解説集 ピラカンサ の池 (印刷版)
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7.1週
●得意分野と苦手分野、ウサギとカメ
●長文実例……長文集のほかのページから似た例を探して書く練習です。長文を何度もしっかり読んでいないとできません。データ実例、昔話実例などとセットになっていますから、どちらかができればいいです。例えば、「データ実例・長文実例」の場合は、データ実例が入っているか、長文実例が入っているかどちらかでいいです。どこの長文からの引用かわかるようにできるだけ「長文○○によると」のように書いておいてください。
得意分野を伸ばすか、苦手分野を直すかということを考えていきましょう。自分の勉強の例などをもとに考えていくと実感がわくでしょう。歴史上の人物の例を入れて話題を広げて考えると、新しい発見があるかもしれません。
●得意分野と苦手分野、ウサギとカメ
みなさんは目標にむかって頑張っていくとき、自分の出来ないところを見つけて集中的に練習するでしょうか。それとも、もっとも得意な部分をさらに強化しようとするでしょうか。おそらく、前者が多いのではないかと思います。そこで、あえて、得意分野を伸ばすべきだという意見を挙げてみましょう。
そのための方法の第一は、自分に出来ることをはっきり言える自信をもつことだ。
私たちのわるい慣習で、自分を謙遜して言うことは出来ますが、なかなか自分で自分をアピールすることが出来ません。自分の得意なことを他のために役立てるくらいの意識を持ちましょう。
方法の第二は、出来ないところを拾い出すような教育法から、良いところをさらに伸ばす方法に転換していくことだ。テストや偏差値でふるいわけをするやり方から、最近の新しい試みとして「推薦」「自己推薦」と言う方法があります。自分のやってきたことに自信を持っている場合はそれを評価し、さらなる発展のチャンスを与えるというものです。
確かに自分の弱い部分を強化することも大切だ。しかし、「(自作名言)」というように、自分の得意な分野をさらに発展させる方法で自分を成長させたい。
構成図の書き方
7.2週
●最近のいじめの例では(感)
いじめは昔からありました。しかし、昔のいじめは、年長者が年少者に手加減をする中でのいじめで、人間関係を学ぶための子供文化のひとつという面も持っていました。しかし、世代関係がなくなるにつれていじめは役割として固定化するようになりつつあるようです。また、競争や攻撃性をタテマエとして排除することが、かえっていじめをなくしにくくしているようです。
今の学校や社会は、競争や差別を無理に否定しようとしているところがあります。タテマエとしては競争を否定し、実際には受験競争という単純な競争が子供たちの生活を支配しています。勉強も含めていろいろな競争がもっとオープンに行われることが健全な社会の条件なのかもしれません。
●最近のいじめの例では(感)
第一段落(150〜200字)要約
最近のいじめの例では、先輩後輩関係の中ではいじめが発生していないという点が特徴的である。子どもの大半が「ひとりっこ」で、世代間関係の付き合いのしかたが子どもの文化のなかで育っていない。いじめに対する対策として、子どものなかに世代間関係を育てることは試みられてよいと思う。子どもに競争に勝つことによる優越感を経験させるほうがいじめ減らしになる。子どもは自分が勝てる種目を選んで自分の優越感を満たそうとする。これが個性の発揮である。 他者危害の原則は、「競争に勝ってよい」ということを含んでいる。自由競争の禁止ではなくて、自由競争の条件の公平を保証することが倫理的な条件である。
続いて意見を挙げます。「私たちは自由に競争することの意義をみとめるべきである。そのために考えられる方法は二つある」。
第二段落(150〜200字) 方法1
「第一の方法としては、平等主義ではなく、勝つことの喜びを味わうことだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。人間はほめられるといい気持ちがします。そして他者を認めてあげるゆとりも出てきます。ところが、最近の学校では、かけっこのとき手をつないでゴールするように指導しているところさえあるそうです。絶対評価で自分の位置が確認しづらく、がんばっても達成感が得にくいのです。勝って、負けて、涙する体験は貴重ですね。目標も決まるというものです。
