子供のころ、サッカーなどのスポーツで相手に負けると、相手チームを批判したり仲間のミスを批判したりしていたが、今は考えを改めて、まず自分の努力不足を反省することにしている。(ほんとかいな)」
 第三段落は、方法2とユーモア表現。「第二に、為政者が、内部の敵を作る前に、情報を公開することである。オープンな情報が流れれば、だれかを一方的にスケープゴートに仕立てるというやり方は通用しなくなるだろう。宗教団体なども、内部の話し合いを公開するようにすれば、オウム真理教のような行き過ぎには至らないだろう。しかし、オープンにすると、話し合いそのものがないということが明らかになるかもしれない。(笑)」……あまり面白くないけど。
 第四段落は、自作名言と意見。「敵は内部にいるのでも外部にいるのでもなく、ただ自分の未熟さの中にいるのである。」

5.3週 
●知人に「釣り」を(感)
 解説:「流れる時間」と「積み重ねる時間」がキーワード。「流れる時間」というのは、過去から原因をひきずり未来に向かって目的や結果をひきずる時間のことですが、そういう時間と一緒に流れているだけでは、自分を回復する時間というものがなくなってしまいます。時間だけでなく社会との関連でも同じようなことが言えます。いつも社会とのつながりを意識して生きていると、たまには孤独に休息したいと思うようになります。過去とも未来とも社会とも切り離されている時間というものが、人間らしく生きるためには必要なようです。名言は「人が旅行するのは、到着するためでなく旅行するためである」などが使えそうです。
●知人に「釣り」を(感)
 第一段落(150〜200字) 要約
 「何もしないでいる」ためには、「そうでないこと」を真剣にやることによって、それらを締め出してしまわなければいけない。私たちは「流れる」時間と、「積み重なる」時間の双方を交互に体験することになっている。しかし「流れる」時間の呪縛力が強くなって、それを「積み重ねる」時間として体験し直すための「暗転」と「幕間」が、日常生活の中でつかまえ難くなってきている。「積み重ねる」時間については、我々自身が意識し、工夫しなければ体験出来ない。現代においては、「積み重ねる」時間の中で「何ごとかをしている」ことよりも、「流れる」時間の中で「何もしていない」ことの方が重要で、必死になってそれにすがりついている。
 続いて意見を挙げます。「私たちは意識した時間の中で休息を見出すべきである。そのために考えられる方法は二つある」。
 第二段落(150〜200字) 方法1
 「第一の方法としては、探求できるような趣味を持つことだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。自分の趣味が、単なる時間つぶしだと思うのはさみしいね。どんなことであれ、腕を挙げよう、もっと知りたいといった意欲をもっていると、それは自分の意思で行う趣味になるよね。すると、趣味のための時間は「積み重ねる時間」になるはずです。
 第三段落(150〜200字) 方法2
 「第二の方法としては、拘束時間を評価するのでなく、成し得た事を評価するような社会を作ることだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)決められた時間に追われているとどうしても「ひまつぶし」や「空白の時間に逃げる」といった受動的な解決になってしまいます。自分で時間を決めることができれば、主体的なリラックスができそうです。労働時間がフレックスタイムになったり、さまざまな休暇を申請できるようになったり、自宅勤務といった方式も出てきました。満員電車に揺られる人生はもう古い?? 
 第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
 「確かに、何もしないというリラックスも有効ではある。しかし、私たちは自分の意識的な休息をもつべきである。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とはAではなくBである。」に当てはめてみましょう。
★知人に「釣り」を(感)
第一段落 是非の主題「私たちは時間に流されるのではなく、主体的に時間と関わって積み重ねる時間を持つべきだ。」
第二段落 複数の方法一 「そのためには意識的に休息を取って、これまでの経験が十分に消化吸収され、さらに熟成発酵する時間を持つことだ。」学習も、やみくもに努力を続けるのではなくて、少し時間をおいてから復習したほうがよく記憶に残るので効果があると言われますね。一夜漬けだと、テストのときは覚えていても、後はきれいさっぱり忘れてしまったということもありそうです。が、消化吸収や熟成発酵に時間を掛けて学んだものごとは、しっかりと身についていて、なかなか忘れないものです。
第三段落 複数の方法二、歴史実例 「また、社会も積み重ねる時間から創造性が生まれることを評価するべきだ。」歴史実例は、アルキメデスの原理を発見したアルキメデスのこと。古代ギリシアの植民都市シラクサで、アルキメデスは金の王冠に混ぜ物がされていないかどうかを王冠を壊さずに調べよと王に命じられました。アルキメデスは考えに考えた挙句。困り果てて休息。入浴中に、水が湯船から溢れ出るのを見て、アルキメデスの原理のヒントを思いついたといわれます。Eureka!(わかった!)と叫んで、裸で浴場を飛び出したというお話が有名ですね。
第四段落 反対意見への理解 「確かに、集中してものごとに取り組み流れる時間に身を任せることも大切だが」 実際に、学習でも仕事でも、没頭する姿勢がなければ、なかなか前に進むことはできないでしょうね。かといって、それだけでいいというわけではありません。筆者の述べるように、「流れる時間」「積み重ねる時間」の両方を人間は持つべきなのでしょう。自作名言は「AはBではなくCである。」の形で書きましょう。A→Bは連想しやすく、A→Cは意外性のあるものにするといいですね。最後は是非の主題を確認してしっかりと締めくくりましょう。

