解説集 ルピナス の池 (最新版)
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10.1週
●季節感のある暮らし、スポーツの勝ち負け
現在の社会は、暑ければクーラー寒ければ暖房というように、季節感のない生活ができるようになっています。食べ物でも季節とは関係なく年中栽培されるようになっています。
季節感のある暮らしをするためにはどうしたらよいかということで、複数の方法を考えてみましょう。
●季節感のある暮らし、スポーツの勝ち負け
第一段落は身近な実例を書き出しの工夫を入れながら書く。「『チリリン、チリーン』風鈴の音が静かに響く。秋風にゆれる風鈴を見ると、去ってゆく夏がしのばれる。私の家はエアコンがないので、季節感のある暮らしをせざるを得ない。(笑)」実例に続けて意見。「私は、このような季節感のある生き方をしたい。」(季節感のある暮らしという具体的なものでもいいですし、季節感のある人生という抽象的な意見として書いてもいいです)
第二段落は、その方法。「そのための第一の方法としては、変化を楽しむ気持ちを持つことだ。」その裏づけとなる実例。「私は、ふだん出かけるときでも、行きと帰りの道はできるだけ別になるようにしている。」など、自分の体験実例を中心に。
第三段落は、方法(2)。「第二の方法としては、学校や社会で、もっと季節ごとの行事を大事にするような文化を作っていくことだ。または、「もっと野山に出て自然と接する機会を増やしていくべきだ。」など。伝記実例は、よく使えるのがエジソンと織田信長です。例えば、「織田信長は、子供のころから野山を駆け回って、あたりの地理や自然を熟知していた。そのために、桶狭間の戦いでも、最高の場所と時刻を選べたのではないか。」など。伝記実例がない場合は、長文実例、又は普通の社会実例で。それもない場合は体験実例でもいいです。
第四段落は、反対理解を入れながら書き出しの意見で結びます。「確かに、科学の発達は、人間に快適な環境をもたらした。病人やお年寄りが寒さに震えたり暑さに弱ったりする社会は決してよい社会とは言えない。しかし、私たちはもっと季節感のある人生を送っていくべきではないだろうか。」余裕があれば、このあと、書き出しの結びで。「『チリリン、リリーン。窓辺の風鈴は今日も静かに鳴っている。」など。
●構成図の書き方
10.2週
●学校について友人と(感)
内容:幼稚園でのお遊戯やお弁当は他人の身体に起こっていることを生き生きと感じる練習になっている。学校は共同社会で生きるルールを教える前に、そのルールの前提となっている他者への想像力や幸福の感情を教える場であるべきだ。
解説:保育園や幼稚園時代のことを思い出してみましょう。友達といっしょにお歌やお遊戯をしたことが懐かしく思い出されるでしょう。子供時代に同じことをして遊んだという経験は、人間が人間らしく生きる原点を形成するようです。孤独に過ごす時間というのも人間には必要ですが、それも他の人と共感できる能力に支えられてこそ意味あるものになるのでしょう。
●学校について友人と(感)
第一段落は要約と意見を書きます。
要約に続けて生き方の主題を挙げます。「私は他人を思いやる気持ちを大切にして生きていきたい。」
第二段落は、そのための一つ目の方法と体験実例を挙げます。「そのための方法は第一に、コミュニケーションの力を見直すことだ。」伝えること、伝えられることの訓練は、自分の世界をひろげていくために欠かせないものです。読書にも似た要素がありますね。自分以外の他人の頭で考えると言う体験をもっと積み重ねるべきでしょう。
第三段落は、二つ目の方法と実例を挙げます。「また第二の方法としては、今までの学力偏重の教育方針を改めることだ。」学歴社会といわれて、どのくらい年数を重ねているでしょうか。何もかも点数や偏差値といった数字に置き換えてしまうことで、見失ったものがあるはずです。自然の中で学ぶことで生きる力を得た偉人の話を引用しましょう。
第四段落は、反対意見に理解をしめしながら、名言の引用をしてまとめます。「確かに、人間は自分自身に対して孤独に問いかける体験も必要だ。しかし『良い友人を得たければ、まず自分が良い友人でなければならない。』という名言もあるように、私たちは他人を理解することは、とりもなおさず自分自身を他者に認めてもらい確認することにもなるから、相互の理解を図る思いやりの気持ちを大切にして生きていくべきだ。
★学校について友人と(感)