第三段落(150〜200字) 方法2
「第二の方法としては、能力の多様性をみとめることで、個性や自分らしさを導くことだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)5.1週の長文にあるように、私たちに求められている能力はテストの良い得点ばかりではなく、適応力です。生きる力です。そういった意味で、多様な能力で評価を行っていけば、必ず認め合える個性や力が見えてきます。思う存分力を出すことが、他人への攻撃にはならなくなるのです。
第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
「確かに、平等に仲良くすることも大切だ。しかし、私たちは自由な競争のなかで、自分らしさを見出していくべきである。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とは・・・ではなく・・・である。」に当てはめてみましょう。
7.3週
●「フランダースの犬」は(感)
アンパンマンというのは、絵本ではいい話ですが、テレビアニメになると、ワンパターンの水戸黄門のようになってしまいます。毎週放映というノルマがあるので、制作する側もつい手を抜いてお決まりのパターンで作ってしまうのでしょう。アンパンマンを見て育った子供は、将来「悪いやつは倒さなければいけない」という偏狭な正義感を持つようになるかもしれません。
テレビゲームでも、悪役のセリフはだいたい決まっています。「ふははは。それでは最後に教えてやろう。」なんて大事なことをべらべらしゃべったあとに、正義の味方が急に登場して、「ぐっ、何、こんなばかな……」。ところが正義は最初は悪役に負けそうになります。もうだめかと思ったときに急に正義の頭にグッドアイデアがひらめいて大逆転。こういうゲームばかりやっていると、何でも自分の都合のいいように世の中が動いてくれると思ってしまう人が増えてしまいそうです。
長文実例は、7.2週のいじめの話などを取り上げてみるといいでしょう。
●「フランダースの犬」は(感)
第一段落(150〜200字)要約
テレビアニメ「それいけアンパンマン」は、まるで水戸黄門のようなワンパターンをくり返している。問題を根っこから解決しようとする場面が登場しない。ドラえもんも同じである。テレビアニメの短絡さが気になってしかたない。 人と人がじっくり向き合い、どうすれば問題が解決するのか、掘り下げて考える場面が出てこない。少なくなっていく子どもたちの体験の場をおぎなうのではなく、短絡的なワンパターンをくり返すことで、長寿番組になっている。
続いて意見を挙げます。「私たちは問題の複雑さをじっくり考える体験を持つべきである。そのために考えられる方法は二つある」。
第二段落(150〜200字) 方法1
「第一の方法としては、お手本どおりの考え方を改めることだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。同じようなトラブルでも、全くおんなじケースと言うのはありえません。少しずつ事情が違うのです。そのようなときに、解決法を教科書のようなものに求めてはいけませんよね。
第三段落(150〜200字) 方法2
「第二の方法としてはさまざまな世代が関わりあえるような環境を整え、その中で生き方の知恵を学ぶような場をつくることだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)7.2週のいじめの問題の原因に「年長者が、年少者を保護したり指導したりするというタイプの経験が、今の子どもにはなさすぎる。具体的な役割の決まった行動が不足しているので、子どもはいじめる人、いじめられる人という役割をつくり出してしまう。」といったものがありました。さまざまな人間関係を学んでいくことで、安直な「よい」「わるい」という分け方を見直していかなければなりません。
第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
「確かに、手本があれば大胆な解決は図れる。しかし、私たちはさまざまな問題の持つ複雑な側面をみつめて、自らじっくりと考えていく姿勢を持つべきである。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とは・・・ではなく・・・である。」に当てはめてみましょう。