6.1週 
●美とは、本来、自然の(感)
 内容:美とは、自然の造化物におのずから備わった性質である。人間は、芸術を通して自然の美に接近してきた。自然の美の本質は、美醜の対立を超越したところにある。これに対して、人間の作った美は、無心の美ではなく、醜に対立する相対的な美である。しかし、近代の美術は、その次元の低い相対的な美を美の基準としてきた
 解説:洞窟で壁画を描いたり土器や石器を作っていたりした古代の人々は、この壁画や土器で今度の展覧会に入選して賞状をもらおうなどという意識はなかったはずです。自分の気に入ったものを作ろうという意識で、無心に創作に取り組んでいたのでしょう。
 野山の花は、だれに見てもらうわけでもなく無心に美しく咲いています。鳥の声も虫の音も、みんな無心に美しい音楽をかなでています。しかも、その美を表現するのに、ゴッホのように耳を切ったり、ベートーベンのように髪の毛をかきむしったり(笑)という無理なことはしていません。
 確かに、人間の作った芸術は、美の範囲を広げました。しかし、私たちは自然がもともと持つ美というものに、もっと目を向けていく必要があるのかもしれません。
 港南台の駅前に、わけのわからない抽象彫刻がいくつか並んでいます。あれはあれでおもしろいオブジェクトですが、その横に並んで立っている普通の街路樹のほうがずっとセンスがいいような気がときどきします。
●美とは、本来、自然の(感)
 第一段落(150〜200字) 要約
 続いて意見を挙げます。「私たちは自然がもともと持つ美というものに、もっと目を向けていくべきである。そのために考えられる方法は二つある」。 
 第二段落(150〜200字) 方法1
 「第一の方法としては、自然とふれあう機会を積極的にもつことだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。自然とふれあう機会といえば、遠足、キャンプや林間学校。旅行。そんなものを思いますが、実は身近なところに自然はあります。(自然しかないようなところにお住まいの人もいます。(^^ゞ )ふれあっているときに、はたして美を感じているでしょうか。体を動かすことが自然とふれあう事だと勘違いしているむきもありますね。気づきさえすれば、部屋の窓からでも美しい空と雲は見えます。道端に花も咲いています。 
 第三段落(150〜200字) 方法2
 「第二の方法としては、美に順位をつけるような美術教育や美意識を考え直すことである。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)。幼い頃の美術の記憶と言えば、写生大会の金賞、銀賞、銅賞。(どうしようもない賞?)展覧会も必ず選考があって、名画を見てもどこがいいんだか、と思うものもあるよね。美術に限らず、私たちにとってなんだか「美」は競争になっています。ミス○○とか、アイドルだとか、ペットモデルなども出現して。美しいことはたいそう値打ちがあるそうです。整形ブームなんて、究極ですね。 
 第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
 「確かに、美を追求する芸術家の業績も価値のあるものである。しかし、私たちは自然の中に本質的にそなわった美をもっと観賞するべきである。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とはAではなくBである。」に当てはめてみましょう。