第二の方法は、「知識を詰め込むばかりでなく、人間的な部分を大事にする教育環境にしていくことだ」などと書けそう。伝記実例では、アインシュタインの例が考えられそう。長く続けている人は、昔、感想文でアインシュタインの話を読んだことがあると思います。アインシュタインの通っていた学校は暗記中心で、自分で考えることが許されない学校でした。アインシュタインは学校がいやでいやでしかたなく、家に帰ってから家族や親戚に色々なことを教わりました。殺伐とした教育環境では、子どもたちの個性は伸びない。個性を伸ばす……つまり、それぞれの人間の良さを認め合えるような社会が理想ですね。
10.3週
●物ごころのついた(感)
内容:ある物事に興味を持ち研究しようとするとき、まず目につくのはその形態や振る舞いなどの現象的側面である。しかし、それだけにとどまれば記載的な博物学にすぎない。必要なのは事物の現象の奥にひそむ原理を追求することである。
解説:現象に目を奪われるのではなく、その背後にある原理に目を向けようという意見です。テレビや週刊誌ばかり見ていると、どのタレントがどうしたのこうしたのと、にぎやかな話題につい目を奪われがちですが、名言にあるように、「真によいことは、新聞に大きな騒ぎを起こすことなく、小さく始まる」ものです。ニュースの背後にある世の中の大きな流れを見るためには、読書や思索が欠かせません。
昔話でも、こういうことはよくあります。いじわるなおじいさんは、ポチが大判小判を掘っているという現象にだけ目を奪われて、そのポチの行為の背後にある犬と人間との信頼関係にまで目が向きませんでした。(かなりオーバーな話だなあ(^^ゞ)。川に映っている、骨をくわえた自分の姿にほえた犬も、やはり現象だけに目を奪われた例でしょう。
最近の高校入試では、単に知識の有無を問う問題よりも、その理由や原因を問う考える問題が増えています。ふだんの勉強でも、「なぜだろう」と深く考えることが必要になっているのですね。
中3 10.3週 ●物ごころのついた(感)
子供は最初にものごとの現象面に目を奪われる。やがて、その原理を知りたくなる。科学の発展も同じように進む。
第一段落の要約のあとに意見。「私も、ものごとの表面的な現象にとらわれずに、その背後にある原理や原則を考えるような生き方をしていきたい」。
第二段落に、その方法1。「その方法は二つある。第一は、表面だけを見てすぐに判断せずに、いったん立ち止まって考えてみることだ」。その体験実例。「私のクラスの先生はよく怒るので最初は嫌だと思っていたが、よく考えてみると、自分たちのことを深く考えていてくれるから怒るのだということがわかった」など。
第三段落に、方法2。「また、テレビなどの媒体が、現象面だけを追うのではなく、その背後までも分析して報道をしていく必要がある」。続いて伝記実例。「伝記によると、ウェーゲナーは、アフリカの地図と南米の地図を見て海岸線の形が似ていることに気づいた。そこから大陸移動説という大胆な仮説を打ち立てたのだ」。
第四段落に、反対意見の理解。「確かに、原理や原則を考える前に、ものごとの実際の姿をよく見ることは大切だ。しかし、よく見たあとは、よく考えなければならない」。名言の引用。「カメラマンは、レンズのほこりを払うまえに目のほこりを払わねばならない」「雑草とは、まだ、その美点が発見されていない植物のことである」「辞書のような人間になることではなく辞書をうまく使えるような人間になることが勉強の目的である」「大切なのは、健康らしい外見ではなく、健康自身である」「人間というものは、結果から事のよしあしを判断する」など、いろいろあてはめてみよう。
11.1週
●時計を選ぶときには(感)
内容:デジタルは正確な情報をドライに表現する。アナログは全体の中での位置づけを情緒的に表現する。デジタルウォッチは、時刻の表示だけでなく情報処理をデジタルで行うウォッチへと進化している。アナログウォッチは、頭脳にデジタルな演算処理機能を持たせたウォッチへと進化している。人間の脳に右脳と左脳があるように、デジタルとアナログも共存共栄で発展していくだろう。
解説:「木を見て森を見ず」という言葉があります。現代のようにコンピュータが生活の隅々まで入ってくると、ものごとをデジタル的に表わす場面が多くなります。成績なども、昔は、花丸、二重丸など視覚の上でアナログ的なもののほうが多かったようですが、今は、偏差値などで細かいところまでデジタル的に表わせるようになっています。しかし、最近、デジタルではわかりにくいので、その数値をグラフ化してアナログ的に実感できるようにくふうされた表示も増えてきました。