●「フランダースの犬」は(感)
<長文読解のヒント>
〜当為の主題〜
テレビドラマと純文学のような小説や名作映画を比べると、人間の描き方に大きな違いがあることが分かります。
テレビドラマでの典型的な人間像は、悪か善か。白か黒かの二元論なのです。
けれども実際には違いますね。人間というものは、いろいろな面を持っている。悪の面も善の面も、そればかりでなく、悪とか善とかということでは表現できない面も。自分では自覚できない面もあります。
そしてそれぞれの面に、根っこがあり、歴史がある。
「人を裁かず、罪を裁く」というような言葉があるのは、まさにそこからきているのです。
だからこそ、人間関係の問題は複雑であり、どっちが悪いとか良いとかという問題ではなく、なぜその問題が起きたのか、問題の当事者やそれを取り巻く状況を深く考えなくてはならないのです。
そしてこのことが重要である理由の一つとして、国際関係問題があります。米ソ冷戦、そしてテロとの戦い、核問題など、現在の国際関係では「悪の枢軸」という言葉で示されるように、悪か善かの二元論になっています。
それでは問題解決になりません。実際、復讐合戦により、世界中のいたるところで憎悪が激しくなり拡大していくのみです。
〜複数の方法〜
なぜ問題が起きるのか? その根っこをいろいろな面から掘り出していくことが重要です。
そういう取り組み方、考え方は、子どものころから培われていくものなのでしょうね。水戸黄門が王座に居座っている日本では、そういうような考え方はまだまだ定着していないのではないでしょうか。
→一つの理由:現実の人間関係を重視する。子供向けのアニメはおそらく道徳を教えるのに単純なほうがいいという面で善悪をはっきりさせているのでしょう。けれども人間はテレビの中にいるわけではない。現実に、日常生活で体験する様々な人間関係、その問題を考えることを重視することが必要。
→二つ目の理由:ではその人間関係をどう学ぶか? 人間関係の問題を解決する方法の一つとして、他者の気持ちを想像するということが必須ですね。だから方法の二つ目は想像力を養うこと。けれども今は昔とちがって兄弟も少なく、核家族。いろんな人のいろんな事情や気持ちを知る機会が少ないですね。家庭や学校といった狭い共同体の中に閉じこもるのではなく、地域を通じた世代間交流などの幅広い人間関係を体験することが有効な手段になりますね。
→三つ目の理由:人間関係から視野を広げ社会の問題へ。社会問題や国際問題の歴史や背景を知ること。数式や歴史の年号の暗記ではなく、私たちにはもっと重要な教育があります。
8.1週
●バルカンの歴史は(感)
バルカン半島の民族紛争は当事者どうしも説明できないほど不可解なものです。これまで隣人として仲良く暮らしてきた者どうしが、突然血で血を洗うような抗争を始め、やがてだれにも止められなくなるほど泥沼化していきます。フロイトの呼んだ「微差のナルシズム」が異なる民族間の小さな差異を想像の上で必要以上に増幅させているのでしょうか。
いじめにも、似たような経緯があるようです。自分たちとまったく違うものは、かえっていじめの対象にはなりません。似ているのに少しだけ違うということがいじめを引き起こすきっかけになります。
高校1年生は、社会問題ではなく当為の主題で書く練習をしていますから、人間の生き方に関連させて考えてみるといいでしょう。名言集に「自国への賞賛が他国への軽蔑によって支えられているのであってはならない」という言葉がありますが、小さな差異を実際以上に強調し、相手を引き下げることによって、自己満足するという弱さがだれにもあるようです。
「まったく、うちの上司はわかってないよなあ」「あの先生は、だめだよなあ」「あいつは、ここがだめ」「こいつは、ここがだめ」という言い方は、だれでもついしてしまいますが、そういう、相手をけなすことによって自己満足するという人間の弱さを克服していくためにはどうしたらいいでしょうか。
長文実例は、7.3週のアンパンマンとバイキンマンの話も使えそうです。
●バルカンの歴史は(感)
第一段落(150〜200字)要約
続いて意見を挙げます。「私たちは、相手との比較によって自己確認をすべきではない。そのために考えられる方法は二つある」。
第二段落(150〜200字) 方法1