6.2週 
●科学技術は地域や民族の(感)
 解説:この文章で述べられていることは、日本文化と欧米文化の比較という話題でよく出てきます。何度も読んで自分のものに消化しておきましょう。
 「ヨーロッパに生まれた科学技術は、ヨーロッパの文化と同心円をなしていた。しかし、その科学技術を輸入した日本の文化は、ヨーロッパの文化とは異質なものだった」というのが内容です。
 織田信長が長篠の戦いで武田勝頼軍を破ったころの日本の鉄砲の生産は質量ともに世界一だったと言われています。しかし、その後、天下統一とともに鉄砲の発達は停止し、武士は刀をさして暮らす生活に戻りました。鉄砲という武器が日本の文化と合わなかったからなのでしょう。
 自動車の使い方などでも、日本人とアメリカ人では違いがあります。アメリカ人は、車を馬の延長とみなして、乗るための単なる道具とわりきって乗っていますが、日本では自分の部屋の延長という感覚で車に乗っている人が多いようです。ときどき、靴を脱いで室内履きに履きかえて乗っている人がいるでしょう。
 科学技術を導入するときは、ついその現象面のハードな部分だけに目を奪われがちですが、その背後にある文化というソフトな面にも目をむける必要があります。ことわざで言うと「仏作って魂入れず」というところでしょう。
 外国の文化のよいところを取り入れることは大切だが、それを自分の文化に合わせてうまく消化していくべきだ、という意見で考えていきましょう。外国の文化ではなく、ほかの人のよいところを、と身近な話で考えてもいいでしょう。
●科学技術は地域や民族の(感)
 第一段落(150〜200字) 要約
 続いて意見を挙げます。「外国の技術・文化を取り入れるときは、自国の文化に合わせて消化していくべきである。そのために考えられる方法は二つある」。 
 第二段落(150〜200字) 方法1
 「第一の方法としては、上っ面だけの模倣をしないことだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。「かたちから入る」などと言って、外見だけ「らしく」揃える人がいます。日本人は外国から来るものに憧れを持ち、すぐに取り入れますが定着しているでしょうか。椅子の上に座布団をしいて正座してるおばあちゃんの姿など象徴的。ひざが悪いので椅子にするといった目的から入れば、西洋風のリビングもいいですけれどね。西欧風の住宅も、日本の気候に合わなかったり、個室が出来ても居間に集まる習性が残ってたり……。 
 第三段落(150〜200字) 方法2
 「第二の方法としては、日本の文化のよさを再発見することだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)確かに明治の開国から日本は進んだ西欧の文明を吸収することで発展してきました。しかし、経済がある程度豊かになった今、人々は生活の質、都市や地域の環境、自らのアイデンティティと創造性といったものを重視するようになってきました。「外国人のほうが日本人らしい。」といったテーマの意見広告を目にしたりしますが、それではあまりに情けないですね。 
 第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
 「確かに、進んだものよいものを取り入れる柔軟性は大切である。しかし、私たちはもっと日本の文化を理解してその土台の上に外国のものを取り入れるべきである。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とはAではなくBである。」に当てはめてみましょう。
●科学技術は地域や民族の(感)
<当為の主題>
 科学技術は文化や地域によって柔軟に変化して受け入れられると見るべきだ。
<方法の一つ目>
 輸入された科学技術は文化・地域によって変化すると考えるべきである。
 実例:清潔好きな日本人、ウォシュレットや電動歯ブラシが普及しているが、同じ先進技術レベルの韓国ではそれらは全く普及していない。
<方法の二つ目>
 ヨーロッパ生まれの科学技術を唯一のものさしとして発展の進度を図るべきではない。
 実例:中進国シンガポールでは日本よりも駅のホームや電車が進んでいる。
<反対意見への理解>
 たしかにヨーロッパの科学技術のものさしは文明の発達をはかる上で役に立つかもしれない。しかし大切なのは、科学技術が一元的でないということだ。
★科学技術は地域や民族の(感)
「エトス」とは、三省堂・大辞林によると
①〘哲〙 性格・習性など,個人の持続的な特質。
②社会集団・民族などを特徴づける気風・慣習。習俗。
③芸術作品に含まれる道徳的・理性的な特性。気品。
この長文では②でしょうね。
また、エポックとは「ある年代の起点となる年・事件のこと」です。(ウィキペディアによる)
Re: ●科学技術は地域や民族の(感)
外国の文化(生活様式)をそのまま取り入れてない実例として、住居ー住み方があります。入口がドアの家は多くなりましたが、日本の家ではたいてい玄関で履物を脱ぎ、スリッパに履き替えます。「外」と「内」をはっきり区別するのが、日本の生活様式ですね。