全体をアナログ的に見ることと個々の細部をデジタル的に見ることのバランスをうまくとっていくことが必要なのでしょう。「バランスよく」を主題にして、デジタルの長所を伸ばすための方法(1)とアナログの長所を伸ばすための方法(2)を考えていくと構成しやすいと思います。
中3 11.1週のヒント ●時計を選ぶときには(感)
第一段落は要約。続けて生き方の意見。「アナログとデジタルの両方を生かせるような人間になりたい。(単純)」
第二段落はその方法。「そのためには、まず第一の方法として、アナログ的な見方ができるようにしておくことだ。その一つの例は、たとえである。この前、ホットケーキを作ったが、そのときに母が、「耳たぶぐらいのやわらかさにして、焦げ目がキツネ色になったらひっくり返す」と説明してくれたので、とてもわかりやすかった。こういう言い方や見方を自分でもふだんからできるようにしていきたい。」
第三段落は方法2と伝記実例。「第二の方法はもちろん、デジタル的な発想もできるようにしておくことだ。例えば、『調子はどうだい』と聞かれたら、『まあ、ぼちぼちでんがな』などとは言わずに、『絶好調の85%ぐらいです』などと答えるようにしていきたい。伝記の人物、エジソンは、『天才とは99%の汗(努力)と1%のひらめきである』と言った。また、伝記の例で言うと、織田信長は、長篠の戦いで3000挺の鉄砲を3段にして武田の騎馬軍団を打ち破ったと言われている。信長は、当時の火縄銃がいったん打ち終わってから何秒後に次の準備に入れるかをデジタル的に計算していたのだろう。」
第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに自分の得意なものを伸ばすという考えもよい。しかし、私はアナログとデジタルの両方を兼ね備えた人間になりたい。『すべてに効くという薬は、何にもたいして効かない』という言葉がある。アナログかデジタルかどちらかを万能視するのではなく、両方を使いこなすことが大切だ。
伝記実例ミニヒント
日本中を歩いて測量し、「大日本沿海輿地全図」という地図を作った伊能忠敬や、それを手伝うために蝦夷地を測量した間宮林蔵のお話もあります。
忠敬が私財を投じて測量事業を行おうとしたのですが、幕府にとっても有益だと判断されたということがあったようです。幕府は、伊能忠敬に全国の測量をさせると共に、薩摩藩の偵察の意味合いも重きにおいて全国に派遣させました
後に、シーボルトが国外に持ち出した伊能図の写本は、日本に開国を迫った際にマシュー・ペリーも持参している。ペリーはそれを単なる見取図だと思っていたそうですが、日本の海岸線を測量してみた結果、きちんと測量した地図だと知り、驚愕したというエピソードもあるそうです。忠敬が、56歳から、この大事業を開始したというのは、実にすごいですね。
11.2週
●もう三〇年も前の(感)
内容:奈良時代の大仏、戦国時代の鉄砲、そして現代の工業製品と、日本には最新技術を受け入れ消化する潜在能力があった。近年、真似をすることが独創性の欠如であるかのように言われているが、日本には真似ることを学ぶための確実な方法と考える伝統がある。芸事でも基本技術を十分にマスターしたあとに次の段階として独創性が出てくる。日本人は「もの真似上手」と言われることにコンプレックスを抱く必要はない。
解説:「守・破・離」というのは勉強にもスポーツにも言えるようです。スポーツでは、初めは単調な基礎練習をしっかりします。サッカーでも、ドリブルやパスが満足にできないうちに、オーバーヘッドキックをしようとしたり、新しい回転稲妻シュートを考えついたり(そんなのあるか)する人は、みんなから「いいよいいよ。あいつは勝手にやらせておけ」と言われてしまいます。逆に、ひとつのことを徹底的にマスターすると、次第に自分の独創的なやり方を試みてみたくなってきます。独創的なやり方は、初めはうまくいかないことも多いでしょう。「破」の段階では、かえってレベルが下がってしまうこともあります。しかし、その段階を越えると、前とは違った次元に進むことができます。
「守」の段階にとどまっていては進歩はありませんが、「守」の段階をしっかりマスターしておかなければ、その後の発展もありません。真似ることの大切さということで、自分の生き方に結びつけて考えてみましょう。
