00エニシダ の山 3 月 1 週
◆▲をクリックすると長文だけを表示します。ルビ付き表示

★じゆうなだいめい
○ひなまつり
○こまったこと

○ソクラテスが、ただしいことを(感)
 【1】ソクラテスが、ただしいことを、わかい人たちにとくので、わるい役人たちは、ソクラテスのことを、にくむようになりました。学者たちも、ソクラテスのひょうばんをねたむようになりました。
 【2】「ソクラテスを、このままにしておいたら、たいへんなことになる。」
 「わかい人たちは、みんな、ソクラテスのでしになってしまうかもしれない。」
 そこで、役人たちは、ソクラテスをろうやにおしこめ、とうとう死刑にすることにきめました。
 【3】ソクラテスのでしや、ともだちは、それをきいて、とても、しんぱいしました。
 「なんとかして、ソクラテスをたすけることは、できないものだろうか。」
 すると、ひとりが、いいました。
 【4】「いいことがある。ろうやの番人に、お金をあげれば、にがしてくれるということだ。」
 「それでは、わたしたちで、お金をあつめて、番人にわたして、ソクラテスをにがしてもらうことにしよう。」
 みんなは、よろこんで、いいました。
 【5】そして、クリトンという、でしが、ソクラテスにあいに、ろうやにいくことになりました。
 クリトンが、ろうやのなかに、はいっていくと、ソクラテスは、まだ、ねむっていました。
 【6】(こんな、りっぱな先生を、アテネの人びとは、どうして、ころそうとするのだろう。)
 そうかんがえて、クリトンの胸は、いっぱいになりました。
 そのとき、ソクラテスが、目をさましました。
 【7】「クリトン。こんなはやく、どうして、きたのかね。」
 ソクラテスが、いいました。
 「先生。たいへんです。あした、先生は、死刑になることにきまったのです。」
 でも、ソクラテスの顔色は、かわりません。
 【8】「それで、みんなで、そうだんして、先生をたすけだすことに∵したのです。みんなで、お金をあつめて、わたしがもってきました。このお金を、ろうやの番人にやれば、番人は、先生をにがしてくれます。
 【9】先生、どうか、わたしといっしょに、ここをにげてください。」
 「なに、わたしに、にげろというのか?」
 ソクラテスは、おこったように、いいました。
 「わたしはこれまで、国できめたきまりは、まもらなくてはいけないということを、おおぜいの人たちに、はなしてきた。【0】それなのに、じぶんが、死刑になるからといって、国がきめたことをやぶってもいいだろうか。そんなことは、わたしには、できない。
 わたしは、いままで、ただしいとおもったことをいい、ただしいとおもったことをおこなってきた。いまのわたしにとって、いちばんただしいことは、国のきまりにしたがって、死ぬことなのだ。」
 クリトンは、じっと、ソクラテスの顔を見つめたまま、だまってしまいました。ソクラテスのほおには、赤みがさし、目には、かがやきが見られました。ちからづよい、あかるい声ではなしてくれたソクラテスのことばは、クリトンの胸をゆすぶりました。

 (大石真())
 「子どもに聞かせるえらい人の話」(実業之日本社)