テイカカズラ2 の山 2 月 1 週
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○自由な題名
○節分、マラソン
★ランニングをしたこと、楽しい夕食
○つうしんぼ
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【1】しゅうぎょうしきがおわりました。
きょうしつへはいってから、つうちぼをもらうのです。
ほそ長い、四かくなつうちぼを、りょう手を頭より高くさしあげて、うけとったとき、ぼくのしんぞうは、どきどきっどきどきっ、となりました。
【2】そのどきどきは、ぼくがせきについて、人に見られないように、はおりでかくしながらつうちぼをひらいて見るまでつづきました。
つうちぼのせいせきのところに、むずかしい字が六つと、やさしい字が三つ、ついていました。【3】やさしい字は乙でした。どうしたわけか、乙の字は、いつのまにか、おぼえていたのです。けれども、むずかしい六つの字はわかりません。
「なあんだ、むずかしい字ばっかしで、わからんなあ。」
ほくは、ひとりごとをいいました。【4】すると、となりのなおみちゃんが、
「のんちゃん! むずかしい字があるの。そいじゃあ、きっと優だもの。」
と、小さい声で、こっそりおしえてくれたのです。
(そうか、優なのかあ、よかったあ。)
ぼくは、もううれしくて、むちゅうでした。
【5】だから、「ふところに、ちゃんとしまうんよ」と、でがけにいわれたかあさんのいいつけなど、すっかりわすれてしまいました。校門をでると、つうちぼを、わざと左手で、人に見えるように高くもちあげてあるきました。
【6】いちばんはじめに、となりのおじさんにあいました。おじさんは、ぼくがおもったとおり、
「戸中谷(とちゅうや)のぼうか。どら、おじさんに見せてくれるか。」
といいました。ぼくは、
「はい。」
と、にこにこしながら、むねをはって、このすばらしいつうちぼをおじさんにさしだしたのです。【7】すると、おじさんは、
「ほう。」
と、かんしんしてから、
「ぼうは、よくできるなあ。」
と、頭をなぜながらほめてくれました。ぼくは、もう、ますますうれしくて、おどりあるきたいくらいでした。
【8】それからは、どうろであう人には、こちらから、∵
「おじさん、おじさん、ほら、ぼくのつうちぼだに。」
といって、だれにでも見せました。すると、
「ほう、よくできるなあ!」
と、みんなほめてくれるのです。【9】うれしくなったぼくは、はたけではたらいている人にまで、かけていって、わざわざ、見せてやったのです。
「かあちゃん、ほらつうちぼもらった。みんな、よくできるってほめてくれた。」
ぼくは、元気いっぱいにさけんで、かあさんにつうちぼをさしだしました。【0】かあさんは、ふしぎそうに、
「ええっ! みんなに、見せたのかえ。」
といいながら、いそいで見はじめました。
すると、どうでしょう。かあさんの目から、なみだがはらはらとながれだしたのです。
「のんちゃん。どうして人に見せたの。」
かあさんは、きびしくいいました。
「だって、乙のほかは、むずかしい字だから、優だと、なおみちゃんがおしえてくれたん。」
「まあ、あきれた。これは、丙といって、できないというしるしなんよ。」
かあさんの声は、かなしそうな、ふるえただみ声でした。
(なあんだ、丙だったのか。)
ぼくは、もう、かあさんの顔を見ることができません。おもわず、だだだっと、かけだしていたのです。
「ちくしょう、ちくしょう、うそつきのおとなのばかやろう! ばか、ばか!」
人けのないくわばたけのかげで、おもいっきり土をたたきながら、ぼくは、声をころして、いつまでも、いつまでも、ないていました。
『はずかしかったものがたり』「つうしんぼ」(代田昇)より