中3 11.2週のヒント ●もう三〇年も前の(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。「模倣にコンプレックスを持つ必要はない。模倣できる能力に自信を持って生きていきたい。」
第二段落は、方法1と体験実例。「そのための方法としては第一に、よい手本を探すことだ。私も、バスケットのシュートフォームがなかなか決まらないので、上手な人の形を真似てみるところから始めた。すると……。」
第三段落は、方法2と社会実例(伝記)。「また、第二の方法としては、学校教育などで、模倣の大切さを教えていくべきだ。伝記のエジソンは生まれつき独創性があったかのように描かれることが多いが、そのエジソンが図書館の本をかたっぱしから読んでいったことはあまり知られていない。エジソンは、本を読むことによってそれまでの文化をしっかり模倣したからこそ、その後の偉大な発明ができたのである。」
第四段落は、生き方の主題と名言の引用。「確かに、模倣だけで終わってしまっては進歩がない。しかし、模倣は創造の基礎なのである。模倣にコンプレックスを持たないように生きていきたい。「持ち物を気にするのは、実力に自信がない証拠である」という言葉がある。模倣する力を持っているということに、もっと自信を持って生きていきたい。」
●もう三〇年も前の(感)
伝記実例としては、日本のまねを、欧米の人がした例としては、「浮世絵の影響を受けた、ゴッホ、ルノワール、モネ、マネ(だじゃれではありません)、ロートレックなど、数え切れないくらい」で、19世紀末から20世紀初めにかけては、日本の陶磁器なども、欧米の陶磁器制作に深い影響を与えたことがあります。また、ハリウッドの人気映画監督も、スピルバーグやジョージ・ルーカスなど、日本の黒沢明の映画に強い影響を受けたと発言している人も少なくありません。ルーカスは代表作「スター・ウォーズ」は黒沢映画の「隠し砦の三悪人」をまねしたもの(これをいい意味で「オマージュ」といいます)であると発言していますし、「七人の侍」はいろいろな国でいろいろな手法でまねから発展した作品が作られています。
さて、産業の分野での日本の発明はあるでしょうか?
11.3週
●昔話の研究を(感)
内容:昔話に見られる民衆の知恵は、現代の生き方にも示唆を与える。「うばすて山」は老人の知恵の必要性を示している。「貧乏神」は、思い切りの大切さや貧乏への諦観を示唆している。また、昔話に見られる類話の多様性は、人生の問題の解決の多様性を示している。
解説:昔話を読んで、自分の生き方の参考にできた話などを考えてみましょう。「みにくいアヒルの子」などを読むと、今の自分の状態が満足できないものでも、将来に向けてがんばろうという気になるでしょう。
この長文全体について主題を決めるというより、自分の印象に残っているあるひとつの昔話に関連させて生き方の主題を決めていくといいでしょう。
中3 11.3週のヒント ●昔話の研究を(感)
第一段落は、長文の要約と意見(生き方の主題)。生き方の主題は、(1)「昔話に生き方を学ぼう」のように一般的に書いてもいいし、(2)「こういう昔話で生き方を学んだ」と具体的な話を通して書いてもいい。
第二段落は、方法1と体験実例。「そのためには、第一に、昔話だからと言って幼稚なものだとは思わずに、そこから人生の教訓を読み取るように心がけることだ。」体験実例は、「小学生のころに読んだ『かさじぞう』で、私は思いやりの大切さを学んだ。」など。
第三段落は、方法2と社会実例(伝記)。「第二の方法としては、昔話の文化をしっかり保存しておくことだ。『古代への情熱』の著書シュリーマンは、子供のころに絵本で読んだトロイ戦争を信じ、独力でトロイの都を発掘した。」
第四段落は、生き方の主題と名言の引用。「確かに、現代の最新の知識や技術を生かすことは大事だが、私たちはもっと昔話から生き方を学んでいくべきではないか。」名言は、「悪書を読まないことは、良書を読むための最初の条件である」「読書は人間を豊かにし、討議は人間を役立つようにし、文章を書くことは人間を正確にする」など。子供時代に流行の本を読むのもいいが、まず昔話をしっかり読もう。
●昔話の研究を(感)
