メギ の山 1 月 1 週
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○自由な題名
○クリスマス、おおみそか、お正月
★ポイ捨て、除夜の鐘
人間の可能性
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【1】一匹(ぴき)の子犬が、公園をうれしそうに走っていく。人間の三歳ぐらいの子供が、やはり公園をうれしそうに走っていく。その二つの姿は、どちらも同じようにほほえましい。【2】しかし、子犬の方は、その後何年たってもやはり犬のまま大きくなるだけだが、人間の子供は、成長の過程で、偉大な才能を発揮する人間になるか、逆に凶悪な犯罪者になるか、あるいは平凡な人間として一生過ごすことになるか、予測することができない。【3】また、たとえ平凡な人間と思われていても、どういう個性や趣味があるかということは千差万別だ。私たちは、この人間の可能性というものをよく見ておく必要がある。
【4】なぜ、人間をその将来の可能性から見る必要があるかというと、その理由は第一に、人間を幅広く見ることができるからだ。例えば、今何の取り柄もないように思われる人でも、場面が変われば急に真価を発揮することがある。【5】小学生のころ、友達と数人でキャンプに出かけた。そのメンバーの中に、学校でも評判のいたずらっ子が入っていた。私は、当初、その子がキャンプに参加することをあまり快く思っていなかった。しかし、実際にキャンプが始まってみると、その子の大活躍でみんなが大いに盛り上がった。【6】この経験から、私は、人間を一つの面からだけ見るべきではないこと深く実感した。
人間を可能性から見ることが大切なもう一つの理由は、私たちは進歩ばかりではなく退歩することもあるからである。【7】例えば、豊臣秀吉は、若いころさまざまなアイデアと実行力で新しい時代を切り開く役割を果たした。しかし、晩年は自分の権力に執着することに関心の多くが移っていたように思える。たとえ素晴らしい業績を残した人であっても、進歩をやめればやはり後退するしかないのだ。
【8】確かに、私たちの日常生活のほとんどは平凡な時間の繰り返しだ。しかし、人間は、いざというときは、周りの人が予想もできないような変化をする存在だということをいつも心にとめておく必要がある。【9】「男子三日会わざれば刮目(かつもく)して待つべし」という言葉がある。たった三日でも、人間は大きく変化する。子犬は、成長しても∵犬のままだ。しかし、人間は、豚にも天使にもなれる。よりよく生きるためには、常にその両方の可能性を自覚していることが大切なのである。【0】
(言葉の森長文作成委員会 Σ)