「第一の方法としては、自分に自信の持てることを見つけることだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)自分の中身には無頓着に、○○より自分の方がえらい、つよい、といったふうな安心の仕方をしていると、いじめっこになりかねません。いろんなことに挑戦して、その中で自分がプライドを持てるようなものを見つけると、相手を攻撃しなくても自分を確認できます。
第三段落(150〜200字) 方法2
「第二の方法としては、敵を想定しなくても済むように国の内側を安定させることだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)国でも組織でも、内側に問題や危険が山積みになってくると、外に仮想の敵をつくって結束力を高めようとします。「打倒○○」というスローガンには弱いんだね。思わず盲目的にその扇動にのってしまいます。そうではなく、内側の問題に取り組むことのほうが大切なのです。7.3週の長文に「アニメでは、若干の例外をのぞいてバイキンマンが必ず登場し、悪さのかぎりをつくし、説得もさとしも通じず、最後はアンパンマンが「もう許さないぞバイキンマン! アーンパンチ!」でやっつけるという、まるで水戸黄門のようなワンパターンをくり返している。」というのがあるように、悪い敵を倒せば大丈夫という短絡的な教育は考え直すべきでしょう。
第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
「確かに、相手との違いで自分を見つめることは大切だ。しかし、自分の問題を棚に挙げて、相手と比べて或いは相手を攻撃して自分を安心させるような自己確認の方法は不毛である。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とは・・・ではなく・・・である。」に当てはめてみましょう。
8.2週
●貧困な層の定義として(感)
世界銀行などの定義する貧困層は一日の生活費が1ドルという水準で、1990年の時点で約12億人が該当しています。しかし、この貧困層のカテゴリーに含まれている中国南部のある少数民族は、温暖な気候や自然の食物などに恵まれて百歳まで長生きする人もいます。これらの人々に1ドル以上の所得をもたらすために行われる開発政策は、たとえ善意からのものであっても、彼らの現在の幸福を奪う可能性があります。
お金に換算した豊かさが必ずしも豊かさの実感と結びつくものではないという例を見つけてみましょう。江戸時代などはGNPなどから見れば現代よりもはるかに貧しいはずなのに、それにもかかわらず豊かな文化が花開いたところを見ると、今流のお金に換算できない部分で豊かな社会というものが存在していたのでしょう。
意見は、お金では買えない心や自然の豊かさということでしぼっていくと書きやすいと思います。
長文実例は、7.1週のいじめの例などが使えそうです。現代は、ひとりっこが多く子供ひとりにかけるお金は多くなっていますが、昔の貧しかった時代のたくさんの兄弟や子供どうしの付き合いの中で育つ人間関係が逆に希薄になっているという例です。
●貧困な層の定義として(感)
第一段落(150〜200字)要約
続いて意見を挙げます。「私たちは、豊かさの意味を考え直すべきだ。そのために考えられる方法は二つある」。
第二段落(150〜200字) 方法1
「第一の方法としては、個人の価値観に違いがあることを認めることだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。自分にとって最高の環境であっても、友人に理解してもらえないようなことってありますよね。仲のいい友達なのに、同じように楽しめないこともあります。どんなこともいっしょに、と思っていると失敗してしっぺがえしがきますね。
第三段落(150〜200字) 方法2
「第二の方法としては、大量消費を推し進める先進国の方法を押し付けず、多様な開発援助をしていくことだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)。そのあとその裏づけとなる実例。経済を豊かにすれば、それがそのまま幸福をふやす結果にはなりません。現に日本でも急激な経済発展の裏側には、核家族化の問題や独居老人の問題、ストレスが引き起こすさまざまな疾病や事件の問題が起こっています。給与が上がり電化製品に囲まれた生活をしながらも、古きよき昔のくらしを懐かしんでいるのはなぜでしょうか。