伝記実例は、ワシントンの例などが挙げられそう。ワシントンが小さいころ、桜の木を切ったことを父親に正直に話したら、かえって誉められたという話は有名な話ですね。わかってはいても、なかなか実行できないことというのはあるはず。「嘘をついてはいけない」ということは、子どものころ教えられるものですが、自分に都合の悪いこととなると、ついつい嘘をついてしまうということはありそうですね。ここから考えられる方法は、「昔話から得た教訓をきちんと実行すること」などとできるでしょうか。たとえ、昔話からいい教訓を得ても、それを実行できないというのでは意味がありませんね。
12.1週
●日本のふつうの書きことば(感)
内容:日本では、文字はオリジナルで音はそのなぞりであるという考えがある。中国や朝鮮の人の名前の呼び方が漢字の文字とカタカナの音に分かれる場合、紙の上だけの関係であれば文字で済むが、愛を伴った関係であれば、相手の名前を音で呼ぶはずである。
解説:「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い(Goethe)」(ゴエセとも読めそう)言葉には愛がある、というのは、身近な例にもあります。例えば、好きな人の名前を「えーっと、君の名前、なんて言ったけ」など言ったら、いっぺんにふられるでしょう。
日々交わす挨拶の言葉も、その言葉の背後に愛があります。みなさんが学校で友達に会って「おはよう」と言うとき、実は「おはよう(愛してるよ)」というメッセージを相手に送っているのです。
逆に、ほかの人から「ねえねえ。この前のあれ、どうだった?」と聞かれたときに「べつにー」と答える場合、それは実は「べつにー(うるせえなあ)」というメッセージを相手に送っているのです。
言葉を受け取るときにその言葉の中に愛を感じ、言葉を発するときにその言葉の中に愛を乗せられるような感性を育てていきましょう。それを複数の方法で考えられるかな。
中3 12.1週のヒント ●日本のふつうの書きことば(感)
例えば、中国に遊びに行ったときに、自分の名前を中国語読みで呼ばれる場合と日本語読みで呼ばれる場合とどちらがうれしいかと考えてみましょう。(どちらでもいいような気もするが。^^;)。言葉は単なる記号ではなく、そこに相手に対する思いやりが込められています。ここから、自分の生き方を考えていきましょう。
第一段落は、要約と意見。「私は、言葉に愛を込められるような生き方をしたい。」
第二段落は、その方法と体験実例。「そのためには第一に、相手の名前などをしっかり覚えておくことだ。私も、校長先生から突然、「やあ、○○君」と自分の名前を呼ばれたときは、とてもうれしかった。(しかし、焦ったが)」。
第三段落は、方法2と伝記実例。「また第二の方法としては、国同士の間でも、相手の言葉や文化を尊重することだ。伝記の例で見ると広大な帝国を築いたモンゴルのフビライは、それぞれの地域の文化をそのまま生かす政策をとったために、征服された地域からの反感が比較的少なかったと言われている。これに対して、征服地域の言語や名前などを無理矢理に変えるような同化政策をとった日本は、今でも韓国で評判が悪い。」
第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに、合理的に物事を進めるためには、言葉を記号として扱う方が便利な場合もある。その一つの例が住民基本台帳ネットワークに見られる国民総背番号制だ。しかし、私たちは、言葉に愛を込めるような生き方も忘れてはならないだろう。『家とは、外から見るためのものではなく、中で住むためのものである』という言葉がある。名前もまた、外から見るための符号ではなく、その中で生きている人間と密接に結びついていると考えるべきである。」
12.2週
●最近わが国では、あらゆる所で(感)
内容:最近わが国では、あらゆる所で「国際化」の必要が唱えられている。世界において「国際化」がスローガンさながらに叫ばれているのは日本だけである。欧米世界は現実においてすでに「国際化」されているから、今さらそういう言葉を必要とはしていない、という事情があるためだ。日本の「国際化」が求められる所以は、貿易、軍事、文化交流、等々において世界を支配しているのは今のところはまだもっぱら欧米の論理であって、日本はそれに自分をある程度合わせない限り、国としての生存を維持できないからにほかなるまい。しかし日本が特殊だというなら、欧米もまたキリスト教の神の観念に呪縛された一個の特殊である。
