ネコヤナギ の山 1 月 1 週
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○自由な題名
○クリスマス、おおみそか
★お正月、私の宝物、休み時間
アイデア年賀状
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【1】「うーん、どう書こうかなあ」
私にとって、毎年の年賀状作りは大変なものだ。なぜかというと、ついつい凝りすぎてしまうからである。やはり年賀状は手書き、手作りがいちばんだと思う。【2】父はパソコンで年賀状を印刷しているが、私は断固として手作りにこだわっている。一枚一枚、感謝の思いを込めながら、宛名を書く。もちろん、裏面(うらめん)だってすべてオリジナルの構図を考えて作っていく。
【3】今年の年賀状では、いも判に挑戦してみた。サツマイモを輪切りにして、彫刻刀で削ってハンコにするのだ。かなり大変だったが、干支(えと)である「卯」や、「賀正」という文字を彫った。
【4】そんなふうに手をかけるので、出来上がった年賀状を出すのはいつもぎりぎりだ。分厚い年賀状の束をポストに押し込んで、私はようやく、安心してお正月を迎えられる。
【5】しかし、私の年賀状作りは、年が明けてもまだ終わらない。毎年必ず、私が出さなかった意外な人から年賀状が届くからだ。こういう驚きがあることも、新年の楽しみの一つだろう。【6】けれども、もらった年賀状には返事を書かなければいけない。そうして私は、またまた机に向かう羽目になる。
今年のお正月、そんなときに事件は起きた。
【7】「いも判がない!」
私が叫ぶと、こたつでくつろいでいた家族が、一斉にこちらを見た。一生懸命作ったいも判が、いつの間にかなくなっていたのだ。これでは返事を書くことができない。
【8】家族を無理やり起こして、こたつ布団(ぶとん)を引きはがしてまで探した。まるで、去年やり忘れた大掃除を今ごろやっているかのようなありさまだった。しかし、それでも見つからない。∵
【9】私がしょげていると、飼い犬のユメが足元に寄ってきた。慰めてくれるのかと感動したが、よく見ると、その口あたりの毛が赤くなっている。私はハッとした。
「犯人は、おまえだな!」
【0】そう。なくなったいも判は、今はユメのお腹(なか)の中(なか)。材料がおいもだっただけに、置いておいたものをユメがぺろりと食べてしまったのだ。
「では、おまえをいも判の代わりに」
私はユメをつかまえると、その肉球に朱肉をつけて、返事の年賀状にペタン、と押した。いも判ならぬ「いぬ判(ばん)」というわけだ。自分のしたことが分かっていないのか、ユメはうれしそうにしっぽを振っていた。
「えーと、干支(えと)じゃないけどごめんね。」
戌年ならよかったのに、と私は心の中でつぶやいた。だが、これはこれでかわいらしくて、いいかもしれない。
「災い転じて福となす」ということわざもある。こだわって作るのもいいが、とっさにひらめくアイデアで対処することも大切だ、とわかった気がした。
「うん、これでよし!」
私は笑顔で、ユメと顔を見合わせた。
(言葉の森長文作成委員会 ι)