第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
「確かに、生活の向上を願うことは大切である。しかし、貨幣に置き換えることの出来ない自分にとっての本当の豊かさを常に問い直していくべきである。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とは・・・ではなく・・・である。」に当てはめてみましょう。
Re: ●貧困な層の定義として(感)
社会実例(データ実例)のヒント
経済的な数値だけが豊かさの指標ではない、ということを表すものとして、日本の各県ごとにいろいろな「豊かさ」のランキングが雑誌に載っていました。(小学館、BE-PAL2004年8月号、本誌には詳しい数値とベスト、ワースト5が載っていますが)
・森が多い県 1位高知県(ワースト1位は大阪府)
・自然公園が多い県 1位滋賀県(ワースト1位は京都府)
・持ち家率が高い県 1位富山県(ワースト1位は東京都)
・犯罪が少ない県 1位長崎県(ワースト1位は大阪府)
・公害が少ない県 1位富山県(ワースト1位は愛知県)
・物価が安い県 1位福岡県(ワースト1位は山形県)
・貯蓄が多い県 1位岐阜県(ワースト1位は沖縄県)
・遠距離通勤率が低い県 1位島根県(ワースト1位は埼玉県)
・趣味・娯楽の時間が長い県 1位愛媛県(ワースト1位は沖縄県)
なんとなくうなずけるものも、また意外なものもありますが、皆さんの住んでいる地方はどうでしょうか?
8.3週
●もう一つの体験は(感)
法的な平等という建前にもかかわらず、飢餓や紛争や貧困や経済格差は、異なる集団の間の差異として社会的・文化的に現れる、という話です。ドイツに出稼ぎに出たあるトルコ人がカフェに入り、ようやく覚えた言い方で「コーヒーをください」と言ったところ、コーヒーは出てこないで「おまえの来るところではない」という視線を向けられただけだった、という話が引用されています。権利や法律に関しては平等であっても、目に見えにくいところで社会的なハンディキャップが作られているということです。
男女の平等でも、法的な建前よりも文化的なもので差異が生まれるところがあります。現代の日本社会の問題に結びつけて考えていきましょう。
●もう一つの体験は(感)
第一段落(150〜200字)要約
続いて意見を挙げます。「私たちは、本当の意味での平等を実現していくべきである。そのために考えられる方法は二つある」。
第二段落(150〜200字) 方法1
「第一の方法としては、慣習や思い込みを考え直していくことだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。男女平等といわれるようになって久しいですが、女性の権利を回復するためのさまざまな試みは歴史で学んだでしょう。それでもなお、根強く残る男女の不平等のために未だに議論が絶えません。看護婦さんが看護士になって、保母さんが保育士になって。男性も育児休暇がとれるようになって。それでも、やはり家でご飯を作ったりお茶を入れるのはお母さん。本当に平等にやっていたら、かえって特別視されそうな風土があります。
第三段落(150〜200字) 方法2
「第二の方法としては、国際理解をすすめる為に情報の普及をはかることだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)7.3週に「日本では、もめごとを「相手よりも強い力」や「他人の力」で、解決してすますアニメが多い。人と人がじっくり向き合い、どうすれば問題が解決するのか、掘り下げて考える場面が出てこない。」といったものがありました。安易に「よいもの」と「わるいもの」の構図で解決しようとすると、日本と相反するものを「わるい」と解釈しかねません。問題の本質がどこにあるのかを真に考えるような情報の開示が必要ですね。
第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
「確かに、法的な平等を確保していくことも大切だ。しかし、私たちは文化的なものから来る無意識の差異をのりこえて、真に平等な世界をつくっていくべきだ。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とは・・・ではなく・・・である。」に当てはめてみましょう。
9.1週
●およそ隣人間でもめごとの(感)