解説:日本では、他人にどう思われているかということや他人と比較してどうかということがよく話題にされるようです。「ヨーロッパではこうなのに」「アメリカではああなのに」「それなのに、日本は……」という話を、みなさんもよく聞くでしょう。こういう、日本人の他と比較する考え方が、欧米への短期間のキャッチアップを可能にしたのも事実ですが、最近では自分の考え方がないことが逆に批判されているようです。
生き方の主題は、相手の立場や意見は尊重するが、自分は自分らしく、ということで考えていくといいいでしょう。
中3 12.2週のヒント ●最近わが国では、あらゆる所で(感)
第一段落は要約と意見(生き方の主題)。「他の人を基準にするのではなく、自分自身を基準とするような生き方を。」
第二段落は、その方法1と体験実例。「そのためには第一に、自分のことは自分で決めることである(方法)。先日、大勢でレストランに行った。一人がカレーライスを注文すると、みんなが『私も』『僕も』と同じものを注文したが、僕だけはみんなと違ってラーメンを注文した。(^^ゞ」
第三段落は、方法2と伝記実例。「第二の方法としては、歴史上の偉人から、自分自身を基準とする生き方を学ぶことだ。伝記によると、聖徳太子は、『日いづるところの天子、書を日没するところの天子にいたす、つつがなきや云々』という手紙を隋の皇帝に送った。当時の大国である中国に対しても、しっかりと自分の国の存在を主張したのである。」
第四段落は反対理解と名言。「確かに、周囲との比較で自分を見るということは大切である。しかし、……。『自分が考えるとおりに生きなければならない。そうでないと、ついには自分が生きたとおりに考えるようになってしまう』のである。」
12.3週
●考えてみると、私の家では(感)
内容:少年時代、飼っていたチャボの死を通して、人生には大切なものが一瞬にして失われるときがあるという経験をした。何十年かの後、ブリュッセルの美術館で、この時私の感じたものをはっきり思い出させずにおかない一枚の絵に会った。
解説:人生の相貌の一瞬の変転という経験は、みなさんもしたことがあるでしょう。だからこそ、今のこの一瞬を悔いなく生きるという姿勢が必要なのかもしれません。「葉隠」という本には、著者山本常朝の独特の人生観が書かれています。山本常朝は、武士の心構えとして、毎朝毎晩自分が死ぬときのことを考えることが大切だと言います。しかも、それをいちばん苦痛の多い死に方として日々考えていくべきだと述べています。
私たちはともすれば、死や苦痛から目をそらそうとしがちですが、死や苦痛を直視することによって充実した生き方ができるのかもしれません。
中3 12.3週のヒント ●考えてみると、私の家では(感)
第一段落は要約。続けて生き方の主題の意見。「人生は一瞬にして変転することがある。しかし、どのような運命も明るく受け入れられるように生きていきたい。」又は「いつどんなことがあっても悔いのないように、今を精一杯生きたい。」
第二段落は、方法1と体験実例。「そのためには、第一に、今の喜びをしっかり満喫することだ。私も、料理でおいしいものとまずいものが一緒に出たときには、いつ死んでもいいように、まずおいしいものから食べることにしている。」
第三段落は、方法2と伝記実例。「また、学校教育でも、世の中には理不尽な運命があるということを教えることだ。そうでないと、不幸に遭遇したときになぜ自分だけがこんな目にと、社会をうらんでしまうからだ。伝記によると、秀吉は、本能寺で信長が討たれたと聞いたときに、突然の運命に嘆くのではなく、すぐに新しい作戦を考えた。このように、運命に対して前向きになることが必要だ。」
第四段落は、反対理解と名言の引用。「確かに、世の中には、不幸な運命もある。また、その不幸をじっくり味わうことも大切だ。なぜなら、その不幸をしみじみ感じることによって、弱い人に対する共感の気持ちも持てるようになるからだ。しかし、私たちは、いつまでも運命を嘆いていずに、あかるく生きていく必要がある。『今日という日は、明日という日の二日分ある』という言葉がある。明日や昨日を思いわずらうのではなく、今日を精一杯に生きるべきだ。」
Re: ●考えてみると、私の家では(感)
「悲しい運命にも立ち向かい、前向きに生きた」偉人の例は、枚挙に暇がありません。聴力の低下にもめげなかった作曲家ベートーベン、聴覚、視覚、言葉の障害の三重苦に負けなかったヘレン・ケラー、手の障害を乗り越えた野口英世、等々。彼らは、悲しい運命を伴った人生を、並々ならぬ努力で切りひらいてきました。みなさんの知っている偉人の話を伝記実例として入れてみましょう。