解説集 黄イバラ の池 (最新版)
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7.2週
●丸山真男東大名誉教授が(感)
この課題文は筆者が丸山氏との思い出を書いた随筆であるので、大きな問題意識が提示されているわけではない。この文から感じ取るテーマは人それぞれでもあるだろう。主に考えられる一つは人間関係について。そのほかに「もっと古典と歴史を」という丸山氏の考えを感想文の主題にもってくることもできる。ここではより一般的な主題になりうる、筆者が丸山氏から受けた影響を材料に、人間形成における他者の存在の意味を考えてみよう。
第一段落
要約は感想文の主題にすることを中心にまとめる。学生時代に丸山氏と夢見た談義、戦時中に丸山氏からもらった励ましの言葉で心が救われたこと、戦後の経営学をめぐる丸山氏の言葉とそれについての筆者の考え。だいたいこの三点が柱になるだろう。
ここから読み取れることはなにか。筆者の生が丸山氏の言葉に大きな影響を受けていることである。人間形成というものは自分一人で成し遂げるものではない。自己アイデンティティは他者との関係の中でしか形成されない。人間は生まれ育って、幼少期は養育者(両親)の価値観で世界を見るものである。お父さんお母さんの言うことこそが絶対的に正しいのである。それがそうではない、他の世界や価値観もあるのだと学び、悩み、葛藤しながら、成長していく。その過程で大きな役割を担うものの一つに友人がある。
第二段落
第一段落で見つけた問題意識を自分自身にひきつけて具体的に考えてみよう。例えば困難にぶつかった時、あるいは少し落ち込んでいる時、友人の言葉が解決の糸口になったり、心の支えになったりすることがある。日常のふとした友人の言葉が自分にとってはカルチャーショックだったりすることもある。友人に影響されて自分も友人と同じ趣味にはまってしまったりする。そういう体験は見つけやすいかもしれない。
友人が亡くなった経験はそう多くあるものではないから、転校などで別れた友人との交流が自分に大きな影響を与えた経験などでもいいだろう。
第三段落
この主題についての聞いたこと、調べたこと、本などで読んだことを書いてみよう。
例えば私たちは友人という他者を通じて自分の世界や価値観を軌道修正し、社会的にバランスをとっていると言えるが、「現代社会における人間関係の希薄化が奇妙で理解しがたい事件をひきおこしている」という分析などを書いて、問題を個から社会へと展開してみるのも良い。あるいは第一段落の後半部分をここで書いてもよい。
第四段落
上のように考えてくると、自分は自分一人で勝手に変化していくわけではなく、他者の存在を通して無数の世界とつながり、その影響を受けて自分が変容していくことが分かる。(書き出しの結び)
7.3週
●孟子は、孔子より遅れて(感)
「恒産なければ恒心なし」をテーマにして考えてみよう。
第一段落は、状況実例。「現在の日本で、経済条件の悪化のために……」など。
第二段落は、体験実例。「お小遣いが残り少なくなると元気がなくなる」など(笑)。
第三段落は、社会実例。「戦国時代でも、経済運営がうまくいった藩は人心も安定した」など。
第四段落は、まとめ。「人間にとって、まず経済的な基盤が大切である」。
8.1週
●私が森信三先生を知ったのは(感)
何を主題にして、どこで似た話を書くかは人によって異なります。自分なりに感じたことを主題にしていきましょう。
石を投げてきた子供たちのことから考えを発展させて、何かトラブルがあったときに、それを避けるべき問題と考えるのではなく、解決すべき問題と考えることが大切だ、などと考えていくこともできるでしょう。
第一段落は、状況実例。「現代の社会では、人間関係のトラブルにまつわる問題が多い」など。「問題にフタをするのではなく、小さな問題から解決すべき課題を見つけていくことが大切だ」などと意見を書いてもよい。
第二段落は、似た例1。「インターネットのサイトで友達の悪口を書くなどということが問題となっている。しかし、インターネットの接続を禁止するような発想ではなく、その問題をどう解決に結びつけるかが大事だ」など。
第三段落は、似た例2。「日本では、不正や汚職などの犯罪がよく記事になる。しかし、独裁国家ではそういう犯罪が記事になることはなく、表に出てくるのは国民の笑顔だけだ。しかし、犯罪が話題になる日本の社会は、世界で最も平和で民主主義の実現されている国の一つだ。犯罪があるかないかという問題ではなく、その犯罪が見える社会であるかどうかが問題だ」など。
第四段落は、まとめ。「世界にはさまざまな問題がある。責任ある立場の人が、それを自分たちの解決すべき問題であると考えるかどうかが……」など。
8.3週
●よく、教え方がよければ(感)
教育に関しては、次のように言えると思います。
1、素質はある
2、しかし、努力によって伸びる面もある
3、また、技術によって飛躍的に伸びる面もある
4、ただし、数年で大きく変わることはない
5、教育の目的は、個人の能力伸長よりも、社会全体のレベル向上
現代の教育の問題は、努力によって伸びる面があることが過度に強調されて、それ以外のものを見えにくくしている点です。