内容:隣人間でもめごとがあった場合、日本では裁判に持ち込むようなケースは少ない。これは隣人間の問題が話し合いで解決するのが難しいということと、弁護士の存在が市民から遠いことによる。しかし、地域のコミュニティが崩れ、共通の社会ルールも少なくなり、調整のメカニズムも働きにくくなった現代社会では、裁判などの公的な解決の場を利用するのもやむをえなくなりつつある。
解説:米国は、契約と訴訟の社会だと言われています。日本の社会も、世界の基準に合わせて次第に契約や訴訟などを取り入れるようになりました。しかし、ドライな割り切り方は、ウェットな人間関係を重視する日本人にはやはり苦手なようです。「どうすべきか」というかたちの意見にして、そのための方法を考えていきましょう。
第一段落は、実例と意見。「地域のコミュニティが崩壊しつつある中で、隣人間のもめごとが起こった場合、日本では裁判でドライに決着をつけるという習慣がない。今後、外国人の移民が増え、異なる文化を持つ隣人が増えれば、もめごとは更に多くなると考えられる。このような状況で、私たちはどのようにしていくべきか」など。
第二段落は、方法1。「そのために大事なことは第一に、もめごとを恐れないということだ。利害の対立はどの社会でもある。それが異なる価値観に基づく対立であれが解決が困難であることは当然だ。しかし、これから地球は、好むと好まざるにかかわらす一つの家族のように運営していかなければならなくなる。隣人間のもめごとのこの大きい文脈の中で考える必要がある。その点で、裁判のような解決法はひとつの参考になる。例えば……」など。
第三段落は、方法2。「第二の方法は、もめごとを恐れないと同時に、それを避ける工夫を社会の仕組みとして作っていくことだ。日本の社会は、相互の思いやりの中で運営されている面が強い。自己主張をぶつけあい論争で利害の対立を克服するという文化とは程遠い文化を持つ。そのような日本の社会に、大量の外国人が移民として入ってくれば摩擦は大きくなる。その摩擦を緩和するのは、個人の力ではなく政治の力によるものだ。だから……」など。
第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、人間の社会は対立を通して進歩してきた面がある。互いによりよい生活を目指していれば、その中で利害の対立が生まれることはやむを得ない。しかし、その対立をできるだけ少なくするのが人間の知恵である。私たちは……」など。
●およそ隣人間でもめごとの(感)
第一段落(150〜200字)要約
続いて意見を挙げます。「私たちは、近隣同士、共同体内で相互の理解を深め問題解決をしていくべきだ。そのために考えられる方法は二つある」。
第二段落(150〜200字) 方法1
「第一の方法としては、普段からコミュニケーションを深めて話し合える環境をつくることだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。話せばわかる関係があるのがいちばんです。平行線をたどって、当人同士で決められない場合も、第三者として近くの人に立ってもらえるのがベストですね。そのためには普段からの意思疎通が必要です。
第三段落(150〜200字) 方法2
「第二の方法としては、法では解決できないような社会的な「差異」をなくす努力をすることだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)。そのあとその裏づけとなる実例。8.3週の長文に「ハンディキャップが「社会的に」つくられていくということ、「被害を受けやすい人々」の選り分けは「社会的」なものであって「個人の資質」とは関わりがない」とあるように、社会がつくってしまう「選り分け」があることに注目しなければなりません。そういった理由の無い差別が隣人間のいさかいにならないようにすべきですね。
第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
「確かに、法に頼って白黒つけることは簡単だ。しかし、私たちは、人間関係のもめごとについてはお互いの理解を深め共同体のルールをつくっていくような方向で、話し合いで解決する努力をすべきだ。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とは・・・ではなく・・・である。」に当てはめてみましょう。
★およそ隣人間でもめごとの(感)
