解説集 ザクロ2 の池 (最新版)
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印刷版は印刷物として生徒に配布されているものと同じです。
ウェブ版は書き込み用です。
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2024-09-14 00:00:00)以降に
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4.1週
●触れ合い、心
書き方の流れ
第一段落(150〜200字)
状況実例と予測される将来の問題を提起する。「今日の社会は人と人との触れ合いがなくなっていると言われる。しかし、駅の自動改札を昔の手作業に戻そうと言う人はいまい。触れ合いの大切さを強調することによって、ものごとの合理的な運営を軽視するような風潮が生まれるとしたら問題だ」。
第二段落(150〜200字)
原因。「このような問題が生まれる原因としては、機械化があまりに急速に進んだということが挙げられる。例えば……」。
第三段落(150〜200字)
対策。「今後の対策としては、機械化や合理化によって落ちこぼれる人を救済するような政策、いわゆるデジタルデバイドを埋めるような政策が必要だ。例えば……」。
第四段落(150〜200字)
反対理解とまとめ。「確かに、人間どうしの触れ合いが少なくなり、それが社会にさまざまなひずみを引き起こしていることも否定できない。しかし、将来の問題となるものは、むしろ……」。
小論文の課題は、自分の問題であるとともに日本の社会の問題としても考えていきましょう。
名言集に載っている名言は全部覚えておきましょう。また、本を読んでいい表現を見つけたら、自分でこの名言集に書き加えておいてください。
●「予測問題の主題」は、「将来……が問題になると予想される」という書き方です。
●触れ合い、心
4.2週
●教養の危機を語るにつけて(感)
第一段落は、要約と意見(予測問題の主題)。
「内側にも外側にも複雑な脈絡を持つ知識は、情報よりも知恵よりもそれを理解するのに努力を必要とする。知識の構築にのみ力が注がれる傾向が続くために、情報や知恵の統合ができなくなってしまうのは問題である。(予測問題)。」
第二段落は、対策1と体験実例。
「第一は、情報との向き合い方を学ぶことだ。私も、震災後の危機感をあおる報道に驚いて二か月分のカップ麺を買い込んでしまった。(体験)」
第三段落は、対策2とユーモア表現。
「第二は、社会で知恵を尊ぶようにすることである。インターネットで何でも検索できる時代であるが、適応力のある知恵はそれを生きた人から学ぶのが一番である。」
第四段落は、自作名言と意見(予測問題)。
「たしかに知識をつけることは、さらなる発展のために必要なことではある。しかし、人間の知とは、体系的に受け継ぐものではなく、新しく創りだしていくことでもある。情報も知恵も統合された本当の知識であるべきだ。」
4.3週
●ある特定の動物に(感)
第一段落は、要約と意見(予測問題の主題)。
「人間がコウモリの立場になりきったとき、その人間はコウモリでしかない。今の世界平和を論じる声の中には、相違を認め合うのではなく、相違を否定して強引に統一的な平和を築こうとする志向もあるのではないか(予測問題)。」
第二段落は、対策1と体験実例。
「第一は、違いがあることを前提にすることだ。私も子供のころ、弟とよくチャンネル争いをしたが、そのときは弟に、ドラえもんよりもサザエさんの方が面白いということを一生懸命説得しようとしていた。しかし、今になってみると、好みは説得されても変わらないのだということがわかる。(体験)」
第三段落は、対策2とユーモア表現。
「第二は、その違いを法律や政治の力で保証することだ。例えば、国境を尊重する、他国の内政に干渉しないなどは、その一例だ。犬と猫と小鳥を一緒の小屋に入れて飼う人はいない。うちは飼っているけど(笑)。」
第四段落は、自作名言と意見(予測問題)。
「人間がコウモリになるのではなく、またコウモリを人間にするのでもなく、コウモリと人間が互いに違いを認め合う社会を作ることが今求められている。」
5.1週
●カーニヴァルの期間中(感)
お祭りが本当の人生で、普段の仕事や勉強は、そのお祭りが来るまでの仮の時間という考え方です。みなさんも、遠足や修学旅行や文化祭が本当の高校生活で、普段の勉強はその間を埋める義理の時間だと思っているでしょう。
第一段落は要約と予測問題の主題。「祝祭の時間がないがしろにされ、ますます能率化を深める管理社会の行く末に問題がある(1)。又は、祝祭の意義を過大評価することによって、地道で単調な仕事が社会を支えていることを忘れがちなところに問題がある(2)。」
第二段落は対策と体験実例。「(1)の場合。まず第一に、社会の主人公は、企業や役所などの社会そのものではなく、その中で生きる人間たちなのだということを確認する必要がある(対策)。小学校時代の先生は、脱線するのが好きで、少しでも雪が降ろうものなら即座に授業を中止して雪合戦をした。カリキュラムどおりに進めることよりも、人間らしく生きることを優先したのだろう(ややオーバー)。」