6.3週 
●要するに、一九八〇年代に(感)
 「産業革命以来の技術革新は、物財の量的増大を求めるもので数値化が可能なものであった。しかし、今進行している知価革命は、本質的に数値化が不可能なものである」というのが長文の主旨です。
 具体的な例を考えながら、知価社会に対応できない旧来の価値観を問題点としていくといいでしょう。
 例えば、絵画などの芸術作品は、使った絵の具の量や描くのにかかった時間で値段が決められるわけではありません。今日の社会では、多くの商品がこの芸術作品のような性質を持ちつつあります。
 モノそのものが不足していた時代には、おなか一杯食べられればなんでもいいとか、寒さをしのげればどんな服でもいいという考えが主でした。こういう考えが大量生産の基礎となった価値観です。
 しかし、今は、自分の気にいったものでなければ、タダでも要らないという考えの方が多くなっています。この「気に入る」ということは数値化できません。最近ヒットした商品などをもとに考えてみましょう。
●要するに、一九八〇年代に(感)
 第一段落(150〜200字)要約
 産業革命以来の技術革新は、主として物財供給量の増大と加工度の向上に役立った。今進行している技術革新は、主として多様化、情報化による「知価」部分の増大と省資源化による物財消費の削減を目指すものだ。しかし「知価」創造は、現実的にも理論的にも数値化不可能な性格のものである。「知価」の値打ちの形成原理は、工業社会的ではないし、そんな知価に対して欲求を募らせ、惜しみなく対価を支払う精神も、工業社会的合理精神とは異質のものである。産業革命以来二百年振りに人類が迎えた「新社会」を生み出す大変革、いわば「知価革命」なのである。
 続いて意見を挙げます。「私たちは新しい「知価」という価値観を受け入れるべきである。そのために考えられる方法は二つある」。 
 第二段落(150〜200字) 方法1
 「第一の方法としては、選ぶ自由を認めることである。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。規格大量生産の実現を目指した時代では、たとえば皆が同じように学校に行って、大きな企業に就職して、幸せをつかむ事が目標でした。終身雇用というものです。ところが、今では多様性が認められます。好みで選べる時代になったのです。たとえば、義務教育である小学校を学区制でなく選択できるシステムをとる地域が出てきました。職業も、ライフスタイルの変化で選ぶ時代。終身雇用から選職の時代になってきたのです。
 第三段落(150〜200字) 方法2
 「第二の方法としては、情報の普及浸透を図ることである。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)知価という知恵の値打ちを選んで生活する時代に生きるためには、選択肢をひろげることが望まれます。選ぶことが出来る条件下にいなければ、知価の時代の恩恵を受けることが出来ません。デジタルデバイドという言葉にあるように、情報化の進んだ社会では、情報化の進み具合で貧富の差や機会の不均等が起こります。皆が同じように生き方を選び取れる社会が理想ですね。 
 第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
 「確かに、高度成長の社会を創り上げてきた価値観も大切ではある。しかし、私たちは「知価」という新しい価値観への発想の転換を望まれている。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とはAではなくBである。」に当てはめてみましょう。
●要するに、一九八〇年代に(感)
<是非の主題>
 私たちは「知価」の時代に生きるため、自分自身を見つめるべきである。

<方法の一つ目>
 個人の価値観を尊重することが重要である。大量生産大量消費の時代では皆が同じものを消費していた。同時に価値観も画一的であった。「知価」社会経済の流れにのるためには個人の価値観を尊重することが必須である。全員の生徒に同じことを押し付ける教育も変わらなければならないだろう。

<方法の二つ目>
 個人個人の価値観を豊かにするためには、自分の頭で考え、自分の心で感じることが重要である。
 何かが流行すると右へならえで皆が真似をする。そうではなく、自分の好きな洋服や持ち物を探そう。

<反対意見の理解>
 確かに同じ価値観をもつことは人々に安心感を与える。しかし経済発展の過程で価値観は多様化しつつある。これからの時代を生きていくためには自分らしさが必要不可欠である。