これから、閉ざされた世界ではなく、開かれた広い世界で活躍していかなければならない私たちにとって、様々な文化を持つ人たちと渡り合うためには、もっとドライで割り切った問題の解決方法をとるべきだ、という主題でも書ける課題ですね。
そのためには、まず「ある程度のルールを定め、そのルールから逸脱しないよう厳正に対処していくことだ」ということが挙げられるでしょう。何でも杓子定規に判断するのはよくないですが、異なった文化・異なった考えの人たちと関わっていく中では、最低限守らなければならないルールを定めていくことが大事ですね。
もう一つは「裁判や訴訟を身近にしていく環境作りをしていくこと」が大事ですね。日本でも裁判員制度がとられて、民間にも開かれた裁判を目指すようになってきていますが、まだまだ裁判も弁護士も日本では「他人事」。裁判に至るまでの制度をもっと簡略化したり、万人にわかりやすい法律を作ることを目指していくということも大事なことでしょう。
9.2週
●知識の生産過程が(感)
情報と知識の違いがテーマ。この長文では、「知識」という言葉が、普通に使われているような意味ではなく、どちらかと言えば「思想」に近い意味で使われています。知識は蓄積され体系化され文化の共有の基盤となりますが、情報はただ雑多なデータの集まりでしかありません。パソコンやインターネットを使うのならだれでもできますが、問題はそれを利用して何をするかということです。たくさんの情報が手に入るということと、そこから自分なりの知識を創造することとは別のことだというのが著者の意見です。
コンピュータには強いが本を読まない、情報にはくわしいがものを考えないという人間が増えつつあるようです。
どうしたら情報を増やすだけでなく知識を育てる勉強ができるかというところで考えていきましょう。
手に入れられる情報が多いと、つい情報を集めることだけに関心が向きがちです。情報が少なければ、その少ない分を自分の考えで補う必要が出てきますが、情報が多いと、足りない部分は別の情報で補おうという気持ちになるのでしょう。
●知識の生産過程が(感)
第一段落(150〜200字)要約
続いて意見を挙げます。「私たちは、本当の知識をつくりだす方法を身につけるべきだ。そのために考えられる方法は二つある」。
第二段落(150〜200字) 方法1
「第一の方法としては、情報を過信せず、自分で考える習慣をつけることだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。私達は勉強や読書からさまざまな情報を得ています。たくさん知ってる人が偉いといった考え方もします。しかし、ほんとうにわかっているのか。実際に自分でやってみたら、考えていたのと違った、あるいはやっと実感できたといったことはたくさんあります。使い方のわからないものは、覚えても仕方ありません。また、丸暗記の公式は忘れても自分で導き出した問題の解法は決して忘れません。
第三段落(150〜200字) 方法2
「第二の方法としては、情報化社会の利点をうまく使いこなせるような人材をつくっていくことだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)。そのあとその裏づけとなる実例。情報化は確実に進んでいます。そんな中、学校が単に方法や情報を伝達するだけの機能しか持たず、創造性の育成ができないという警告がされています。5,1週の長文にあったように「場への適応力が、人間の有能さの本質でしょう。学校は、人の有能さを育てるところですから、子どもの頭の中に「いつでも分数の掛け算を絶対間違えずに速くできる」プログラムを作りたいのではなくて、その場に与えられた状況を最大限に利用するにはどうしたらいいかが苦労せずに分かる適応力を目指したいはずだと思います。」とあるように 、経験から答えを導き出すような方法を教える場にしていくべきでしょう。
第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ
「確かに、情報化社会に対応し、格差を生まないように情報を得ることも大切だ。しかし、私たちは、やはり単に受け渡しされる情報に左右されるのではなく、知識を持って情報を使う立場に立っていかなければならない。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とは・・・ではなく・・・である。」に当てはめてみましょう。