第三段落は、対策2とユーモア表現。「次に大事なことは、スムーズな社会生活を営むことよりも、お祭りを優先する文化を育てることである。昔は、お正月にはどの店も休んでいたものだが、今は正月から営業している店も多い。こういうことが、正月のお祭り性を損なっているのである。欧米では日曜営業を法律で禁止している国があるが、お祭り優先の法律を整備することも考えてよいだろう。」
第四段落は、自作名言と結び。「社会の中にお祭りがあるのではなく、お祭りの中に社会がある。わっしょい、わっしょい。(笑)」
5.2週
●過去のわが国の外国語教育は(感)
第一段落は要約と予測問題。「英語教育の見直しが行われるのはよいが、それが行き過ぎて、日本人の工業製品を作り出す力などが軽視されるようになってはならない(予測問題)。」
第二段落は、その対策と体験実例。「対策は第一に、現場で活躍している人を生かすことである。英語教育の方向を英語の先生や文部科学省の役人が決めるのではなく、実際に英語を使って活躍している人の意見を取り入れて決めていくことである。私も中学生時代はなぜ英語を勉強するかという意味がよくわからなかったが、ある日道で外国の人に話しかけられてから、英語の必要性を実感するようになった。英語を生かすという観点で教育を行っていく必要がある。」
第三段落は、対策2とユーモア表現。「第二の対策は、もっと大胆な国際交流を行うことである。日本人が外国に行くというよりも、アジアやアフリカの学生を日本に大量に留学させるというのも一つのアイデアである。日本人が、日本人以外の人と交流する場が広がれば、それにつれて英語学習も地に足のついたものになる。外国の異性を好きになったときに、言葉が通じないから身振り手振りでやっていけばいいと思う人はいないだろう。(笑)」
第四段落は、自作名言。「英語の批評ができるのは、英語教師ではなく、その英語を使う人である。(……どこかで聞いたような)」
5.3週
●なぜ人を殺してはいけないのか(感)
この長文のテーマ、「なぜ人を殺してはいけないのか」についてストレートに書こうとすると、かなり限定的になりますし、作文としては内容的に暗く、否定的になりがちなので書きづらいと思います。ですから、著者がその理由として挙げている、「アイデンティティの確立」について書いた方が書きやすいでしょう。
ちなみに、アイデンティティとは、「私は人間である、私は日本人である、私は男である、私はこういう性格である、私はこういうことが好き、私はこういうことは嫌いである、……etc」という自己認識のことです。これをしっかりと確立しないと、「何がしたいのかわからない、自分はどういう人間なのかわからない、こういう場面ではどうしていいのかわからない。」などと人生に迷うことになります。普通、思春期から成人するまでの間は、この「自分探し」の時期であるといわれています。ですが、現代ではそのあたりが曖昧になっていて、アイデンティティを確立しないまま大人になって、なんとなく周りに流されて生きている人が増えているようです。
まず、要約をします。文末(敬体を常体に直す)に注意。それから、予測問題の主題は、「社会が「人間はこうあるべき」、という規範を押しつけなくなったのはよいが、そのためにアイデンティティの確立まであやふやになっていることは問題である。」など。
戦時中なら、男の子はみんな軍人さんになって、日本国のために、命を投げ出して戦うことが奨励されていました。その後も、立派な社会人となり、家庭の大黒柱となって家族のために働くことが求められてきました。女性なら、家庭に入り、主婦として家族のために尽くすこと。……しかし、時代は変わり、今ではフリーターの若者も、「負け犬」と言われつつも独身で仕事に生きる女性も、それなりに認められるようになりました。しかし、その一方で、いつまでも人生に迷ったままの人達を大勢生み出すことにもつながっているのではないでしょうか。(もとのような規範があった方がいい、ということではありませんので注意。)
第二段落は、対策その一。「アイデンティティを確立するための対策としては、まず第一に、自分のことをよく知ることだ。」「自己と他者との区別をはっきりとつけることだ。」など。自分がないと、他人の意見を鵜呑みにしたり、なんとなく流されやすいものです。みんなの前で、はっきりと自分を主張できますか。それについての「体験実例」を書いてみよう。
第三段落は、対策その二。「その対策としては第二に、個性重視の教育を行うことだ。」やや社会的な視野で。今の日本の教育では、教科、それもどの教科もがそこそこできるのがいい生徒であるとされています。教科はできないが体育はすごく得意とか、数学はずば抜けているがあとは全くだめというような子供が、「できない子」と言われることなくうまく得意分野を伸ばしていけるような教育制度になるといいですね。
少し前のフリーターの増加や今問題化している「ニート」、「引きこもり」などの問題も、やはりアイデンティティの確立と関連がありそうです。
結びの段落は、まず、「反対意見への理解」。「確かに、行きすぎた個人主義はよくない。しかし、……」。自作名言は、「AはBではなく、Cである」の形で。予測問題の主題に戻って終わります。