長文の主旨に合わせて書くと、このような感じに。
第一段落は、教育の現状。特に、低学年からの受験体制が子供に無理な生活を強いている現状など。
第二段落は、人間にはもって生まれた素質や天分のようなものがあり、それを生かすことが大事だという例を、自分の体験などを入れて。例えば、絵を描くことが好きな子には、絵を描く時間を確保してあげることが大事。
第三段落は、同じく社会的な実例。例えば、「宝福寺に入った幼い日の雪舟が、絵ばかり好んで経を読もうとしないので、寺の僧は雪舟 を仏堂の柱にしばりつけてしまいました。しかし床に落ちた涙を足の親指につけ、床にねずみを描いたところ、僧はその見事さに感心し、雪舟が絵を描くことを許しました。Wikipediaより」など。
第四段落は、反対理解とまとめ。「確かに、すべての子供に学力をつけるというのは、教育の前提だ。個性を生かす教育が、学力をつけなくていい教育になってはならない。しかし、人間には素質がある。それを……」など。
9.1週
●二十年ぐらい前から(感)
二つの主題が考えられます。
一つは、読書による感銘で、自分が本を読むことによって目を開かされた話を書いていきます。
もう一つは、「沈黙」の主題に合わせた話で、「大事なのは解決策ではなく問題の共有だ」とまとめていきます。
最初の形で書くと、第一段落は、説明。「これまで読んだ本で、印象に残っているものがいくつかある。それは……」など。
第二段落は、「一つは『○○』で、この本の中から、私は……を学んだ。それは……」など。
第三段落は、「もう一つは『□□』で、この本から……」又は、「『○○』の本から学んだもう一つのことは……」など。
第四段落は、「読書は(人間にとって)、自分の視野を広げてくれるものである。私はこれから……」。
「沈黙」の主題に合わせた話は、宗教、教育、医療などの分野で考えられそうです。
悩んでいる人にとって必要なのは、形だけの解決策ではなく、その悩みを共有してくれる人が身近にいることです。
9.2週
●たとえば、歴史は(感)
第一段落
要約 「洋の東西を問わず歴史を見れば、命より価値のあるものがあるというのは普遍的な原理であり、人間はこの原理をテコにして生き、歴史を回転させてきたことがわかる」と言う内容を中心にまとめる。だが現在の私たち日本人には「命より価値あるものがある」ということに実感を抱けないだろう。素朴な疑問から問題を掘り下げていこう。
第二段落
今この瞬間にも国や信条のために自らの命を捧げる人がいる。アジアアフリカ諸国での宗教及び民族紛争は連日テレビや新聞をにぎわせている。日本も例外ではない。新興宗教を信奉している人々が起こす問題は深刻である。なぜ彼らは「殉死」するのか?
彼らが命を捧げるそれは彼らにとって一体何なのか? 国、民族、信条、信仰、思想‥‥それらは自らの存在基盤ではなかろうか。アイデンティティを形成する大きな要因ではなかろうか。では私たちの存在基盤とは何か、自分のことを具体的に考えてみよう。例えば家族、社会、経済。自分の大切な家族が殺されたら、自分の命をかけてまで復讐したいという怒りを抑えがたく感じるのは私だけではないだろう。(体験)
第三段落
歴史をひもといて、あるいは現代社会を見まわして、「殉死」がいつどのような状況下でおきているのか調べてみよう。それは大抵、自らの存在基盤が脅かされつつある時、または奪われてしまった時であろう。冷戦の終焉により多くの人々の存在基盤であった秩序や思想が崩れた。人々は路頭に迷い、あるものは新興宗教に、あるものは神秘的なものに、あるものは新しい国や民族に命を捧げたのだ。(聞いたこと、調べたこと)
第四段落
人がどんどん殺されていく戦争も私たち日本人にはテレビの中の仮想世界のように現実味に乏しく、「豊かで平和な」毎日を生きる私たちには、理解できないどころかバカバカしいと思うだろう。けれども人間はだれしも自己アイデンティティ、存在基盤がないと生きていけない。そう考えれば、「殉死」は生きるために死ぬことであり、常に私たちの生と共にあるのかもしれない。(一般化の主題)。そうして生き続ける私たちこそが歴史を動かしているのである(書き出しの結び)。
9.3週
●知り合いの内科の医者が(感)
いろいろな主題が考えられますが、「正しさにこだわらないこと」で考えるといいでしょう。
第一段落は、要約又は、状況実例。日本の社会は、正しいルールにこだわり、それがかえってお互いに生きにくくしている面があるようです。例えば、世界で最も自殺率が低い国の一つメキシコでは、時間を守ることにこだわらない人が多いようです。教育や福祉など人間に関わる分野では特にそういうことが言えるのかもしれません。現代の社会の問題として考えることが主題をはっきりさせるコツです。
第二段落は、実例1。自分の体験などを思い出して、「ルールに縛られる必要はない」と思ったら気が楽になったという実例などを考えてみましょう。
第三段落は、実例2。社会的な例を考えてみましょう。「水清ければ魚すまず」という例がありそうです。
第四段落は、反対理解とまとめ。この長文を参考にしながら、「確かに若いときのこだわりは必要だが、それは他人に迷惑をかけない範囲にとどめることが必要だ。そして、正しいことよりももっと大きな見方をあることを……」など。