9.3週
●高齢化社会には(感)
内容:高齢化現象というのは日本社会が成し遂げた成果だ。高齢化に伴う問題は、これまでの高齢者の比率が少ない時代に合理的だった仕組みを、高齢者の比率の多くなる時代に合わせて変えていく際の調整問題だ。高齢者の福祉を若い人が負担するという問題もあるが、人口構造が安定すれば、その負担の引き継ぎが世代間のルールになる。
解説:高齢化と少子化は、これからの日本が確実に直面していく問題です。著者は、これを調整問題と位置づけています。
予想される問題の現象面だけをとらえれば、労働人口が減るとか、若者の負担が増えるとかいった面ばかりが目につきますが、実際には、江戸時代の長期間安定した社会でも同じような人口の相対的な高齢化があったはずです。しかし、その中で文化が成熟し芸術が花開き生活が豊かになるという前向きの面も生まれました。
高齢化という避けられない減少を、いかに社会の発展に結びつけていくかという知恵が必要とされているようです。
第一段落は、状況実例と意見。「高齢化社会は、今後の日本をはじめどの国でも避けることのできない問題だ。だから、それを否定的な問題と考えるのではなく、その高齢化を生かしてどのようにしてよい社会を作っていくかという発想をすることが大切だ」など。
第二段落は、方法1。「第一は、高齢者を弱者や保護されるべき対象と考えるのではなく、年齢から来る経験を生かして社会に貢献する主体だと考えることが必要だ。例えば、私の祖父は……」など。
第三段落は、方法2。「第二には、高齢者が活躍しやすい社会の仕組みを作ることだ。例えば、昔は米俵は1俵が60キログラムだった。しかし、それではかつぐ人が屈強な男子に限られてしまうので、今は1俵が30キログラムになっている。高齢者が米俵をかつぐとすれば(ってそんなことさせるなよと言われそうだが(笑))、更に軽い米俵を作るか、力を必要とする作業は機械化するなどの工夫が必要になる。また、……」など。
第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、社会の高齢化を緩和することも大切だ。問題が高齢者の相対的増加にある以上、高齢化の問題を緩和するためには少子化の問題にも取り組む必要がある。しかし、高齢化社会のマイナス面を見るのではなく……」など。
●高齢化社会には(感)
第一段落(150〜200字)要約
続いて意見を挙げます。「私たちは、高齢化社会を前向きにとらえ、プラス面を生かしていくべきだ。」 第二段落(150〜200字) 方法1。「第一の方法としては、高齢者の知恵から多くを学ぼうとすることだ。」(第一の方法は個人の側からの心構えのようなかたちが書きやすい)。その裏づけとなる実例。身近な例で、高齢者を学校に招いて昔の体験、戦争の体験を語ってもらったといったようなこと。昔話実例で「姥捨て山」。第三段落(150〜200字) 方法2。「第二の方法としては、高齢者が活躍できる場、世代間の交流が図れる様な施設整備をすすめていくことだ。」(第二の方法が視野を広げてできるだけ社会的に)。そのあとその裏づけとなる実例。7.2週の長文にあったように最近のいじめの問題は「世代間関係の付き合いのしかたが子どもの文化のなかで育っていないように見える。」ことも原因といわれています。社会全体で子どもを育てようという動きがあります。だからこそ地方自治体などが中心となって、高齢者の知恵や力を借りられるような場を作っていくことが大切です。
第四段落(150〜200字) 反対意見への理解を入れながらまとめ。「確かに、高齢化社会は、それを支える若い世代の経済的な負担を増加させるといったマイナス面はある。しかし、私たちは、その現象を受け止めプラス面を掘り起こしていくような明るさをもつべきだろう。」名言も考えてみましょう。名言集を参考に。キーワードを主語にして「○○とは・・・ではなく・・・である。」に当てはめてみましょう。
★高齢化社会には(感)
伊能忠敬という人がいます。江戸時代後期に日本全国を測量し、日本地図を作製したことで有名ですが、実は、本業は酒造り。日本地図を作ったのは、家業を引退してからのことだそうです。「人生50年」と言われた江戸時代で、50歳から天文学や測量学を学び、果ては日本全国を網羅する地図を作ったというのですから、そのバイタリティには頭が下がります。本人の気力と周囲の環境が許せば、高齢者でも活躍できるといういい例ですね。