★やや、難しい内容ですね。きっとみなさんは、いままさに「自分探しの旅」の真っ最中だと思います。若い頃には、思い切り悩み、思い切り迷ってください。そのなかで、きっと「自分」がみつかります。考えているだけではなく、いろんなところに飛び込んで、いろんなことに挑戦してみるのも大切です。
6.1週
●そもそも、食べることに(感)
第一段落は、スローフードの現状と問題。「時間をかけて食事をとるということがブームになりつつある。日本でも、人気があるのがそば打ちだ。自分で育てたそばを粉にしてそばを作って食べれば、確かに楽しい経験になる。コンビニのおにぎりで済ませるのよりもはるかに文化的だ。しかし、スローフードという言葉で、非能率を文化と勘違いするようになればやはりそれは問題だ」など。
第二段落は、その対策1。「そのためには、第一に、そのスローが自ら自主的に選んでものであることだ。例えば、手書きの年賀状。今は年賀状を省略する人も多い。メールでもブログでもfacebookでも、年賀のあいさつのメディアは多様にあるからだ。手書きの好きな人は、じっくり凝った年賀状を書けばよい。しかし、それが世間体や常識や義理や惰性でそうし続けているのであれば、そのスロー文化は見直す必要があるだろう」など。
第三段落は、対策2。「第二には、スロー文化の根底にある哲学を自覚することだ。スローフードのもともとの出発点は、もっと人間らしい生活をしたいいうことだったはずだ。その原点さえ把握していれば、さまざまな工夫ができる。例えば、今の年賀状の例で言えば、手書きに凝るよりも、現代のメディアを利用して画像や動画で近況を知らせるような工夫の方が、受け取る人にも喜ばれるだろう」など。
第四段落は、まとめ。「確かに、ファーストフードの行き過ぎた速度を見直す必要はある。しかし、見直すのは、単なる速さではなく、非人間的な速さなのだということを私たちが自覚していることが必要なのだ」など。
※考えてみれば、日本のおにぎりや、おいなりさんや、あるいはおすしなども、昔のファーストフードだったはず。ファーストフードでも、伝統文化となっているものもある。
6.2週
●かつて日本が貧しかった時代(感)
第一段落は、要約と意見(予測問題の主題)。
かつて日本が貧しかった時代、日本人は――殊に青年は人生について社会について自分自身について本気で考えたものだった。だが経済大国になった日本の社会は、自由と豊かさによって「考えない日本人」を作り出した。考えるのは面倒だから考えないというよりも、考える習慣がなくなっているのにちがいない。貧しさ故に若者は考えた。鬱屈して考えるが故に広大な未来があった。可能性に満ちた洋々たる前途、夢があった。それが若者の貧しい青春に輝きを与えていた。今、豊かさのみを追って考えることをやめた我々にどんな未来があるのだろう。
このまま思考停止の状態が続いていくと、課題解決能力が育たず、未来の問題に対処できなくなってしまうことが問題だ。(予測問題)。
第二段落は、対策1と体験実例。
「第一は 自分の力でできることを確認するようにすることだ。私も、震災で停電してしまったとき、自分にできることが意外に少ないことに驚いた。(体験)」
第三段落は、対策2
「第二は、課題を共有できるような社会にすることである。今のような無関心社会を脱すれば、政治についても参加型で民意が反映されるようになるだろう。」
第四段落は、自作名言と意見(予測問題)。
「たしかに平和で豊かであることは感謝すべきことではある。しかし、○○とはAではなくBであるように、このまま思考停止が続いて課題解決できない人が育つのは問題である。」
6.3週
●子供の躾は(感)
第一段落は、要約と意見(予測問題の主題)。
躾は任意になされ、感化は否応なく起こる。躾と感化とは子供が教育される時の切り離せない二つの側面になる。社会が複雑になるほど、躾は種々の共同体のなかで多様化し、分業化する。技術教育がほんとうの素質を育て上げるには、感化が要る。学校には具体的な躾を必要とする技術教育がなく、尊敬される技術のないところに感化は起こらない。学問は、社会のなかでひたすら磨かれる一種の技である。人間の技術とは、躾と感化とを必須の条件として磨かれる何かでなくてはならない。
このまま知識偏重の教育が進められていくと、躾も感化もおこらず技術をもつ人が育っていかないことが問題である(予測問題)。
第二段落は、対策1と体験実例。
「第一は 家庭での教育を強化することだ。最近の小学校では入学時に学級崩壊をしてしまうことが問題となっている。私も○年生の時に……。基本的な躾は家庭がその役割を担うべきだ。(体験)」
第三段落は、対策2
「第二は、家庭でも学校でも、子どもにとって尊敬できる存在をおくことである。責任転嫁をしない親や教師なら、感化もおこるはずだ。」
第四段落は、自作名言と意見(予測問題)。
「たしかに公教育の浸透は成しとげられ、国民の教育は向上した。。しかし、○○とはAではなくBであるように、このまま知識偏重の教育が進められていくと、躾も感化もおこらず技術をもつ人が育っていかないことが問題である。」